米サンフランシスコの会社、Retronymsが開発したTabletopというiPadアプリをご存じですか?確か2011年ごろに登場した歴史あるアプリなのですが、その後もどんどん進化しており、先日リリースされた最新版ではiOS7のInter-App Audioに正式対応するなど、非常にパワフルなものになっています。
これ、現在あるiPadのDTMアプリの中では、かなりマニアックで強力なもの。1画面上に、数々のシンセサイザ、エフェクト、ミキサー、シーケンサなどを並べたシステムを構築し、曲を作っていくことができるというもの。iPadに、そんなCPUパワーがあったのだろうか……と不思議にも感じてしまいますが、触っているだけでも楽しくなります。しかも、それが基本的に無料というのですから、スゴイですよね。どんなアプリなのか、簡単に紹介してみたいと思います。
シンセやエフェクトなどを自由に接続して遊べる無料アプリ、Tabletop
Tabletopはこのアプリ内に複数の音源、エフェクト、ミキサーなどを持っていて、これらを配線して組み合わせることができるというユニークなアプリです。PCの世界でいえば、先日紹介したPropellerheadのReasonのようなアプリといえばいいでしょうか…。見た目的には、FLASHで動作するWEBアプリのAudiotoolなんかに近いですかね。
起動して新規セクションを作ると、ミキサーとマスター出力だけが組み込まれている
アプリを起動し、まっさらな状態で新規セッションを作るとミキサーとマスターアウトだけから構成される画面が出てきます。拡大すると以下のような感じですね。
タップして拡大表示されると、8chミキサーと出力ポートがハッキリと確認できる
これだけでは、何もできないので、ここにデバイスを追加します。画面右上のボタンをタップすると、いろいろな音源やエフェクトなどの一覧が表示されるので、ここから1つを選んで画面上にドラッグ&ドロップして組み込みます。たとえば、ポリフォニックキーボードであるRS3というデバイスを組み込んでみましょう。
メニューに表示されるさまざまなデバイスの中からRS3をドラッグ&ドロップで組み込んでみる
すると、自動的にRS3の出力がミキサーの1chへと配線されるのですが、ここでRS3をタップして拡大して、キーボードを弾くと音が出るのが確認できます。もちろん、音色もいろいろ入っているので選ぶことが可能ですよ。
実はTabletopで扱える音源には、すべてMIDIシーケンサがセットされており、シーケンサボタンをタップすると、ピアノロール画面が現れるようになっていて、ここでシーケンスを組んでいくことができるのです。
RS3にはさまざまな音色データが入っている。左上のシーケンサボタンをタップすると、ピアノロールが起動する
ここで打ち込んだりエディットができるだけでなく、RECボタンを使うことでリアルタイムレコーディングもできるようになっています。
ピアノロール画面でシーケンスパターンが組めるほか、RECボタンでリアルタイムレコーディングも可能
では画面を元に戻し、今度はエフェクトを組み込んでみます。ここではローパスフィルターを組み込んでみたのですが、このままだと、フィルターの出力がミキサーの2chに入るため、何もできません。そこで画面右上のケーブルのボタンをタップすると入出力端子が矢印で表示され、ここで配線を自由にし直すことができるようになっているのです。
配線を自由に変更することができる
ここでは、RS3の出力をフィルターを経由してミキサーへ組み込んでみました。この状態でプレイボタンをタップしてシーケンサを動かし、フィルター画面で設定をいじると、音がドラスティックに変換しながら演奏されるのを楽しむことができます。これってなかなか面白いと思いませんか?
Tenori-on風なデバイス、M8RX
もちろん、Tabletopで用意されているのはRS3とローパスフィルターだけに限りません。たとえばM8RXというTenori-on風なシーケンサ&シンセサイザデバイスがあったり、ドラムマシンのようなタッチパッド式サンプラーのGRIDLOK、iTunesで管理している音楽を含めさまざまなオーディオファイルをターンテーブル風に再生できるSPINBACK、トリガー型のシーケンサであるT-101、また3バンドEQ、オートパンといったエフェクト、さらにはレコーディング可能なデバイス……と、いろいろなモジュールデバイスが用意されているのです。
オーディオファイルをターンテーブル操作で再生できるSPINBACK
これらを同時に並べて使うことができるのだから、いろいろなことができるわけですが、ここに使えるデバイスを増やしていくことができるのが、Tabletopの楽しいところです。DEVICE STOREというのがあり、ここから選択することでアドオンソフトとして、シンセサイザやドラムマシン、シーケンサ、ミキサー、エフェクトと、さまざまなデバイスを増やしていくことが可能です。いま、数えてみたところ、INSTRUMENTSが2つ、PATERN MACHINESが2つ、MIXERSが2つ、EFFECTSが11、MASTERING EFFECTSが3つなどとなっています。
価格的にはほとんどが250円で、安いものだと85円、高いものだと850円という値段設定ですね。これらを16デバイスをパックにしたESSENTALS DEVICE BUNDLEというものも用意されており、これは2,200円と安くなっているようです。
しかし、このオプションを買わなくても拡張する方法が用意されているのが、Tabletopのすごいところです。実際、私もまだオプションのほうは買ってないんですが、それでも十分なほどに遊べます。具体的には大きく2通り、
Tabletop Ready App!であるiMiniもTabletop内に組み込むことができる
1つ目は「Tabletop Ready App!」というiPadアプリを利用するというもの。具体的には著名アプリであるAKAIのiMPC、またArturiaのiMiniがそれに相当し、これらのアプリをインストールしておくと、自動的にTabletop上に組み込まれて使えるようになるのです。
たとえばiMimiはご存じのとおり、Minimoogを再現したアプリですが、これ自体にはシーケンス機能は搭載されていません。しかし、Tabletop上に組み込むと、ちゃんとシーケンサも動いてくれるし、前述のとおり、間にエフェクトをかませたりすることができるわけですから、単体で使うよりも、ずっと付加価値が高まるというわけです。
もう一つが冒頭で触れたInter-App Audio対応。これはiOS7がインストールされているiPadであることが前提になりますが、以前記事にしたとおり、ほかのオーディオアプリを組み込むことができるというもので、ここではInter-App AudioのシンセサイザであるiSEMやNLOG Synth Pro、YAMAHAのSYNTH APP & DRUM PADやMAGELLAN……といったシンセをTabletop上で使うことができるのです。
MASTERMINDの中に各種Inter-App Audio対応のシンセサイザを組み込むことができる
ただし、先ほどのTabletop Ready Appのように、そのまま直接組み込めるのではなく、MASTERMINDというInter-App Audio専用のモジュールを通じてアクセスするのですが、面白いですよね。
実際いろいろ使ってみたところ、まだiOS7に不安定要素が多いのか、Inter-App Audioのシステムに問題があるのかハッキリしませんが、途中で落ちたりすることがときどきありました。そうした問題はありますが、まあ無料のアプリですから、試してみる価値は大きいと思います。ぜひ、このマニアックなシステムを楽しんでみてはいかがでしょうか?