1月24日~27日にアメリカのアナハイムで開催されているNAMM SHOW。私自身は残念ながら現地には行けず、国内にいるままではありますが、その1週間程度前からNAMMで発表される新製品に関する情報について各方面から聞こえてきています。そんな中、「これは!」と思ったのがTASCAMブランドのTEACのオーディオインターフェイス、US-366という製品です。
24bit/192kHz対応で最大6入力/最大6出力、DSPミキサーを搭載した上に、リバーブ、コンプ、EQといったエフェクトを装備するという強力なもの。しかも実売価格が17,800円程度というから驚きです。NAMM開催前に、TEACに行ってこっそり見せてもらったので簡単にレポートしてみましょう。
TASCAMがNAMMで発表する予定のオーディオインターフェイス、US-366
TEACがTASCAMブランドでNAMM SHOWで発表するのはオーディオインターフェイスのUS-366とUS-322(実売14,800円前後)、それに以前紹介したSDカード録音のMTR、POCKETSTUDIO DP-008の後継モデルとなるDP-008EX(実売29,800円前後)とDP-006(実売19,800円前後)の計4製品です。
NAMMで発表した4製品、US-322(左上)、US-366(右上)
DP-008EX(左下)、DP-006(右下)
DP-008EXおよびDP-006はどこでもマルチトラック録音ができる簡単操作のMTRですが、試聴を繰り返して構築されたという高音質ステレオマイクを搭載したことで、そこらのマイクで録音するよりもずっといい音で録れるようになったというのが特徴であり、DP-008EXには各種エフェクトを搭載しているほか、簡単に音を自動解析した上で自動マスタリングする機能などが用意されているのがポイントとなっています。
エフェクト機能搭載のDP-008EX。フロント下、左右にあるマイクが非常に高性能
その一方で非常に興味深いのが冒頭で触れたオーディオインターフェイス、US-366です。アルミボディー(サイドはプラスティック)のかなりガッチリした質感で、ノブなどがあるパネル面がトップにあるという、まさにDTM向けのデザイン。フロントにはXLRの入力およびTRSフォンの入力(XLRとTRSはいずれかを使う切り替え)があり、中央にヘッドホン出力が用意されています。
US-366のフロントにはXLRのマイク入力が左右外側、TRSのライン入力がその内側
(うち左側は切り替えでギター入力)、中央にヘッドホン出力がある
一方、リアにはTRSフォンのメイン出力が2ch、オプティカルおよびコアキシャルのS/PDIF入出力があるほかに、RCAアンバランスのピンジャックが2つ用意されています。実は、このピンジャックが、ちょっとトリッキーな構造になっており、底面のスイッチを切り替えることによって、入力にも出力にもなるという非常にユニークなものとなっているのです。つまり入力にしておけば6IN/4OUT、出力に切り替えれば4IN/6OUTになるというわけ。確かに、入力、出力とも同時に6ch欲しいというケースは少なそうですから、これはとってもいいアイディアだと思います。
中央のピンジャックの右側、「LINE」と書かれている白と赤はスイッチ切り替えで
入力としても出力としても使える
さらに面白いのが、このオーディオインターフェイスにはDSP(オーディオを高速にデジタル処理するためのIC)が搭載されているという点。これによってデジタルミキサーとエフェクトという2つの機能を実現しているのです。
底面には切り替えスイッチが3つある。左はデジタル入力のOPT,COAXの切り替え、
中央はLINEを出力にするか入力にするか、右はマルチトラック、ステレオミックスモードの切り替え
まずミキサーですが、これはモード切替によって大きく異なる2つの機能を実現できるようになっています。1つがマルチトラックモードで、まさにDTM向けのもの。インプット(パソコンへの送り音量)と別にモニター(演奏中に聴く音量)を調整できるため、プレイヤーが聴きやすい音量で最適なレベルでの録音が可能になるというものです。
それに対しステレオミックスモードというものがあり、こちらに切り替えると外部からの入力に加え、PCからの再生音を内部でミックスした上で、再度PCへ送ることができるというもの。つまり、ニコ生やUSTREAMなどのインターネット生放送、さらにはYouTubeやニコ動用の動画作成、動画編集用途で威力を発揮できるモードなのです。
さらに、このステレオミックスモードでは、エフェクトを掛けた音を扱えるというのが大きなポイント。たとえばPC上でオケを再生しながら、これに合わせて歌うボーカルにリバーブなどのエフェクトを掛けた状態でミックスして録音ということができるんですよね。
そのエフェクト機能ですが、これがまた充実しているんです。大きくダイナミクスエフェクトと、センドエフェクトに分けることができ、ダイナミクスエフェクトとしてはコンプと3バンドEQが用意されています。一方のセンドエフェクトはリバーブが使えるようになっています。
こうしたエフェクトがかけられる機材として、以前はRolandのUA-4FXがありましたが、UA-4FXがディスコンになった今、それに対応する機材がなくて困っていたという人も少なくないはず。そうした人たちにとっては待望の機材の登場といえるのではないでしょうか?
もちろんこれらエフェクト機能はネット放送用で利用できるだけでなく、DTMにおける掛け録り用にも、モニタリング用にも利用可能です。ボーカルをレコーディングする際、生の歌声をモニタリングして行うのはちょっと苦痛という人も少なくないでしょう。最終的ミックスはプラグインで高品位なリバーブやコンプなどをかけていくにせよ、歌うときにもせめてリバーブは欲しいところ。レコーディング自体には反映されないけれど、モニタリング用に使うエフェクトとして、PCに負荷をかけずにオーディオインターフェイス側で処理してくれるというのは、とても便利だと思います。
なお、各種設定はPCの画面上で行うわけですが、そのためのDSPミキサー画面を一発で呼び出すことができるボタンが用意されているのも使い勝手の面で見逃せないポイントですね。
US-366の下位モデル、US-322。こちらは24bit/96kHzでエフェクト機能はない
ほかにも数多くの機能が搭載されているようですが、今回は実物をちょっと見ただけで自分で使っているわけではありません。発売は2月とのことですから、入手し次第、また改めてレポートしてみたいと思っています。
【追記】
Twitter上で質問があがっていたので補足。Windows上ではASIO、Mac上ではCoreAudioに対応。またDAWとしてSteinbergのCubase 6 LEが付属します。
【価格チェック】
Amazon ⇒ US-366
サウンドハウス ⇒ US-366
【関連情報】
TASCAMトップページ
US-366製品情報
US-322製品情報
DP-008EX製品情報
US-366/US-322プレスリリース
DP-008EX/DP-006プレスリリース
コメント
はじめまして!
貴著をいつも楽しませていただいてます。
DTMを数年ぶりに再開するにあたり、どれだけ調べてもわからないこともあり、失礼を承知、でご教授をお願いできましたら幸いです。
僕はドラマーです
・テクノトラック打ち込みとギターなど生楽器のレコ
・ライブでのステレオ出力しながらのクリック出し→同期演奏
がしたいんです
モノラルなら事は簡単なんですが…
昔はミュージ君やyamaha V50で制作してました。
midiで外部音源をクリック出し専用に使用してました
10年以上ぶりにDTMを再開しようと思い、ipad、藤本さんのiPad音楽制作ガイド、nanosutudioで打ち込みしてます。
・このus-366(僕の使用用途だと322か)はipad、どうでしょう?
・duo capture EX、io dockと、322で迷ってます。これらの中で、単独HDDレコーダのような、クリックが別出力はない?
・DUOはプリアンプ内蔵ですが、要は圧をあげて録音できるんですよね?iodockにはプリアンプは入ってないのでしょうか?そういう意味では、録れる音質は全然違うものなのでしょうか?
・DUOを買うと、PC環境がソナーLE、ipadはcubasisになりそうです。
ソナーの両方を勉強するのは大変か→藤本さんのLE解説書買え、という結論か
・そもそも、ipadからこれら製品のmidiアウトから、外部音源を鳴らしてクリックを出し可能か、もしくは、システム構築としてイケてるのか。
・藤本さんはcubase LEの解説書は出されないのか?
たくさんの??があります。
こういった構築は、本来とても楽しくて、自分で考え試行錯誤するべきなのですが、
なにぶん、用途が特殊なのか、情報が少なくて困っております。
直接、お伺いし、授業料をお支払いすべき質問内容だと思いますし、可能でしたらそうしたいところです。
お忙しいとはお察ししますが、どうか、よろしくお願いします。
玉野さん
こんにちは。なるほど、クリックを出しながらの同期をやりたいというわけですね。残念ながら、iPadではマルチポート出力をサポートしているDAWが現在ありませんので、ステレオで出力+クリックというのは不可能だと思います。
ただ、先日のSpin2の記事でも書いたとおり、iOS6でマルチポート出力がサポートされたので、今後は可能になると思いますよ。
US-366、私もまだ試作機を見ただけで、実際に使っていないので詳細についてはわかりません。
で、SONARとCubase、両方を使っている人はいっぱいいるし、勘所さえつかめば、それほど難しくはないと思いますよ。ぜひ、BASIC MASTER SONAR X1 LEをどうぞ。
それからCubase LEの本も出てますよ!リットーから出している、「Cubase 6 Series徹底操作ガイド (THE BEST REFERENCE EXTREME) 」をぜひどうぞ!
http://www.amazon.co.jp/gp/product/4845620545/ref=as_li_ss_tl?ie=UTF8&camp=247&creative=7399&creativeASIN=4845620545&linkCode=as2&tag=fractaldecojp-22
ちなみに「6.5」の本はLEをサポートしていませんのでご注意を。
藤本さん、こんにちは。
いつも最新機種の情報ありがとうございます。
US-322/US-366は、かつてインターネット放送では、
一世を風靡したUA-4FXの後継になりそうな機種ですね。
リバーブをStereo-mix Modeでリターンできる所が。
是非、2機種ともRMAA Proやレイテンシのテストを
実施していただければと思います。
価格もやすくCubase6LEも付属とあって、
知人の趣味で歌をやっている方に、
安心してオススメできる機種かどうかを、
是非しりたいと思うような、そんな機種ですね。
期待しておりますー。
きさらぎさん
こんにちは。ありがとうございます。
はい、ぜひ入手し次第、レポートしてみたいと思います。
3月発売とのことなので、まだしばらく先になるとは思いますが…
藤健さん!
TASCAMの時代来ましたね!!
今までTASCAMの低価格インターフェースと言うと、
入力ないし出力が少なかったり、ミキサー無かったりで
初心者が買って後悔するイメージだったのですが、
これはTASCAMのインの音量とモニターの音量を
ぬるぬる調整できるのを残しつつ、
弱点をカバーして、エフェクトまで付いてるとは
まさに痒いところに手が届きますね。
これなら配信もDTMもこれ一台ですんなり行くので
初心者さんに安心して勧められます。