teenage engineeringのポータブルレコーダー、TP-7がグッドデザイン金賞を受賞。実はDTM的にもスゴいガジェットだった

先日、いろいろな報道にも出ていたのでご存じの方もいらっしゃると思いますが、小さなデジタルシンセのOP-1や基板むき出しの電卓のようなシンセサイザであるPocket Operatorで知られるスウェーデンのユニークなメーカー、teenage engineeringのポータブルレコーダー、TP-7が先日、日本のグッドデザイン賞の金賞を受賞しました。手のひらに収まるサイズの非常にコンパクトなレコーダー。昔のテープレコーダーを彷彿させるちょっとレトロ風なデザインですが、とっても使いやすく設計をされたデジタルガジェットです。

税込み価格が275,000円と、トンでもなく高価な機材ではあるけれど、その利便性、カッコよさ、アイディアなどさまざまなところが日本のデザイン界にも受け入れられたようで、2024年のグッドデザイン賞を受賞しているのです。発売自体は2023年5月と、1年半前に登場していた機材ですが、このグッドデザイン賞をキッカケに改めてちょっと触ってみたところ、驚く機能が山ほどテンコ盛りで、とにかくよくできているんです。レコーダーとして優れているのはもちろんなんですが、さすがteenage engineeringだけあって、DTM的な機能もいろいろ詰め込まれているので、ここではその辺の機能にフォーカスを当てて紹介してみたいと思います。

グッドデザイン金賞を受賞したteenage engineeringのTP-7

個人的にはグッドデザイン賞なんて、あまり縁のあるものではありませんが、先日teenage engineering製品を取り扱う日本総代理店であるメディア・インテグレーションから連絡があり、「TP-7がグッドデザイン賞にノミネートされたので、授賞式を見に来ませんか?」というお誘いをいただいたんです。めったにない機会なので、ぜひ見学に行ってみようと、東京・有明にあるTOKYO GARDEN THEATERなるところに行ったら、とてもドデカイ会場でビックリ!普段、DTM製品の製品発表会などでいく会場って、せいぜい50人程度のところなので、何千人も入る発表会場の凄さに圧倒されてしまいました。

東京・有明で行われたグッドデザイン賞の発表会

会場でメディア・インテグレーションの関係者に話を聞くと、今回TP-7がノミネートされ、ベスト100に選ばれたので、ここに呼ばれた、とのこと。さらにベスト100の中から絞り込んだ、金賞受賞もほぼ確実らしい、とのこと。「これだけすごい機材だから、たぶんグッドデザイン大賞が受賞できると思います!」とニコニコ顔と緊張が織り交ざった表情で説明してくれたのです。

会場にTP-7の名前が響き、グッドデザイン金賞を受賞した

審査委員のトークなど1時間弱のメニューが終了し、いざ発表となると、やはり会場全体に緊張が走ります。そして「teenage enginnering TP-7」と呼ばれると、部外者ながらも「おお!」と感激してしまいました。さらにその中から大賞が選ばれる段階に入ると、ちょっと手に汗握る感じに。ただ、残念ながら、大賞は別のところが受賞して、残念ながらグランプリは逃してしまったのでした(気分は完全に当事者に…)。

グッドデザイン賞の授賞式に立った、メディア・インテグレーションの高橋亮さん

さて、そのTP-7、以下のような機材ということでteenage engineering側(実際にはメディア・インテグレーションが代行)エントリーしていたようです。

 

(概要)
スタジオ機能をポケットサイズまでに凝縮したfieldシリーズの超多機能ポータブルオーディオレコーダー。内蔵マイクとスピーカーで録音・再生でき、128GBの内部ストレージと7時間の使用が可能な充電式バッテリーも搭載。24bit/96kHzのUSB-CオーディオI/Oにもなり、DJやiOS用アプリで自動文字起こしも可能。

(デザインのポイント)
1.モーター駆動の電動テープリールによって、録音した音を直感的に触って操作することが可能
2.手の中に収まる超コンパクトな筐体でありながらレコーダーの概念を遥かに超えた多機能性
3.サイドに設置されたロッカーを使うことで、オーディオの早送りと巻き戻しを簡単にコントロール
(背景)
プロスタジオの機能をポケットサイズに凝縮し、どこでもスタジオにできるということを主要コンセプトととして設計されました。
(経緯とその成果)
各種インターフェイスは手に取った時に簡単に操作ができるように、デザイン、サイズ感、質感、そしてボタンやロータリーのタッチ感までもを突き詰めてデザインされています。それにより、プロスタジオの機能と品質や操作感を保ちながらも、業務用テープデッキのサイズと比べ、数百分の1以下のサイズまで小さくすることを達成しています。

 

それに対し、グッドデザイン賞の審査委員の評価は以下のとおり。

(評価コメント)
録音や停止、再生等の物理的ボタンと、ハードウエア上に回転するターンテーブルを有するポータブルオーディオレコーダーは、「触れる喜び」に満ちたフィードバックのあるデジタルデバイスの可能性を示した。アナログとデジタルの垣根などはそもそもなかったかのような、直感的な使用体験が用意された本製品は、機能の多くがソフトウエアに収斂しようとするこの分野の大きな流れに一石を投じるものである。美しい外観デザイン、CMF、大きさや重さ、全てが完璧なまでに整えられたデザインは、目にした人の好奇心を大いにくすぐる。まさにプロダクトデザインの歴史に残る製品と言える。

と、なかなかな受賞イベントだったわけですが、考えてみたら私自身、TP-7ってちゃんと触ったことがありませんでした。発売されてすぐのころにモノを見て、「レトロな雰囲気で、なかなかかわいいレコーダーじゃん。けど、275,000円はさすがに…」というところで終わっていました。とはいえ、これはteenage engineeringの機材ですから、単なるレコーダーに留まるわけがありません。きっとグッドデザイン賞の審査員の先生方もまったくチェックしていないマニアックな機能もあるはず……とモノをお借りして、DTM的な部分を中心にチェックしてみました。

箱からしておしゃれな形で梱包されているTP-7

とはいえ、TP-7をまったく知らない方も多いと思うので、まずは一番基本部分である録音、再生のところをちょっとビデオに録ってみたので、ご覧になってみてください。

どうですか?グッドデザイン賞金賞を受賞するだけあって、見た目もカッコいいし、なかなかグッと来る機材だと思いませんか?けど、やはりこれだけで275,000円は大金持ちじゃなくちゃなかなか出せません。

しかしTP-7に録音した会話の文字起こしができるとしたらどうですか?TP-7はBluetoothを通じて、さまざまな機器と接続できるようになっており、iPhoneやAndroidとも接続できます。そしてスマホ側で専用のアプリを起動して接続すると、スマホ側から再生できるだけでなく、TP-7に録音したデータを文字できてしまうのです。

コンパニオンアプリとBluetoothで連携させることができる

 

以前「AIが文字起こしてくれるボイスレコーダー、AutoMemoがさらに進化。オンラインミーティングにも対応し、自動要約機能なども搭載」という記事で文字起こし用のレコーダーを紹介したことがありましたが、TP-7ならサブスクなど追加料金不要で、いくらでも利用できるのは嬉しいポイントです。世界各国の言語に対応している中、日本語にも対応しているのです。

では、ここから少しずつDTM的なところに入っていきます。実はTP-7、シンプルなレコーダーに見えるけど、最大6chを同時に録ることができるMTRになっているんです。標準では小さな内蔵マイクを使う形ですが、トップ部分には3つの3.5mmの端子があり、ここにそれぞれライン入力を入れて録音することが可能になっているのです。

トップ部分には3.5mmのライン入力が3つ並ぶとともに、左側にはUSB Type-C端子を装備

そして、その隣にUSB Type-C端子がありますが、ここを通じてデジタルオーディオをレコーディングすることも可能。WindowsやMacに接続して、コンピュータからのオーディオを受けることもでき、どのトラックに何を割り当てるのかも自由に設定することが可能なのです。

1、2、3の入力をモノラルにするか、ステレオにするかなどの設定も可能

さらにteenage engineeringが出しているTX-6という小さなミキサーをUSBでTP-7に接続すると、12chモードとなり、12chのレコーディングも可能になっています。ちなみにファイルフォーマットは24bit/96kHzまたは24bit/48kHzの切り替えとなっています。ちなみにレコーディングした結果はUSBでWindowsやMacと接続し、TMP形式でファイルのやり取りをする形となっています。

サンプリングレートは48kHzか96kHzに設定できる

さて、このTP-7は小さなOLEDディスプレイを使って各種設定ができるようになっているのですが、この中にはMIDIという項目があります。デフォルトはOFFになっているのですが、この中にはMIDI SYNCというメニューがあります。

MIDI SYNCをオンにすることで、DAWをはじめとする外部機器との連携も可能

これを選ぶとTP-7がMIDI同期モードに入るのです。そしてUSB Type-CケーブルでDAWと接続し、DAW側からMIDI SYNC信号を出してやると、しっかり同期してくれるんですよね。

DAW側でMIDIクロックの出力先をTP-7に設定することで同期する

 

しかもMIDI接続できるのはUSBだけではないんです。Bluetooth-MIDIにもしっかり対応しているので、「現時点、最強のBluetooth MIDIかも!? 各種BLE-MIDI機器と自動でペアリングしてくれるWIDI Masterがスゴイ!」で紹介したWIDI Masterなどがあれば一発で接続してくれます。

MIDIはUSB経由だけでなくBleutooth経由での接続も可能。WIDI Masterとは自動で同期させることができた

さらにMIDI設定にはMIDI CUEというものがあるのですが、これがまたすごい機能でした。TP-7の発売は1年半前ですが、その後ファームウェアのアップデートに伴いドンドン機能が追加されてきているとのこと。そして2か月前の9月19日にリリースされた1.1.3なるバージョンでCUEモードというものが追加されています。

MIDI CUEを有効にすることで、CUEポイントをMIDIノートでトリガーすることができるようになる

これは録音したオーディオに対してCUEポイントを打っていくというもので、たとえば「あ」、「い」、「う」、「え」、「お」と録音したそれぞれの間にCUEポイントを打てば、簡単に頭出しができるようになります。が、そこで終わらいのが、TP-7。このMIDI CUEを使うとMIDIの鍵盤からCUEポイントを直接指定して再生することが可能になるのです。そのCUEポイントをどのノートに割り当てるかは簡単に指定できるようになっているので、たとえばドラムフレーズを録音した後にスネアの頭、キックの頭、ハイハットの頭とそれぞれCUEポイントを打つことでMIDIの鍵盤を弾くことでドラム演奏ができてしまうのです。この際鍵盤を押している時間再生が続く形になります。

CUEポイントがMIDIでトリガーできる状態になっていることを示している

もっとも、和音を鳴らすことまではできないので、何でもOKとまではいきませんが、使い方の範囲は大きく広がりますよね。

MIDI CTROLを有効にすると、TP-7をコントロールサーフェイスとして利用することができる

さらにMIDI CTRLというものも用意されています。これはTP-7をMIDIコントローラとして使うというもの。つまりTP-7の各ボタンやホイールを使ってDAWをコントロールすることが可能なのです。ちなみに、MIDIの入力および出力の割り当ては以下のようになっています。

TP-7のMIDIインプリメンテーションチャート

TP-7はほかにPodcastの配信用に使ったり、ホイールを利用してDJ機器のようなセッティングができたり、もちろんオーディオプレイヤーとして利用するなど……さまざまな使い方が可能で掘れば掘るほどいろいろな機能がでてくるスーパーマシン。それでも275,000円はなかなか高嶺の花ではあるけれど、お店などで見かけたら一度手に取ってみてはいかがでしょうか?

 

TP-7グッドデザイン金賞受賞記念キャンペーンを12月27日まで実施中

TP-7が2024年度のグッドデザイン金賞を受賞したことを記念した特別なキャンペーンが現在実施されています。これは今年の11月4日~12月27日のキャンペーン期間中にTP-7を購入した人を対象に、数量限定でTP-7を収納して持ち運びできるfield small bagが特典としてもらえるのに加え、ポケットサイズシンセサイザー「PO-20」(18,700円相当)も特典としてもらえてしまう、というもの。さらに申請した方の中から抽選で10名に「EP-133」もプレゼント、という豪華な内容となっています。

詳細はメディア・インテグレーションのキャンペーンサイトをご覧の上、そのページからリンクのある「特典のお申込みフォーム」で、購入証明書と送付先などの必要事項を記入すればOK。後日特典が配送される形になっています。

 

【関連情報】
TP-7製品情報
TP-7グッドデザイン金賞受賞記念キャンペーンページ
グッドデザイン賞・受賞ギャラリー

【価格チェック&購入】
◎MIオンラインストア ⇒ TP-7

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