11月3日、4日、東京・お台場にある日本科学未来館で「Maker Faire Tokyo 2013」というイベントが開催されました。これは電子工作ファン(正確には電子に限らず工作全般かな?)のイベントで、オライリー・ジャパンというアメリカ系の出版社が主催しているものです。世界的に広がっているイベントのようで、国内でも、これまでも「Make」という名称で東京工業大学などで開催されていましたが、場所を変え、名前も改めて開催されたMaker Faireは、テクニカル系DTMユーザー(!?)にとっては、かなりワクワクするイベントとなっていました。
私が行ったのは4日の午後。夕方からUSTREAM番組のDTMステーションPlus!の準備があったため、4時間程度しか滞在できず時間切れ。結局全体の3割も回ることができませんでしたが、その中でも「これは来る!!」と思ったのが、KORGが発表したlittleBitsのSynth Kitというもの。電子ブロックみたいなシンセサイザといえばいいのでしょうか……。かなり面白い機材だったので、紹介してみましょう。
日本科学未来館で行われたMaker Faire Tokyo 2013に行ってきました
Synth Kitはアメリカの電子ガジェットメーカー、littleBitとコルグのコラボレーションによって開発された、電子オモチャ。モジュールを組み合わせることで、自分の好きなシンセサイザを組み上げることができるというユニークなものなのですが、グチャグチャと説明するよりも、以下のビデオをご覧になるのが速いと思います。
会場で、開発者であるコルグの高橋達也さんにデモをしてもらったものをiPhoneで撮影したので、ちょっと雑音がいっぱいですが、何をやっているかは分かったでしょうか?
基板のモジュールを並べていくことでシンセサイザができてしまう
基板をいろいろと接続しながら、音を出し、基板上のツマミをいじると音が変化する様子は見て取れたと思います。なぜ、この基板同士が簡単に接続できるのか? これピンクとかミドリのプラスティック部分に磁石と3つ電極があり、互いにカチッとつながるんですよね。
基板の接続には方向性があるため、正しい方向であれば磁石のSとNがピッタリとくっつくのに対し、反対方向の場合は、反発し合ってつながらないというのも、とってもわかりやすいところです。
Synth Kitは12月中旬発売の予定で、実売価格が16,000円程度になるとのことですが、箱の中には全部で11種類、12個のモジュールが入っています。具体的には
・オシレータ ×2
・ランダム(ノイズジェネレータ)
・キーボード
・マイクロシーケンサ
・エンベロープ
・フィルタ
・ディレイ
・ミキサー
・スプリッタ
・スピーカー
・電源
のそれぞれ。これらのモジュールを組み合わせることで、シンセサイザを作っていくことができるわけですね。
エンベロープモジュール。attack、 decayの2つのパラメータがある
「こんな形をしながらも、裏でデジタル信号が通っていて、シミュレーションとかをしているのでは……」なんて思いましたが、基本的には完全にアナログなんだとか。シーケンサにはマイコンが載っていてこれで制御はしているものの、出ていく信号はあくまでもアナログの電圧信号だけ。つまり、完全なアナログシンセサイザなんですよね。
シーケンサの基板の裏側を見るとマイコンチップが搭載されている
さっきのビデオのスタート部分では、オシレータ2つを直列につないでいましたが、これによってオシレータ同士での変調をかけられるようになっています。つまり、簡単なFM音源ができてしまっています。
またこのオシレータの周波数をずっと落として、フィルタやエンベロープに横から接続することでLFOとしてビブラートを作ったり、トレモロを作ることもできますよ。
使っていると、もっとオシレータをいっぱいつなぎたいとか、フィルタを複数置きたい……なんて欲求が出てきそうですが、2つ、3つとSynth Kitを入手すれば、そうした接続も可能になっていくわけですね。
パッケージの中には11種類、12個のモジュールが収められている
さらに驚いたのは、これがシンセサイザの世界に閉じない、という点です。実はSynth Kitとは別に、明るさセンサーやLED、DCモーターなどを10個のモジュールをセットにしたBase Kit、ファンやサーボモーターなど14個のモジュールをセットにしたPremium Kit、さらに大がかりな18個のDeluxe Kitというものが発売されるのですが、これらのモジュールにも接続できてしまうのです。
たとえばLEDと接続するとレベルメーターとして動くとか、スピーカーの次にモーターを接続すると音程によってモーターの回転速度が変わるとか、なんとも不思議な世界が広がります。
SynthKitの開発に携わった坂巻さん(左)と高橋さん(右)
冒頭でも触れた通り、これはアメリカのlittleBits社とコルグのコラボで開発された製品ですが、開発に携わっているのはmonotronやmonotribe、またvolcaシリーズなどを手掛けてきた黄金コンビ、企画担当の坂巻匡彦さんと開発担当の高橋達也さん。フィルタ部はMS-20後継型の回路を採用しているなど、かなりマニアックな構成になっているようですよ。
まだ、私も会場でモノを見ただけで、どんなことができるのか全体像が見えていないのですが、とにかく楽しそうということは確か。今度実物を入手したら、また改めて紹介してみたいと思っています。
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