CubaseやSONAR、Logic、Reaper、StudioOne、ProTools、SingerSongWriter、FL Studio、DigitalPerformer、Live……、みなさん、それぞれいろいろなDAWを使っていると思いますが、その操作はPCのディスプレイとマウス操作で、という人が大半ですよね。でも、より効率よく操作をするなら、コントロールサーフェイスが有効であることはご存じですか?
コントロールサーフェイスとはDAWをリモートコントロールするための機器であり、フィジカルコントローラとか、フィジコンなんて言われ方をすることもあります。プレイバックやストップ、早送り…といったトランポート操作はもちろんのこと、フェーダーやパン、またEQやダイナミクス、さらにはソフトシンセのコントロールといった操作までを、物理的なボタンやフェーダー、ツマミなどを使って操作する機材のことを言うのです。
ボタンやフェーダー、ツマミといっても、これらが実際のボリューム調整機能やミキシング機能を持っているわけではないのが面白いところです。確かに見た目はミキシングコンソール風なんですが、あくまでもこれはリモートコントロールのためのもので、コントロールサーフェイス単体では何も使えないんですよね。
コントロールサーフェイスのデファクトスタンダードであるMackieのMCU Pro
そのコントロールサーフェイスのデファクトスタンダードと呼ばれているのが、MackieのMackie Controlという機材です。Mackieの現行製品としては、MCU Proという製品になっていますが、プロのレコーディングスタジオから、DTMの上級ユーザーの間でも幅広く使われているようです。ただ、価格的に15万円程度するものだし、これ1つで机を丸ごと占拠してしまうような大きさなので、なかなか手が出せないというのが実情です。
安くて小さいコントロールサーフェイス、nanoKONTROL2
もちろんもっと手ごろで小さい機材もあります。たとえばKORGのnanoKONTROL2などは、その典型です。これを使うことで、CubaseやSONARなどを自由にコントロールすることができるのです。また、RolandのA-PROシリーズのよう、キーボードにコントロールサーフェイスを搭載したものもあるので、これらも便利に使うことができますよ。
RolandのA-PRO 300にもコントロールサーフェイス機能が搭載されている
ただ、nanoKONTROL2やA-PROなどと、Mackie Controlの間には、一つ決定的な違いがあります。それは、Mackie Controlはモーターフェーダーを搭載しているという点。モーターフェーダーとは、言葉通りモーターを内蔵したフェーダーのことで、DAW側でフェーダー操作をすると、それに伴って、コントロールサーフェイスのフェーダーも動く仕様になっているのです。実際のDAWのミックス操作を考えてみると分かる通り、通常はオートメーションでフェーダーの位置を動かしていくわけですが、途中まで作った状態を調整していくというとき、DAWの状態とコントロールサーフェイスの状態がズレていると、うまくつながらないですからね……。
DAW側のフェーダーの設定がコントロールサーフェイス側に反映されるかも大きなポイント
と前置きがずいぶん長くなってしまいましたが、そのコントロールサーフェイスを利用するという面で、とにかくお勧めしたいのが、iPadの活用です。そうiPad上でコントロールサーフェイスアプリを起動して利用すれば、非常に安く、コンパクトで、しかも操作しやすい形でDAWを利用できるようになるからです。
そう、iPadは画面をタッチしてコントロールできる機材だから、フェーダーやボタンを指で直接操作できるし、複数のフェーダーを同時に動かすこともできます。また、まさにモーターフェーダーのようにDAWの動きに合わせてフェーダーが動くというのも大きなポイントなのです。
Saitara SoftwareのiPad用コントロールさフェイスアプリ、AC-7 Core HD
現在、いくつかのコントロールサーフェイスアプリがあるようですが、一番のお勧めはSaitara SoftwareのAC-7 Core HDというもの。たった500円のアプリですが、前述のMackie Control互換となっており、かなり使えるアプリなのです。MCU Proの価格から考えたら、AC-7 Core HDのためにiPadを買っても損はないと思います。もちろんiPadを使うわけだから、実際のコントロールサーフェイスと比較すると、圧倒的にコンパクトであるというのも大きな優位点です。
AC-7 Core HDを起動すると、ここにはSETUPボタンがあり、ここでDAWを選択できるようになっています。具体的な選択肢としては
ProTools Mode
Logic Mode
DigitalPerformer Mode
Cubase/Nuendo Mode
Cakewalk Sonar Mode
Cockos Reaper Mode
Aleton LiveMode
Propellerheads Reason Mode
SonyVegas Mode
Fruitylops Studio Mode
Presonus StudioOne Mode
Adobe Audiotion Mode
Mackie Tracktion Mode
Final Cut Pro 9 Mode
Generic Mode
とあり、ほとんどどんなDAWとでも連携可能になっているんです。
でも、どうやってiPadとDAWを接続するのか不思議に思う方もいるでしょう。これは、WiFi経由でMIDI接続をするのです。そもそも、DAWとコントロールサーフェイスはMIDIで接続(USBを利用してMIDI信号を通す場合もある)して利用するのが基本ですが、iPadもそれに則っているわけです。しかも、iPadならコードによる束縛もありませんから、ソファーにふんぞり返って操作するなんてことも可能なのもいいですよね。
rtpMIDIを使うことでWindowsでもWireless MIDIが利用可能になる
ただし、iPadとPCをWiFi経由でMIDI接続するためには、MacのWireless MIDI機能が必要になります。この機能はWindowsには搭載されていないのですが、rtpMIDIという非常に便利なフリーウェアがあるので、これを使うことで、Macと同じように利用することが可能になります。
Cubaseでの設定画面。Mackie Controlを選べばAC-7 Core HDが使える
MacのWireless MIDI、WindowsのrtpMIDIの使い方はとても簡単ですが、以前書いた「SONAR X1とiELECTRIBEを同期させてみた」という記事で、設定方法などを解説しているので、分からない方はそちらを参考にしていただければと思います。
SONARでの設定画面。SONARでは、VS-700を選択する
このAC-7 Core HDによって、DAWの使い勝手は飛躍的に向上すると思うので、ぜひ活用してみてください。