「VOCALOIDでの曲作りにチャレンジしてみたい」、「パソコンを使ってDTMをはじめてみたい」と思いながら、どこから手をつけていいか、何を買えばいいかわからず戸惑っている方も少なくないと思います。そんな中、ヤマハから、初心者向けのDTMパック製品、「VOCALOIDスターターキット」というものが年末に発売されることが発表されました。
オープン価格とはなっていますが、店頭での実売価格が16,800円前後とのこと。これならとっても手軽にはじめられそうです。どんな製品なのか、初心者の方にもわかりやすいように解説してみたいと思います。
年末に発売されるVOCALOIDスターターキットのパッケージ
DTMとは、DeskTop Musicの略であり、パソコンを使い机の上で音楽を制作することを意味しています。そのDTMをする上で必須となるのが
・ハード=オーディオインターフェイス
・ソフト=DAW
の2つです。オーディオインターフェイスとは、PCでレコーディングや再生をするための機材。「PC標準のマイク端子やヘッドホン端子ではだめなの?」と思う方もいると思いますが、基本的にダメ。音質面や楽器との接続性、また発音のタイミングのズレ……などなどの問題があり、DTM用途としては使えないからです。そのため、USB接続をするオーディオインターフェイスという機材が必須となるのです。
VOCALOIDスターターキットに同梱されるオーディオインターフェイス、CI1
一方のDAWというのはDigital Audio Workstationの略であり、まさにDTMの要ともいうもの。このソフトを使って、ボーカルをはじめ、ギターやピアノなどのレコーディングを行い、どんどん重ね録りを行って、音楽を作り上げていくのです。また、実際の生音をレコーディングする以外にも、いわゆる「打ち込み」という機能が用意されており、PCの画面上で曲データを作り上げていくことも可能になっているのです。
PC上で音楽制作をするためのソフトがDAW。画面はCubase AI 7
この打ち込みにおいては、ソフトウェア音源、ソフトシンセなどと呼ばれる機能も用意されており、実際の楽器を用意しなくてもソフトウェア的にすべて音作りができてしまう、というのがDAWの面白いところです。一昔前なら何十万円もしていた機材をソフトウェアで実現し、演奏できてしまうというのが、現在のDAWなのです。
ただし、オーディオインターフェイスもDAWも数多くのメーカー、数多くの製品が出ているので、何を買えばいいか、なかなか難しいところです。価格的にも1万円程度のものから10万円以上のものまでさまざま。ただ、個人的に思うのは、いきなり高機能・高性能な製品を選ぶと使い方が難しくて戸惑ってしまうので、まずは手ごろでシンプルな製品を選んで使ってみてから、自分のニーズにあったものへステップアップするのがいいのでは……と思っています。
一方、DAWもさまざまなものがあり、どれがいいかは人によって違うのも事実です。では、何が人気製品なのかという点については、2013年3~4月にDTMステーションでアンケート調査を行っており、810件の回答が集まりました。
春に行ったアンケート調査ではCubaseがシェアトップの30%だった
その結果が上記のグラフであり、一番人気はちょうど30%でSteinbergのCubaseとなっていました。
ところで、ここでちょっと話題をVOCALOIDへと移してみましょう。ご存じのとおり、VOCALOIDは初音ミクに代表される歌声合成ソフトであり、初音ミクのほかにもMegpoidやIA、結月ゆかり、がくっぽいど、KAITO……とさまざまなキャラクタが存在しています。
いずれもVOCALOIDエディターというものを用いて、データの入力を行います。そしてどの歌声にするかは、別途、VOCALOID歌声ライブラリーというものをインストールすることで決まり、必要に応じて複数の歌声ライブラリーを同居させて、切り替えて使うことも可能になっています。
ただし、VOCALOIDというソフト自体はあくまでも歌声だけを作るものであり、バックに鳴るギターやベース、ドラム、キーボード……といったオケの部分を作ることはできません。そして、そのオケを作るソフトこそが、前述のDAWなのです。そしてDAWにVOCALOIDの歌声を取り込み、DAW上でミックスすることで、作品ができあがるわけですね。
VOCALOID Editor for Cubaseの登場によりVOCALOIDがCubase上で動作するようになった
従来、VOCALOIDエディターは単独のソフトであったため、VOCALOIDエディターで書き出した歌声のデータをDAWに取り込んで、ミックスするという作業が必要でしたが、2013年になり「VOCALOID Editor for Cubase」(ボカキュー)というソフトが誕生したことで、VOCALOIDの機能がDAWであるCubaseに統合されたのです。最新の製品である「VOCALOID Editor for Cubase NEO」であればWindows上でも、Mac上でも使えるようになっているのです。
VOCALOIDスターターキットはオーディオインターフェイス、DAW、ボカキューの3点セットとなっている
というような前提を理解していただいた上で、今回発売された「VOCALOIDスターターキット」という製品について見てみましょう。この製品は、実売16,800円程度というものながら、
・CI1(オーディオインターフェイス)
・Cubase AI 7(DAW)
・VOCALOID Editor for Cubase NEO
・Sequel LE 2(ループシーケンサ)
・WaveLab LE 7 (波形編集ソフト)
がセットとなっており、まさにVOCALOIDを使ったDTMをスタートさせるのにピッタリな製品となっているわけですね。いずれもWindowsでもMacでも使える構成ですから、自分のPC環境に合わせて利用することができるのです。
オーディオインターフェイスCI1にはマイクやギター、オーディオ機器などを接続して録音できる
ただし注意しなくてはならないのは、ここには前述の歌声ライブラリーが入っていないことです。これだけは、自分の好みに合わせて初音ミクV3やMegpoidなどを別途購入する必要があります。ただ、もしとりあえず、どんなものなのか動かしてみたいというのであれば、先日の記事「ボカキューに新機能搭載!年末には解説書も登場だ!」にも書いたとおり、MewというVOCALOIDの歌声ライブラリーの試用版(14日間使えるというもの)を無料でダウンロードして使えるので、これを試してみるのもいいと思いますよ。
ちなみに、まさにVOCALOIDスターターキットを使う上でピッタリな解説書「ボーカロイド for Cubase公式完全マスター」という本もあるので、これを利用しながら、DTM&VOCALOIDにドップリとハマってみてはいかがですか!
ループ素材を並べるだけで音楽制作ができるSequel LE 2
なお、Sequel LE 2というのはループ素材を並べていくだけで音楽が作れてしまうというユニークなツール。音楽理論などまったく知らなくても、気に行った音の素材を並べるだけで曲ができていくので、なかなか便利です。こうしてできた曲をCubase AI 7に流し込んでVOCALOIDと合わせるというのもありですね。
またWaveLab LE 7を使えば、最終的にできあがった楽曲のマスタリングもできてしまいます。初心者には、ややとっつきづらいソフトかもしれませんが、ある程度、理解してきたところで、大きな威力を発揮してくれるはずですよ。
【関連情報】
VOCALOIDスターターキット製品情報
CI1製品情報
VOCALOID Editor for Cubase NEO製品情報
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【価格チェック】
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