全国各地にある技術系の専門学校、そうした技術系専門学校の中には、DAWについて教えてくれるところも出てきているようです。金沢市にある金沢科学技術専門学校(Kist キスト)は1987年に創立した北陸唯一の総合工業系専門学校ですが、この中の映像音響学科では、今年4月からCubase Pro 9を用いたDTM授業がスタートしています。
このDTMの授業、1年生は必修で、2年生は選択制で約半分の生徒が受講するそうですが、映像系を目指す生徒も、しっかりとCubaseの勉強をしてDAWの利用法を身につけるというのは面白いところです。先日、そのKistに行って、先生や生徒に話を伺ってきたので、どんな勉強をしているのか、何を目指しているのかなど紹介してみましょう。
42台のiMacとCubase Pro 9を一挙導入して4月からDTM授業をスタートさせた金沢科学技術専門学校
Kistには自動車整備士などを目指す自動車工学科や建築士などを目指す建築学科、家具職人を目指す家具クラフト科、コンピュータ関連の情報工学科、さらには電気エネルギー工学科といったさまざまな学科があるなか、エンタメ系の複合学科として映像音響学科があります。
金沢科学技術専門学校には自動車工学科、建築学科、情報学科など工学系のさまざまな学科がある
「この映像音響学科では映像編集技術者、照明技術者、放送エンジニア、CMディレクター、PA エンジニア、レコーディングエンジニア、映像カメラマンなどエンタメ業界が求める多様な人材を育成するために、多岐にわたる学習指導をしています。もちろん、生徒本人の志望する職種や希望によって2年次での取得科目はかなり変わってくるのですが1年生のときは映像系も音響系も一緒の授業を行っているのが、この学科の大きな特徴でもあります」と話すのは、映像音響学科の副学科長である大谷内 真郷(おおやちまさと)先生。
映像音響学科の副学科長、大谷内真郷先生
大谷内先生は「いまの時代、映像系に進んだとしても、映像だけができればいいというわけではありません。『専門は映像だけど、音響系も音楽系もわかり、DAWが扱えて、音楽もある程度は作れる』といったマルチな能力を持つ人が求められており、そうでないとなかなか生き残っていけないのも事実です。そうした力を付けていくためにも、特に1年生の基礎教育においては、さまざまなことを学ぶようにしているのです」と続けます。
DTMの授業自体は長年行っていたが、今年、LogicからCubase Pro 9に乗り換えた
今年の4月からCubase Pro 9を使った授業が新たにスタートしているわけですが、DTMの授業自体は、今回が初というわけではなく、長年行ってきている、とのこと。
「この春、コンピュータをすべて入れ替えたのと同時に、ソフトウェア、そしてカリキュラムも大きく見直しました。具体的には生徒用に40台と教師用、予備と計42台の iMac を新規導入したのですが、このすべてに Cubase Pro 9 をインストールし、今年度からよりDTMに力を入れて時間も割くようにしています。昨年度まではLogicを使った授業を展開していましたが、改めてどの DAWを採用するのがいいのか、いろいろ比較検討したなか、Cubaseを選びました。一番の決め手は、やはり最近のシェアの伸びで、クリエイターの人たちの間での利用率が高いということです。また学校での授業で使うということで重要だったのがサポート体制。地元の楽器店であるvanvanさんが、トラブル時にも面倒を見ていただけるということも大きな安心材料でした。とくに Logicの場合は、トラブルがあった場合は、お手上げだったので、ここは大きいですね」と大谷内先生。
せっかくならプロが使っているものと同じものを使わせたいとCubase Pro 9の導入を決定
とはいえ、音楽の専門学校ではないのにCubase Pro 9が入ったマシンが42台というのは、やや過剰では……とも思うところですが、それに対し大谷内先生は「せっかくならプロが使っているのと同じものを用意してあげたい、それが学校として生徒にしてあげられることなので、思い切って最上位のCubase Pro 9の導入を決めたのです。アカデミック版で割安になっていることもあり、導入コスト面でも大きなネックにはなりませんでした」と話してくれました。
みんな楽しそうに、そして真剣にCubaseでの打ち込みに取り組んでいたのが印象的だった
ちなみに、この映像音響学科では、卒業制作としていくつかのチームに分かれてショートムービーを作っているそうですが、今後、そこで使う楽曲にもCubase Pro 9を使って作ったオリジナル曲を利用していきたい、とのことなので、なかなか実践的ですよね。
映像音響学科2年生、米澤英さん
では、実際に授業を受けているみなさんは、どんな思いなのでしょうか?
「学校ではグループワークが多く、みんなで集まり、手分けして1つのものを制作していくのですが、これがなかなか楽しいんですよ。いま、自分としては映像のほうを専門としていて、一人でビデオ編集なども行っているのですが、あえて授業では Cubaseを使うDTMを選択しました」と語るのは2年生の米澤英(よねざわあきら)さん。
米澤さんの場合、1年生の時はLogicを使ってきたわけですが、2年生になってDAWが変わったために、当初は少し戸惑いもあったとのこと。「ちょっと慣れてきたら、Cubaseのほうが使いやすいですね。いま自分がどんな操作をしているのかが画面に表示されるので、何をすればいいのかが分かるのもいいところです。これから卒業制作としてのショートムービー制作に取り組んでいくのですが、そうした中にも Cubaseをうまく活用できれば…と模索しているところです」と米澤さん。
映像音響学科2年生、湯浅美月さん
一方、1年生の湯浅美月(ゆあさみづき)さんは、「まだ入学して間もないこともあり、多岐にわたる授業にとってもワクワクしています。DAWに触れるのは、この授業が初めてでしたし、Macを使うのも初めてで、分からないことだらけ、というのが正直なところです。でも、実際に操作することで音を出すことができ、『こうやって音楽って作っていくのか!』という音楽を制作する工程が見えてきて、とっても楽しいです。まだまだ操作に戸惑うことはありそうですが、これからもCubaseの使い方をどんどん身につけていきたいです。Cubase はWindowsでも動くということなので、自宅用にも買おうかと検討しているところです」と話してくれました。
映像音響学科2年生、伊藤翼さん
もう一人1年生の伊藤翼さんは「将来、PAの仕事に就きたいと思っており、そのためにここで音響の勉強をしっかりしていきたいと考えています。ただ授業としては音響よりも、このCubaseの授業のほうが楽しいんですよね。授業を重ねるごとに、できることがどんどん増えていくこの楽しさには、すごい可能性を感じています。PAとは直接関係ないのかもしれませんが、今後自分で打ち込みができるようになると、絶対に面白いですよね。勉強しなくてはならないことが、いっぱいありそうですが、ここでいろいろなことを身につけ、多くの人に感動を与えられる仕事に就きたいと思っています」と夢を語ってくれました。
そのCubaseの授業を行っているのは、本業が作曲・ピアノ演奏という清水目千加子(しみずめちかこ)先生。
映像音響学科、清水目千加子先生
「今年から、授業で扱うDAWがCubase Pro 9に変わったので、まだ完全には慣れていないのが正直なところですが、Cubaseのコードトラックなどのコード機能は非常に優れていて、授業でもうまく扱っていきたいと目論んでいるところです。とくに次のコードを予測してくれる機能は面白く、知識や経験の少ない生徒にとってはコードの仕組みを覚える重要な教材となりそうです。またCubaseがほかの DAW と比較して圧倒的に便利と感じたのはアレンジャートラック。これによって、曲の構成を自由に組み替えられるのはいいですね。2年生の制作において、この機能を存分に発揮させてあげたいなと思っています」(清水目先生)。
お話を聞いた伊藤さん、湯浅さん、米澤さん
音楽の専門学校ではない技術系の専門学校でDAWの教育が行われ、さまざまなクリエイターがコンピュータで音楽制作をするのが当たり前になってくると、DTMの見え方も大きく変わってきそうで、これからが楽しみです。
なお、この記事はDTMステーションとSteinbergとのコラボレーションによる記事です。Steinbergサイトのスクールのページにも、より詳しいインタビュー記事が掲載されていますので、そちらも併せてご覧ください。
【関連情報】
金沢科学技術専門学校インタビュー(Steinbergサイト)
Steinbergサイト・スクール
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