鈴木Daichi秀行さん、田辺恵二さんを中心にガチプロ作家勢によるSynthesizer Vコンピアルバム第2弾。一般枠公募もスタート

ちょうど2年前「鈴木Daichi秀行、田辺恵二、松隈ケンタ、瀬川英史、水島康貴……ガチプロ作家勢がSynthesizer Vのコンピアルバムを作成!?一般枠の公募も開始」という記事で、プロジェクトがスタートしたことをインタビューし、2023年5月に『AIボーカルコンピVol.1 with Synthesizer V AI』としてアルバムがリリースされたことを「鈴木Daichi秀行、田辺恵二、松隈ケンタ、本間昭光…超豪華メンバーによるコンピアルバム『AIボーカルコンピVol.1 with Synthesizer V AI』が5/19配信スタート」という記事で紹介したことを覚えている方も多いと思います。

そのSynthesizer Vを使ったコンピアルバムの第2弾プロジェクトがスタートすることが先日発表されるとともに、その詳細が明らかになりました。今回も作編曲家でプロデューサーの鈴木Daichi秀行さん、田辺恵二さんのお二人が中心となって制作がスタートした形ですが、J-POPを中心とした楽曲だった前回とは少し趣が異なり、メタル系、ダンス系、アニメ系、劇伴系、シンセサウンド系……など、より多彩なジャンルの音楽を収録するアルバムにするとのことで、幅広いプロ作曲家に声をかけているようです。また、これに合わせ、2月末締め切りという形で一般枠での公募もスタートしています。実際、どんな内容で展開するのか、インタビューしていました。

前回のアルバム発表タイミングから、プロの間でもSynthesizer Vが浸透

--今回のコンピアルバム第2弾の話に入る前に、2年前のアルバムを振り返ってみて、その反響などはいかがでしたか?
Daichi:アルバムとして必ずしも大ヒットというわけではありませんでしたが、非常に大きな反響がありました。作家陣の間でも、このアルバムの話がキッカケとなって、Synthesizer Vを使う人が非常に増えた印象です。
田辺:いま我々の周りの作曲家、編曲家を見たとき、ほとんどの人がSynthesizer Vを使っているのではないかと思います。中にはいろいろなライブラリを揃えている人もいますが、Maiが無料で使えるということもあり、Maiだけで利用している人も結構見かけますね。


鈴木Daichi秀行(すずき・だいち・ひでゆき) X @daichi307
バンド「Coney Island JellyFish」のメンバーとしてSonyMusicよりメジャーデビュー。YUI、絢香、miwa、家入レオなどのアレンジ、サウンドプロデュースからハロー!プロジェクト、SMAPなどの編曲など幅広く活動している。近年では新たな才能を求め新人発掘、育成などにも力を入れ自社スタジオ【Studio Cubic】を活動拠点として、自身の音楽レーベル【Studio Cubic Records】を設立、運営している。

--実際、プロの作曲家、編曲家のみなさんは、Synthesizer Vをどのような目的で使っているのですか?
Daichi:仮歌用に使っている人もいますが、作曲の段階で歌わせてニュアンスを確認するのに使っている人が多いように思います。曲を作っている段階でリアルタイムにメロディを歌わせて試せるのは非常に大きいです。シンセメロだとなかなかニュアンスが掴めないし、たとえば女性ボーカルの場合、以前だと自分で歌ってピッチを上げて…といったことも試していましたが、なかなか自分で女性ボーカルを確認することは難しい中、Synthesizer Vの存在は非常にありがたいですね。
田辺:Synthesizer Vなどの登場で、仮歌の仕事がなくなるんじゃないか……なんて声も出ているようですが、そこは別問題だろうと思っています。実際の判断の結果、やはり仮歌は人に歌ってもらうケースも多いですし、Maiでいい感じだけど、もうちょっと…という場合、「Maiの中の人である橘田ほのかさんにお願いした」なんて声もよく聞きます。それよりも作曲の段階でSynthesizer Vを使えることで、より上のレベルでの話がすぐにできるようになるのが大きいです。ベーシック部分はSynthesizer Vで歌わせた上で、それよりよくするにはどうすればいいか、という議論を早い段階から進めることができるわけですから。従来なら、その段階になるまでのやり取りがすごく多く、ここに到達するまでに無駄な作業、時間がかかっていたので、そこを効率化できるという面で、われわれ仕事で音楽を作る人間にとっては非常に役立つツールなんです。また最近は作詞家でSynthesizer Vを使う人も結構出てきていますね?


田辺恵二(たなべけいじ) X @KG_Tanabe
1991年よりCHARAや古内東子のデビューアルバムに参加。及川光博やゴスペラーズのアルバム、ツアーに音楽監督、作編曲家として関わり以降SMAP 浜崎あゆみ 柴咲コウ 岡本真夜 AKB48 SKE48 他多数の作品に作編曲家として参加。2002年2006年日本レコード大賞金賞受賞(編曲)、現在は作家活動のほかネットTV MCやラジオパーソナリティなど、他分野にも精力的に活動中。

作詞家がSynthesizer Vを使うことで、仕事効率が大幅UP

--作詞家が使うというのは、どういう使い方なんですか?
田辺:作曲家側でメロを打ち込み、オケをオーディオトラックに入れた状態で作詞家に渡すと、作詞家がそこに歌詞を入れて戻してくれるという感じです。従来のテキストでのやりとりだと、譜割りなどで事故るケースが結構あったのが、これであれば確認が圧倒的にしやすくなるんです。
Daichi:作詞家がDAWを使うというと、なかなかハードルが高い面がありましたが、Synthesizer Vだけ導入すれば、完結するから、とっても作業効率が上がるんですよ。従来だと詞があがってきたら、ここに仮歌のレコーディングがあり、その後のやり取りがあって……と二度手間、三度手間だったのが、すごくスピーディーに仕事が進められるんですよね。単にSynthesizer Vを使うだけならExcelやWordを使うより簡単ですから。

--やはりSynthesizer Vの登場で、音楽制作の現場の仕事の進め方が大きく変わったということですね。
Daichi:そうだと思います。作曲家、作詞家のほかにもレーベルとかレコード会社の人で使っている人も増えてきたように思います。アーティストに歌ってもらう際の細かなニュアンスを伝えるために使ったり、仮歌の人にお願いするほどでもないようなちょっとしたものをこれで使ってやりとりする……なんてケースも出てきているようです。もちろん、ちょっとしたハモを入れるのにSynthesizer Vを使った……といった話も聞きますね。
田辺:直接の知人というわけではないけれど、アカペラサークルで使っているというケースも出てきてるみたいですね。従来であればハモリの積みを考えるのをピアノでおこなっているけど、実際に歌ってみるとちょっとニュアンスが……ということがあって時間がかかったりします。それをSynthesizer Vで試すことで効率が上がるんですよね。いずれにせよ、ベタ打ちでもそれなりに歌ってくれるという点で、作家的にはとにかく助かります。

第1弾はJ-POPだったが、第2弾は幅広い多様性を重視

--さて、今回の第2弾のアルバムについて伺っていきたいのですが、今回もSynthesizer Vのみがターゲットとなってますよね?AI歌声合成という意味ではVOCALOIDやVoiSona、CeVIOといったものもありますが、その辺は入れないのですか?
田辺:そこは優劣とかではなく、単純に少し縛りがあったほう面白いのでは、という話です。同じ条件でいろいろな人が作ったときに、共通点が出せるし、比較するのが面白いだろう、と。また、ソフトによってそれぞれ特徴に違いはあるようにも思います。とくにVOCALOIDの場合、現在のVOCALOID:AIになるとかなりリアルな歌声になりましたが、作り手がいかにうまく調声して歌わせるかという点が面白いところ。そこを追求するならばVOCALOIDがいいと思いますが、方向性が少し違うのかな、と。もっともVX-βなんかも登場していて、こちらはSynthesizer VやVoiSonaなんかにも近いイメージでかなりリアルな感じですが……。
Daichi:AIボーカルによるアルバムを作るという点で、Synthesizer Vをショーケースにしているという話です。どっちがいいという話ではなく、単にサンプルとしてSynthesizer Vをピックアップした、ということであり、キャラはいろいろ選べるけれど、同じ条件で個性をどこまで出せるかということで、アルバムを作っていきたいと思っています。

--参加する作家陣のみなさん、前回とは大きく変わるんですね。
Daichi:前回はジャンル的にJ-POPであり、普段プロの世界でJ-POPを作っている人がSynthesizer Vで作ったらこうなるよね、というのを具体化していったアルバムでした。コモリタさん作ったらこうなるよね、松隈くんが作ったらああだよね……というのを実現したんです。それに対し、今回はもう少し幅を広くして、J-POPに限らず、ロック系、劇伴系、楽器系……など、Synthesizer Vを楽器としてどこまで幅広く使えるのかを見せていく、というのも面白いかなと考えています。
田辺:だから、必ずしも歌モノに限るわけじゃなく、たとえば劇伴のコーラスにちょっとSynthesizer Vが入ってくる……といったものがあってもいいのではと思っています。

--具体的に参加する作家陣は決まっているのですか?
田辺:まだ私とDaichiさん、それぞれでいろいろな人に声を掛けている段階で、確定したわけではないのですが、Vol.1とは違うよりジャンルを広げてさまざまなクリエーターに声をかけています。
Daichi:一般公募に関して、前回は3組を採用させていただきましたが、今回は基準も大きく変えて選んでいこうと思っています。

2月末締めでコンピアルバム参加の一般公募を実施

--一般公募の基準が変わるというのはどういうことですか?
田辺:前回はJ-POPという縛りがあったので、すごくいい曲だけど、ちょっと方向性が違うので、Vol.1には収録できなかった作品が結構ありました。たとえばインストっぽいもので、とってもいい…と思ったものなどもあったんですよね。今回は逆にSynthesizer Vでこんなこともできるの!?みたいなものを採用して、可能性を広げていければと思っています。

--具体的な公募のスケジュールや、エントリー方法などはどうなっていますか?
Daichi:現在、アルバムリリースを5月中旬と考えており、4月末に完パケを予定しています。そこから逆算して、公募の締め切りを2月いっぱいとしたいと思っています。

--応募するにあたって、何か条件などはありますか?
Daichi:Synthesizer Vを使うということ以外何も縛りはないですね。歌声データベースもAHS販売のもの、Dreamtonics販売のもの、そして無料で入手できるMaiを含め、数多くのラインナップが揃ってきましたが、どれを使ってもOKです。ただし、著作権登録されていないものに限ります。つまりカバー曲はNGで、オリジナルであることが条件となります。
田辺:特に未発表曲である必要はないです。また昔、ボカロ曲として発表しているけれど、それを新たにSynthesizer Vで作り直した、なんていうのでも問題ないですよ。

--採用が決まってからの流れというのは、どうなりそうですか?
田辺:採用されたら、そこで連絡が行って、とくに何も必要なければ、そのままそれがリリースされる形ですね。
Daichi:前回はすべてまとまってからマスタリングを行いましたが、今回は多様性ということもあって、マスタリングも含めて各自行ってもらおうと思っています。何か必要があれば、こちらから修正をお願いすることがあるかもしれませんが、なければそのままでOKです。逆に、採用確定後も4月いっぱいの完パケまで少し時間があるので、何か追加で手直ししたいというようなときは、完パケまで間に合う範囲で直してもらってもOKです。最新情報は随時、「Synthesizer VコンピアルバムVol.2プロジェクト一般公募枠のお知らせ」のページを更新していきます。ぜひ、さまざまなジャンルでの楽曲の応募をお待ちしています。

--ありがとうございました。

【関連情報】
Synthesizer VコンピアルバムプロジェクトVol.2一般公募枠のお知らせ
Synthesizer V製品情報

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