松武秀樹さんプロデュースのiOSシンセ、その名もTANSU Synth

以前から登場が噂されていた、松武秀樹さんプロデュースのiPhone/iPad用のシンセサイザ、「TANSU Synth」(タンスシンセ)が先日のシンセフェスタ2012直前の10月5日にiTunes Storeで発売になりました。そしてシンセフェスタが事実上のお披露目となったのです。

この名前からピンと来る方も多いと思いますが、これは通称タンス(箪笥)と呼ばれる大きなモジュラー式アナログシンセサイザMoog Modular(モーグ・モジュラー)をモチーフにした450円のアプリ。パッチで接続して音を出すというモジュラーシンセのエッセンスを味わえつつ、シンセ初心者でも比較的分かりやすく使えるようにシンプルに構成されたユニークな音源です。
松武秀樹さんプロデュースのTANSU Synth



シンセフェスタ会場から公式ニコニコ生放送として放送された「松武秀樹と相沢舞の『テクノスクール』校外授業編 新宿電子楽器祭」でも、「TANSU Synth」が紹介されていたので、ご覧になった方もいたかもしれません。

私も、この会場で生で見ていたのですが、各メーカーが自社製品の宣伝を3分で行う「プレゼンでポン」の時間に、TANSU Synthも登場。ここでは実際にソフトウェアの開発を行ったMasao Suzakiさん(右手、赤いTシャツ)、デザインを担当したJunjiroさん(左手の白いシャツ)が、その内容について一生懸命説明を行っていました。

TANSU SynthをプレゼンするSuzakiさん(右)とJunjiroさん(左)。奥で見守っている松武さんと画面を真剣に見ている相沢さん
Suzakiさんの肩に隠れているのは氏家克典さん(ゴメンナサイ!)

写真右奥のほうにいる、松武さんが心配そうに見守っているのが印象的ですよね。その左にいるのは、シンセの勉強中という声優の相沢舞さん、モニター画面に映し出されているTANSU Synthを真剣に覗き込んでいます。

TANSU Synthはとっても縦長なアプリになっている 

では、そのTANSU Synthについて概要から紹介していきましょう。これはiPhoneアプリとなっていて、iPadでネイティブ対応したユニバーサルアプリではありません。ただ、実際に使ってみると、ノブが結構小さいので、iPadで2倍画面表示させたほうが、使いやすい感じではありました。またスクロールして表示させますが、箪笥のよろしく縦長なアプリとなっています。そういえば、しっかりiPhone5対応していて、画面がフルに表示されていますね。

シンセ中枢は左からLFO、VCO、VCF、VCA、EGという構成になっている

で、シンセとしての構成ですが、VCO×1、VCF×1、VCA×1、LFO×1、EG×1というもの。VCOは三角波ノコギリ波矩形波、そして2種類のノイズが利用できるようになっています。そしてこれらの音は、松武さん所有の箪笥=Moog Modularからサンプリングした音とのことです。その実物は先ほどの写真の松武さんと相沢さんの間にある機械ですね。

またVCOとは別に3つの音源が利用できるのもユニークなところ。ひとつはマイクから録音した音、2つ目はiPhoneのMusicライブラリとして入っている曲、そして3つ目はLOGIC BOXです。

iPhoneに入っている楽曲を音源として利用することも可能
この曲は、テクスクでも披露された相沢さんのデジタルシングル

このLOGIC BOXというのは、画面最上部にある3つのボタンで切り替えられるもので、リズムマシンによる4小節のリズムサウンド、YMOの「LOOM」でも使われているような無限上昇サウンド、そして風が吹くような音の3種類。これを切り替えて音源として活用できるのです。TANSU Synthの発売元、ミュージックエアポート(松武さんの会社ですね)によると、LOGIC BOX用のリズムサウンドは今後、続々と追加されるようですよ。

※追記
ちょうど、この記事を掲載した10月16日、Update版である1.02がリリースされ、4つ目のサウンドとしてサンプル&ホールドというかランダム音のようなものが追加されています。


8ステップのアナログシーケンサ2つを搭載
一番下のの大きなノブで手動でシーケンサの値を変えられる

そして、もうひとつ重要な要素が画面一番下にある8ステップアナログシーケンサ×2chです。アナログシーケンサなので、音程をボリュームで設定するのがミソ。ピアノロールやリストエディタなどMIDIで打ち込むのとはまったく違う雰囲気が楽しめますよ。ちなみに、このシーケンサ、将来的には16ステップシーケンサ×1chへの切り替え機能搭載するそうです。

※追記
10月16日リリースのVer1.02で2つのシーケンサを合わせて16ステップにした端子が追加されました。 


MIXと書かれた部分は3つの信号を入力可能なミキサーになっている
構成的にはこのような音源であり、マイク、ミュージック機能の下に3chのミキサーが設置されていて、各種発生音をここでミックスできるわけなのですが、普通のシンセ、楽器に慣れている人にとって面食らうのは、このままではまったく音が出ないという点。そう、これはモジュラーシンセであり、パッチング、つまりケーブルで配線して接続しないことには音が出ないんですよね。単純には、VCOを直接ミキサーに接続すれば、「ブー」といった単純な電子音が出せます。またこれをVCFを通してからミキサーへ接続すれば、シンセっぽく音色をいじれるようになるのです。

さらにシーケンサを通じて音程を変化できるようにしたり、LFOを使ってビブラートを掛けたり……とパッチングによっていろいろと音作りができるのが面白いところ。そうした原始的なシステムだからこそ、シンセサイザのお勉強ができるわけです。

もちろん、自分のiPhoneに入っているMusicライブラリをVCFに突っ込んでDJっぽく音を変化させて遊ぶというのも面白いですよ。

いろいろ用意されているプリセットがチュートリアルとしても使える 

説明書などはありませんが、プリセットとしていくつかのデータが入っており、これがチュートリアルになっているため、これを使いながら触ると、アナログシンセの仕組みが少しずつ分かってくるはず。また数多くあるアナログシンセの教科書な本がそのままTANSU Synthの解説書としても使えてしまいます。

シンセを勉強してみたいという人はもちろん、デジタルシンセを駆使している人にとっても結構役に立つはず。もちろん、単純に音、音楽を楽しみたいという人にとってもきっと面白いツールになるはずですよ。

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