Rob Papen(ロブ・パペン)っていうオランダのプラグインのメーカーをご存じですか?以前から時々、話題に登場する名前だったので、なんとなくは知っていたものの、私自身は使ったことがありませんでした。が、ここ、かなりすごいメーカーだったんですね。こういうと語弊があるかもしれませんが、Native Instrumentsと並ぶヨーロッパの2大プラグインメーカーといってもいいのではないか…と。
BLUE、PREDATOR、SubBoomBass、BLADE……といった強力で独特なサウンドを作り出すソフトシンセを次々とリリースするとともに、NIでいうところのKOMPLETEに相当するeXplorer IIという全部入りパッケージを出していたりもします。またこの中には、リバーブ、ディストーション、ディレイといったエフェクトも含まれているというものになっています。
このRob Papenというのは会社の名前であると同時に、開発者でもある社長の名前。そのPapenさん、もともとは80年代にオランダやオーストリアのヒットチャートでNo.1をとった電子音楽グループの大御所、PERU(NOVA名義でも活動)のメンバーだったそうです。
80年代後半からはプリセット職人として名を馳せ、Ensonique ASR-10、EMU Orbit-3といったシンセにも彼の音色が入っています。そして、ついには自分の名前を冠したソフトシンセメーカーを立ち上げてしまったというわけなんですね。
調べてみると、Junkie XLやArmin Van Buuren、Sander Van Doornといった海外アーティストが積極的にRob Papenのソフトシンセを使っているほか、日本でもm-floのTaku Takahashiさんなどが使っているわけですが、ボカロ界隈でいえば、とくPこと、阿部尚徳さんも、かなりマニアックなRob Papenユーザーだったんですね。
たとえば、とくさんの、あのSPiCaもほとんどのトラックがRob PapenのBLUEというソフトシンセで作られているのだとか……。
そういわれると、BLUEってどんな音源なのか気になるところ。国内代理店であるディリゲントのWebページを見てみると、「FMシンセ、フェーズ・ディストーション・シンセ、波形整形シンセ、減算シンセが搭載」とあります。また英語版ではありますが、2分程度の紹介ビデオがあったので、これを見てみると結構カッコイイ音が出ています。実売価格で21,800円程度となっていますが、問い合わせてみたところ、ちょうどBLUEのベーシック版であるBLUE LEという日本限定の5,980円というものを出したばかり、とのこと。
担当者いわく「LEという名前ではあるけれど、システム的にはBLUEとまったく同じで、プリセットの数を減らし、一部の機能の設定が変更できないようにしたものです。とはいえ、プリセットは1,000以上あるし、動かせるパラメータを減らした分、初心者ユーザーにはかえって使いやすいと思いますよ」。面白そうなので、BLUE LEの先行発売分を入手し、実際にCubase7にインストールしてちょっと使ってみました。
Cubase7にBLUE LEをインストールして使ってみた
ちなみにBLUE LEに限らず、Rob Papenの製品はWindows/MacのハイブリッドでWindowsはVST(32bit/64bit両対応)、MacはRTASプラグイン(32bit)、AU/VSTプラグイン(32bit/64bit両対応)。さらに、ProTools10からサポートされた新プラグイン規格、AAX(Mac版)にも近日対応予定と、かなり幅広いフォーマットをサポートしているようですね。
日本限定というBLUE LEのパッケージ。Mac/Windowsさまざまなプラットフォームに対応
起動してみると、まず目に飛び込んでいるのが6つ並んだオシレータ。最大6つまでのオシレータを駆使した音作りができるんですね。しかも、このオシレータにはアナログ音源の波形、加算方式の波形、スペクトル方式の波形など、いろいろな波形を選択できるようになっています。
画面上部に6つのオシレータが並び、下のLCDゾーンでエンベロープなどの設定を行う
またフィルターを自由に設定できたり、画面下のLCDゾーンでエンベロープの設定をしたり、エフェクト系の設定を行ったり……。オーディオシグナルフローとしては、以下のようになっています。
オシレータから出力までのシグナルフロー
とはいえ、初めて使うユーザーにとって、いきなりゼロからの音作りは難しいところ。しかし、前述のとおり1,000以上のプリセットが入っているので、まずはこれを適当に選択していくだけでもかなり楽しめますよ。感覚的にはCakewalkのz3ta+にもコンセプトが近い音源という印象です。
ただ、マニアックに使うという面では「z3ta+と比較すると、ルーティング設定ができなかったり、モジュレーションのマトリックス設定ができないなど、制限があるな…」と思っていたら、これはやはりLE版だったからですね。BLUEのほうは、まさにそうした設定ができるようでたとえばアルゴリズム設定によって、オシレータ同士を掛け合わせてFM音源としたり、足して使うリングモジュレーターとするなどもいろいろできるようです。今度、ぜひBLUEのほうも触ってみたいなと思っているところです。
全部入りパッケージ「eXplorer II」は、BLUE LEを買ってからアップグレードしたほうが安い!
なお、全部入りパッケージのeXplorer IIは実売55,800円程度となっていますが、BLUE LEからeXplorer IIへアップグレードする特別アップグレード版というものが45,000円で販売されているのを発見。単純計算すると、BLUE LEを買ってからアップグレードするほうが、直接eXplorer IIを買うより安いようですよ!
なお、その上位版であるBLUEやBLADE、PREDATORなど各音源のデモ版も用意されています。30日間使用できるというものですが、アンインストールもキレイにできるので、一度試してみると面白いと思いますよ。
【関連情報】
Rob Papen製品一覧
製品紹介「本当にBLUE LEは使いやすいのか?」
Rob Papen製品デモ版ダウンロード
プロが使うRob Papen ~とく(阿部尚徳)