クロスシンセシスが復活!ピッチカーブ編集、息成分コントロールなど大幅機能強化したVOCALOID 6.5がリリース

本日12月18日、ヤマハからVOCALOIDの新バージョン、VOCALOID 6.5が無償バージョンアップの形でリリースされました。VOCALOID 6.4からVOCALOID 6.5への進化なのでマイナーアップデートという位置づけではあるのですが、メジャーバージョンアップに匹敵するといっても過言ではない強力な機能強化、VOCALOIDユーザー待望の機能復活などが盛り込まれているのです。その目玉のひとつが、VOCALOID 4に搭載されていたクロスシンセシスの復活。これによって2種類のボイスバンクの歌声をモーフィングさせていくことが可能になります。

また新機能としてはVOCALOID:AIトラックにおいて、ピッチカーブを鉛筆ツールで描けるようになりました。これによってクリエイターがより自由に歌わせることを実現しています。さらに先日も紹介したVX-βに搭載されていた息成分をコントロールするAIRパラメータがVOCALOID 6 Editorのほうにも搭載されています。そして、VOCALOID 6 Editorに標準搭載されるボイスバンクがさらに4つ追加されています。具体的にはJESSICA、SANDRA、BRAIN、MATTHEWの4つで、いずれも英語ボイスバンクではありますが、これまでのALLENやSARAHなどと同様、日本語で歌わせることも可能なので表現の幅も広がりそうです。実際どんなアップデート内容になっているのか紹介していきましょう。

クロスシンセシス機能などが復活したVOCALOID 6.5がリリースされた

VOCALOID 4のクロスシンセシスがついに復活

VOCALOIDは誕生から今年で20周年となります。その間、さまざまな進化があったわけですが、中には以前にはあった機能がそぎ落とされた、というケースもいくつかありました。その中でも多くのVOCALOIDユーザーから惜しまれていたのがクロスシンセシス機能です。

クロスシンセシス機能というのはVOCALOID 4のときにあった機能で、2つのボイスバンク間をモーフィングする機能。ちょうど10年前に「VOCALOID4発表!目玉はグロウルと歌声間をモーフィングするクロスシンセシス」という記事で紹介したこともありました。たとえば初音ミクのOriginalとDarkという2つの歌声を単純に切り替えるのではなく、Originalからダークに寄せていく……ということを実現させていく機能でした。

やや極端な使い方でいうと、まったく異なるボイスバンク、たとえばMegpoid V4 NativeとがくっぽいどPowerのような関係においてもクロスシンセシスを利用することが可能であり、異なる2つの歌声をミックスするというか、中間的な歌声を作りだすことができたため、多くのユーザーに親しまれていた機能でした(※クロスシンセシスで何でもミックスできるわけではなく、同じグループ同士の場合に限られます)。

VOCALOIDトラックにXSY=クロスシンセシスのパラメータが復活した

ところが、VOCALOID 4からVOCALOID 5へのバージョンアップの過程においてこのクロスシンセシス機能が削られてしまい、多くのユーザーから復活の要望が出ていました。でもVOCALOID 6になった際にも復活されることはなく、残念、という声がありましたが、今回VOCALOID 6.5になるタイミングで、まさかの復活となったのです。

ただし、これはVOCALOIDトラックで使えるものであり、VOCALOID 6で登場したVOCALOID:AIトラックは対象外。まさにVOCALOID 4のときのクロスシンセシスが復活した形になっています。使い方としてはあらかじめ、ターゲットとするボイスバンクを指定した上で、XSYパラメータを利用することで近づけていくことが可能となっているのです。

もちろん、VOCALOID 6 EditorではVOCALOID 3、VOCALOID 4のボイスバンクを読み込むことができるので、グループが同じであれば、世代の異なるボイスバンク間でのクロスシンセシスが可能となっているのです。

プロジェクト設定によってチューニングができるようになった

なお、プロジェクト設定としてチューニング機能も復活しています。デフォルトでは440.0Hzとなっていますが、415.3~466.2Hzの間での調整が可能となっており、これによって、チューニングの異なる楽曲でも利用しやすくなるほか、VOCALOID 4との互換性も向上しています。

AIトラックに待望のピッチカーブエディット機能を搭載

VOCALOID 6.5になって進化した大きなポイントが、VOCALOID:AIトラックにおいてピッチカーブを自由に描けるようになった、ということ。

VOCALOID:AIトラックは従来のVOCALOIDとは異なり、AI歌声合成であるため、人の歌い方に非常に近い、自然な歌声になるのが特徴であった一方、その歌い方は、システムにお任せとなっている部分が多くなっていました。そのため、これまでVOCALOIDを使ってきた人からは、もっとユーザーの自由に歌わせたい、といった声が出ていたのも事実です。

ピッチ鉛筆とピッチ消しゴムが追加された

それに対し、今回のVOCALOID 6.5では、そうしたユーザーからの要望に応える形となっており、VOCALOID:AIトラックで自動生成されるピッチカーブをユーザーが自由に描きなおせるようになっているのです。

具体的には、ピッチ鉛筆、ピッチ消しゴムという2つのツールが追加されており、これらを利用することでピッチカーブを自由自在に描けるのです。その結果、ユーザーの思い通りの歌い方を実現させることが可能となり、ある意味、不自然というか人工的な歌わせ方もできるわけです。

ピッチ鉛筆を使うことで、ピッチの動きを自在に描けるようになった

その人工的という意味ではビブラートにおいても新たな機能が追加されています。今回ビブラートのパラメータに「アシスト」というスイッチが追加され、これをOFFにすると、あえてLFO的な機械的なビブラートがかけられるようになったのです。

これらの機能によって、VOCALOID:AIトラックをあえてVOCALOIDトラック的なニュアンスにも近づけることも可能になり、表現の幅が大きく広がっています。

VX-βから移植される形で息成分コントロールAIRパラメータを追加

さらにもう一つVOCALOID:AIトラックに追加されたのが、息成分をコントロールするためのAIRというパラメータです。

ご存じの方も多いと思いますが、VOCALOIDトラックにもAIRという息成分をコントロールするパラメータがありました。

VX-βに搭載されていたAIRパラメータがVOCALOID 6.5に移植された

息成分をコントロールするという意味では同じですが、やはりVOCALOIDトラックでのAIRとVOCALOID:AIトラックでのAIRはまったくの別モノ。実は、これ先日「VX-β ver. 3.0が登場。VOCALOID 6 Editorユーザーは無料で利用可能。VTuber花奏かのんさんのボイスバンク・花奏も同時発売」という記事でも紹介したVX-βに搭載されていたAIRパラメータをVOCALOID 6 Editorへ移植した機能なんです。

VOCALOID:AIトラックのパラメータにAIRが追加され息成分のコントロールが可能になった

VOCALOIDトラックでのAIRパラメータとの最大の違いはVOCALOIDトラックでは初期値0で、0~127の間で調整できるのに対し、VOCALOID:AIトラックでも初期値0だけれど-64~+63の範囲で設定できるようになっている、という点。つまりマイナス方向に調整することも可能なのです。VOCALOID:AIトラックは、AI歌声合成によって、人の歌声に非常に近い形で歌わせることができるわけですが、マイナスの値に設定していくことによって、本来あった息成分を減らしていくことが可能であり、より人工的な歌声にしていくことも可能、というわけなのです。この辺をどう使うかはユーザー次第ですが、先ほどのピッチカーブやビブラート機能と組み合わせることで、これまでのVOCALOID:AIトラックとは少し違った歌わせ方が可能になっていきそうです。

4種類の英語ボイスバンクが無料で追加

そして、もう一つVOCALOID 6.5で加わったのが、VOCALOID:AIトラック用のボイスバンクです。

もともとVOCALOID 6が登場した時点で、VOCALOID 5から踏襲されたVOCALOIDトラック用のボイスバンク4種類に加え、VOCALOID:AIトラック用に4つのボイスバンクが標準で搭載されていました。

英語のボイスバンクが4つ追加された

それがVOCALOID 6.3にバージョンアップしたタイミングで「VOCALOID 6.3がリリース。ボイスバンクが無償で4つ追加され、合成音品質も大きく向上」という記事でも紹介したとおり、日本語のボイスバンクが4つ追加されていた後、6.4までの間に、さらに4つ追加されていました。

そして今回また新たに英語のボイスバンクが4つ追加されたのです。具体的にはJESSICA、BRAIN、SANDRA、MATTHEWの4つ。結果として以下の20種類のボイスバンクが標準搭載される形になったのです。

VOCALOID 6に標準搭載されている20種類のボイスバンク

そして、今回追加された4つの歌声のサンプルがあるので、こちらも聴いてみてください。

このように、VOCALOID 6 Editorを購入するだけで、これだけ多くの歌声を利用できるというのは、コストパフォーマンス的に見ても、非常に高い製品になっていると思います。

VOCALOID 20周年記念セールを2025年1月6日まで実施、20周年特設Webサイトもオープン

VOCALOIDが20周年を迎えたのを記念して、本日12月18日~2025年1月6日までの20日間限定で記念セールが実施されています。具体的にはVOCALOID 6 新規版ははもちろん、VOCALOID6へのアップグレード版も、ヤマハ製品、サードパーティー製品を含めたすべてのボイスバンク、さらにVOCALO CHANGER PLUGINなど、VOCALOID SHOPで販売されている全製品が20%オフというもの。
さらに今回のセールで、例えば夏に発売されたばかりのヤマハ製『ゲキヤクV』というボイスバンクも、先日の記事で紹介したVTuberボイスバンク『花奏』(かなで)もセール価格8,800円で購入することができます。
VOCALOID6ボイスバンクにはVOCALOID6 Editor Liteというトラック数とDAW連携に制限はあるけどVOCALOID6.5で追加した機能はフルで使える簡易版のEditorが無料でついてくるようになりましたので、今までより気軽にボカロを始めることができるようになっています。

これだけ幅広く行われるセールはめったにないので、このタイミングで入手しておくのはお勧めです。
またこの20周年に合わせて、VOCALOID 20周年記念特設Webサイトもオープンしています。ここでは初代VOCALOIDからVOCALOID 6までの全ボイスバンクの試聴コーナーが設けられていたり、たくさんのお祝いメッセージ、インタビュー記事なども掲載されているので、ぜひチェックしてみてください。

【関連情報】
VOCALOID20周年記念セール
VOCALOID20周年記念特設サイト
VOCALOID6.5アップデータ
VOCALOID公式サイト

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