元teenage engineeringのエンジニアが開発。異次元のサウンドを生み出すドラムマシンVISCO誕生

これまでにないサウンドを鳴らすことのできる、VISCO(17,600円税込)というドラムマシンが先月発売されました。これはOP-1やPocket Operatorまた先日グッドデザイン賞を取ったTP-7などで知られるteenage engineeringの元エンジニアが独立して設立したスウェーデンの会社、FOREVER 89のソフトウェア・ドラムマシン。中央にある粘土状の物体をこねくり回すことで、異次元のドラムサウンドを作ることができる、非常に画期的でユニークなツールです。

このブロブ(BLOB)と呼ばれる粘土状の形を変えてサウンドを作っていく、というのががVISCOの最大の特徴。ビートメーカー、サウンドデザインツール、ライブパフォーマンス用ドラムマシンといった3つの要素に特化した音楽制作ツールでもあり、シンプルにドラムマシンとして見てもとても優秀。シーケンサ、モジュレーションマトリックス、ミキサーなど、各セクションも高いクオリティの機能が搭載されているVISCOを試してみたので、紹介していきましょう。

元teenage engineeringのエンジニアが開発した、新しいドラムマシンVISCO

ブロブと呼ばれる粘土状にモデリングされたサウンド動かして音を作るVISCO

まずは、このVISCOの動画があるので、こちらをご覧ください。

なんとなく、どんなサウンドが作れるか伝わったでしょうか?動画のようにシンプルなドラムサウンドから、かなりトリッキーなサウンドまで作れるのが、このVISCOなのです。ほかにもデモサウンドがあり、オーソドックスなサウンドからユニークなサウンドまで確認できるので、ぜひこちらも聴いてみてください。

Dark Blossom (By OXIDE) by Forever 89

真ん中のキャンバスは、X軸が周波数スペクトル、Y軸が時間軸、Z軸(塊の大きさ)が音のエネルギーとなっており、ここの上でブロブが形を変えることによって、サウンドが作られています。

X軸が周波数スペクトル、Y軸が時間軸、Z軸(塊の大きさ)が音のエネルギー

ブロブの形状は、左にあるHand、Magnet、Eraser、Mirrorといったツールを使って成形していきます。Handツールではブロブをドラッグして目的の方法に引っ張たり押し込んだりでき、Magnetツールではキャンバス上で左クリックした場所にブロブを引き寄せることが可能。Eraserは、消しゴムツールなので、余分な所を削ることができます。そして、Mirrorツールが中でも面白く、これはX軸を反転させたり、Y軸を反転させたりできるものなのですが、一瞬でかなり特徴的なサウンドを作ることができるのです。

各ツールを使ってブロブを成形して、サウンドメイキングを行っていく

X軸は前述の通り周波数を示しているので、反転させれば、高い音が低く、低い音が高くなります。キックを反転させるだけで、ハイハットに使えるようなサウンドに変化し、オープンハイハットを反転させると金属製の大きいものを叩いたようなサウンドに変化したりと、既存のサンプルにはない、オリジナリティのあるサウンドを作ることができます。Y軸を反転、つまり時間軸を反転させるとリバースサウンドっぽい音に変わり、これもかなりユニークな音を作ることができます。

Mirrorツールを使うと、簡単にユニークなサウンドを作ることができる

VISCOでは、各キットごとにサンプルを2つ読み込むことができ、これをミックスさせつつ、ブロブで音を作っていくことができます。デフォルトで、結構な種類のサンプルが用意されていますが、自分が持っているサンプルを読み込むことも可能。横向きのバーでモーフィングさせていくこともできるようになっています。

VISCOはサンプルを2つ読み込むことができ、この2つをモーフィングさせることもできる

また、右のパラメータにあるModifyは、サウンドをリアルタイムに操作するのに役立つ部分になっており、大胆な変化を加えたいときに便利な機能となっています。Timescaleでサウンドの長さを伸縮するうことができ、Frequencyで音の高さを上げ下げすることが可能。また、Contrastを使うと、音の最も目立つ部分を強調することができ、Densityでノイズ成分を追加することもできます。ちなみに通常であれば、サンプルの時間軸を引き伸ばしたりすると、サウンドが劣化したりしますが、VISCOはサンプルを読み込むと、VISCOのモデルに落とし込まれるので、どれだけいじってもサウンドが劣化せず、自然なサウンドを再生することができます。派手な音色を作る用途以外でも、シンプルに音がいいドラムマシンとして使うことができるのです。

Modifyでサウンドをリアルタイムに操作することも可能

VISCOはライトに直感的に音作りをしていくこともできますが、かなり深いところまで作ることも可能なため、たくさんの機能が搭載されています。最初から完璧に使いこなすというのは、なかなか難しいですが、たくさんのプリセットが用意されているため、ここから音作りをスタートしていったり、使い方の参考にすることができます。

プリセットも用意されているので、ここから音作りをスタートすることもできる

また、画面下部には、8つのすべてのキットに適応されるマクロコントローラーが搭載されています。TransformでサンプルAとBのモーフィングを行ったり、Timescale、Frequency、Contrast、Densityが搭載されていて、これは前述のModifyのように操作できるので、全体のサウンドを変えたいときに便利に使うことができますよ。

マクロコントローラーを使って、VISCO全体のサウンドを変化させることも可能

ビートの完成形まで作れる、本格的なシーケンサーを搭載

ここまで、VISCOのSOUNDタブの中の機能を紹介してきましたが、ほかにもシーケンサ、モジュレーションマトリックス、ミキサーが付いているので、これらについても簡単に見ていきましょう。

まず、SEQUENCEタブをクリックすると表示される画面では、16ステップのループにビートを配置できるようになっています。クリックで打ち込んで、その上をドラッグすれば音量を調整できるようになっています。ボリュームや音の長さも表示されているので、視覚的にも分かりやすく、Export MIDIからDAWのタイムラインへドラッグ&ドロップすれば、そのままパターンを持ってくることも可能。またシャッフル分量を調整するSwing、シーケンスのタイミングのランダム性を調整するLoose Time、シーケンスのベロシティのランダム性を調整するLoose Veloを搭載しており、ここでリズムトラックを完結させることもできるようになっています。

搭載しているシーケンサーでリズムパターンを作り、DAWにドラッグ&ドロップで持ってくることもできる

時間経過とともにサウンドを変化させるモジュレーションマトリックス

MODULATEタブをクリックすると表示される、モジュレーションマトリックスでは、4つのエンベロープと4つのLFOを使用してサウンドを時間経過とともに変化させることができるようになっています。Sourceからモジュレータを選択して、Amountでかかり具合を調整、Targetで対象を選択します。Scalerでは、補助としてVelocity、Mod Wheel、Pitchbend、Aftertouch、Note Octaveを設定することが可能です。

モジュレーションマトリックスを使って、時間経過でサウンド変化させることも可能

FXも搭載し、各キットのバランスを調整できるミキサー

MIXタブを押すと表示されるミキサーでは、各キットの音量、PAN、Width、Filterを調整できるほか、出力先を選択することもできます。OutputをMainではなく、BUS1〜BUS8までを選択することにより、DAW上で各キットのボリュームを調整したり、プラグインをインサートしてさらに音を作り込むことができます。

DAW側にパラ出力を行うこともできる

また、FXを搭載しており、Send FXでリバーブやディレイなどを掛けたり、Main FXでリミッタやコンプを掛けられるようになっています。

FXを使用して、VISCO内でサウンドにリバーブやディレイを掛けることも可能

ざっとVISCOについて紹介してきましたが、いかがだったでしょうか?VISCOのデモ版は機能制限はなく、数秒ごとにノイズが入るとか無音になるとか数日間しか使用できないといったものではなく、たまに数秒間のアップグレードを促す表示がされるだけなので、割と快適に試すことができます。自分のマシンでしっかり動くかどうか確認するためにも、まずはデモ版からダウンロードしてみてはいかがでしょうか?

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