23年の歴史に幕。DTMマガジンが休刊に

1994年6月にプレ創刊号の0号、翌7月号が創刊号となったDTMマガジンが、本日11月8日発売の2016年12月号通巻第273号を持って休刊となることが明らかになりました。これまでずっと月刊誌として発行されてきたのが、今年の2月号から隔月刊に変更になったため、もしかして……なんて悪い予感はしていたのですが、残念ながらそれが現実になってしまったようです。

もっとも、今後もYouTubeチャンネルは引き続き運営されるとのことなので、完全に無くなるわけではないようですが、やはり紙媒体の雑誌が終わってしまうのは寂しい限り。改めてDTMマガジンの歴史を振り返ってみたいと思います。

最終号となるDTMマガジン2016年12月号


DTMマガジン創刊の経緯については、10年以上前にAllAboutのDTM・デジタルレコーディングの記事「国内DTM関連雑誌の足跡 Part2 DTMマガジン誕生への流れ」として書いたことがあったので、そちらも参照いただきたのですが、1994年に寺島情報企画から創刊されて以来、DTMの世界をけん引するという、重要な役割を果たしてきた雑誌であることは間違いありません。


手元で保存している1994年7月のDTMマガジン創刊号。副題として「コンピュータ・ミュージックの総合情報誌」とある 

とくに初音ミクを中心とするVOCALOIDの楽曲制作の世界をけん引してきた功績は本当に大きかったと思うし、何よりDTMデスクトップミュージックという言葉を守ってきたという意味では、とっても心強い存在であったおとは確かです。


DTMマガジンでは、たびたび初音ミク特集を掲載し、VOCALOIDの世界を盛り立ててきた 

何度か特別号となるMOOKも出していましたが、なかでも初音ミク登場後、早い時期に発売した「CV01初音ミク」という号は大きな話題になり、すぐに完売となったんですよね。


大きな話題になり、すぐに完売になった初音ミクのMOOK

上記のAllAboutの記事にもある通り、創刊の経緯もあって、私自身はDTMマガジンに記事を書いたことはほとんどないんです。正確にいうと創刊当初に1回だけ小さなコラムを書いたことがあったので、4、5年前に取材を受けたことがあったくらいではあります。


私の自宅にはDTMマガジン23年間のすべての号が資料として保存してある 

でも創刊号から1号も欠かさず購入し、すべてのバックナンバーが残っているので、昨夜、それらを引っ張り出しながら、懐かしく読んでいました。そう、当初はフロッピーディスクが付録としてついており、しかもPC-9801のMS-DOS用だったという時代。


プレ創刊号である1994年6月のVol.0の付録はPC-9801フォーマットのフローピーディスク。記事に関連するMIDIデータなどが収録されていた

その後、Windows用とMacintosh用(当時はMacじゃなくてMacintoshですから!)のフロッピーがつき、それからCD-ROM、さらにDVD-ROMになり、現在はYouTubeへとメディアはどんどん変遷していったんですよね。


Windows版とMacintosh版のフロッピーディスクが2枚付く時代もしばらくあった

最終号となる2016年12月号では、過去23年間を振り返りつつ、さらにもっと昔のDTMから振り返った「DTM音源ヒストリー」が第1特集となっているので、これは必見。店頭からなくなる前に、早めにGETしておいたほうがよさそうですよ。


最終号となる2016年12月号は、DTMの全歴史を振り返る特集が掲載されている完全保存版 

その特集の中にもあるように、DTMという語源はRolandが1988年に発売した「ミュージくん」。MT-32というMIDI音源と、MPU-PC98というMIDIインターフェイス、それにスターター・ソフトウェア(後にBalladeというソフトへとバージョンアップしていくソフトの原型)というMIDIシーケンサがセットで99,800円というもの。これの副題としてDESK TOP MUSIC SYSTEMとあったんですよね。


廃れかけたDTMというワードを守り、育て続けてきたDTMマガジン 

その後、RolandのGS音源とYAMAHAのXG音源が競争を繰り広げるなど、90年代には大きく盛り上がっていった外部音源を活用したDTMの世界はゲームの効果音用機材としても、広く活用されていきました。ただ、PCの処理速度が高速化するとともに、オーディオレコーディングが可能になってくると、外部音源は衰退し、DTMという言葉も下火になっていったんです。

特に2000年前後には、DTMというと「一部のマニアが扱う素人の音楽ツール」といったイメージで語られることが多くなりました。私が2001年にAllAboutをスタートさせた直後、ガイド名称をDTMからDTM・デジタルレコーディングへと名称変更したのも、そうした経緯があったからなのです。そうした状況下でもずっと「DTMマガジン」の名前を守り抜き、DTMという言葉を現状のものへと定着させていったというのは、やはりDTMマガジンの大きな功績なのではないでしょうか?


最終ページには休刊のお知らせが…… 

まあ、紙メディア、とりわけ雑誌が厳しいのは、DTMマガジンに限ったことではありません。さまざまなジャンルの雑誌が、いま休刊・廃刊へ追い込まれているところであり、これまで比較的安定と言われてきた専門誌も厳しい状況に陥っているのが実情なんです。

私自身も、ずっと紙メディアで仕事をしてきた人間として、やはり雑誌が消えていくのは寂しい限りですが、やはり時代の流れには逆らえないということなのかもしれません。

最後の4年間分のDTMマガジン。2016年2月号からは隔月刊になっていた
最後に、現編集長の上林さんにコメントをいただいたので掲載しておきます。

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創刊から23年、ご愛読頂いた皆さまには本当に感謝しています。ありがとうございました! DTMマガジンは紙の雑誌としてはおやすみとなりますが、YouTubeチャンネルに舞台を移して、これからもDTMの役立つコンテンツを提供していきますので、ぜひよろしくお願いいたします。

DTMマガジン編集長 上林将司(TITANHEADS

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DTMマガジン、これまで長い間、ありがとうございました。そしてお疲れさまでした。

【関連リンク】
DTMマガジンYouTubeチャンネル
DTMマガジンWebサイト
寺島情報企画Webサイト(DTMマガジン発行元)
TITANHEADS Facebookページ(DTMマガジン編集プロダクション)
【バックナンバー購入】
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◎Amazon ⇒ DTMマガジン 2016年8月号「初音ミクV4X」 
◎Amazon ⇒ DTMマガジン 2016年6月号「本当に作れるようになる作曲入門」 
◎Amazon ⇒ DTMマガジン 2016年4月号「ゲーム音楽の作り方」
◎Amazon ⇒ DTMマガジン 2016年2月号「鏡音リン・レンV4X」

【Kindle版】
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Commentsこの記事についたコメント

15件のコメント
  •  

    ええ…
    最終号買わせてもらいますわ…

    2016年11月8日 3:56 PM
  • ぶっちゃけ

    大多数のミュージシャンは音楽での収入はほぼゼロではないでしょうか、まずはミュージシャン全体が儲からないと楽器も雑誌も売れなくなりますね、音楽での富の一極集中は世界共通の課題だと思います。

    2016年11月8日 3:59 PM
  • 僕はどちらかというと ミクが出だした辺りからパッタリ買わなくなりましたが・・・。
    それ以前は大変お世話になりました。ワクワクしながら書店に行ったものです。
    最終号は注文しました。

    2016年11月8日 6:44 PM
  • toki

    私も昔はたまに買っていましたが・・・・ここ数年の内容はちょっと・・・・。昔は面白かったですけどね。そういえば最近の音楽雑誌も日本人が表紙になるようになってから買わなくなりました。別に日本人が嫌いという訳ではありませんが・・・。

    2016年11月8日 6:57 PM
  • 初心者

    申し訳ないですがお金を出して専門誌を買う事がほぼなくなりました。サンレコは2年に一度くらいで興味ある特集回のみ買いますが、機材情報は藤本さんの本サイトから得る事が大半です。しかも無料で最新情報。情報に対価を払うのがあほらしいから専門誌は買わないとかですか?時代といえばそうなんでしょうが気がつけばいろんなものが消えています。馴染みの店とかも。紙媒体は衰退の一途。次は新聞か。

    2016年11月8日 7:16 PM
  • JR9_ODA

    お気楽道場に何度か投稿したり毎号楽しみにしていましたが
    (賞をもらったとき、とてもハッピーでした)
    物事は最初と最後がセットなので、仕方ないのかな
    地方の人なので、明日買いに行きます。
    楽しい思い出をありがとう!

    2016年11月8日 8:38 PM
  • 老害

    私はむしろここ数年こそたまに買っていたので残念な気分ではあります。何度も切り口を変えた初心者向け企画をやっていくことで間口を拡げたかったんだろうな、という意図は最近の誌面から伝わってきていましたがやはり維持できないところまできてしまったのですね。最終号は買っておこうと思います。

    2016年11月8日 9:13 PM
  • にゃは

    無くなるのは残念ですね。
     途中から付属のDVDが無くなってもお値段そのままとかはだめで、
    紙の質を落とすとか 広告を増やすとか。
    あとは中身をカラフルさだけもとめるよりもサンレコみたいな
    中身がしっかりあったものを作っていたらこうならなかったように思います。
     コストダウンための努力と中身が軽すぎていかんせんカタログ扱いであったので
    雑誌のコンセプトを変えるべきでしたね。
    終わってからいつてもしかたないですが、牽引者が幕をひくのは悲しいものがありますね。

    2016年11月9日 12:59 AM
  • ハチプロで車買った世代

    『コンピューターミュージックマガジン』と合わせて『DTMマガジン』を両方買っていた頃が懐かしいです。とうとうどちらもなくなってしまうのですね。残念です。ネット上にあまりにも情報があふれているので、ある程度交通整理して伝えてくれる媒体がないと、特に初心者の方は困るかもしれませんね。学生の頃『ラジオの製作』や『CQ』を読んでるオジサンたちを時代遅れの人のように見てしまっていましたが、DTMがそうならないよう未来志向のサウンド作りを心がけていきたいと思います。最近の懐古ブームはお腹いっぱいな感じですw

    2016年11月9日 2:47 AM
  • らすくら

    とても残念です。
    数年前R社やI社の広告が相次いで付かなくなり、いずれはと思いましたが、やはりですね。
    晩年、特集などは1年で一巡して翌年はその繰り返しでしたから、十二号購入すればほぼ網羅できる状態でしたし、DTMユーザーといっても志向や経歴が多岐に渡ることから、どの層をターゲットにすべきか絞れず、結果として誰にとっても魅力に欠ける雑誌になってしまったのかもしれません。
    お世話になった雑誌なので、最後号はぜひ買いたいです。

    2016年11月9日 3:03 AM
  • gf

    デスクトップミュージックも死語へ

    2016年11月9日 7:46 PM
  • Root Keys

    「DTMマガジン」と「初音ミク」の組み合わせということで真っ先に思い浮かぶのは、ボカロPのNorth-Tさんが「DTMマガジン」に付属していた「初音ミク体験版」に触れ、その体験版を題材にした「タイムリミット」という曲を作った、というエピソード。
    DTMマガジンはそんな感じでクリエイターたちの創作意欲を刺激してきた貢献も事実あります。
    Youtubeでの展開が始まるということですが、出版の編集ノウハウから外れた発想を持つと面白い展開にもできるんじゃないかと思います。
    さらなるクリエイターたちの創作意欲を刺激する展開を楽しみにしています。(「タイムリミット」を久しぶりに聴いた私)

    2016年11月10日 4:49 AM
  • 山葉_緑(♂)

    2009年07月号より毎号、何号か買いそびれながら、明らかにVocaloid目当てで買ってました。
    隔月刊になった辺りから嫌な予感がしていて、12月号を買って最終ページで紙媒体での休刊を知りました。
    何人かボカロをお迎えしても、曲作りでは「ド」のつく素人なので、藤本さんのページ等を見ながら、ボチボチやって行こうかと思ってます。
    紙媒体での『DTMマガジン』さん、23年もの間、お疲れ様でした。

    2016年11月10日 4:12 PM
  • 山葉_緑(♂)

    2009年07月号より毎号、何号か買いそびれながら、明らかにVocaloid目当てで買ってました。
    隔月刊になった辺りから嫌な予感がしていて、12月号を買って最終ページで紙媒体での休刊を知りました。
    何人かボカロをお迎えしても、曲作りでは「ド」のつく素人なので、藤本さんのページ等を見ながら、ボチボチやって行こうかと思ってます。
    紙媒体での『DTMマガジン』さん、23年もの間、お疲れ様でした。

    2016年11月10日 4:12 PM
  • Ken

     ひと目みて、えっ!終わっちゃうの!?って感じだけど、近年の紙媒体業界の情勢と「Youtubeに移る」、の一言で納得。当然の時代の流れかな。
     でも、確かに今はネットでDTMどころか音楽も学びほうだい情報集め放題だけど、だからこそ情報の的を絞って、まとめて、伝えてくれる紙媒体の”雑誌”というのははまだまだ価値があると思ってたんだけどなぁ。

    2016年11月24日 7:14 PM

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