先日、幕張メッセで行われた国内最大のゲームの展示会、東京ゲームショウ2017。4日間で25万人以上が訪れたとのことですが、その東京ゲームショウのブースの1つで、ちょっと面白いモノが展示、配布されていました。そう写真を見れば分かるとおり、段ボールのキーボードであり、ここにある23鍵を使って演奏可能というものなのです。
その展示・配布をしていたのは、先日「800万円超の究極のシンセが誕生!?ビーマニ開発者が率いる日本のベンチャーがNAMMに出展だ!」という記事でも紹介した超高級シンセを開発中のYudo(株式会社ユードー)。800万円のシンセと段ボールのキーボードのギャップが激しすぎて笑ってしまいましたが、ユードーは何を狙っているのでしょうか? ブースに立って来場者に説明をしていた社長の南雲玲生(なぐも・れお)さんを捕まえて、話を伺ってみました。
東京ゲームショウで段ボールのキーボード、KAMI-OTOを配布していたユードーの南雲玲生さん
DTMステーションでは、これまで何度か取り上げてきたユードー。古くは2010年の「iPhone/iPad用DTMアプリを次々と生み出す日本メーカー、ユードーとは」、「AndroidでDTMは無理なの!? ユードー・インタビュー続編」といった記事もありましたが、一般の人にとっては、スマートフォン向けのインターネット電話(テレビ電話)やカラオケ、SNSアプリである、「斉藤さん」の開発・運営をする会社としてご存知の方も多いかもしれません。
インターネット電話アプリ、「斉藤さん」キャラクター「斉藤サイ造」が会場で人気者になっていた!
さて、今回展示されていた、この段ボールのキーボードとはいったい何なのでしょうか?
「これ、KAMI-OTO(カミオト)という名前のキーボードで、MacやiOS、Androidの音源を弾くことができる、というものなんです(iOS Androidはユードー製品のゲームなどApp独自で対応)。鍵盤を弾いて音楽を奏でる楽しさを、より多くの人に、そして手軽に味わって欲しいという発想で作ってみみました。改良を重ねてきた結果、いい感じに使えるようになってきました。こういうのって、ちょっと昔のゲーム業界っぽい雰囲気なんですよね。ユードーはとっても小さい会社なので、こうしたものが何かのイノベーションのキッカケになるのでは…という思いから今回ゲームショウに出してみたんですよ」と南雲さん。
小学生の工作のような感じで組み立てる段ボールキーボード、KAMI-OTO
このお土産として配布していたKAMI-OTO、袋の中には切り込みの線が入った段ボール2枚とウレタンのシールが入っているのですが、まずはこれを組み立ててもらいました。
小学校の工作みたいですが、切り抜いて、線にしたがって折ってはめ込んでいけば完成。手慣れているからか3分程度でキーボードが出来上がりました。でも、なんで段ボールで演奏できちゃうのでしょうか!? まあ、実はとっても単純な仕組みでした(笑)。
実は2枚の段ボールの間にSmart Keyboardを挟み込むように設置することで動作する形になっている
この完成したKAMI-OTOをアップル純正のBluetoothキーボード「Magic Keyboard」の上に被せることで、使えるようになっているんですね。Magic Keyboardには英語版と日本語版がありますが、それぞれに対応できるように被せる位置を調整可能となっており、Mac専用アプリの設定を変更することで、同じように使えます。
ピアノ練習アプリのPianoManで即利用できるようになっている
「iPhone/iPadとAndroidの場合、ウチが出しているピアノレッスンアプリ、PianoManが近日リリースのバージョンアップで利用可能になりますが、Macの場合は汎用的に利用できるようにしました。このゲームショウ直前に、突貫工事のように作って無料配布(https://goo.gl/utdyaq)しているのですが、これを起動してフォアグラウンドに置いてもらえば、各種DAWで利用することも可能になります」(南雲さん)
現在Yudoで無償配布しているMac用のKAMI-OTOアプリ
画面を見るとわかる通り、オクターブ変更やキートランスポーズはもちろんのこと、アルペジオの演奏をすることも可能になっています。とのこと。実際に触らせてもらいましたが、まったく違和感なく、それなりに使えますね。もっとも、Magic Keyboardを押しているだけなので、ベロシティーはつきませんけどね。
実際弾いてみても、想像以上にいい感じ
とはいえ、これをゲームショウで配布しているだけでは、なかなか広まりそうにもありません。また、このまま発売するといってもMagic Keyboardが必要となると、ターゲットも狭くなってしまいそうです。
展示用の巨大KAMI-OTOを使ってデモしていた南雲さん
「実はいま、この段ボールとセンサー基板を組み合わせて、単独で動くMIDIキーボードができないか画策しているんです。できるだけ安く作ろうと思って試行錯誤していて、目標は500円なんです。が、どうしても内部にコンピュータ機能も積む必要があり、その数倍のコストはかかってしまうかも……。一般販売というのも難しいので、クラウドファンディングをして、欲しい人を集めてみようと考えているところです」と南雲さんはKAMI-OTOの進化系について話してくれました。
段ボールだから耐久性など、難しい点もありそうですが、1,000円前後で買えるのなら、プレゼント用などを含め、何台(何枚?)か買っちゃいそうです!これについては、また続報があれば、お伝えしていきますね。
「斉藤さんラップ」が新発表に
一方、このユードーブースにおいては、もう一つ、新ネタが発表されていました。それが「斉藤さんラップ」という10月リリース予定の無料アプリです。これは「斉藤さん」の「ハンカチ中継」といわれる1対多の中継をトラックに乗せて行う感じで、自分のラップを多くの人に見てもらうというもの。いうならば、ニコニコ生放送のラップ版といった感じでしょうか。
事前に曲のジャンルを選択して放送スタート!
予めジャンルを選んだ上で、4つあるリズムパターンを選択すると、リアルタイムにバッキングが変わっていくというもの。これに合わせてラップを歌えば、それを多くの人に見てもらえるという仕組みになっています。視聴者は投げ銭することもでき、上手なラッパーであれば、そこそこの稼ぎが得られる、というわけなのです。また高評価であれば、演奏時間を長くすることも可能になっています。
反対にブーイングが出れば、演奏時間が短縮されて早期終了してしまうとのこと。もちろん、斉藤さんですから、ラップする姿もビデオで映し出されるので、ビジュアルも含めてどうパフォーマンスするかが重要になってきそうです。ちなみに、この会場でデモしてくれたのは、QUEENのトリビュートバンド、GUEENのボーカリスト、フレディ波多江さん。
波多江さん(左)と南雲さん(右)
いろんな肩書を持って楽器業界で活躍している波多江さん、実は現在ユードーのプロモーションも担当しているとのこと、ちょっとビックリしました!
そしてやっぱり一番気になるのは、800万円の超高級シンセ、Neumanのその後です。無事に開発は進んでいるのでしょうか?
「以前、NAMM SHOWで出品した際には、内部にIntel CoreのCPUを搭載したものになっていました。つまり実質的に内部にPCを搭載していたのですが、やはり機能面、性能面を考えた結果、汎用のPCでは思い通りの結果が出ないということからARM COREを用いた独自設計のものに切り替えて再設計しているところです。音源部分はほぼ完成し、エフェクト部にはAnalog DevicesのSHARCプロセッサを搭載するなど、中身をブラッシュアップしています。完成までは、まだ1年以上かかってしまいそうですが、着実に進展しています」と南雲さん。
中のシステムは大きく見直せれたが、コンセプト自体は変わっていないNEUMAN
モノがモノだけに、NEUMANは一般販売ではなく、受注生産性になるとのことですが、すでに世界中から問い合わせがいろいろ来ているのだとか……。
斉藤さんを展開する一方で、段ボールMIDI鍵盤から、内部まで完全自社設計する超高級シンセまで、さまざまなことを手掛けるユードー。また、面白い動きがあればレポートしてみたいと思ってます。
【関連情報】
株式会社ユードー
KAMI-OTO製品情報
NEUMAN製品情報
斉藤さんラップ製品情報