先日の記事「世界初USB Type-C対応オーディオIF・M-TRACKとともにM-AUDIOが帰ってきた!」でも告知していた通り、7月17日にM-TRACK 2x2Mを特集したニコニコ生放送番組、DTMステーションPlus!をお送りしました(AbemaTV FRESH!版は7月23日に録画再放送)。この番組内では、M-TRACK 2x2Mを使ってのレコーディングについて、実際に使いながら紹介したのですが、この中でちょっと面白い実験もしてみました。
それはM-TRACK 2x2Mと同じ7月23日発売の機材、marantz Professionalのコンデンサマイク、MPM-1000(実売価格6,980円)およびMPM-3000(実売29,800円)をM-TRACK 2x2Mに接続して録音し比べてみようというもの。せっかくならと、プロのボーカルレコーディング用定番マイク、約33万円のNeumann(ノイマン) U87Aiと比較してみたら、意外と面白い結果がでたので、それについてちょっとレポートしてみましょう。
左からMPM-1000(6,980円)、U87Ai(33万円)、MPM-3000(29,800)
マイクに何を選ぶのか、というのは曲制作において結構重要な問題です。もちろん、すべて打ち込みやVOCALOIDでのDTMであれば、そもそもマイクなど不要ですが、ボーカルを録る、ライン出力のないアコースティック楽器を録るとなったら、マイクは必須の存在。そして、マイクの良し悪しによって、録った音の質、雰囲気はかなり大きく変わってくるので、やはりマイク選びはしっかりと行いたいところです。
そのマイク選びにおいて、まず最初に出てくるのがダイナミックマイク、コンデンサマイクのどちらを選ぶべきか、という問題だと思います。これについて、まずは簡単に紹介しておきましょう。
ボーカル用ダイナミックマイクの定番、SHUREのSM58
おそらく、一般の人にとって馴染みのあるのは、カラオケなどで使われているダイナミックマイクでしょう。これはスピーカーの原理を逆利用するシンプルな構造で、目の前の大きな音を力強くしっかりと受け止めてくれます。ライブステージなどの用途でも扱いやすく、構造的にも頑丈なので、保管や持ち歩きもしやすいのが特徴となっています。
今回の記事の主役であるmarantz Professionalのコンデンサマイク、MPM-1000
一方のコンデンサマイクは、レコーディングで使用されることが多いマイクであり、小さな繊細な音もしっかりと捉えてくれるのが特徴です。またダイナミックマイクと比較すると、とってもフラットな周波数特性を持つため、低い音から高い音まで均一に捉えてくれるため、ボーカルはもちろん、さまざまな楽器で利用可能です。ただ、とっても繊細なだけに、風に吹かれるボボボッといったノイズが入りやすいため、屋外での使用はほぼ不可能だし、目の前で歌う場合にはポップガードという、風を防ぐスクリーンを置く必要があったりもします。
上位モデルであるMPM-3000のほうにはポップガードが標準で付属している
また、構造的にも緻密にできているから、乱暴に扱うと壊れてしまうし、湿度管理も必要です。普通に自宅の部屋に保管していれば、大丈夫ではあるけれど、業務用のスタジオでは、防湿庫と呼ばれる小さな冷蔵庫みたいなところで保管しているのが普通だし、防湿庫がない場合には、乾燥材を使って保管しておくと安心だったりもします。
PAPICOさん(右)に3つのマイクを前に歌ってもらった。左はKeishi Kuroishidaさん
さて、ここからが本題です。今回、音の違いをチェックと使ってみたのは
・MPM-1000 (marantz Professional)
・MPM-3000 (marantz Professional)
・U87Ai (Neumann)
の3種類。これらを利用して、Mamimor a.k.a PAPICOさんに歌ってもらったのです。
DTMステーションPlus!の番組での主役はM-TRACK 2x2Mでした
番組をご覧になった方ならお分かりだと思いますが、その手順を紹介しておきましょう。今回の番組の主役M-TRACK 2x2Mは2in/2outのオーディオインターフェイスであるレコーディングを3回に分けて行う形にしました。
まずはバッキングトラックの作成から。ギタリストのKeishi Kuroishidaさんにアコースティックギターを弾いてもらい、これをレコーディングしています。ちょうど、Kuroishidaさんのギターはライン出力を装備していたので、M-TRACK 2x2MのINSTRUMENT入力端子に直結し、マイクを使わずにギターだけをレコーディングしています。
M-TRACK 2x2Mに付属のCubase LE 8で録り比べてみた
ここではM-TRACK 2x2MにバンドルされるCubase LE 8を用い、やはりこれにバンドルされているAIRのプラグイン、Creative FX Collectionにあるリバーブを軽くかけてみました。
軽くAIRのリバーブをかけただけで、ほかのエフェクトはEQを含め一切使っていない
その後、このギタートラックをバックに、PAPICOさんに歌ってもらって録音したのですが、1回目は左チャンネルにMPM-3000、右チャンネルにU87Aiを接続し、それぞれモノラルで2トラック目、3トラック目に収録。さらに2回目では左チャンネルにMPM-1000、右チャンネルにU87Aiを接続して、4トラック目、5トラック目にレコーディングする、ということを行ってみたのです。
ここでは24bit/96kHzでレコーディングしてみたのですが、その結果が以下のものです。
MPM-1000でのレコーディング結果 (うまくダウンできない場合はこちらへ)
U87Aiでのレコーディング結果 (うまくダウンできない場合はこちらへ)
どうですか?値段が2桁違う、50倍違うものとは思えない、いいサウンドで録れていると思いませんか?使っているのはいずれもM-TRACK 2x2M内蔵のマイクプリアンプのみで、EQもかけてないし、使っているのはリバーブのみ。よ~く聴き比べているとU87Aiのほうが高い音をより捉えている感じがしますが、6,980円でここまでの性能を出せれば十分だと思いませんか?
MPM-3000のほうは、結構すごいジュラルミンケースに入っている
「あれ、何でMPM-3000の音がないの?、そっちも聴き比べてみたい」という方も多いと思いますが、ごめんなさい!PAPICOさん自身はギターの音と自分の歌声をM-TRACK 2x2Mのヘッドホン出力でモニターしていたのですが、スタジオ内でもみんなで聴けるようにと鳴らしたモニタースピーカーの音がやや大きかったようで、それがMPM-3000に入りこんでしまって若干ハウってしまっているんです。それをここで公開しちゃうと、誤解を生じさせるかも、とここでは公開を控えました。
ケースを開けると、マイクとともに、ポップガードも入っている
ただ個人的にはMPM-3000の音のほうがU87Aiより好きだったんですよね。MPM-1000やU87Aiより、高域の音をよりクッキリと強く捉える特性だったので、女性ボーカルにはすごくマッチして聴こえるんで、気持ちサウンドという印象でした。この辺はもちろん好みの問題というのもありますが……。
なお、これら3つのマイクにおいて、出力レベルに少し違いがあったので、それについてもレポートしておきます。まずMPM-3000とU87Aiはほぼ同じ出力レベルであって、M-TRACK 2x2Mのマイクプリの設定はだいたい同じにしていました(ツマミの設定としては2時の方向くらい)。それに対してMPM-1000は出力信号が小さめであったため、マイクプリでかなり増幅しています(ツマミの設定としては5時の方向くらい)。
MPM-1000のパッケージ内には、マイク、ホルダー、ケーブル、マイクにかぶせるウィンドスクリーンが入っている
まあ、M-TRACK 2x2Mのマイクプリの特性がいいのか、この増幅の設定の違いはあまり気にならなかったことにも感心しました。
6,980円なので、肩ひじ張らず、気軽に使えるというのも大きなポイント
以上、6,980円で入手可能なコンデンサマイク、MPM-1000とプロのレコーディング御用達の定番マイク、33万円のU87Aiを比較してみましたが、いかがだったでしょうか?もちろん、定番マイクはそれだけの貫禄を見てくれましたが、6,980円もかなり健闘しているように思いました。少なくとも、M-TRACK 2x2MとMPM-1000の組み合わせで、これだけのサウンドのレコーディングできることを実証できたのは大きな意義があったのでは…と思っています。
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MPM-1000製品情報
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【DTMステーションPlus】
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