テクノスピーチが展開するAI歌唱ソフトのVoiSonaがこの9月1日で2周年を迎えました。これに合わせる形でVoiSonaのiOS/iPadOS版が登場し、9月4日よりそのベータテスターの募集が開始されました。応募期間は9月18日までの2週間で応募後数日以内にAppleのベータテストアプリであるTestFlightを通じて応募者にVoiSonaのアプリが配布される予定です。ベータテストのため、利用はもちろん無料で、これまでのVoiSonaの利用の有無に関わらず誰でも応募可能です。
日本語のシンガーである知声(Chis-A 2.1.0)が利用可能になっているほか、VoiSonaユーザーであればアプリ上で認証することにより、現在利用しているシンガー(Beta以外の2.x以上に限る)を利用することも可能になっています。ソングトラック1つ+伴奏トラック1つのみ利用可能という制限はあるものの、性能面においてはWindows版/Mac版と同様。スタンドアロンで使えるとともに、AU3のプラグインでも使うことが可能となっています。実際どんなものなのか少しチェックしてみたので応募方法とともに紹介してみましょう。
VoiSonaがリリースから2周年を迎えた
DTMステーションの読者のみなさんだと、VoiSonaを使っているという方は多いと思います。個人的にはもうずいぶん以前に登場したソフトのような気がしていましたが、まだ2年だったというのがちょっと不思議な気もします。DTMステーションで最初に記事にしたのはVoiSonaの前身であったCeVIO Pro(仮)がリリースされた際の「WindowsはもちろんMacでも使え、DAW上のVSTiとしても動作するCeVIO Pro (仮)がα版として無償配布開始」というもの。ここから数えても2年半ということですね。
その後2022年9月1日に「AI歌声合成ソフトVoiSonaが本日正式リリース。2022年内には鬼龍院翔(ゴールデンボンバー)、すぅ(SILENT SIREN)のボイスライブラリ発売も」という記事とともに、正式リリースされたのでした。
その後は#kzn、結月ゆかり 麗、双葉湊音、IA、Ci flowerといった姉妹ブランドCeVIO AIの各キャラクタがクロスプラットフォーム化されたり、VoiSonaオリジナルとしてはMYK-IV、Pepper、LAUGH DiAMOND、玉姫といったシンガーが次々と登場する一方、歌うソフトであるVoiSonaだけでなく、しゃべるソフトであるVoiSona Talkも登場するなど、どんどん世界が広がってきています。
ライセンスの面で特徴的だったのはリリース当初からサブスクの形をとっているという点。こういうスタイルにすることで、声の提供者であるアーティストにも収益が継続的に還元されるビジネスモデルとなり、過去記事でもインタビューで表明されていた「AIを演者の味方に」というコンセプトのもと、従来の歌声合成ソフトと異なるアプローチをしていることも画期的でした。その後、全てのボイスライブラリにて買い切りプランも追加され、ユーザー側が制作スタイルに合わせてサブスク/買い切りを選択できるようになりました。
iPhone/iPadで使えるVoiSonaがベータ版として登場
そして今回リリース2周年のタイミングで発表されたのが、iOS/iPadOS版のVoiSonaの登場です。ご存じのとおり、これまではWindowsおよびMacで動作するスタンドアロンおよびプラグインで動くアプリケーションでしたが、このiOS/iPadOS版が登場したことで、その用途が大きく広がったのです。そう、自宅で作業するDTMの世界に閉じるのではなく、電車などで移動中も、出先でも、屋外でも気軽に曲作りができるようになったのです。
もっとも今回登場したのは正式リリースというわけではなく、ベータテストの形。記事の最後で紹介するエントリーフォームを通じて9月18日23:59までに申し込むことで誰でも、このiOS/iPadOS版のVoiSonaを無料で使うことができるのです。なお、しゃべらせるほうのアプリであるVoiSona TalkのiOS/iPadOS版ではないのでご注意ください。
動作環境はiOS17およびiPadOS17以上とのことなので最新にしておくことが必要なようです。ちなみに申し込み期間中にiOS18そしてiPadOS18が出ることになりそうですが、それらで動作するかは現時点では不明。でも、たぶん大丈夫だと思います。
そしてこのiOS/iPadOS版のVoiSonaはスタンドアロンで動作するのはもちろんのこと、AU3のプラグインとしても動作します。つまりGaragebandやLogic Pro、Cubasisなどのプラグインとしても動作する仕様となっています。iOS/iPadOS上のDAWでプラグインを使っているという方はまだまだレアケースだと思いますが、これを機会に試してみるのもよさそうですね。
基本的性能、使い勝手はWindows/Mac版と同様だが、トラックはソング、伴奏1つずつ
さて使い方はというと、Windows/Mac版のVoiSonaを使ってきた方であればまったく違和感なく使えると思います。そう、機能・性能はWindows/Mac版のVoiSonaとほぼ同様です。もちろんVoiSonaを使ったことがないという方でも、ほかの歌声合成ソフトを使ってきた人でも、すぐに使えると思います。
具体的にはアプリ起動後、NEWをタップして新規プロジェクトを作成すると、トラックには知声(Chis-A)がセットされていて、ピアノロール画面が表示されるので、ここに音符を入力していき、その入力した音符に歌詞を入れていけば、すぐに歌わせることが可能です。
Windows/Mac版の場合は画面上部でトラックを作成し、そのトラックを作成すると画面下部にピアノロールが表示される形でしたが、iPhone/iPad版の場合はソングトラックは1つのみという仕様になっていることもあり、あらかじめソングトラックが用意されていてピアノロールが表示されているので、初めての方でも、よりとっつきやすいと思います。
また伴奏用のオーディオトラックも1つのみとなっているのがWindows/Mac版との違いですね。
そして、ノート以外のパラメータ、つまりTMG(タイミング)、VOL(ボリューム)、PIT(ピッチ)、VIB(ビブラート)、ALP(声の幼さ)、HUS(声のかすれ具合)についてはタブで選ぶ形だったのに対し、iOS/iPadOS版では画面上部で切り替える形になっています。また表示させたいパラメータはチェックを入れていくことで複数表示させることも可能になっています。
気になる音の品質についてですが、テクノスピーチに確認したところ、エンジンはWindows/Mac版と同じなので、まったく同じクオリティーの歌声を生成できる、とのことです。
ちなみに個人的にちょっと戸惑ったのは、新規プロジェクトを作成する手順。Windows/Mac版なら、試しに少し入力してみて、やっぱり新たに作り直そうと思ったときに、[ファイル]メニューから[新規プロジェクト]を選ぶことでまっさらにできますが、このiPhone/iPad版の場合、その項目が見当たらないのです。新規プロジェクトを作成するには、いったんアプリを終了させた上で起動しなおすと、新規プロジェクト作成するか既存プロジェクトを開くかという画面が出てくるので、改めてNEWをタップして行う形になっています。
アクティベーションすることで利用中のシンガーの利用も可能に
そんなiPhone/iPad版のVoiSona、ベータテスト版だからということがあるのかもしれませんが、現状においてはユーザー登録など不要で、TestFlightからインストールして、利用規約に合意すると、起動して利用できるようになっています。
しかし、VoiSonaユーザーであれば、メニューにある[認証]をタップしてメールアドレス、パスワードを入力することで、アクティベートすることが可能です。アクティベートすることで知声だけでなく、さとうささらや機流音、AiSuuをはじめ、VoiSonaで追加購入し利用しているシンガーを利用できるようになります。ただし、利用できるのは各シンガーの(Beta以外の)2.x以上のライブラリとなっており、1.x.xというのは表示されず、利用することはできません。これはiOS/iPadOS版のエンジンが2.x対応のものになっていて、1.x.xが非サポートになっているためのようです。
なお、このアクティベートは無制限にできるわけではなく、アクティベート数には制限があります。上限に達してしまうと、その旨が表示されてアクティベーションできないため、VoiSonaのWebページから使わない機種のアクティベーションを解除する必要があります。
各種データのインポート/エクスポートも可能
現在ベータテスト中ということもあり、まだいくつかの不具合がある一方、機能的にもどんどんアップデートされていくようです。
実際、今回一般にベータテスターを募集するタイミングで実装されたのが各種データのインポート、エクスポート機能です。メニューから[エクスポート]を選ぶとエクスポートのダイアログが開き、TSSPRJ(VoiSonaデータ)、CCS(CeVIO形式)、CCST(CeVIOのトラック形式)、XML(MusicXML)、MIDI、WAVのそれぞれでエクスポートが可能となります。この際、現時点においてはエクスポート先は選択できず、iPhone/iPad本体内のVoiSonaフォルダ内に保存されるため、取り出す際はファイルアプリなどを使って、コピーしたり移動させるのがよさそうです。
反対に[インポート]を選ぶと上記と同様のファイル形式を読み込むことが可能で、こちらはFinderが開くので、本体内やiCloud上、またUSBメモリなどにもアクセスして読み込むことが可能になっており、Windows/Mac版のVoiSonaで保存したデータを読み込むこともできました。
ベータテスト中なので、何らかのバグなどが見つかる可能性もありますが、そうしたものを見つけた場合はぜひ報告してみてください。きっと改善されていくと思います。
なおベータテスト期間は3か月程度とのことですが、その後についてどうなるのかについては、現時点では発表されていません。が、おそらくWindows/Mac版と同様にエディタは無料で使え、知声のみは無料で使える、という形で公開されるのでは……と期待しているところです。
まずは、このベータテスターに参加して、iOS/iPadOS版のVoiSonaを使ってみてはいかがでしょうか?
9月18日23:59までベータテストユーザー募集中
このベータ版として公開されたiOS/iPadOS版のVoiSonaを利用するには、以下のサイトにアクセスし、ここの応募フォームからエントリーしてください。
入力する内容は姓・名のそれぞれとメールアドレスのみです。ただし、このメールアドレスはApple IDに紐づいていることが必須です。というのもApple IDに紐づいていないと、TestFlightにVoiSonaが現れてこないからです。
登録するとTestFlightからメールが届くので、このメールにあるボタンをタップし、TestFlightアプリを入手した上で、Apple IDでのサインインし、利用条件に同意するとテスト準備が完了します。その後、メールにあったコードを入力することでインストール可能になるのですが、この辺の手順はベータテスターに届くPDFのマニュアルにあるので、そちらを参考にしてみてください。
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