1年ちょっと前にリリースされて以来、24bit/192kHz対応のオーディオインターフェイスとしてすっかり定番となったローランドのOCTA-CAPTURE。私自身は、普段その弟分のQUAD-CAPTUREを使っているのですが、マルチで入出力が必要というときは10IN/10OUTのOCTA-CAPTUREにつなぎ変えて使っています。
OCTA-CAPTUREそのものについては、以前AV WatchのDigital Audio Laboratoryで詳細にレポートしているのでここでは割愛しますが、これが年末に大きく機能、性能UPしていたって知ってましたか?1ヶ月も遅れて試してみたのですが、なかなか快適になったので、簡単にレポートしてみます。
昨年末にファームウェアがアップデートされて高性能化していたOCTA-CAPTURE
その性能UPというのは、12月16日にリリースされたファームウェアである「OCTA-CAPTUREシステム・プログラム(Ver.1.50)」および、「OCTA-CAPTURE Driver Ver.1.5.0」による成果。ドライバのほうはWindowsのXP/Vista/7の32bitおよび64bit、Mac OSXも10.4~10.7まですべてに対応しているので、どのマシン、OSを使っていても恩恵を受けられそうです。
説明書にしたがって、まずファームウェアをアップデートして1.50に。操作そのものは2、3分もあれば完了です。
無事、ファームウェアバージョン1.50にアップデートされた
これまでWindows 7の64bit環境で使っていたのですが、一旦旧ドライバをアンインストールした上で、1.5.0の新ドライバをインストールして、PCを起動しなおしてみました。
ここですぐに気づいたのがコントロール・パネルが大きく変わったこと。これまでのグレーっぽい画面から黒っぽい画面になったのですが、見た目のカッコよさというよりも、コンプ部分がグラフィカルに表示されるようになったので、直感的に扱いやすくなったのです。そう、スレッショルドとレシオという形で数値で指定するよりも、どのように圧縮するのかグラフで見れたほうが、ずっと分かりやすいですよね。ボタン類の配置もよくなって、使い勝手は断然よくなりました。
コントロール・パネルが大きく変わり、グラフィカルで使いやすくなった
実はこの点は後に出たQUAD-CAPTUREのほうが先に進んでいました。同じコンプを積んでいたのに、使い勝手はQUAD-CAPTUREのほうがよかったですからね。今回OCTA-CAPTUREがQUAD-CAPTUREのUIを採用した格好になっています。
QUAD-CAPTUREの画面。こちらはもともと、コンプがグラフ表示されていた
なお、DIRECT MIXERの画面も追加され、より扱いやすくなっています。
DIRECT MIXER画面も追加され、よりミックス機能が使いやすくなった
また、OCTA-CAPTURE自慢の機能であるレコーディングレベルの最適値を自動調整してくれるAUTO-SENS機能が、本体ボタンでの操作だけでなく、コントロールパネルからも操作できるようになっています。これも地味に便利なんですよね。
さらに性能面の向上という意味で大きいのはASIOのレイテンシーがさらに小さくなったという点です。やはりオーディオインターフェイスを使う上でレイテンシーをどこまで縮められるかは大きなポイント。私もDigital Audio Laboratoryでのテストで、さまざまなオーディオインターフェイスをテストしていますが、ことレイテンシーにおいては、OCTA-CAPTUREはなかなか秀逸でした。
これはドライバが返してくる理論値ではなく、実測値においてですが、当初のファームウェア1.0において調べてみると、44.1kHzで最小のバッファサイズ48Sampleで計った際のレイテンシーは7.51でした(AV Watchの記事参照)。それが7.44まで向上しているのです。まあ、微々たる値といえば微々たる値なんですが、もともといい値だったものが、さらに進化するというのは気持ちいいですよね。
【追記】
ごめんなさい、もっと重要な秘密が隠されていたことに、読者の方からの指摘で気づきました。ドライバの設定画面で「CPUの負荷を軽くする」にチェックを入れると、44.1kHzでのバッファサイズを32Sampleにまで下げることができ、この状態で、レイテンシーを調べると、なんと5.03msecと驚異的な数値がでます。もちろん、32SampleでDAWを動かしても音切れなどの問題は発生しませんでした。また、48kHzでも32Sampleで、その状態だと4.98msec、さらに96kHzの場合は64Sampleで4.08msecという結果になりました。
「CPUの負荷を軽くする」にチェックを入れるとバッファサイズをさらに小さくできる
96kHz動作時のレイテンシーは4.08msecを実現!
また、現行のOCTA-CAPTUREにはSONAR X1 LEがバンドルされていますが、このSONARに限らず、DAW側からOCTA-CAPTUREの動作周波数を変更可能になったのも大きなポイント。この辺はオーディオインターフェイスによって仕様が異なり、ハードウェアで設定しなくてはならないもの、ハードウェアで設定した上で、ハードウェアの電源を入れなおさなくてはならないものなどさまざまですが、使い勝手の面ではPCのアプリケーション側で変更できるのが一番いいのは確か。今回の対応で、そうした面でもかなり使いやすくなったわけですね。
最後にもうひとつ触れておきたいのが拡張性の部分です。これは今回のバージョンアップでというわけではないのですが、OCTA-CAPTUREは2台を連結させることで20IN/20OUTのオーディオインターフェイスへと拡張できるのも大きな特徴です。通常オーディオインターフェイスは1台で完結で、とくにWindowsのASIOドライバにおいては、複数のオーディオインターフェイスを同時に1つのアプリケーションから使うことはできません。しかし、OCTA-CAPTUREの場合、2つ繋いでも1つのオーディオインターフェイスとして見えるため、それが可能なのです。さらに先日紹介したVS-100や大型コンソールパネルであるVS-700と連結させることも可能なので、チェックしておくべきポイントだと思います。
【追記2】
OCTA-CAPTUREの弟分、4in/4outのQUAD-CAPTUREにも1月20日、1.50というドライバが出ていました。こちらはファームウェアは従来のままでドライバだけを差し替える形になるのですが、やはり秘密のスイッチ、 「CPUの負荷を軽くする」にチェックを入れることで、バッファサイズを32Sampleにまで縮めることができます。