先日「超高音質電話、ひかりDUETTOが生み出すオンライン音楽制作の世界」という記事で紹介した、NTTのひかりDUETTO NY1。これの基本機能は、この機器同士でフレッツ光ネクストを利用した電話接続をすると、1対1という関係において高音質( 16bit/44.1kHzのモノラル )でレイテンシーの非常に小さいオーディオ通信が行えるというものです。そのことによって、遠くにいながらにして、セッションができてしまう従来ではありえなかった画期的なシステムなのです。
その基本的な使い方を「ひかり電話モード」と呼ぶのですが、ひかりDUETTOには、そのほかにも「フレッツ・v6オプションモード」という、これまた強力なモードが用意されています。こちらは最大4カ所を接続し、しかも電話代がかからず使えてしまうという嬉しいモード。実際に使えるものなのかテストするため、私のいる横浜と、東京の神田と杉並、それに浜松の4カ所を繋いでのセッションを行ってみました。
東京の杉並、神田、横浜、浜松の4カ所をネット接続してセッションしてみた
昨年末に発売された「ひかりDUETTO NY1」は、いろいろなところで導入が進んでいるようです。離れたスタジオ同士で接続して練習ができるようにとリハスタに導入されるケースや、バンドのメンバー同士が家にいながらにしていっしょに練習できるようにと導入するケース、またピアノの先生と生徒が導入してレッスンを行うケースなど、いろいろ。でも多くのケースでは前述の「ひかり電話モード」を使っているようです。
NTTのひかりDUETTO NY1。この1chにドラム、2chにコンデンサマイクを入力。
出力はリニアPCMレコーダーに接続して録音してみた
ただバンドでセッションを行うとなると、やはり1対1の接続だと利用シーンに制限が出てしまいますよね。バンドメンバーのうち1人だけが遠くにいてスタジオに来られない……といった場合には1対1接続でいいのですが、メンバーがバラバラだとそうもいきません。そんなときに、4カ所の同時接続が可能な「フレッツ・v6オプションモード」が威力を発揮するのです。
フレッツ・v6オプションモードの接続イメージ(NTT西日本のサービス説明の図より)
では、どうしたら、この「フレッツ・v6オプションモード」を使うことができるのでしょうか?ちょっと難しそうな名前ですが、使い方は拍子抜けするほど簡単です。まずはメンバー各自がNTTに「フレッツ・v6オプション」というものを申請しておきます。すでにフレッツ光ネクストの契約時に、申し込んでいる可能性がありますが、ハッキリしない場合は、電話( 0120-116116 )で確認してみるといいと思います。
ちなみに「フレッツ・v6オプション」の利用料は無料で、フレッツ光ネクストの申し込み時に一緒に申し込めば工事費も無料。後から申し込む場合は、基本工事費1,050円(税込)、交換機等工事費1,050円(税込)がかかるようです。しかも、フレッツ・v6オプションモードで接続した場合、通話料がかからないというのも、非常に大きなポイントとなっています。
接続は、単純に「*1234#9876」とボタンを押し、最後に通話ボタンを押せば完了
そのフレッツ・v6オプションの申し込みさえ終わっていれば、後は簡単。予めメンバー全員で使う4桁の番号を2種類決めておきます。1つ目が部屋番号、2つ目が暗証番号です。たとえば、部屋番号が「1234」、暗証番号が「9876」だったとしましょう。その場合、4人のメンバー、それぞれが「*1234#9876」とプッシュし、通話ボタンを押せばいいだけです。
これを入力すると、その部屋=スタジオに入れるわけです。つまり同時に入力する必要はなく、1人目が先にスタジオに入っていて、暫くしてから2人目、さらに5分経過してから3人目、4人目と入ることができ、最大4人まで入ることが可能なのです。
ただし、ここには「フレッツ・v6オプション」というNTTのネットワークの仕組み上の制限があります。それはNTT東日本のユーザー同士、またはNTT西日本のユーザー同士でないと接続できないという制限です。技術的な理由は私にもよく分かりませんが、とにかくそういうことのようなのです。
今回、東京の神田と杉並、それに横浜の3カ所はすべてNTT東日本なので、簡単に接続できるはず。というわけで、さっそく接続してみると……、本当に簡単に繋がってしまいました。それぞれヘッドホンをつけ、マイクで会話ができるようにしておいたのですが、非常にリアルな音での会話ができます。
ちなみにメンバーは私がドラム、神田にベース、杉並にキーボードという構成。3人でセッションしてみたところ、ちょっと驚くほどの明瞭さであり、レイテンシーをまったく感じません。この遅れのなさは凄すぎるのでは……と、3人とも、大はしゃぎ。
東京・横浜間は、なんとレイテンシー16msecで接続することができた
改めてマニュアルを見てみると、ちゃんとレイテンシーを表示する方法があったんですね。これを使ってみると、神田・横浜間、杉並・横浜間はいずれも16msecと表示されています。以前、NETDUETTOβを使った際には、一番短くて30msec弱でしたら、それを遥かに上回る好成績です。
さらに東京にいる二人に聞いてみたところ、都内の神田・杉並間のレイテンシーは15msecとのこと。普通の空間であれば音は1msecで0.34m進むのですから、15msecなら5.1mの距離で演奏しているのと同等ということですね。やや大きめのリハスタで演奏していると思えばいい感じですよ。
私のところは、いつも使っているエレドラ、RolandのV-Drumsに接続。
ここでさらなるチャレンジをしてみました。そう冒頭でも書いた通り、浜松のメンバーも加えるという実験です。前述のとおり、「フレッツ・v6オプション」を使っての通信は、NTT東日本とNTT西日本との間の相互接続はできません。でも、裏技があるということだったので、それを試してみたのです。
その裏技とはインターネットプロバイダを活用したもので、全員が「IPv6 IPoE」というサービスを利用するという方法。「IPv6 IPoE」はインターネットマルチフィードという会社のtransixというサービスで提供されているそうなのですが、これを一般ユーザーが利用するためには、そのサービスを提供しているプロバイダと契約をする必要があります。今後、このサービスを提供するプロバイダは増えていくとのことですが、現在、提供しているプロバイダは、IIJmioのみ。というわけで、4人とも事前にIIJmioに加入した上で試してみました。
といってもIIJmioに加入するということ以外、操作的にはまったく変わりません。浜松からも先ほどと同じにように「#1234*9876」と押すだけで、我々3人が入っているスタジオに入ってきました。音も超高音質。そう、全員がリアルタイムで16bit/44.1kHzの非圧縮で繋がっているのですから、まさに4人でスタジオに入っている気分ですよ。
横浜・浜松間のレイテンシーは28msec。
東京との接続と比較すると時間差があるけれど、この程度のレイテンーなら十分セッション可能
では、浜松と横浜、また浜松と東京のレイテンシーがどのくらいあるのでしょうか?すぐにみんなでチェックしてみました。すると、こちらは28msecと出ています。やっぱり、ちょっと遅れが出るんですね。とはいえ、28msecなら十分セッション可能。というわけで、ギターとして入ってもらい、セッションしてみました。あ、みんなですぐに弾ける曲というので、HTTの「U&I」でしたけどね( 笑 )。
ここまでクリアに音が聴こえると、相手の演奏の指使いまで見えてきそうなほど。演奏していてミスタッチとかがあると、露骨に分かってしまいますよ!ただ、実際にセッションしていると、やはり16msecでの接続と28msecでの接続では、微妙に気持ちよさに違いがあるようにも思えました。それが音色や演奏スキルのせいであるという可能性も否定できないのですが、この辺はまた検証してみたいなと思っているところです。
なお、今回は実験ということもあり、バックアップ回線として、4人をGoogleのハングアウトでも接続し、そちらは音声を切ってビデオ会議状態にしておきました。杉並からキーボードで入ってくれたのは、ニコ生の演奏してみたなどでもお馴染みのhigh_note(@high_noteP)さん。そのhigh_noteさん、演奏終了数分後には、ひかりDUETTOによる音と映像を合わせたビデオを作成してくれました。記事冒頭の写真がそれですね。
ひかりDUETTOとは、直接関係ないけれど映像が映せるサブ回線としてGoogleハングアウトを利用してみた
恥ずかしいので、このビデオを公開するのは控えておきますが、こんなビデオがすぐにできてしまうのは驚きです。またhigh_noteさんによれば、これをそのままニコ生やUSTREAMなどで生放送していくことも簡単にできる、とのこと。ニコ生セッション♪のハイエンド版といった感じでしょうか……、いろいろな可能性が広がりそうですよね。
【関連情報】
ひかりDUETTO(NTT東日本)
ひかりDUETTO(NTT西日本)
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