半年ほど前にリリースされて大きな話題になったYAMAHAのDX7を再現するVSTインストゥルメントの音源、DEXED(ディクシード)。オープンソースのフリーウェアとして登場したこともあって、使ってみた、という人も少なくないと思います。私も気になりつつ、しっかり試していなかったのですが、改めてチェックしてみたところ、ユーザーインターフェイスが大幅に変わり、よりカッコよく、使いやすくなっていました。
ちょうどDX7登場から30年。先日の2014楽器フェアでもヤマハブースで展示されたり、ヤマハミュージックメディアからは「DX7 30thアニバーサリーブック」という本も出版されるなど(なぜか、私もインタビューを受けました!)、注目が集まっているDX7ですが、そのDX7のサウンドを使ってみたいという人にとっては非常に嬉しいソフトなので、どうやれば使えるようになるのかを紹介してみたいと思います。
Windows、Mac、さらにはLinuxでも動くDX7クローンのVSTインストゥルメント、DEXED
DX7がどんなシンセサイザであるのかという説明はここでは割愛しますが、これはFMシンセシスと呼ばれる方法で音を合成するシンセサイザの代表選手。オペレータと呼ばれるサイン波を出す装置を6つ備えているというのが特徴となっていた音源です。
2014楽器フェアのヤマハブースで数々の往年の名機とともに展示されていたDX7
そのDX7をソフトウェア音源で再現するという試みは、このDEXEDが初というわけでは決してありません。有名なところでは、Native InstrumentsのFM8がそのひとつだし、フリーウェアとしてもHexterVSTi、Speedsoft VX7といったものもありました(両方とも現在は開発、配布が止まっているようです)。しかし、その中でかなり本気でDX7クローンを目指して開発しているものなんですよ。
GitHubを利用したオープンソースとしての提供であるため、誰でも無料で入手することが可能で、現在のところWindows 64bit版と32bit版、Mac OSX版、そしてLinux版があり、最新のバージョンは0.8.0となっています。
このうちWindows版とMac版に関してはすぐにインストール可能なバージョン(Binary版)が配布されているので、誰でも使うことができますよ。ただし、オープンソースのフリーウェアだけに、インストーラなどは付属していないので、慣れていない人はインストールに手間取るかもしれませんので、その方法を簡単に紹介しておきましょう。
まずは、DEXEDのサイトにアクセスし、真ん中あたりにあるBinary downloadsというところからVersion 0.8.0のWindows版またはMac版をダウンロードします。いずれもZIPで圧縮されているので解凍しておきます。
Windows 64bit版の場合、VSTPluginsフォルダにx64フォルダごとコピーする
Windowsの場合はDexed.dllというファイルとx64というフォルダに入ったDexed.dllというファイルが収められていると思いますが、64bit版のDAWを使っている場合はx64フォルダに入ったものをVSTプラグインのフォルダにコピーします。初心者だとなかなか難しいかもしれませんが、Cドライブの中にProgram Filesというフォルダがあるので、その中にあるVSTPluginsフォルダにコピーするのです。
たとえばCubaseの場合はProgram Filesの中に[Steinberg]-[VSTPlugins]というフォルダがあるので、ここにx64フォルダごとコピーしてやれば、次回Cubaseを起動するタイミングで、VSTインストゥルメントの選択肢としてDexedが追加されます。
SONARやFL STUDIO、Liveなど、ほかのDAWでも基本的なインストール方法は同じです。この際、DAWによっては、インストールしたフォルダを指定したり、リロードをする必要があったりしますが、その辺は適宜行ってみてください。
一方、Macの場合も、VSTインストゥルメントとなるので、現時点ではLogicやGarageBandなどでは使うことはできません。VSTをサポートしているCubase、StudioOne、Live、BITWIG STUDIOなどで利用する必要があります。
Macの場合、ライブラリのVSTフォルダに、Dexed.vstをコピーする
Macの場合もインストール作業が必要となるのですが、まずダウンロードしたZIPファイルを解凍するとDexed.vstというファイルが登場します。これをMacのライブラリの中にある[Audio]-[Plug-Ins]-[VST]というフォルダにドラッグ&ドロップで持っていくのです。これで、インストールは完了。あとはDAWを起動すれば、ほかのプラグインと同様に使うことができるようになります。
MacのCubaseで起動させるとこんな感じの画面が出てくる
さて、起動するとWindowsにおいてもMacにおいても、ちょっと大きめなカッコイイ画面が登場してきます。Version 0.7.0までは以下のような画面だったので、まったく違う音源なのではないか、と思うほどずいぶんと雰囲気が変わりましたよね(音源としてのエンジン部分は変わっていないようですが……)。
前バージョンであるVersion 0.7.0のユーザーインターフェイスはこんな感じだった
「カッコイイけど、どうやって使えばいいかさっぱり分からない……」という人も多いと思いますが、ご安心を!このFM音源というもの、長年使っている人だって、どうやれば目的の音が作れるかなんて、ほとんどみんな分かっていません(苦笑)。ある意味当てずっぽうで音作りをするわけですからね。とはいえ、まずはプリセットの音色を選ぶだけ、1日遊ぶことができるので、これを試してみましょう。
画面左下のSAVEボタンの右側をクリックすると音色一覧が表示されるので、ここから選択する
画面下の「SAVE」ボタンの右をクリックすると、プリセット音色の一覧が表示されるので、これを選んで、キーボードを弾いてみてください。もうこれはまさにDX7そのもの、という感じの音ですね。選べる音色はこれだけではないんです。
CARTボタンをクリックすると、カートリッジを切り替えることができる
カートリッジを意味するCARTボタンを押すと、数多くのカートリッジの選択肢が現れるので、これを切り替えてみましょう。そうDX7には別売のROMカートリッジを挿すことで音色を追加できたので、それをここで実現しているわけです。この状態で、改めて、先ほどの音色一覧を表示させると内容が切り替わっているはずですよ。結構膨大な音色ライブラリが入っているわけですね。
ただこのカートリッジ、伊達にコンセプトを真似たということではないようです。DX7のカートリッジをデータとして取り出したものをZIPファイルにして指定フォルダにコピーすれば、そのまま使えてしまうんです。同様に、DX7の実機とデータのやり取りも可能で、SysEx(MIDIシステム・エクスクルーシブ)データをやり取りすることで、DX7から音色をそのまま転送し、再現できてしまうようですよ。その意味でもDX7クローンというわけなんですね。
システム・エクスクルーシブ・データをやり取りするためのポートを設定する
ちなみに、SysExをやり取りするためには、そのためのMIDIポートを設定する必要がありますが、それさえ設定すれば簡単なようですよ。
algorithmパラメータを1~32と切り替えることで、オペレータの接続を変化させることができる
実際の音作りは6つのオペレータのレベルやエンベロープなどを設定して行っていくのですが、ここで基本となるのが32種類あるオペレータの接続=アルゴリズムです。これについては画面下中央のalgorithmパラメータで設定していくと、画面上の表示も切り替わっていきます。また6つあるうちの1つのオペレータのけるフィードバックレベルもここで設定を行う形になります。
DX7クローンのFM音源だというのにアナログシンセ風なcutoff、resoのパラメータもある
このように忠実にDX7を再現しているDEXEDですが、オリジナルにはない機能も装備しています。それがDEXEDロゴの右にあるcutoffおよびresoです。そうアナログシンセのフィルタと同様のパラメータがここに搭載されており、最終的にFM音源として完成した音に対してかけることができるようになっているのです。「こんなものは邪道だ!」という人もいそうですが、最終的な出音をフィルターで調整できるというのはものすごい安心感ですよね。
こんなものがタダで手に入るというのは、本当に嬉しい時代です。ぜひ、みなさんも使ってみてください。
【関連サイト】
DEXED-GitHubサイト
DEXEDユーザーWebサイト (ここからダウンロードするのがよさそうです 2016.4.18追記)