レコーディングやモニタリングでの大きな威力を発揮する。高周波ノイズ対策コア、PERFECTION Amorcrystalシリーズ

音楽制作における天敵ともいえるノイズ。このノイズをどうやって避けて、キレイな音でレコーディングしたり、モニタリングするのかは、プロ・アマチュアを問わずすべての人にとって重要な課題です。もちろん一口にノイズといってもエアコンや冷蔵庫、携帯電話、LED照明、扇風機、換気扇、PC、Wi-Fiルーターなどなど、さまざまなノイズ発生源があり、それらによって音への影響も異なるし、どんなノイズ源なのかによって、対策も異なってきます。

そうした中で、対策が取りにくいと言われているのが高周波ノイズです。デジタル機器が身の回りにいろいろある現在、高周波ノイズはいろいろなルートで乗ってきて、それによって音痩せ現象や解像度の低下、全的的なS/Nの劣化など、さまざまな悪影響が起きてしまいます。そうした高周波ノイズに効く、と話題になっているのが、先日PERFECTIONブランドからリリースされた高周波ノイズ対策コア、Amorcrystal(アモルクリスタル)シリーズ製品です。これがどんなもので、どのように使うのか、実際効果があるのかなど、チェックしてみたので紹介してみましょう。

ケーブルを通すことでノイズを低減して音質を向上させるPERFECTIONのAMORCRYSTAシリーズ

ノイズにとってRXは最後の手段で、まず行うべきはノイズ対策

読者の方や、音楽制作をしている方から、よく質問されるのが、ノイズに関するもので、「レコーディングしていて、ノイズが酷いのですが、iZotopeのRXを使えばキレイに除去できますか?ほかのツールのほうがいいでしょうか?」といったもの。

確かにDTMステーションも含め、DTMソフトレビュー記事においてiZotopeのRXやSteinbergのSpectraLayers、WavesのClarity……といったソフトが取り上げられますし、これらを使うことで、それなりにキレイにすることは可能です。でも、これらのツールを使うのは、すでに録音されてしまったものに、たまたまノイズが乗っていて、どうしようもないので、それを除去するために使うもの。最初からノイズが乗っていることが分かっているなら、その時点でレコーディングを止めて、ノイズが乗らないように対策をした上で録音しなおすのが、基本中の基本。

RXなどを使うのはあくまでも最後の手段。まずはノイズ対策をしてノイズが入らないようにするのが基本中の基本

その対策をしないで、面倒臭いからあとで、ツールを使って行うというのは完全な間違いです。本来100点満点な音がノイズによって30点まで下がってしまったものを、RXなどのツールによって50点、60点まで引き上げることは可能ですが、100点にすることは不可能です。

でも、レコーディングする時点でしっかりノイズ対策をしておけば90点、さらには100点へと引き上げることができるので、絶対に最初の時点で対策をしておくべきなのです。

ノイズによって、対策手段はいろいろ

こうしたノイズ対策は、モニター環境においても同様。いい加減な配線にしておくとせっかく買い揃えたモニタースピーカーやモニターヘッドホンもノイズが混じってしまって、いい音で聴くことができません。その結果、作品自体もうまく仕上げることができなかったり、作品にノイズが混入してしまって、失敗作になってしまうこともあるでしょう。

では、どうすればいいのか。それこそ、ノイズ対策だけで書籍がいろいろあるくらいなので、一言でこれ、というわけにはいきませんが、簡単なところからいえば、デジタルとアナログ、さらにパワーサプライをしっかり切り分ける、ということ。つまり、電源ケーブルとUSBケーブル、マイクやライン、シールドなどのオーディオケーブルをグッチャにしないこと。

絡ませてぐちゃぐちゃなのは論外としても、たとえばキレイにするためにUSBケーブルとラインケーブル、また電源ケーブルを並べてしまうというのは絶対NG。並行に置くと、ケーブル同士でノイズが隣のケーブルへとそのまま乗り移ってしまうから最もやってはいけない行為なんです。

またとにかく機材のそばにおいてはNGなのがスマホ。これほど、激しいノイズの発信源はないですから、とにかく機器から最低でも2、3mは離れたところに置くようにしてください。可能であればレコーディングをする部屋、モニターする部屋に置かないことです。まあ、そうはいっても今の時代、そんなことはできないですが、せめて機内モードにしておくといいですよ。機内モードだとWi-Fiは使うけれど、携帯電波の発信がなくなるためです。この携帯電波を発信すると、莫大な高周波ノイズが飛び出すからです。

以前書いたオーディオインターフェイスの使い方記事でもノイズ対策について紹介している

モニタースピーカーのそばにスマホがあると、定期的に、すごいノイズが入るのを経験した方は多いと思います。でも、機内モードにすると、それを防ぐことができますよ。以前、「音痩せ、音割れ、ノイズ……はなぜ起きる!? 間違いだらけのオーディオインターフェイスの使い方」という記事でも、ノイズ対策的なことを紹介したこともあるので、ぜひそちらも参考にしてみてください。

そもそも聴こえない高周波のノイズ対策に意味はあるの?

さて、ここまで一般論的なノイズ対策について、少し紹介してみましたが、今回の記事のテーマは完実電気のPERFECTIONブランドが出すノイズ対策アイテムであるAmorcrystalシリーズというもの。

PERFECTIONブランド製品については、以前「電源ノイズをシャットアウトするフィルター搭載電源タップ、PERFECTIONのPFT-T3000AFとPFT-T1000PF」という記事でも紹介したことがありました。

PERFECTIONのフィルター搭載の電源タップ

この時は、電源タップ型のデバイスでしたが、今回紹介するAmorcrystalは電源ケーブルでもオーディオケーブルでもUSBケーブルでも、ケーブルに装着することで、100kHz以上の幅広い帯域に対してノイズ低減するという効果を発揮し、クリアな音質を実現する、というもの。具体的には以下の6種類の製品があります。

型番 製品詳細 定価(税込) 外形(Φ-mm) 内径(Φ-mm) 奥行(mm) 重量(g)
AMC055C 2個1セット ¥5,500- 9.5 5.5 8.5 1.7
AMC050 2個1セット ¥3,850- 11.7 6.7 8.6 1.8
AMC064 2個1セット ¥4,400- 14.4 6.4 7.7 2.6
AMC104 1個販売 ¥5,500- 22.7 10.4 12.3 13.2
AMC166 1個販売 ¥9,680- 29 16.6 12.5 17.5
AMC243 1個販売 ¥19,800- 48.9 24.3 28.1 163.5

いずれも大きさが違うだけで、基本的にはどれも同じドーナツ状のコアと呼ばれるもの。そのドーナツの穴にケーブルを通して使うことでノイズを低減する仕組みになっているので、使うケーブルにマッチした製品を選べばいいのです。気を付けなければいけないのが、そのケーブルの端子形状。このAmorcrystalシリーズは、分解することができないので、このドーナツの穴を端子も含めて通さなくてならないので、特に内径に関してはよくチェックして選んでください。

使い方はシンプル。ケーブルをAmorcrystalに通すだけ

さて、ここで根本的に気になるのがAmorcrystalシリーズの効能である「100kHz以上の高周波ノイズを低減できる」という部分。というのも人間の耳って20Hz~20kHzが可聴範囲といわれており、30代を超えると16kHz以上だって怪しくなってくるくらいなので、100kHzなんて超人でも認知することはほぼ不可能でしょう?

いろいろな大きさのタイプがある

「耳ではなく肌で認識できるんだ」とか「脳が直接反応するから」など、オカルトな話は置いておいて、100kHz以上のノイズはふつう聴こえません。そんなものの対策をして意味があるのか、という点なんですが、これが意味があるんです。なぜか。ここで対策する主にアナログ電子部品、つまりトランジスタやコンデンサや抵抗、トランス、オペアンプ……などにこれら100kHz以上の高周波ノイズが入ると動作に問題が起こり、結果として音に悪影響を与える可能性が高まるのです。こうしたことが、音場表現のクリアさ、高域の透明度、定位・解像度、そしてS/Nとさまざまなところに問題を起こし、結果として音が悪くなってしまうから、これらを低減できるというのは、音質において非常にメリットがあることなんです。

フェライトコアとはまったく異なるナノクリスタルコア

ここで、もう一つ出てくると思われる声が、「ああ、これよく見るフェライトコアでしょ」、「以前フェライトコア使ったことあるけど、なんかイマイチだったんだよね」というもの。

Amocrystal(左)と一般的なフェライトコア(右)

確かに見た目も使い方もフェライトコアとソックリです。しかし、このAmorcrystalシリーズはフェライトコアとはまったくの別モノなんです。こうしたコア材には、いわゆる黒い永久磁石と同じ酸化鉄を主成分としたフェライトを用いたフェライトコア、金属ガラスともいわれるアモルファス金属を用いたアモルファスコア、さらに超高透磁率磁性材料を用いたナノクリスタルコアの大きく3種類があります。

今回紹介するAmorcrystalシリーズは、ナノクリスタルコアの一種を用いたもので、フェライトコアとは異なり、特性もまったく異なります。もちろんフェライトコアもアモルファスコアもノイズを除去するという機能は持っているのですが、どちらも数MHz以上に対して強く効くのに対し、Amorcrystalシリーズは前述のとおり100kHz以上に効くのがポイント。数MHz以上だと、音により悪影響を与えると言われる100kHz~1MHzで効果が得られないことと、フェライトコア自体が音を妙に変質させることがあるようで、オーディオファンからは嫌われている傾向があります。が、それとは違うわけです。

端子部分も含めAMORCRYSTAの穴を通るサイズを選ぶのがポイント

 

ちなみに他社製品でもナノクリスタルコアを用いたものは存在しているのですが、特殊鉄系合金アモルファスをナノサイズの結晶構造にするという東静工業株式会社が開発したナノクリスタルコアを使っているのが、Amorcrystalシリーズなんです。その素材をベースにPERFECTIONが使用温度条件など改良を加えたことで、オーディオ機器での利用において最適なものに仕上げているのです。

Amorcrystalの利用方法とノイズ低減の仕組み

PERFECTIONの説明によるとAmorcrystalはオーディオ、シアター、ポータブルオーディオ、楽器、PA、カーオーディオと幅広い分野で使用することが可能であり、たとえば以下のようなケーブルで利用することで効果を発揮する、とのことです。

・電源ケーブル (電源ケーブル、AC/DCアダプター)
・デジタルケーブル (USB、COAX、HDMI、LAN)
・アナログケーブル (PHONO、RCA、XLR、ヘッドホン、イヤホン、スピーカー等)

実際にオーディオケーブルで試してみると、確かに効果が感じられます。わざと、オーディオケーブルとUSBケーブルを並行に置いて、ゴムバンドで結びつけるという悪条件下で、Amorcrystalシリーズを付けた場合、付けない場合で比較すると、音の明瞭度、定位感が違ってくるのです。

ケーブルを何回巻くかによっても効果が変わってくる

また、使い方としては上記の写真のようにシングルで通す場合、ダブルで通す場合、トリプルで通す場合でノイズの取れ具合も変わってくるのですが、必ずしもトリプルで巻くなどして強力にノイズ除去すればOKというわけではないようです。やりすぎると、別の影響も出る可能性があるため、試してみていい具合を耳で探ってほしいとのことでした。

また、オーディオに対するノイズには、上記のような「コモンモードノイズ」と「ノーマルモードノイズ」の2種類あるとのことですが、音質に特に悪影響を及ぼすノイズはコモンモードノイズとのことで、音質改善には、1個のコア内に、(+、-)を同時に通すコモンモードノイズ対策を推奨している、とPERFECTIONは解説しています。

コモンモードノイズとは信号とGND=グラウンドの間に発生し、+・-の導体内に同方向に重畳するノイズのことですが、これらが低減される仕組みとしては信号が通過すると、Amorcrystal内に磁束が発生し、同じ方向から流れるコモンモードノイズのみが、Amorcrystalコアに取り込まれ、ノイズが低減されて、信号だけがそのまま通過していくとのこと。Amorcrystalコアに吸収されたノイズは微弱な熱エネルギーとして放出されることで、ノイズ低減につながるそうです。こうした仕組み自体はファライトコアも同様ですが、いずれにせよ100kHz以上に効くのが大きなポイントになっているのです。

以上、ちょっと不思議な感じのアイテムではありますが、高周波ノイズを低減して、より音をクリアに、解像度高く、定位をしっかりさせることができるAmorcrystalシリーズについて紹介してみました。

基本的にできるノイズ対策はした上で、よりクリアにしたいというときに、ぜひ試してみてください。

【関連情報】
Amorcrystalシリーズ製品情報
PERFECTION情報ページ

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