今さら何を言っているんだ…と言われてしまうかもしれませんが、SteinbergのiPad用DAW、Cubasisって、物凄いアプリに進化していたんですね。2012年12月にリリースされて後にすぐに使って「iPad版のCubase、“Cubasis”は超強力DAWだった!」という記事を書き、しばらく使っていました。が、ここ半年近くあまり使っていなかったので、久しぶりにこのCubasisを使ってみたところ、その大きな進化にビックリしました。
そう、Cubasisはもともと、PC上のCubaseにも近い機能を持った強力なDAWだったわけですが、その後のバージョンアップによって、マルチポートでのオーディオの入出力をサポートし、Inter-App Audioへの対応によってVSTプラグインのようにソフトシンセを追加したり、エフェクトを自由に増やして使えるようになり、かなりCubaseに近いところまで進化していたのです。
※Inter-App Audioの詳細については「iOS7のInter-App Audio機能はiOS DTMの革命だ!」をご覧ください
最新のCubasis 1.7.2では機能が非常に強化されている
まずマルチポートでのオーディオの入出力についてですが、これを利用するには、SteinbergのUR44やUR28M、またPreSonusのAudioBox 44VSLなどのUSB Class Audio 2.0に対応したマルチ・入出力を持つオーディオインターフェイスが必要となります。
iPadにUSB-Lightningカメラアダプタ経由でUR44を接続
これをUSB-Lightningカメラアダプタ経由でiPadと接続すると、Cubasisからはマルチポートとして見えるのです。オーディオトラックのインスペクターを開くと、Routingというところがあります。
オーディオトラックのインスペクタで、Mono入力かStereo入力かを選択
そこでAudioの入力として、MonoおよびStereoが選択できるようになっているので、いずれかを選択した上でチャンネル設定を見ると、オーディオインターフェイスに搭載されている数のチャンネルが見えてくるので、ここから選択をするのです。
UR44の場合、入力は1/2ch、3/4ch、5/6chという3つの選択肢から選ぶことができる
たとえばUR44の場合6IN/4OUTという構成なので、全部で6ch分の入力から選択できるようになっているのです。
出力チャンネルも1/2、3/4chから選ぶことができるが、両方同時出力も可能
またそのトラックを再生するチャンネルの設定も可能です。こちらも同じく搭載されているチャンネル数分の選択が可能なので、たとえばボーカルだけは1+2ch、残りのパートは3+4chから出力することも可能だし、ボーカルトラックは1+2chと3+4chの両方に出力するといったこともできるのです。
そして、もちろんCubasisでは複数トラックの同時レコーディングができるので、1つ目のオーディオトラックはモノラルでボーカル、2つ目もモノラルでギター、3つ目はピアノをステレオで……というように、同時に別パートを別々のトラックにレコーディングしていくことも可能となっています。
もちろん24bit/96kHzでのレコーディングも可能となっている
レコーディングフォーマットは16bit/44.1kHzはもちろんのこと、24bit/48kHz、さらには24bit/96kHzまで対応しているので、レコーディングという面においてはPCに見劣りしないし、持ち歩きの手軽さという意味ではPCと比較しても圧倒的に便利。リハスタに持ち込んでレコーディングしたい…といったニーズにはピッタリだと思います。
さらに、大きく進化しているのがプラグイン部分です。正しくはプラグインではなく、以前にも紹介したInter-App Audio対応についてです。すでにGarageBandでも対応しているので、もはや珍しい機能ではないのかもしれませんが、やっぱり非常に強力です。
標準搭載の音源はHALion SONICをベースとしたMICRO SONIC
まず標準搭載の音源が、MICRO SONICというものになり、初期バージョンと比較して、使いやすくなっています。おそらく音源自体は変わっていないのだと思いますが、ユーザーインターフェイスが用意されると同時に、発音テストやエンベロープの調整もできるようになっています。
音色設定のメニューの上部にはInter-Appという項目があり、ここに現在インストールされているソフトシンセが表示される
しかし、このMICRO SONICの音色一覧の中にInter-Appという項目が登場し、ここに現在自分のiPadにインストールされているInter-App Audio対応のソフトシンセの一覧が表示されるのです。私のiPadの場合、ArturiaのiSEMやiMini、SteinbergのNanologue、YAMAHAのSynth Arp & Drum Pad、bismarkさんのbs-16iなどが並んでいるわけですが、ここで、それらのシンセを選ぶと、まるでVSTiのプラグインのように、トラックに組み込むことができるのです。
たとえばiMiniを選択すると連携したことを示す画面が表示される
実際にはCuabsisの裏側で起動しているのですが、アイコンをクリックすると、ソフトシンセ側の画面に移動することができ、そこで演奏した結果をCubasisへレコーディングしていくことも可能になるのです。
iMiniのアイコンをタップするとiMini画面に移る。ここで演奏した結果をCubasisにレコーディングすることも可能
もちろん、トラックごとに違う音源を組み込んで使うことができるのですが、あまり多くの音源を組み込むとCPU負荷が大きくなるので、CPUのレベルメーターを見ながら増やしていくのが良さそうです。
Insert Effects、Send EffectsにInter-Appという選択肢がある
さらに、このソフトシンセとはまったく別にInter-App Audio対応のエフェクトを組み込んで使うこともできます。こちらはトラックごとに独立して利用できるインサーションエフェクトが1つのトラックにつき3つあります。またそれぞれのトラックから一緒に送るセンドエフェクトも2つまで組み込むことができます。こちらもまさにVSTプラグイン感覚ですよね。
オーディオトラック、MIDIトラックのInsert Effectsに外部のエフェクトを挿入することが可能
ただし、ソフトシンセに比較するとInter-App Audio対応のエフェクトの数はまだ少ないようです。私が持っているのはIK MultimediaのAmpliTubeとHoldernessMediaのEchoPadくらい。もっと単純でいいので軽い動作のマルチエフェクトなんかが出てきてくれると便利だと思うんですけどね……。
さまざまな機能を持つInter-App Audio対応のエフェクト、EchoPad
Inter-App Audioという仕組みを用いて、iPad専用のソフトシンセやエフェクトを組み込んで使うため、Cubaseそのものを再現するというわけではありませんが、かなりCubaseに近いDAWになっていることがわかると思います。
円安の影響で価格は5,000円に上がってしまいましたが、この機能、性能を考えれば、十分価値のあるDAWだと思いますが、いかがでしょうか?
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コメント
藤本さん初めまして。
藤本さんの記事に感化されCubasisを購入し遊んでいます。
今回歌やギター、キーボードといった音が欲しくなったため、オーディオインターフェースを購入しようと思い、iRig Proを検討しています。が、irig のHPを見ると、Garage bandには対応していると記載されているのですが、Cubasisについては特になかったので心配になりました。
初歩的な質問で申し訳ないのですが、irig proはcubasisにも対応しているのでしょうか。
DTM初心者さん
こんにちは。はい、iRig Pro、Cubasisでまったく問題なく使うことができますよ。
藤本さん、こんばんは
Cubasisを導入いたしました。結構面白く使えそうです。
ところでiPadへMIDIをWiFiで飛ばせるという話がチュートリアルのビデオで説明されています。
https://youtu.be/jVNNjnHe4qo
3:30あたりで、MIDIを設定する方法を説明しているのですが、どうも私のは上手くいきません。
藤本さんの以前の「SONAR X1とiELECTRIBEを同期させてみた」でrtpMIDIの設定については出ているのですが、どうしても自分のiPadが現れません。
MIDI接続をケーブルを使ってやると電源供給なども問題になるので、そんなことせずにPCのMIDIキーボードでCubasisを使えればと考えています。
またCubasisを取り上げる機会があればぜひともこのMIDIのWiFi接続についての解説を頂ければすごくうれしいです。
なにとぞ、よろしくお願いします。<(。_。)>
TM STUDIOさん
こんにちは。WiFi MIDIなかなか便利ですからね。
Windowsの場合、rtpMIDIを使うしかないのですが、相性問題などもあるようで、こうすればうまくいく、というのがないみたいなのです。お互い同じLANに接続されていることが前提であり、ルーター越しに別のプライベートIPなどに割り振られるとうまくいかないことも多いようです。
私もいつも使い方を忘れてしまうので、このiELECTRIBEでの記事を見ながら設定しているのですが、ネットワーク接続を切り替えるなどして再チャレンジしてみてください。
藤本さん、返信ありがとうございます。
全てが快適に無線でつなげる世の中には、なかなかならないものですね。(笑)
特にiOS系の機器はケーブル接続が一筋縄ではいかないため、ワイヤレス方式が欲しいです。
ライブでもケーブル無しで、サウンドのデータを送る方式が一般化すれば良いと思うのですが、なかなか出てきませんよね。早いとこ技術を実用化してくれないかなぁ。
Cubasisを検討してます。っていうかiPadProか、MacBookProかを迷っています。
もともとWindowsでcubaseを使ってました(初心者です)が、Macに乗り換えようと思ったところでipadproの発表…。
ポイントはcubasisで楽譜入力機能(スコアエディター?)なんですが、調べてもよくわかりません。
ご存知でしたら教えてください。
藤本
言葉足らずでした。
楽譜入力ができるかどうかを調べてもわかりませんでした。
ということですm(__)m
藤本さん
CubasisのMIDIの編集機能はピアノロールだけですね。なので譜面入力機能はありません。また、やはりiOSのDTM、かなり進化してきたとはいえ、機能的、性能的にみるとPCにははるか及びません。やはり本格的にやる目的ならMacやWindowsを使うことをお勧めします。iOSはやはりサブ的だったり、簡易的な手段と割り切ったほうがいいと思いますよ。
藤本さん
CubasisのMIDIの編集機能はピアノロールだけですね。なので譜面入力機能はありません。また、やはりiOSのDTM、かなり進化してきたとはいえ、機能的、性能的にみるとPCにははるか及びません。やはり本格的にやる目的ならMacやWindowsを使うことをお勧めします。iOSはやはりサブ的だったり、簡易的な手段と割り切ったほうがいいと思いますよ。
迅速な回答ありがとうございます。
参考にさせてもらいます。
私は型から入る癖があり、演奏ができないならsonarの方がいいよと言われつつ、なんとなくかっこいいという理由だけでcubaseを使ってます。
初心者の質問で申し訳ないんですが、ステップ入力するには二つを比べたらsonarの方が使いやすいというのは本当でしょうか?また具体的にどんな違いがあるんでしょうか?
素人の質問なので、他のところで同様の回答があるのであればその場所を教えていただけても結構です。
再びよろしくお願いします。
藤本
藤本さん
SONARとCubase、どちらが使いやすいかは人によるので、何とも言えません。
ただ、ステップ入力という意味では、SONARにはステップシーケンサ機能
があるのは大きいと思います。いわゆるドラムマシン的な入力など
マトリックス入力ができ、同じ手法でシンセの入力も可能です。
ただ、ステップシーケンサは、本当に機械的なリズムを作るのが目的となる
ものなので、テクノ系とかEDM系には非常にマッチするものの、そうでない
ものには、あまり向かないかもしれませんね。
ありがとうございます!
私はホンワカ的な曲を作るのが好きなので、今後もcubase を使うつもりでMacBookの購入を検討してみます♬
藤本様、以前、iOSのDAW“Cubasis”において、Inter-App-Audio経由での打ち込みデータのオーディオ化に、不具合の症状が出る、という件で質問した者です。
さきほど、愛用のiPadからCubasis自体を一旦アンインストール(削除)して、再インストールして、上の事を試してみましたら、正常に処理してくれるようになっておりました。なので、もしかしたら、私個人的な症状であった可能性があり、たいへん失礼いたした事になり申し訳ありませんでした。
一言、上の事をお断りしたく、コメントさせていただきました。
アプリに不具合が出た場合、アプリ自体を再インストールしてみる、という事も試してみる事も大事ですね。ホントにすみませんでした。これからも拝見させていただきます。失礼いたしました。
西成さん
情報、ありがとうございます。実は私は、まったく違う症状が出ていてちょっと困っていたところでした。どうしてもテンポが揺れておかしいので、西成さんの話も併せて、今週、別件のついでに、ヤマハに相談するくつもりでいました。が、とりあえず、うまくいってよかったです。私も再インストールしてみます。
藤本さんはじめまして。この記事を読んでiSEMシンセサイザーを購入したところcubasisからmixerのマスターボリュームが消えてしまいました。どうすれば復活できますか?