歌詞を入力すると自動で曲が完成するボカロネットがスゴ過ぎる!

4月26日、27日の2日間、幕張メッセで行われたニコニコ超会議3。その中でヤマハが「ボカロネット(英語名称:VOCALOID NET)」という非常に画期的なサービスを披露しました。正確には24日にプレスリリースを出したこのサービスを、ニコニコ超会議3の会場で初めて実演したのですが、スゴイです。歌詞を入力すると、自動で作曲が行われ、しっかりした伴奏がついた形でVOCALOIDが歌ってくれます。しかも、単に作曲してくれるだけに留まらず、クラウドを利用した様々なサービスがセットとなっていて、まずは無料で使えてしまうのです。

実は、このニコニコ超会議3が開催される1週間前にヤマハから「公開取材をしてくれないか?」という打診があり、まったく状況が分からないながらOKしたら、驚くべき内容でした。当日は、その公開取材がニコニコ生放送で流れたので、ご覧になった方も少なくないと思います。ここではアニメちっくアイドル桃知みなみさんのMCの元、ボーカロイドの父、ヤマハの剣持秀紀さんにインタビューを行ったので、その内容について、レポートしてみたいと思います。

ニコニコ超会議・超ボカロサミットにおけるボカロネットに関する公開取材。右が剣持さん、左が桃知さん

このボカロネットはヤマハが7月にサービスを開始する予定の会員制のクラウドサービス。無料で登録できる無料会員と、月額500円(税別)のプレミアム会員という2つがあり、まずは無料で、その面白さを存分に味わうことができます。

7月にサービスがスタートする予定のボカロネットのトップ画面

そのターゲットも、VOCALOIDをまったく触ったこともない初心者ユーザー、PCがなくスマホしか使えないというDTMに無縁だったユーザーから、DAWを利用している上級・中級ユーザー、さらにはプロミュージシャンまで、という幅広い人たちを対象としており、いろいろな使い方ができるのです。

このボカロネットの中枢機能となるのが、自動作曲サービスの「VOCALODUCERボカロデューサー)」。これは昨年10月から法人利用限定の形で発表されていたサービスですが、それが個人ユーザーにも開放された格好です。


「カンタンモード」で歌詞を入力し、 「作曲開始ボタン」を押す 

自分で一生懸命作詞したものはもちろん、その場で思いついた言葉、天気予報やニュースでも、何でも歌詞を入力してみてください。ただ、それだけですぐに作曲してくれます」と剣持さん。実際、会場での声を拾いながら、文字を入力して「作曲開始」ボタンを押すと、30秒程度で曲が完成するんです。出来上がった曲を試聴してみると、バッキングの演奏も入った形で入力した歌詞の通りに結構な完成度で8小節分の曲が再生されます。


30秒後には作曲され、ブラウザ上で再生することができる 

ちなみに、入力する歌詞は漢字もOK。VOCALOIDユーザーの方ならご存知のとおり、普通はひらがなで「ぼくわ」のように入力しなくてはならないのに、ここでは「僕は」でいいんですね。


「ノーマルモード」に変更すると、曲作りに関して細かく指定できるようになる

まず試したのは「カンタンモード」というもので、本当に歌詞を入力しただけ。ここでVOCALOIDの歌声を選択したり、曲のジャンルをある程度指定することもできるのですが、より細かく設定するための「ノーマルモード」というのもあるので、それも見せてもらいました。


プレミアム会員なら5人のシンガーの中から、無料会員ならVY1V3かVY2V3から選ぶことが可能

まず、VOCALOIDのシンガーとして用意されているのはVY1V3VY2V3YUU/ZOLA PROJECTWIL/ZOLA PROJECTKYO/ZOLA PROJECTの5つ。それぞれのそれぞれのシンガーのパラメータを調整した4つずつのボイスも用意されているので、結構いろいろな歌声が利用できます。


どんなテイストの楽曲にするかを設定する 

さらにメロディーの曲調もかなり細かく指定することができます。まずはスタンダード優しい悲しい明るい激しいの5つからメロディテイストを指定した上で、伴奏ジャンルの指定、伴奏スタイルの指定、そして音源の指定などを細かく行っていくことができます。


伴奏のジャンルなども設定できるようになっている

ただし、この辺で無料会員とプレミアム会員での機能差が出てきます。その違いをまとめたのが以下の表です。

無料会員 プレミアム会員
ボカロストレージ容量 500MB 5GB
ボカロデューサー
作曲回数
少ない 多い
ボカロデューサー
曲のバリエーション
少ない 多い
ボカロデューサー
使える歌声ライブラリ
VY1V3/VY2V3のみ 増えます
ボカロデューサー
曲の長さ
8小節 最大32小節

このように、制限はあるものの、とりあえず無料会員でも、作曲し、それを聴くことまでは誰でもできるし、こうしたできた曲はクラウドのストレージ上に保存されているので、URLを指定するだけで、いつでも再生することができます。そして、そのURLをメールやTwitter、FacebookなどのSNSで知らせることで、友達に披露するといったこともできるんですね。


必要に応じてエフェクトの設定なども細かくできるようになっている 

ここまでの操作画面からも分かるとおり、すべてはクラウド上で処理しているので、作曲、演奏をする上で、VOCALOIDやDAWを持っていなくもできてしまうのがポイント。これなら、まったくの初めてユーザーでも使えますよね。必要に応じて、テンポを設定できるのはもちろん、エフェクトの設定をおこなったり、よりリッチなサウンドにするために、伴奏部分の音源を「プロ」版にすることも可能です(プロ版が使えるのはプレミアム会員のみ)。


VOCALOID3 Editorのツールバーを見ると、見慣れないアイコンが2つ追加されていた! 

でも、スゴイのはここからなんです。ステージの実演中に剣持さんが起動させたVOCALOID3 Editorを見ると、今まで見たことのないボタンが2つ追加されているではありませんか。


ダウンロードボタンを押すと、これまでにボカロネットで自動作曲した楽曲の一覧が表示される

7月にボカロネットのサービスがスタートする日にアップデートする予定ですが、このボタンはVOCALOID3 Editorから直接ボカロネットと接続して連携する機能です」と剣持さん。ダウンロードボタンを押してみると、いま自動作曲した曲データ、さらにはこれまで自動作曲してきた楽曲が一覧で表示されます。


実際、ダウンロードすると、自動作曲された楽曲のデータがVOCALOID3 Editor上に展開される

そこでいま自動作曲した曲データを選択すると、ネットからのダウンロードが行われ、そのままVOCALOID3 Editorに読み込まれて、ローカルで再生できるではないですか!もちろん、ちょっと気に入らない部分を修正することもできるし、シンガーを変更することだって可能です。

そう、先ほど書いた通り、プレミアム会員の場合、ZOLA PROJECTを含めて5人のシンガーから、無料会員ならVY1V3VY2V3のいずれかの歌声で自動作曲されるわけですが、手元のVOCALOID3 Editorにダウンロードしてしまえば、初音ミクV3だって、結月ゆかりだって、Megpoidだって、何でもありですからね!

さらに、自動で作曲された伴奏部分はVOCALOID3 EditorのWAVトラックにダウンロードできるので、クラウドで作られた楽曲が、手元で完全な形で復元できるし、VOCALOID3 EditorのMIXER機能で、ボーカルと伴奏のバランスを変えたり、エフェクトを設定したり…ということが自在にできるのです。

今回、見ることはできませんでしたが、この2つのボタンはVOCALOID Editor for Cubaseにも搭載されるそうです。これならMacユーザーでも利用できるし、より複雑なアレンジなどもしやすくなります。なお、VOCALOID Editor for Cubaseでダウンロードする場合、伴奏データはCubase側のオーディオトラックに展開されるとのことです。

ボカロPのみなさんが、作曲のアイディアが枯渇したときなんかに使ってもらうのにもいいと思いますよ。ここでできた曲を元にして膨らませていくというのも面白いのではないでしょうか?」と剣持さんは話します。

でも気になるのは、著作権の部分。せっかくいい曲ができたなら、ぜひ発表したいところですが、これはユーザー自身が作曲した曲と考えてもいいのでしょうか?剣持さんに聞いてみました。

ニコニコ動画やYouTubeなどで発表していただいてまったく問題ありませんし、そこで金額が発生することもありません。ただし、これは便宜上ヤマハが作曲したものであり、著作権はヤマハが持つことになります。またできた楽曲を改変することも自由ですが、その場合、ユーザーのみなさんとヤマハの共同著作物ということになるのです。このことが、普段の利用において影響を及ぼすことはないと思いますが、もし出来上がった音楽を商用で使うという場合には、ヤマハ側にお問い合わせください」(剣持さん)

一方のアップロード機能のほうは、すでに自分の作った楽曲をボカロネットのクラウドへとアップするための機能です。こうすることで、自分の作った曲をVOCALOID3 Editorなどがなくてもブラウザ上で聴くこともできるし、友達にURLを送って聴いてもらうということも可能になるので、いろいろ便利に使えそうです。


ブラウザから4種類のデータがダウンロード可能になっている 

このように、VOCALOID3 EditorやVOCALOID Editor for Cubaseの新機能によって、自動作曲した曲データを読み込めるようになるのですが、それだけでは終わりません。プレミアム会員の場合、Webブラウザを使っての機能により、自動作曲した楽曲に関連して計4種類のデータをダウンロードすることが可能になっているのです。

・伴奏MIDIファイル(.mid)
・VOCALOIDファイル(.vsqx)
・ステレオオーディオトラックファイル(.flac)
・ミックスオーディオファイル(.mp3)

のそれぞれ。中でも注目すべきは伴奏MIDIファイルです。そう、VOCALOID3 Editorで直接ダウンロードした場合、伴奏は完成した形でWAVトラックに貼り付けられたわけですが、MIDIファイルとしてダウロードできれば、手元で音色を変更することも自由にできるし、「ちょっとドラムにフィルを追加しよう」、「イントロ部分を繰り返して長くする」といったことも自由自在です。また、後からテンポの変更ができるというのも大きなポイントですよね。


剣持さんに今後の流れについて尋ねる桃知さん 

この公開取材の最後に、MCの桃知みなみさんから、今後の展開について聞かれると、
まず7月に提供するのは、ここまでですが、ボカロネットは年内に第2弾、第3弾と新機能を追加していくことになります。詳細はまだお伝えできませんが、ぜひご期待ください。またユーザーのみなさんからのリクエストに応じた機能追加なども検討していますので、ぜひ要望なども寄せていただければと思っています」と剣持さんが締めくくってくれました。

会場では、かなり完成度の高いデモを見ることができましたが、まだ開発途中のものであり、細かな仕様はいろいろ変更する可能性もあるとのことでしたが、7月のボカロネットの登場が楽しみなところです。

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ボカロネット・プレスリリース