DTMをはじめよう!

このDTMステーション、スタートして3年半近くになりましたが、考えてみれば、「これから初めてDTMをスタートする」という人のための記事があまりありませんでした。また、今も多くの人から「DTMって何?」と聞かれるし、「ピコピコ音楽のことでしょ」なんて誤解している人も多いようです。

そこで、今回は改めてDTMとは何なのかを、できるだけ簡単に紹介するとともに、DTMをはじめるには、何からスタートすればいいのかを考えていこうと思います。

これからDTMを始めたいという人は、何をすればいいのかを紹介していきます


DTMとは、デスクトップ・ミュージックのことで、80年代後半にDTP(デスクトップ・パブリッシング)を文字る形で登場してきた和製英語(?)であり、おそらく現時点では国内でのみ使われている言葉です。一言で説明すれば、「コンピュータを使って音楽制作すること」ですね。

80年代後半に初のDTMシステムとして登場したRolandのミュージくん。
その後、技術の進歩とともにDTMの世界は大きく変わっていった…

ただ、DTMという用語が誕生して20年以上が経過し、その言葉の意味やニュアンスもだいぶ変わってきたようです。当初は、いわゆる「打ち込み」をするためのシステムを指していましたが、現在はボーカルやアコースティックギターなども含め、PCでレコーディングしたり、編集したりすることすべてをDTMと捉えていますし、iPadのようなタブレットマシン上の楽器アプリで演奏することもDTMといわれています。

現在のDTMではボーカルやギターなどのオーディオも普通に録音していくことができる 。画面はCakewalkのSONAR X2

またアマチュアミュージシャンとプロミュージシャンという分類をした際、従来、DTMはあくまでもアマチュアのためのオモチャとして捉えられていた面が大きかったように思います(必ずしもそうであったわけではありませんが…)。一方のプロミュージシャンもコンピュータのシステムは使うけれど、庶民が使うシステムとはグレードが違うんだよ、といった雰囲気も以前にはあったように感じます。

以前は一般の人にはなかなか手がだせないような機材がソフトウェアでエミュレーションされ
PC上で非常に安価で使うことができるようになった。画面はArutiraのPropeht V 

確かに10年、15年前であれば、機材のレベルに違いはあったし、パソコンの処理能力も現在と比較すると劣っていたため、機材の性能が音楽制作の幅を大きく左右していたのは事実です。でも、技術の発展とともに、アマチュア用システムとプロ用システムの差は急速に縮まり、現在はその線引きもできなくなってしまいました。

また長年のレコード業界の不況により、プロの音楽制作の予算が急速に縮小され、プロミュージシャン自身が自宅のDTMシステムでレコーディングしているケースが増えてきています。そのため機材の面ではアマチュアとプロという区切り方はほとんど無くなったといっていいようです。

とはいえ、「DTM」という名前のシステムが販売されているわけではありません。DTMとは、あくまでもコンピュータで音楽制作したり、音楽を演奏するというスタイルに過ぎないので、使い方もいろいろだし、利用するソフトやハードなどもさまざまです。だからこそ、これからDTMをはじめたい、という初心者にとってわかりにくく、ハードルが高いものとして見えてしまうのだと思います。

また最近では特にVOCALOIDに触発されて、DTMに興味を持つ人も増えているようです。ここではVOCALOIDが何なのかの説明は省きますが、これもDTMの中心的な存在であり、VOCALOIDを中枢においてのDTMシステムの構築というのも、当然アリですよね。

では、はじめてDTMをスタートするにあたり、何から始めたらいいのでしょうか?まずは、自分の目的の整理からだと思います。もちろん初めてだからこそ、「何を目的にすればいいのかすら分からない」という人もいるとは思いますが…。

そこで、かなり強引ではありますが、以下の3つの選択肢から選ぶとしたら、どれになりますか?

・とりあえずiPadでDTMを初体験してみる
・楽器は弾けないけど、コンピュータで音楽を作りたい
・ボーカルや自分の演奏する楽器を録音してみたい

もちろん、全部試したい人、とにかくお金は一銭も出せないという人、お金はかけてもいいからできるだけ分かりやすいものがいいという人……といろいろいるとは思いますが、無理やり3つから選ぶとしたら、どうでしょう?

それぞれについての詳細は別途、ひとつずつ記事にしていこうと思いますが、ここでは簡単に結論を紹介していきましょう。

まずはiPadのDTMアプリに触れてみるのがお勧め。画面はGarageBandのドラム 

本当に初めてであるなら、個人的には、iPadで体験してみるというのが、一番のお勧め。というのもWindowsやMacなどでDTMをするのと比較して、できることが基本的に単機能でわかりやすいからです。iPadのGarageBandのように、多機能なものもありますが、楽器として演奏するだけのアプリ、録音を行うだけのアプリ、エフェクトとして使うだけのアプリなど、シンプルなものが多いから、DTMでどんなことができるのかを理解する上で、役立つのです。

ただ理解していく過程で、iPadでは物足りないと感じていくようにはなると思います。そうなってきたところでPCへと乗り換えたり、iPadとPCを併用することで、さらに世界が広がるはずです。

次に「楽器は弾けないけど、コンピュータで音楽を作りたい」という人にお勧めしたいのは、ループシーケンサ付きのDAWです。ループシーケンサとは何か、DAWとは何かについては、改めて解説する予定ですが、具体的な商品名を挙げていくと、Windows用としてはMusic Maker、Singer Song Writer LiteACID MUSIC STUDIOMixcraftなど、Mac用としてはGarageBandが代表ですね。

ループシーケンサとして長い実績を持つACID MUSIC STUDIO

これらのソフトを使うと、ループ素材というものもセットで入っているので、ブロックでも並べる感覚で気に入った素材を並べていくだけで音楽を構築していくことが可能です。またソフトウェア音源を搭載しているので、楽器を持っていなくても好きなメロディーを入力していくこともできます。

VOCALOIDと組み合わせて曲を作っていくことも可能ですが、やはり組み合わせとなると多少複雑になってくるので第2ステップとして捉えておいたほうがいいかもしれませんね。

そして3つ目の「ボーカルや自分の演奏する楽器を録音してみたい」を実現するには、DAW(ディー・エー・ダブリュウと呼んだり、ダウと呼んだりしています)といわれる音楽制作ソフトと、オーディオインターフェイスという機材の2つが必須となります。

DAWについては前述のループシーケンサ付も含め、いろいろなものがあります。価格的にも1万円弱のものから10万円程度のものまであるので、とりあえず最初に体験してみるという意味ではオーディオインターフェイス付属のもので試してみるのがいいと思います。DTMがある程度分かってきたところで、じっくりDAWを検討すればいいわけですから……。

TASCAMのオーディオインターフェイス、US-366 

つまり、オーディオインターフェイスを1つ購入すればいいわけですね。これも価格は1万円程度から数十万円するものまでいろいろありますが、最初なら3万円以下のものから選べばいいのではないでしょうか…。メーカー的にはRoland、Steinberg(YAMAHA)、TASCAM、PreSonus、Focusrite、Avid Technology……といったメーカーが手ごろな製品を出しているので、このあたりから選んでみるといいと思います。

Rolandのオーディオインターフェイス、QUAD-CAPTURE 

ちなみにRolandのオーディオインターフェイスに付属しているのはSONAR、SteinbergおよびTASCAMに付属しているのはCubase、またProSonusはStudioOne、FocusriteはLive、AvidならProToolsといった具合い。いずれもLE版、LITE版といったものですが、初心者用としてはかなり十分な機能を持っていますよ。だから、まずDAWを決めて、それがバンドルされているオーディオインターフェイスを選ぶというのも手かもしれません。この辺についても、近いうちに紹介していきたいと思います。

Steinberg製品にバンドルされているDAW、Cubase AI 6

以上、DTMの始め方について、紹介してみましたが、いかがでしょうか?今後もDTMステーションでは初心者のための情報を発信していきたいと思います。何かリクエストなどありましたら、以下の掲示板に書きこんだり、Twitter、Facebookなどを通じてご連絡いただければと思います。

 

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Commentsこの記事についたコメント

21件のコメント
  • ラジラー

    まったくの初心者です、、マックにすべきかウインドウズにすべきか、ひじょうに迷います、マックはウインドウズのソフトも使えると聞いたことがあるのですが、こればかりは難しい選択のようですね。。

    2013年7月23日 6:08 PM
  • 藤本健

    ラジラーさん
    コメントありがとうございます。そうですね、難しい問題というか、永遠の課題ですかね(笑)。私はどちらでもいいと思っています。マックが好きか、ウィンドウズが好きかで決めればいいのではないでしょうか?
    それぞれに一長一短というか、十長十短ありますからね。
    でも、「DTMやるならMacとWindows、どっちがいいの?」というようなタイトルで記事を作らなくちゃ、と思っていたところでした。結果的に結論はない記事になりそうですが…(^^;

    2013年7月23日 6:52 PM
  • ますを

    こんにちは
    WindowsかMacかも悩みますが、最近は第三極iOSという選択もあると思うのです。
    私もiPad導入したいんですが、周辺機器やソフト選びはある程度知識を流用できますが
    関心の本体がどれを選べかいいかわかりません
    あと最近端子が変わったり、古い製品はOS更新で互換を切られたりとかもあり新規に手を出すには敷居が高いように感じるので、
    是非ガイドをお願いしたいです

    2013年7月25日 11:47 PM
  • 藤本健

    ますをさん
    ありがとうございます。そうですね、iPad本体をどう選ぶかという観点は完全に抜けていました。
    が確かにiPadの導入の話をする場合には必須ですね。どこかのタイミングで書いてみたいと思います。

    2013年7月26日 7:46 AM
  • Nao-Ki

    音楽自体初心者でDTMを始めました。
    Mboxを購入しそれにProtoolsが付属されているのですがどうしても使いにくく感じます。
    何かお勧めなDTM・DAWソフトはありますか?
    そして楽曲製作にあたってこれはあれば便利!というものや製作にあたって為になる書籍などあれば教えてほしいです。

    2014年1月4日 1:39 AM
  • 藤本健

    Nao-Kiさん
    こんにちは。ProTools、決して悪いソフトではないですよ。もし使い方が分かりにくいというのであれば、BNN新社から「MASTER OF Pro Tools 11」という本を出しているので、ご覧になってみてはいかがでしょうか?もちろん、DAWは好みという問題もあるので、CubaseやSONAR、SSW、Live、ACIDなど、いろいろと違いはありますが、どれがいいかは、個人個人の問題か、と。
    このDTMステーションでもいろいろな記事を取り扱っているので、いろいろとご覧になってみてください。
    音楽制作の基本ということであれば、「コンプリートDTM制作ナビ・ブック」なんて本はいかがでしょうか?汎用的にDAWでの音楽制作の手法について解説しています。

    2014年1月4日 9:59 AM
  • 通りすがりのDTM初心者

    はじめまして!
    ニコニコの「DTMステーションPlus!」から流れ着きましたw
    WindowsのデスクトップPCを持っているので、楽器店に行き、店員さんに勧められるまま、Roland QUAD-CAPTUREと、SONAR X2 Studioバンドル版を購入したのですが、MIDIコントローラの購入で悩んでいます。
    ニコニコのチャンネル放送では、NANOKEYを使用されていましたが、Amazon等のレビューを見ると、50鍵程度のキーボードが評判が良い様に書かれています。
    あまり場所を取るのも、デスクスペース上キツイので、32鍵程度を考えていますが、正直、どれを選べば良いのか分りかねています。
    何か、アドバイス等あれば教えて下さい!お願いします!<(_ _)>

    2014年5月9日 1:26 AM
  • 藤本健

    通りすがりのDTM初心者さん
    いま、その手の問い合わせをいっぱいいただいているので、今月中には、USB-MIDIキーボードの
    選び方のような記事をやってみたいと思っています。もうしばらくお待ちください。
    ぜひ、今後とも、このWeb版DTMステーション、ニコニコ版DTMステーションPlus!ともども
    よろしくお願いします!

    2014年5月9日 7:02 AM
  • 通りすがりのDTM初心者

    ありがとうございます!
    第2回放送でやった即興作曲コーナー(?)は、色々と参考になる事が多くて、とても勉強になりました!
    最近、「奥の女」のデータをダウンロードして、色々、いじったりしているところです^^;
    これからも、初心者も楽しめるような番組作りをお願い致します。<(_ _)>

    2014年5月19日 10:15 PM
  • ICHIRO

    初めまして。よろしくお願いします。
    1ヶ月位前 Music Maker MX2を購入しました。付属のテキストに先生のお名前がありましたのでこの場をお借りして質問させていただきます。私は複音ハーモニカの練習するため演奏サンプルを作りたく Music Maker MX2を購入しました。沢山ある音源の中に 複音ハーモニカの音源はないとのこと(販売元確認)Levolta2を使う方法をアドバイスいただきましたが演奏サンプルとしては思わしくありません。現在ピアノ音源でアンサンブル曲ができあがっています。 Music Maker MX2に対応出来る複音ハーモニカのソフト音源のメーカーと機種が分かりましたら教えて下さい。よろしくお願いいたします。

    2014年7月13日 4:23 PM
  • 藤本健

    ICHIROさん
    こんにちはトレモロハーモニカ専用の音源ってなさそうですね…。
    私も使ったことはありませんが、検索してみるとフリーのハーモニカ音源は
    いくつかあるようです。
    http://samcycle.blogspot.jp/search/label/Harmonica
    こんなものを使ったうえで、実際にトレモロハーモニカの構造を考えたうえで
    自分で打ち込んでいくという方法しかないかもしれません。

    2014年7月13日 4:57 PM
  • ICHIRO

    お返事ありがとう御座いました。複音ハーモニカの音色 もう過去のものになってしまったのでしょうね。 キー Cと#Cで 21音(穴)*2で42音 どこかのソフトの片隅にないかなと思って探しましたが見つかりませんでした。アドバイスいただいたフリーの音源ちょっと開いてみましたがMusic Maker MX2のように理解できそうにないです。Levolta2を使って42音を実音と比べながら 根気よく作っていくしかなさそうですね。昔ヤマハでXG音源ソフト出していたのに廃版とか。また何か思いついたらアドバイスおねがいします。ありがとう御座いました。

    2014年7月15日 4:40 PM
  • ちーあき

    はじめまして、ちーあきと申します。
    作曲をしたいと思って、調べていたら、ここに辿りつきました。
    DTM初心者なので、まずはDTMがどんなものか体験してみたいのですが、良いサイトはありますか?
    また、購入するのだとしたら、cubase8が良いのでしょうか?
    ちなみに、Win8のノートPCを使用しています。

    2014年12月18日 4:38 PM
  • ちーあきさん

    こんにちは。ぜひ、このDTMステーションのサイトをご覧になってください。
    画面右側のカテゴリ別アーカイブというところに「初心者向けDTM入門」
    というところがあるので、そこにある記事などをいろいろご覧いただければ、と。

    2014年12月18日 6:57 PM
  • Min

    初めまして、よろしくお願いします。
    DTMのPCについて質問があります。
    DTMをするPCにmicrosoftとかkingsoftとかが入っていても、快適に行うことができますか?
    スペックはCPU:4GB,OS:windows7,保存容量:1TBです。

    2014年12月28日 7:12 PM
  • 藤本健

    Minさん
    こんにちは。基本的に、いろいろなソフトが入っているマシンでも問題ありませんよ。

    2014年12月28日 10:19 PM
  • namine

    こんにちは。初心者用DTM編たいへん参考になりました。
    全くの初心者です。FA08とcubase8の組み合わせで購入しました。
    説明本だけでは、なかなか打ち込みまでたどり着けません。
    参考になるサイトがあったら教えてください。
    よろしくお願いします。

    2015年1月11日 9:49 PM
  • 藤本健

    namineさん
    こんにちは。このDTMステーション内には、いろいろな情報を載せているので
    きっと参考になると思います。まずは右側の下のほうにある「カテゴリー別アーカイブ」の
    「初心者向けDTM入門」をクリックしてみてください。関連する記事が多数出てくるので
    その辺をご覧になってみてはいかがでしょうか?

    2015年1月12日 12:41 AM
  • LAWSONZ

    DAWには、MIDI鍵盤とオーディオインターフェースは必要ですか?
    それと、PROJECT 5 VERSION2 に似たテクノが作れるDAWは、どのDAWになるのでしょうか?

    2015年2月28日 9:50 PM
  • 藤本健

    LAWSONZさん
    MIDI鍵盤、オーディオインターフェイス、絶対にないと何もできないわけではありませんが、やはり基本的には必要だと思います。まずはじめてみて、やっぱり必要だと感じたところで購入しても順番的に問題ないと思います。
    CakewalkはProject5をやめてしまったので、それ自体はありませんが、ソフトシンセ+シーケンサという組み合わせであれば、いくらでもあります。たとえばReasonあたりが、近いコンセプトの製品だと思いますよ。

    2015年3月2日 8:21 AM
  • LAWSONZ

    回答して頂き、ありがとうございます。
    そうですね、MIDI鍵盤とオーディオインターフェースは、必要になった時に、購入しようと思います。
    Project5から、Reasonに移行して、使い方が解らなくてどうしようかと、思っていたのですが、近いコンセプトの製品だと、お聞きしホッとしました。頑張ります。

    2015年3月2日 11:05 PM

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