独自のAI技術でNeve、API、Pultecなどのビンテージ機を完全再現するDeep Vintageがさらに進化。ラインナップは12種類に

AIを用いてハードウェアのビンテージ機器を正確にシミュレーションするという、従来の常識を覆す画期的なプラグインDeep Vintage(ディープ・ビンテージ)。これはメタルギター音源Heavier 7 Stringsや画期的EQであるKrchhoff EQなどで著名なThree-Body Technologyが開発するプラグインのシリーズ。Deep Vintageは、実機と比較して音を聴いてみても、まったく判別できないレベルのクオリティを実現しており、まさに実機をそのままアーカイブしたといっても過言ではないものです。

そのDeep Vintageについて以前記事でも紹介していますが、その後さらに6つの機種が加わり、現在は12種類のプラグインがラインナップされています。さらに独自のAI技術であるAPNN=Audio Processing Neural Networkが2.0にアップデートしDeep Vintage 2.0に進化したことで、既存のプラグインもより高性能にアップデートされています。このAPNN 2.0によりCPU使用率が1/8、音質と安定性の向上、正確なインパルス応答周波数、アップサンプリングに対応、ノイズのコントロールなど、基礎性能が大きく向上しているのです。もちろんDeep Vintage 1.0ユーザーは、無料でDeep Vintage 2.0をゲットすることが可能。実際にアップデートされたDeep Vintageを試してみたので、どんな製品が新たに登場したのかも含め、紹介していきましょう。なお、現在セールを実施中で、単体であれば半額以下、3つ同時に買うとさらに25%OFF、6つ同時なら30%OFF、そして全部入りセットであれば1188ドルのところ349ドルで購入することが可能となっています。

ビンテージ機材をAIで完全再現した12種類のプラグイン

ビンテージ機器を完全再現するDeep Vintage

以前「北京のベンチャーが開発。AIで1073やAPI Ch Stripなどビンテージ機器を完全に再現する脅威のプラグイン、Deep Vintage」という記事でDeep Vintageを紹介したときは、6種類のビンテージエフェクトのラインナップとなっていましたが、新たにリリースされた6種類を加え、現在は全12種類となっています。

Tube Filter NEW
Tube Bell NEW
Tube Shelf NEW
Nylon NEW
Transformer X NEW
Brit 84 NEW
Brit 73
US Rack
Thick Pre
Green AD
Tape S
Tape M

このDeep Vintageの特徴は、冒頭にも書きましたが、AIを使ってビンテージ機材を完全再現している点。独自のAI技術APNN 2.0というものを使っているのですが、これはアナログハードウェアのシミュレーションに特化したニューラルネットワーク。ハードウェアにオーディオ信号が通った後の波形とスペクトルを学習し、ダイナミック特性と音色特性を何万回もトレーニングすることで、最終的にハードウェアと区別がつかなくなるというのです。まさにAIを使って、ビンテージ機材を完全にソフトウェア的にアーカイブしたもの、といえると思います。

新たに登場した6種類のプラグイン

ハードウェアとプラグインを徹底的に比較検証できる素材を公式が用意している

実際にDeep Vintageのサイトに行くと、2000回、12000回、70000回、そして最終と、学習結果を試聴することも可能で、最終段階に至っては、本当にハードウェアと区別がつかないので、ぜひ聴いてみてください。また各ラインナップでのドライ、ハードウェアを通したサウンド、プラグインを通したサウンドも試聴でき、実機とプラグインの音の違いはまったくない、といって過言ではないという領域まで、完全に再現しています。

https://download.threebodytech.com/DeepVintage/Resources/Demos

上記のURLからは、44.1kHz/32bitのWAVファイルをダウンロードして、非圧縮の状態で比較することもできます。32bitのデータを公開しているあたりに、Three-body techのすごい自信とこだわりを感じますよね。

このようにソフトウェア化してしまえば、今後故障する心配もないし、メンテナンスも不要で、日々の調整なども不要でありながら、まったく同じ音が得られるという意味で、非常に画期的なことだと思います。

ブラックボックスを解明し、さらにサウンドに磨きをかけたDeep Vintage 2.0

さて、前回の記事からからAPNNが2.0になり、Deep Vintage 2.0が生まれたり、新製品が出ているので、これらについても、もう少し詳しく紹介していきましょう。まずはDeep Vintage 2.0について。

上がDeep Vintage 2.0。オーバーサンプリングやハーモニクスがコントロールできるようになった

いくつか進化している項目があるのですが、1つ目はシンプルな音質向上と安定性の向上です。Deep Vintage 1.0では、トレーニングセットに存在しないオーディオに対して期待どおりの出力を行えないケースがあり、その結果予期しないノイズ、耳障りな音、クリック音の問題が発生することが確認されていました。それがDeep Vintage 2.0では解決され、高い安定性を保ち、さらに正確なインパルス応答周波数を実現しているのです。

またCPU使用率が、1.0と比較して約1/8になっています。これを実現するために、Deep Vintage 1.0でブラックボックスとなっていた部分を徹底的に検証。1.0のブラック ボックス構造を解明し、音質にあまり貢献しない多くの非効率的なニューロンを排除することで、この軽さを実現しているとのこと。

Deep Vintage 2.0には新しいリサンプリングアルゴリズムが実装されており、さまざまなサンプルレートでも最大のパフォーマンスが発揮されるようになっています。またオーバサンプリングにも対応し、高調波における歪みを削減。

エイリアシングという高域のスペクトラムにおけるエラー信号を削減している

さらに、実際のハードウェアチューブやトランスからの低周波サチュレーションをユーザーがコントロールできるようになりました。このノブを調整することで、音を太くしたり、また逆にクリーンなサウンドを作ることが可能となっています。

低音域のサチュレーション感をコントロールできるようになった

また、ノイズのオンオフ切り替えだけでなく、機材特有のベースノイズもoffから-70dBまでコントロールすることができるようになりました。

機器のノイズも再現しており、それも調整可能

なお、冒頭にも書いたようにこのDeep Vintage 2.0はDeep Vintage1.0のユーザーは無料でゲットすることが可能です。Deep Vintage1.0からDeep Vintage 2.0は、プラグイン自体のアップデートという形ではなく、別のプラグイン扱いとなっているので、Three-Body TechnologyのマイアカウントページからDeep Vintage 2.0を確認することができます。それを新たにダウンロード、インストールすれば、Deep Vintage 2.0を使用可能になります。

12種類のビンテージ機材の元ネタとその特徴

さて、以下がそれぞれのUIを元におそらく元ネタはこれだろうと推測したものとウェブページに書かれた製品特徴となっています。

プラグイン名 解説 推測元ネタ
Tube Filter

チューブ フィルターは、ハイ カットとロー カットでチューブ シェルフとチューブ ベルを強化します。ハイ カットはミキシングではあまり一般的ではありませんが、チューブ フィルターのスムーズで自然なハイ カットは、必要なときにサウンドを「暗くする」のに優れています。 Pultec HLF-3C
Tube Bell

Tube Bell は、Tube Shelf を補完するものとして、主に中周波数の処理を担当します。2 つの Peak セクションと 1 つの Dip セクションがあり、すべてベル タイプのフィルターを使用しています。 Pulteq MEQ-5
Tube Shelf

史上最も象徴的で音楽的なプログラム EQ の 1 つにインスピレーションを得た Tube Shelf は、オリジナルの真空管エレクトロニクスの EQ 特性とユニークな音色を忠実にエミュレートします。チューブ シェルフ モジュールは、主に低周波数と高周波数を調整するために使用されます。周波数帯域のオプションが比較的少ないため、より詳細な音色調整のために他の EQ と組み合わせて使用​​されることが多く、最も一般的にはチューブ ベル モジュールとチューブ フィルター モジュール (以下を参照) と組み合わせて使用​​されます。 Pultec EQP-1A
Nylon

ユニークで魅力的な回路にインスピレーションを得た Nylon は、きらめく高音用の黄色と力強い低音用の緑の 2 つのカラー モードを提供します。どちらも、一般的なサチュレーターよりも穏やかな、微妙な倍音成分を追加する「トランスペアレント オーバードライブ」エフェクトです。イエロー モードは主に高周波数の倍音を生成し、明るく磨かれた「輝き」を与えます。グリーン モードは主に低周波の彩度を追加し、ベース、キック ドラム、またはドラム バスをより重厚でアグレッシブにします。 NeveのSilk回路
Transformer X

電子管以外では、ハードウェア回路で最も音色を決定づけるコンポーネントはトランスフォーマーです。特に、特徴的な「アイアン サウンド」を持つビンテージ トランスフォーマーは重要です。ビンテージの米国製トランスフォーマーを使用したカスタム「カラー ボックス」にヒントを得た Transformer X は、サウンドに暖かさ、ボディ、低音域の厚みを簡単に加えることができます。 UTC HA-108X
Brit 84

Brit 73 と同じくらい人気のプリアンプのオリジナルモデルにインスピレーションを得たBrit 84 は、追加の周波数帯域、独自の「 High Q」モード、および追加のロー パス フィルターを備えています。ただし、Brit 84 は Brit 73 の単なる「高度なバージョン」ではなく、それぞれが独自のサウンド特性を提供します。 Neve 1084
Brit 73

地球上で最も伝説的なプリアンプからインスピレーションを得たこのクラス A の EQ 付きトランジスタ プリアンプは、音の美しさを体現し、比類のない明瞭さ、輝き、鋭さを提供します。 BAE 1073
US Rack

US Rack Al は、プリアンプ、ライン ドライバー、有名な EQ を備えた伝説的な「US」スタイルのチャンネル ストリップにインスピレーションを得て、並外れた柔軟性を維持しながら、非常に音楽的で豊かなアナログ サウンドを実現します。 APIのThe Channel Strip
Thick Pre

厚みがあり、暖かく、滑らかなサウンドで知られる伝説的なビンテージ スタイルのプリアンプからインスピレーションを得たこのモデルは、追加の倍音を強調する「プレゼンス」コントロールと、サウンドをさらに大きく厚みのあるものにできる独自の「ディープ」スイッチを備えています。 Chandler limitedのGermanium Pre Amp/DI
Green AD

AD (アナログ – デジタル コンバーター) を DA (デジタル – アナログ コンバーター) に直接接続すると、何か違いがありますか? もちろん、あります! 世界トップクラスの AD/DA コンバーターからヒントを得た Green AD AI は、アナログの温かみをデジタルの世界にもたらします。 burl audioのB2 Boomer ADとB2 Boomer DA
Tape S

Tape S は、80 年代後半から 90 年代前半にかけての 1/4 インチ テープ マシンにヒントを得たもので、そのユニークな音響特性から多くのプロフェッショナルに愛用されており、ミキシングにおいて卓越した音質を実現します。温かみのある中音域、滑らかな高音域、豊かな倍音を特徴とし、あらゆるバス ミックスやマスター ミックスの深みと豊かさを高めます。 Studer A820
Tape M

70 年代のドイツの伝説的な 2 トラック テープ マシンにインスピレーションを得た Tape M は、生き生きとした低音域を持つ、暖かく独特なキャラクターを提供します。初期のモデルであるため、より豊かな色彩とわずかに目立つワウ/フラッターを備えています。わずかに高温にすると、微妙な倍音歪みが加わり、過度の圧縮なしに音量を実現できるため、ミックスダウンやマスタリングに最適なツールです。 Telefunken M15

そして、冒頭にも書いたように現在Deep Vintageはセール中です。以下が価格表となっており、どれも半額弱となっています。

プラグイン名 通常価格(ドル) セール価格(ドル) 割引率
Tube Filter 59 29 51%
Tube Bell 99 49 51%
Tube Shelf 129 59 54%
Nylon 79 39 51%
Transformer X 99 49 51%
Brit 84 129 59 54%
Brit 73 129 59 54%
US Rack 129 59 54%
Thick Pre 99 49 51%
Green AD 79 39 51%
Tape S 79 39 51%
Tape M 79 39 51%

ここからさらに3つ同時に購入すれば、25%OFF。6つなら30%OFFとなっています。そして全部入りであれば、通常1188ドルのところ349ドルで入手することが可能です。

以上、Three-body techのDeep Vintageシリーズについて紹介しました。12種類すべてデモ版が用意されていて、1分に1度程度数秒間無音になるという制限がありますが、出音をチェックするには十分なので、まずはサウンドを聴いてみてはいかがでしょうか?

【関連情報】
Deep Vintage製品情報(英語)
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◎Three-body technology ⇒ Deep Vintage

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