本気の音楽制作環境を整えるための、一歩上行くモニタースピーカーの選び方2024

DTMで必要な機材を一通り揃え、音楽制作にも慣れ、さらにその上を目指そうとなってきたら、次に考えるのは機材のアップグレードですよね。オーディオインターフェイスMIDIキーボードモニターヘッドホンモニタースピーカーなど、一歩上を行く機材へとリプレイスすることで、制作環境が大きく変わり、作業効率が上がったり、細かい部分までチェックできるようになったり、そして気分の上でもグッとテンションが上がります。今回焦点を当てるのがモニタースピーカーのアップグレードです。初心者用のモニタースピーカーであれば価格は3万~5万円程度が相場となっています。が、やはりここをアップグレードすることで制作環境は大きく進化します。この上のレンジとなると10〜20万円ぐらいが相場になってきます。この辺りのスピーカーから、プロがホームスタジオで使用するモニタースピーカーとなり、本格的な音楽制作を行うのであれば揃えていきたいところ。

また中には、これまでモニターヘッドホンだけを使っていて、そろそろ本気で高品位なモニタースピーカーの導入を考えているという方もいると思います。そこで、プロの世界でも十分通用する一歩上をいくDTMに最適な5インチ以下のモニタースピーカーをいくつかピックアップしつつ、モニタースピーカーの選び方、各機種の違い、具体的にどんな製品を選べばいいのか、紹介していきましょう。

一歩上を行くモニタースピーカーの選び方

モニタースピーカーを使う理由、モニターヘッドホンとの違い

音楽制作をしている方の中には、ヘッドホンだけを使って作業している方もいると思います。自宅の制作環境だと大きな音を出せない、スピーカーを置くスペースがない、高そうでなかなか手が出せない……といった理由から見送ってきたという方もいるでしょう。中には、ヘッドホンで細かな部分までチェックできるし、スピーカーを使う意義が分からない……なんていう方もいるかもしれません。確かに、作曲段階であれば、ヘッドホンだけでも大きな問題はありません。

でも自身でミックスやマスタリングも行うのであれば、モニタースピーカーは必須になってきます。モニタースピーカーがあると、定位や全体ボリュームのバランスが取りやすかったり、音の広がり、奥行き感などもより客観的に判断できるので、結果的によいミックスに仕上げることができるし、思わぬ失敗を避けることも可能になります。

たとえば、左右で位相が逆転している場合、ヘッドホンでは非常に変わった感覚で聴こえるので、「これがいい!」なんて判断してしまうケースも少なくないでしょう。しかし、そのサウンドをスピーカーから出すと、お互いが打ち消しあって、大音量で出しても音が聴こえない、といった致命的なエラーも起こります。こういったエラーを防ぎ、そしてミックスのクオリティを上げるためにも、複数の環境でモニターできるようにするべきなのです。

ミックス、マスタリングのクオリティを上げるためにもモニタースピーカーは必須

さらにいえば、高いプラグインをいくら揃えても、モニター環境がダメであれば、正しく変化を判断することができません。逆にいえば、モニター環境がしっかりしていれば、高いプラグインをたくさん揃えずとも、最小限の工数でカッコいいミックスを作り上げることが可能なのです。EQやコンプはたくさんインサートすれば、いい音になるものではないのは、ご存知の通り。

実際エフェクトをバイパスして比較したら、元の音のほうがよかったという経験をしたことのある方は多いと思います。コンプが適切にかけられてなかったり、EQを掛けすぎて位相が歪み、すべてのトラックを混ぜたときにイマイチな結果になってしまう、というのもモニタースピーカーとモニターヘッドホンを併用することで防ぐことができるのです。モニターヘッドホンはモニターヘッドホンで、細かい音やちょっとしたノイズもしっかりと聴き取れるので、用途によって使い分けるのが重要です。

ヘッドホンとモニタースピーカーは用途によって使い分けることが重要

さて、スピーカーには、レコーディングスタジオに設置されるようなペアで100万円以上するものから初心者用の3万円前後のモニタースピーカーまで、さまざまな種類があります。値段の違いにより大きな影響を受けるのは、やはり音質です。安いスピーカーは、価格を抑えるためにも、音質に対して十分な素材が使えなかったりなど、いくつかの妥協点が出てきてしまいます。その違いは、イヤホンでも、ヘッドホンでも、オーディオインターフェイスでも同じ。スピーカーでなくても、この音質という部分の違いは感じたことがある方は多いと思います。

冒頭にも書いたように、プロが自宅スタジオに置くモニタースピーカーは、10〜20万円ぐらいが多い印象があります。周波数バランス、解像度、位相、ダイナミックレンジ、トランジェント、再現性…など、正確な再生を求めるのであれば、最低でもこのレベル以上のモニタースピーカーが必要になってくるのです。「でも、好きなアーティストは、そこまで高くないモニタースピーカー使ってるよ」という話もたまに耳にしますが、それは自分でどこまで担当しているかによりそうですよね。ミックス、マスタリングをスタジオにお願いしているのであれば、自宅にいいモニタースピーカーを置く必要はないので、自分がどこまで作業を行うかによって、どのクオリティのモニタースピーカーを選択するか考えましょう。

スペックと選び方のポイント

ペアで購入する

モニタースピーカーは、通常のスピーカーと違って、1つから購入することが可能です。片方が故障した場合やイマーシブ環境を作るときにスピーカーを追加できるよう、個別でも販売されています。店舗で購入する際は問題になりませんが、もしネットで購入する場合、その商品がペアであることをしっかり確認しておきましょう。

パッシブスピーカーとパワードスピーカー

スピーカーには、アンプが内蔵されていないパッシブスピーカーとアンプ内蔵のパワードスピーカーまたはアクティブスピーカーが存在します。パッシブスピーカーは、別でパワーアンプを用意する必要があり、オーディオインターフェイスからパワーアンプ、パワーアンプからパッシブスピーカーへと結線を行う必要が出てきます。

とはいえ、今のモニタースピーカーの主流はパワードスピーカー。一応、パワードスピーカーまたはアクティブスピーカーという記載があるかは確認しておきましょう。ちなみにパワードスピーカーとアクティブスピーカーは技術的には別物ですが、パッシブスピーカーのように別でアンプを準備する必要はないので、同じような使い勝手で使用することができます。メーカーによって記載が違いますが、少なくとも、この記事の後半で紹介しているモニタースピーカーは、パワードスピーカーまたはアクティブスピーカーとなっています。

入力端子

モニタースピーカーは基本的にXLRジャックを搭載しています。出力に使うオーディオインターフェイスにもよりますが、オーディオインターフェイス側の出力がTRSの場合、TRS-XLRオスケーブルが2本必要となります。そのほか必要になってくる機材は、後述しております。RCAジャックも搭載しているモデルも存在しますが、音楽制作用途で使用するのであれば、XLRジャックへ入力信号を送りましょう。

入力端子の基本はXLRジャック

インチ数

モニタースピーカーは、大体ホームスタジオ用として3インチ〜8インチ程度のラインナップが存在します。このインチ数というのはウーファーのサイズを表しており、インチ数が大きくなれば、比例して筐体も大きくなります。ウーファーが大きいほうが低音域の再生に有利とされていますが、サイズが大きいと、その分大きいボリュームで再生しないとパフォーマンスを発揮することができません。さらにいうと、今は技術が進化し、サイズを抑えつつも低音域を出せるモデルが増えているので、サイズは部屋の広さと設置位置から決めればOKです。

スピーカーによっては、部屋の広さに対する記載があることもありますが、モニタースピーカーを使う部屋のサイズが5畳〜10畳程度であれば、4インチまたは5インチを選択すれば、問題ないでしょう。部屋の広さでサイズが決まるというのは、リスニング距離が影響するからです。たとえば、FOCAL SHAPE 40であれば最短リスニング距離は60cm以内と業界でもトップ3に入るぐらい短い距離でベストパフォーマンスを発揮するよう設計されています。設置位置により、リスニング距離が近くなる場合は、こういった短い距離でもモニターできる製品を選択するといいでしょう。

右が5インチ、左が4インチ、部屋によってスピーカーのサイズを決める

壁との距離

スピーカーの設置位置は、スピーカーとリスニングポイントが60°の正三角形になるよう設置するのが基本とされています。またスピーカーは、壁から一定距離離す必要があり、一般的にはスピーカーとリスニングポイントから壁が離れているほど音質がよくなるとされています。

ADAM Audio A4Vの場合であれば、側壁と天井からは理想的には2m以上離して、後壁とリスニングポジションの間は少なくとも2m空ける必要があり、リスニングポジションでの低域キャンセレーションを避けるには、4mの距離が理想的であるとマニュアルに記載があります。スピーカーの背面の壁との距離については記載がありませんでしたが、バスレフポートが背面にあるモデルには、1.5m以上離れた場所に設置するのが理想的という記載がありました。

この壁との距離の推奨値は、製品ごとに違うので、気になるモニタースピーカーを見つけた際は、そのモニタースピーカーのマニュアルを見てみると自宅に最適なものを見つけることができますよ。中には、壁の近くに設置しても影響の受けにくい設計が行われている機種もあるので、壁からの距離に余裕があるのか、それとも近くに置く必要があるのか、購入前に設置位置を検討しておきましょう。

お店で試聴する

また気になるスピーカーを見つけたら、一度でいいから試聴しておきたいところ。安い買い物ではないので、近くにモニタースピーカーを試聴できる環境があれば、足を運びましょう。自宅の環境とは違うので、同じ音で聴こえるわけではないですが、スピーカー選びの参考になります。都内であれば、渋谷のRock oNでモニタースピーカーの試聴は可能です。ネットの情報だけでなく、店員さんからの話も参考に、客観的に判断していきましょう。

キャリブレーションの有無

ここ近年では、キャリブレーション機能を搭載したモニタースピーカーも登場してきています。測定マイクがセットになっており、これを使ってスピーカーの出音を測定。部屋の反射音なども考慮しつつ補正を行ってくれるのです。IK MULTIMEDIA iLoud MTM MKIIであれば15万円前後ですが、キャリブレーションできる定番のモニタースピーカーである、GENELEC 8020APMやNEUMANN KH80DSPはマイクセットで約20万円。一般的なモニタースピーカーよりも機能が多い分、価格設定が高めとなっています。

またキャリブレーション機能が付いていなくても、Sonarworksのキャリブレーションソフトや「たった5万円で、ハードウェアの音場補正システムが導入できる!?常識を打ち破ったIK MultimediaのARC Studio」という記事で紹介したARC Studioなどを使って、後からキャリブレーションを行っていくことも可能。モニタースピーカーの出音は、部屋の環境にも左右されるので、キャリブレーションを前提に考えるというのも、ありかもしれません。

モニタースピーカーを導入する際に必要なもの

まずは、前述した通りケーブルが必要です。使用しているオーディオインターフェイスとスピーカーの入力端子を確認して、合ったケーブルを準備します。

後は、スピーカースタンドです。モデルによってはデスクに直接置けるものもありますが、基本的に耳の高さにツイーターまたはウーファーとツイーターの間が来るようにセッティングする必要があるので、スピーカースタンドがあるといいです。また、机に直接置いてしまうと、反射音や反響の影響を受けやすくなります。いい状態でモニタースピーカーを鳴らすためにも、用意できるのであればスピーカースタンドを用意しましょう。

デスクに直置きできるモデルもあるが、基本はスピーカースタンドを使用する

一歩上を行くモニタースピーカーおすすめ機材

GENELEC 8020D

ペア127,600円[4インチ][キャリブレーションなし]

Screenshot

定番のGENELECスピーカー。コンパクトな2ウェイアクティブモニタースピーカーで、ニアフィールドモニタリングやホームスタジオ、マルチメディア用途に最適。DCWテクノロジーを採用し、正確な周波数再現を実現しています。
音圧レベルは100dBで、周波数特性は56Hzから25kHzまで対応。またキャリブレーションに対応した4インチのモニタースピーカーGENELEC 8320APM GLM Studio 198,000円(税込)というラインナップも存在しています。

【関連記事】
Genelecの真髄はGLMにあり。自分の部屋に合わせて自動で音質・バランス補正してくれるキャリブレーション技術、GLM 4を試してみた
【メーカーサイト】
https://www.genelec.jp/active-2-way-studio-monitors/8020d/
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FOCAL SHAPE 40

ペア138,600円 記念モデル・ペア98,000円[4インチ][キャリブレーションなし]

Shape 40は、近距離モニタリングに最適なスピーカー。Focalの独自技術により、広い周波数範囲の低音から極めて高音まで、正確なコントロールが可能。フランスで製造され、業界トップクラスの最短リスニング60cmを実現しています。また4インチのウーファーは自然で色付けのないサウンドを、M型ツイーターは正確でパワフルな高音を再生。パッシブラジエーターが両サイドに配置されているので、背面の壁からの影響を受けにくい設計となっています。モニタリング用途としてはもちろんのこと、リスニング用途としても最適なモデル。現在、メディア・インテグレーション35周年を記念したキャンペーンが行われており、40,600円OFFで購入することができます。

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大人気モデルFocal SHAPEシリーズが、史上最安値でゲットできるチャンス!?メディア・インテグレーション35周年を記念したキャンペーンが7月31日まで実施中!
【メーカーサイト】
https://www.minet.jp/brand/focal/shape-series/
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◎Amazon ⇒ SHAPE 40ペア
◎サウンドハウス ⇒ SHAPE 40

ADAM Audio A4V

ペア143,000円[4インチ][キャリブレーションあり(追加機材が必要)]

ADAM Audio A4Vは、ホームスタジオ、イマーシブオーディオのマルチスピーカー構成向けに設計されたニアフィールドモニター。4インチのウーファーと伝説的なX-ARTツイーターを搭載し、52 Hzから45 kHzの広い周波数範囲で正確なサウンドを再生。オンボードのDSPチューニング機能により手動で、細かなチューニングを行うことができます。Sonarworksと提携しているので、別途Sonarworks SoundID Referenceを用意すれば、自動キャリブレーションをDSPで直接動作させることもできます。

【メーカーサイト】
https://www.adam-audio.jp/a4v
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reProducer Audio Epic 4

ペア148,500円[4インチ][キャリブレーションなし]

reProducer Audio Epic 4は、コンパクトなサイズながら、定評あるパッシブラジエーターを底面に搭載し、深いローエンドと大型スピーカーに匹敵するほどの中高域再生能力を持ち合わせています。アコースティックデザインを緻密に計算して、周波数特性や位相をDSPによる補正なしで、音源本来のニュアンスを忠実に再現することにこだわった設計が特徴となっています。

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次世代の業界スタンダードモニターになるか!?ドイツ設計のユニークな形のパワードスピーカー、Epic5
【メーカーサイト】
https://hookup.co.jp/products/reproducer/epic-4
【価格チェック】
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IK MULTIMEDIA iLoud MTM MKII

マイク付きペア148,500円[3.5インチ][キャリブレーションあり]

IK MULTIMEDIA iLoud MTM MKIIは、初代iLoud MTMのアイコニックなフォルムを保ちつつ、効率的なドライバーと2倍のDSP処理能力を備え、理想的なミキシング/マスタリング環境をキャリブレーションによって作り上げることのできるモニタースピーカー。付属のスタンドでスピーカーの角度を変更できるので、デスク上に置いて使うことも可能です。

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新設計ドライバー搭載、DSP処理性能2倍となった、自動音場補正システム内蔵のモニタースピーカー iLoud MTM MKII
【メーカーサイト】
https://hookup.co.jp/products/ik-multimedia/iloud-mtm-mkii
【価格チェック】
◎Rock oN ⇒ iLoud MTM MKIIペア
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◎OTAIRECORD ⇒ iLoud MTM MKII
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◎サウンドハウス ⇒ iLoud MTM MKIIペア

NEUMANN KH80DSP

ペア152,460円、マイクセットで194,040円[4インチ][キャリブレーションあり]

NEUMANN KH 80 DSPは、デジタル技術を核とした2ウェイニアフィールドモニター。独自のMMD(ウェーブガイドにより、正確な音像定位を実現し、振動を抑えたキャビネット設計が特徴となっています。キャリブレーションにより、自宅をスタジオに作り変えることのできるハイスペックな製品となっています。

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【メーカーサイト】
https://www.neumann.com/ja-jp/products/monitors/kh-80-dsp-a-g/
【価格チェック】
◎Rock oN ⇒ KH 80 DSP(黒:ペア)
◎宮地楽器 ⇒ KH 80 DSP(黒:ペア) KH 80 DSP(白:ペア)
◎Amazon ⇒ KH 80 DSP(黒:ペア)
◎サウンドハウス ⇒ KH 80 DSP(黒:シングル) KH 80 DSP(白:シングル)

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