アニメ化などで、よく話題となるライトノベル(小説)。そのラノベを無料で読むことができるネット上のサービス、comicoで「それ行けシンセ女子/L.F.O.」というタイトルの連載がスタートしており、とっても面白いんです。ミッション系の女子高に通う3人の女の子たちが繰り広げるシンセサイザをテーマにした物語。
軽いタッチで書かれているので、シンセについてまったく知らない人でも楽しくサラっと読むことができる一方、細かく読んでいくと、その中にはシンセに関するさまざまなノウハウ、さらには音楽に関する数多くの情報がちりばめられているので、結構勉強にもなっちゃうんですよね。
comico上で展開されれている高校生女の子3人を主人公とした小説、「それ行けシンセ女子/L.F.O.」
ページのトップに登場する挿絵を見ると、そこにはMOOG IIIcがドンと描かれているのに気づきますよね。comicoにある挿絵は拡大できないのですが、特別に入手したここに載せた画像を拡大表示させると、MOOG IIIcの細部まで正確に描かれているのが分かると思います。
登場人物は小柄で元気なリサ、ピアノ同好会に所属しているメガネっ子のフミカ、それにお金持ちな家のお嬢様であるオミの3人。単にシンセを買ってきて弾く…なんていうのではなく、電子楽器に興味を持ち、電気関連の知識も豊富なリサがVCOから自作していくという、かなりマニアックな内容を、サラりと学園ドラマに仕立てているんですよね。
3人が学校を飛び出してアキバに部品を買いに行く…なんてシーンも登場するのですが
ほんじゃ買ってみましょう
50kΩって書いてるのを
25個この青いお皿に入れて
お店の人に渡すシステムなのだ!
なんていう会話が出てくるんです。ここでは半固定抵抗を買っているんですが、どう考えても素人が書いてる内容ではないんですよね。いわゆるプロの犯行!
この文章を書いているのはMikBugさん、挿絵を描いているのは、みずなともみさんで、お二人ともプロ。そして、その二人を動かしているプロデューサーは、安西史孝さんだったんです。ご存知の通り、安西さんは「うる星やつら」や「みゆき」といったアニメ音楽を手掛けたことや、テクノポップバンド「TPO」のメンバーだったことでも知られる人物であり、私個人的にいうと、家がすぐ近くのご近所さん。
「それ行けシンセ女子/L.F.O.」の仕掛け人でありプロデューサーである安西史孝さん
今回の「それ行けシンセ女子/L.F.O.」についても、安西さんから「ちょっと面白い試みをしているので読んでみて!」と言われた知ったのですが、想像していた以上に楽しい内容で、マニアックなシーンを読んでいて、ニヤけてしまいます。「楽器エフェクタ製作集」を扱ったトランジスタ技術の8月号の話題なんかも出てきてしまうくらいですからね…。
音楽理論としてもモノフォニーからポリフォニー、そしてホモフォニーへと変遷していった経緯から考えると、本来は「ポリフォニックシンセ」ではなく「ホモフォニックシンセ」と呼んだほうが正しいのかも…、なんて話題まで出てくるので奥が深いですよ。
でも、安西さんはなぜ、こんなラノベをプロデュースすることになったのでしょうか?
「いま友人とネット上のシンセショップを運営しているんですが、そのお客さんに配布できるグッズを作るに当たり、萌え系のキャラクタがあったらいいな、と考えたのがキッカケです。3人の女の子という設定を企画していたら、だんだん構想が大きくなってきちゃって……。だったらプロの人に頼んでみようか、ということになって、MikBugさんとみずなともみさんにお願いしたんですよ」(安西さん)
みずなさんには安西さんのスタジオに来てもらって、MOOG IIIcを正確に描写してもらったのだとか……。MikBugさんにも、安西さんから、かなり詳細な指示を出しているからこそ、あんなマニアックな内容になっているわけですね。
ちなみに、comicoはWebサイトでも見れるほか、iOSやAndroidの無料アプリを使っても見れるようになっており、「それ行けシンセ女子/L.F.O.」のデザインはアプリ用に最適化しているとのこと。
現在comicoの中での「ベストチャレンジ作品」という扱いになっていて、「お気に入り」や「オススメ」が増えると公式に昇格して、より多くの人に読んでもらえるようになるのだとか…。読むこと自体は誰でもできるのですが、「お気に入り」にチェックを入れるためにはcomicoへの登録が必要なこと、またcomicoのユーザーインターフェイスが分かりにくく、トップから「それ行けシンセ女子/L.F.O.」へたどり着くのは、ほとんど不可能なのが難点。
とはいえ、よかったら、ぜひ読んでみてくださいね。
【関連情報】
それ行けシンセ女子/L.F.O.