Universal Audioから無料で提供されている、アナログレコーディングの世界をそのまま再現するDAWであるLUNA。以前の記事では、入手方法と基本操作を紹介しましたが、そこではまだまだLUNAの本当の力を紹介しきれていませんでした。その後、Windows版もベータ版から正式版へとなり、現在もWindows版、Mac版ともに無料でされている状況です。そこで、今回はLUNAがほかのDAWよりも圧倒的にアナログレコーディング/ミックスにというプロの世界を再現する強力なDAWである、という部分を紹介していきたいと思います。
レコーディング/ミックスに特化している理由、それはLUNA特有のTAPE、SUMMING、CONSOLEというスロットに秘密があります。これを活用することで、まるで大規模なレコーディングスタジオをPC上に再現することができ、まさにプロがレコーディングしている環境を自分の手元で操作することができるのです。しかも、操作性もよく、より直感的にコントロールできるのもポイントとなっています。さらに同社から発売されているApolloシリーズを使用することで、LUNAの性能を最大限引き出すことも可能。先日Universal Audioから、Apollo Xシリーズの第2世代、Apollo X G2(2nd Generation)シリーズが発売されたので、これを使ってLUNAの本質について紹介していきましょう。
ミックスに特化した機能を搭載したDAW LUNA
LUNAの導入方法や基本的な使い方は、以前に「廃止が決まったStudio One Primeの受け皿になる!?プロ絶賛のUniversal Audioの無料DAW、LUNA入手法と基本操作ガイド」という記事で紹介しました。そこで紹介した機能は、あくまでほかのDAWに搭載されているような基本的な部分。まあ前回紹介した機能だけでも、無料で使えるのであれば、十分過ぎるところなんですけどね。
加えて、LUNAだけが搭載しているTAPE、SUMMING、CONSOLEという3つのスロットが、かなり便利でミックスで役に立つので、これについて詳しく紹介していきましょう。
まずはTAPEスロットから。プラグインとしてもテープ系の製品はいくつか存在しており、ミックスにまとまり感や暖かみ、アナログ感を加えるために使っている方も多いと思います。そんなテーププラグイン専用のスロットがLUNAには用意されているです。ちょっとデジタルっぽいとか、サウンドが硬すぎるとか、そういったときにこのTAPEスロットにLUNA専用のTAPEプラグインをインサートすると、アナログテープの味付けをどのトラックにも適応することができるのです。無料でもOxideというTAPEプラグインが用意されており、後述しますがLUNA Pro Bundleを購入すれば、Ampex ATR-102やStuder A800といったTAPEの種類を増やすことも可能です。
次にSUMMINGですが、これは実機のアナログミキサーを通した音を再現するスロットとなっています。BUSチャンネルまたはマスターチャンネルの一番上にSUMMINGというスロットを確認することができ、ここからAPIやNEVEを選ぶことができるのです。これを立ち上げると、LUNAのミキサーが、APIやNEVEのミキサーに早変わりします。正直、大きくサウンドが変わるわけではないのですが、絶妙なサウンドの変化がミックスに影響して、全体のクオリティアップに繋がるのです。音に太さを加えるというのは、なかなか難しいですが、このSUMMINGスロットを使えば、それが実現可能となっています。
そして、CONSOLEというスロットでは、レコーディングスタジオの卓にあるEQやコンプをそのまま再現しています。現状は、APIのコンソールしかありませんが、EQ、コンプ、ゲートなどをコントロールできるのです。SUMMINGとCONSOLEスロットを使えば、PC上でAPIの卓を使ったミックスを再現することができるわけです。しかもBUSチャンネルには、API2500を立ち上げることも可能。まさにプロがレコーディングスタジオで行うワークフローを、実現できるのが、LUNAなのです。
オーディオインターフェイスのApolloとLUNAは完璧に連携する
ここまでは、LUNA単体での機能でしたが、Universal Audioが展開しているApolloシリーズを使用すると、ほかのDAWよりもさらに優れた使い方ができます。そう、すでにApolloユーザーであればお気づきかもしれませんが、LUNAのミキサー画面は、Apolloのミキサー画面とほぼ同じ。実際にApollo Twin X DUOをPCに接続すると、LUNAの一部が拡張され、LUNAからApollo Twin X DUOをコントロールできるようになるのです。
他社のオーディオインターフェイスではもちろんのこと、通常であれば、UADコントロールとDAWを行ったりきたりして、Apolloの設定を行わないといけないですが、LUNAとApolloを使えばその必要はなく、LUNAだけですべてのセッティングを完了させることができるのです。「ApolloがApollo X G2シリーズへとフルモデルチェンジ。音質を大幅向上させ、Sonarworks SoundIDでのDSPキャリブレーションにも対応」という記事で、Apolloシリーズとその最新版について詳しく紹介していますが、Apolloシリーズには、UNISONテクノロジーというプラグインとマイクプリを連動させてシミュレーションを行う機能も開発しており、これによりアナログハードウェアのようなサウンドと挙動を実現する機能を搭載しています。
ゲインの調整、AUTO-GAIN、UNISON、RECORD FX…レコーディングの準備をLUNA上で完結
UNISONテクノロジーでは、たとえば、Neve、API、SSL、Manleyなどのマイクプリアンプのトーンや透明感、レスポンスを得ることができ、アナログ入力の電気的特性自体をホンモノとそっくりに変えることができるシステムなので、ボーカルの録音、ギターの録音などをレコーディングスタジオで録ったかのようなサウンドにすることが可能なのですが、その設定もLUNAから行うことができます。さらに、RECORD FXスロットも表示されるので、コンプなどのエフェクトの掛け取りを行うといったことも可能。
もちろんUNISONのスロットから、ギターアンプも選べるので、ボーカルだけでなく、ギターのレコーディングでも便利に使うことができます。そして、これらの処理は、DSPで行われるので、ゼロレイテンシで録音を行えるのもポイント。作曲をしていて、ギターを足したいとなったとき、プラグインや音源をたくさん使ってしまっていて、バッファサイズを落とすのに苦労することがありますよね。それも、ApolloとLUNAの組み合わせなら、簡単にCPUの処理ではなく、DSP処理に切り替えられるので、ストレスなく作業をすすめることができます。
Apolloにボーカルマイクを接続して、ホンモノのマイクプリアンプやEQ、コンプを通して録音。ほかのトラックも、LUNAのSUMMINGとCONSOLEスロットを使って、まるでホンモノの卓を通したサウンドミックスでき、TAPEでサウンドにも味付けができるわけですね。
ちなみに、Apollo X G2シリーズには、AUTO-GAIN機能が搭載されているので、基本の基本だけど意外と難しいゲインのセッティングも最適な状態で、すばやく完了することが可能です。ピークがつかないようにとか、入力信号が小さくなりすぎないようにとかを気にする必要はなく、AUTO-GAINボタンを押して、開かれたダイアログのSTARTボタンをクリック、実際に歌や楽器の音を入力すればOK。信号を入力する間隔やゲイン調整するタイミング、ピークのターゲット、一番小さい音の感度など、カスタマイズできる点もポイントですね。
サードパーティ製のプラグインも自由に使える
ここまでは、Universal Audioのプラグインしか登場してきませんでしたが、LUNAはほかのDAW同様にあらゆるプラグインを使用することが可能です。具体的には、VSTとAudio Unitsを使用することができます。
他社のプラグインも使えるので、これまでの環境からすぐ移行できるし、初めて使うDAWとしても最適なのですが、やはりUniversal Audioのプラグインを使う方が、よりLUNAを活用できるのは、ここまで紹介した通りです。Apolloシリーズを使えば、レコーディング時に掛け録りをDSPで行えると書きましたが、もちろん掛け録りを行わず、普通にプラグインをインサートしてもOK。
Universal Audioのプラグインには、DSPを使ってPCに負荷を掛けない、UAD DSP。通常のプラグインと同様にCPUで処理するUAD Nativeの2つがあります。同種のプラグインでもUAD DSP、UAD Nativeが存在しており、レコーディング時とミックス時など、場合によって使い分けることも可能。
ちなみにApollo X G2シリーズには、それぞれのモデルにそれぞれ、Essentials+ Edition、Studio+ Edition、Ultimate+といった、プラグインのバンドルが付属しています。Apollo X G2シリーズのバンドル製品はちょっと特殊で、通常購入できるEssentials Editionなどに加えてAUTO-TUNEが付属しているのですが、いずれにせよバンドル製品だけを購入しても、UAD DSPでもUAD Nativeでも動かすことができます。UAD DSPを使うには、Universal Audioのハードウェアが必要ですが、UAD Nativeは逆にどのDAWでも使えるので、検討してみてもいいでしょう。そもそもUniversal Audioのプラグインたちは、プロでも使う、高いクオリティを誇る製品ですからね。
無料で使えるLUNAをさらに強化することができるLUNA Pro Bundle
LUNA自体は無料で使うことができ、一部のプラグインも無料で付いてきます。SUMMING、CONSOLE、TAPEスロットにインサートするものは、Extensionという呼び名が付いているのですが、これについてもOxide Tape Extensionは無料で使用することができます。それ以外はLUNA Pro Bundleという追加コンテンツを購入する必要があり、以下が無料で使える範囲とLUNA Pro Bundleの内容となっています。
•Full unlimited version of LUNA
•Oxide Tape Extension
•Shape Toolkit Instrument
•ARP Arpeggiator
•30-day trial of LUNA Pro Bundle
•30-day trial of Neve Summing
•Ampex ATR-102 Master Tape Machine & LUNA Extension
•API 2500 Bus Compressor & LUNA Extension
•API Preamp
•API Summing LUNA Extension
•API Vision Channel Strip & LUNA Extension
•Century Tube Channel Strip
•Galaxy Tape Echo
•Oxide Tape Recorder
•Polymax
•Pultec Passive EQ Collection
•Pure Plate Reverb
•Studer A800 Tape Recorder & LUNA Extension
•Teletronix LA-2A Leveler Collection
無料では、30日間のLUNA Pro BundleとNeve Summingの体験版が含まれており、それ以降もAPI Summing LUNA ExtensionやAPI Vision Channel Strip & LUNA Extensionを使うのであれば、28,850円(税込)でLUNA Pro Bundleを購入する必要があります。LUNA Pro Bundleには、Extension以外にもほかのDAWでも使えるリバーブやシンセ、チャンネルストリップ、定番コンプなどなど多数収録されているので、持っていて損はないプラグインの詰め合わせとなっていますよ。なおNeve Summingは、LUNA Pro Bundleには収録されていません。
豊富なプリセットを搭載しているので学びながら、すばやくミキシングできる
また、Universal Audioのプラグインは、プリセットが豊富なので、詳しいこと知らなくてもすぐに使うことができるのもポイント。ボーカルには、どのようにEQを掛けたらいいか、ギターにはどのようなコンプのセッティングが合うか、ドラムには…と、ミキシングの知識がなくてもプリセットを使ってミキシングしていくことができます。また、これらのセッティングは、プロが作成したものなので、ここからワークフローを学べるし、各ソースに合ったセッティングを参考にすることもできますよ。
中には、タグ検索にも対応しているものがあるので、ボーカルで明るめの音にしたいときは、Vocal、Lightとタグを選択すれば、それにあったプリセットを探したりすることもできます。まずは、プリセットを切り替えていって、いい感じの音を見つけるところからスタートするといいでしょう。
以上、LUNAのレコーディングとミックスに特化している部分を紹介しました。まずは作曲は今まで通り、使い慣れたDAWを使って、ミックス時にLUNAを使ってみるというところから始めてみてはいかがでしょうか?
【関連情報】
LUNAダウンロードページ
LUNA Pro Bundle製品情報
Apollo X G2シリーズ製品情報(フックアップ)
Apollo X G2シリーズ製品情報(Universal Audio)
【価格チェック&購入】
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