これまでの常識を大きく変える、まさに楽器の革命ともいうべき新発想の楽器、KAGURAなるものが誕生しました。これはWindowsまたはMacを使って動作する楽器なのですが、別に新しいソフト音源が誕生した、とかいう話ではないんです。
PCに取り付けたビデオと画面を利用して人がリアルタイムに演奏する、まったく新しいスタイルの楽器であり、ステージ映えもするとってもユニークな楽器。音楽理論も楽器演奏経験がなくても即演奏できてしまうハードルの低さが嬉しい一方、練習を重ねることでより高度なプレイが可能になる奥深さを持った、プロミュージシャンも利用可能な楽器でもあるのです。そのKAGURAが8月25日までという期間限定でKICKSTARTERを使ったクラウドファンディングを実施しています。いま注文すれば、約3,000円~という安価で購入できるようなので、これがどんなものなのか紹介してみたいと思います。
これまでにない、新しい発想の楽器、KAGURA
このKAGURA、言葉で説明するよりも、まずはビデオを見るのが一番分かりやすいと思いますので、これをご覧になってみてください。
どうですか?これ、開発者である株式会社しくみデザインの中村俊介さんが演奏していたのですが、このビデオだけで、だいたいの雰囲気は掴めますよね。
私も開発中KAGURAを使わせてもらったので、ちょっと試してみたんですが、メチャメチャ面白いです。KAGURAを起動し、サンプルデータを読み込んだ上で、プレイボタンを押すと、画面上には、いろんなパッドやスライダーが表示されるとともに、PCのWebカメラが自分を捉えています。
開発中のKAGURAを使わせてもらったが、かなり面白いです(顔が真剣ですが…)
ここでそのパッドやスライダを手で触れるとそこの割り当てられた音が鳴り、演奏していくことができるんですよね。
DTM関連のシステムに詳しい人なら、これを見てすぐに「レイテンシーはどうなんだ?」「感知性能はどうなのか?」「そもそもうまく演奏することできるの?」などといった声が上がってくると思います。が、これがすごくよくできているんですよ。
たとえば、あるパッドにハイハットの音が割り当てられていたとしますよね。これをカメラを通じて触れると「チッ」という音がするわけですが、BGMを流しながら(BGMなくてもOKですが)、この音を出すので、タイミングがズレたら下手に聴こえてしまいますよね。でも、ここにはクォンタイズの設定がされており、1/8とか1/16とか、三連符とか、裏打ちの設定なんかもできるようになっており、触れば、うまくタイミングを合わせてなってくれるんです。だからレイテンシーについても心配する必要がないんです。
また、このパッドやスライダー自体を画面上のどこでも自由に配置することができ、その大きさも自由に変えることができるし、それぞれのパッドに自由に音を割り振ることができるようになっているんですね。また、画面右側にはWAVファイルによるサウンドの一覧が表示されているので、この中から気に入った音を選んで、配置されたパッドなどにドラッグすれば、それで音が割り当てられるのです。
まずはプリセットを利用すれば、すぐに演奏することができるけれど、ここに配置するパッドなどのグラフィック、さらにはそこに割り当てるサウンドもユーザー手持ちのものを利用し、自分で自由に設定できるというわけなのです。
DTMステーションのロゴに触れるとピロロロロ~と鳴る
試しにDTMステーションのロゴを貼り付けてみたら、ほら、こんな感じ。これをパッドとして「ピロロロ~」という8bitサウンドを割り当ててみましたが、操作は画像の貼り付けも、サウンドの貼り付けもドラッグ&ドロップだけなので、誰でもとっても簡単。サウンドはWAVファイルまたはOggVorbisに対応しているみたいです。
上に3つのボタンを並べて、それぞれにキック、スネア、ハイハットと割り振った上で、プレイボタンをクリックしてみると…、もうこれだけで演奏できちゃいます。ただし、ここではバックに鳴るトラックがなかったので、画面上のLoopのところを試しにACIDizedデータを読み込んでみました。
画面上部のLoopのところにACIDizedデータを貼ってみたら、これでテンポもマッチしてバックトラックが完成
そうしたら、期待通り!ちゃんとBPMを理解するとともに、拍数、小節数が反映される形で画面上に波形表示がされました。これは、かなり使えますよ。つまりループ素材をBGMに流しながら、画面に置いたパッドでさまざまな素材を体の動きによって鳴らすことができるわけです。
ここでは短いACIDizedデータを置いただけですが、ここに自分の作ったトラックを置いてしまえばいいわけで、必要に応じていくらでも長いトラックにすることが可能です。ピアノを弾く、ギターを弾くというのとはちょっと違いますが、バックトラックを演奏しながら、パーカッションのような感覚で演奏することができ、それをライブステージなどでも使うことができるわけです。
まあ、分かりやすいのがドラムなどのパーカッションの音ですが、先ほどのスライダーに上から下へと、触っていくとフレーズが流れるように仕掛けておけば、メロディックな演奏もできるので、その辺は工夫次第で、いくらでも自由にできそうです。
KAGURAはMIDIとの連携機能も装備している
と、ここまで見ると、仕組み的には、カメラで捉えた体の動きでトリガーさせることができるポン出しマシンであり、その音がタイミングよく鳴らせる仕掛けになっているシステム、というわけなのですが、KAGURAが楽器としてすごいのは、これだけに留まらない拡張性を持っている、という点なんです。
画面右の「MIDI」タブを開くと、MIDI NOTE、MIDI CCも割り振れるようになっていた
その一つが、トリガーした際に割り当てられるのがサウンドだけでなく、MIDIも割り当てられるという点。まずは、触ると外部音源が鳴るようにMIDI NOTEを割り当てることができます。この場合、パラメータとしてはMIDIチャンネル、ノート番号、ベロシティー、デュレーションのそれぞれ。これによって外部にMIDI音源や、別のPC上で動いているソフトウェア音源を鳴らすこともできます。またLoopMIDIなどのツールを用いれば、同じPC内で起動させたソフトウェア音源を鳴らすことも可能ですね。
KAGURAからはNOTEのON/OFF、MIDI CC、MIDI Clockを送ることができる
さらに、MIDIコントロールチェンジ(MIDI CC)を割り当てることもできるので、こうすれば外部機器をコントロールすることも可能になるというわけです。
MIDI clockにチェックを入れるとMIDIで同期信号を出すことができる
そして、ステージ上で使える機能としてMIDI での同期機能備えているという点です。具体的にはKAGURA側がMIDI clockのマスターとなって、外部のMIDI機器に同期を掛けるようになっていますね。必要に応じて、いくらでもつないでいくことができるので、KAGURAで鳴らすループに、AIRAやVolcaのような機材を同期させるということもできますね。
またAbleton LiveなどのDAWを別のマシンで動かしながら、MIDIケーブルで接続しておいて、KAGURAと同期させて使うといった方法も考えられそうで、使い方はまさに自由自在です。
そのほか、インテルのRealSense3Dという3Dカメラを利用すると、単にカメラでオブジェクトをトリガーするというだけでなく、ジェスチャーを使ったコントロールも可能になっています。これは、手の上向きにするか下向きにするかでテンポが変化していく仕掛けがしてあるほか、手のひらをパーにすると、サンプリングが行え、それをパッドとして画面上に置けるといったことを可能にしています。何か、なんでも有りな感じですよね。
RealSense3D搭載のノートPC。よく見ると、カメラが2つ内蔵されている
ちなみに、この3Dカメラ自体はインテルやそのライセンス先から1万円程度で購入できるようになる、とのことですよ。
以上、KAGURAについてざっと紹介してみましたが、いかがですか?このシステム、まだ開発中ではあるけれど、先日スペインで行われたSonar+Dでグランプリを受賞するなど、世界的にも注目され始めているようですね。
KAGURAに収録sれているサンプリングデータは専用にレコーディングしたものだ、とのこと
気になる価格ですが、画像素材や音源素材は何も付属していないKAGURA Minimal Packが30ドル(約3,000円)、基本的な素材が入ったすぐに使えるStarter Samples Packが60ドル、そして、標準的な固定アイコン3タイプとアニメーションアイコン、KAGURAのために収録した20種類の楽器音源などが付属するPremium Samples Packが120ドルとなっているほか、RealSense3D付きのPCも付くものなど、いくつかがあるようです。
現在開発中で、来年2月にモノが届くとのこと。この安い価格で入手できるのは今のうちなので、欲しい人はお早目に!
【追記】2016.08.09
記事を公開してからなので、…ややタイミングが前後した感じではありましたが、私もいま、KICKSTARTERで60ドルのStarter Samples Packを購入してみました!完成が楽しみです。