有線も無線も、あらゆるMIDIデバイスをこれ1台でルーティング。世界初のハイブリッドMIDIスルーボックス、WIDI Thru6 BT

従来からのDIN 5ピンの有線のMIDIも、Bluetooth LEを用いた無線のBluetooth MIDIも混在可能で、どちらからどちらへでもルーティングができる世界初のハイブリッドMIDIスルーボックスとなるWIDI Thru6 BTが発売されました(税込メーカー希望小売価格:12,650円)。これはBluetooth MIDI利用の上で最強のデバイス、WIDIシリーズを展開するCMEが新たにリリースした機材。

有線MIDIの端子としてはMIDI INx1とMIDI OUTx5、Bluetooth MIDIとしてはMIDI INx1とMIDI OUTx1でトータルではMIDI INx2とMIDI OUTx6という構成で、それぞれのMIDI INに入ってきた信号をミックスした上で、そのまま各MIDI OUTへスルーさせるという機材です。実際どんなことができて、どのように使うのか、実機を使って試してみたので、紹介してみましょう。

有線MIDIもBluetooth MIDIも混在可能な万能MIDIスルーボックス、WIDI Thru6 BT

自動ペアリングで超低レイテンシーのWIDIシリーズ

WIDIシリーズは以前「現時点、最強のBluetooth MIDIかも!? 各種BLE-MIDI機器と自動でペアリングしてくれるWIDI Masterがスゴイ!」という記事や「キーボードやシンセ、音源モジュールとパソコン/スマホの接続をワイヤレスに!インテリジェントに何でも自動接続するWIDIが超便利!」という記事などで紹介したことのあるBluetooth MIDI関連の機材。

これまでも有線のMIDIをBluetooth MIDIに変換するデバイスや、USB-MIDIをBluetooth MIDIに変換する機材はありましたが、ペアリングが面倒という問題があったり、レイテンシーが生じてしまう……といった問題があり、敬遠する人もいました。しかしWIDIシリーズはそうした従来の問題を抜本的に解決する強力なデバイスです。

Bluetooth MIDIを使う上で最強のデバイスとして以前取り上げたWIDI Master

まずはペアリング作業などまったく不要でBluetooth MIDIデバイスが近くにあれば勝手に接続してくれるという、ちょっと強引ともいえるほどの便利さ。これによりペアリングのための煩わしさから完全に開放されます。

さらに接続してしまえば、まったくといっていいほど違和感はありません。まさに有線のMIDIで接続しているのと同じ感覚であり、ほぼレイテンシーなしでの通信が可能なのです。

これまでのWIDIシリーズより一回り大きい名刺箱サイズ

便利すぎてWIDI Masterが出た時点で私自身2つ購入したし、WIDI Bud Pro、WIDI Jack、WIDI Uhostもそれぞれ購入し愛用しています。そのWIDIシリーズに今回新たに追加される形で登場したのがWIDI Thru6 BTです。

CMEのWIDIシリーズの中ではWIDI Thru6 BTは少し大きなサイズになっている

これまでのWIDIシリーズと比較すると少し大きく、名刺箱をちょっと短くしたような大きさ。これまでのWIDIシリーズと並べてみると大きさの違いも分かりやすいと思います。その大きい理由は、物理的にDIN 5PINのMIDIケーブルとの接続がMIDI INが1つ、MIDI OUTが5つと、トータルで6個搭載されているため。それを考えるとこれでも最小の大きさといえそうです。

MIDI INx1、MIDI OUTx5のDIN5PIN端子が搭載されている

 

ちなみにWIDI MasterはMIDI OUT端子から電力供給を受けるという、やや反則ワザ的なことをしていましたが、このWIDI Thru6 BTではサイドにあるUSB Type-C端子で電源供給を受ける形になっています。このUSB Type-Cはあくまでも電源供給用だけであって、コンピュータと接続してもMIDIデバイスとして認識されるわけではありません。

電源はUSB Type-Cで供給。あくまでも電源であり、PCとの接続機能は持っていない

MIDIパッチャーではなくMIDIスルーボックス

さて、ここからが本題。このWIDI Thru6 BTとは何をするものなのか?そもそもMIDIスルーボックスとは何なのでしょうか?

Bluetooth MIDIでiPhone/iPadのシンセアプリなどとも連携可能

 

古くからMIDIを使っている人だと、MIDIパッチャーという機材をご存じの方も多いと思います。RolandのA-880に代表される機材で、最近でこそあまり使わなくなりましたが、私自身も長い間利用してきました。このMIDIパッチャーを使うことで、AからのMIDI出力をBに送ったりCに切り替えたり、Bからの入力をAに送るとか、Dにも送る……なんて切り替えを自由に行えるのです。これによりMIDIの配線はそのままにスイッチ操作だけで、接続を切り替えることができるため、いちいち機材の裏側に潜り込んで作業する必要がなくなり便利なわけです。

それに対し、このMIDIスルーボックスはもっとシンプルなものです。単純にAから来たMIDI信号をそのままBにもCにも……Gにもそのまま送るという機材なんです。ただし、入力が1つでなく2つあるというのがWIDI Thru6 BTの大きな特徴。つまり有線MIDIで入ってきた信号とBluetooth MIDIで入ってきた信号それぞれをまとめた上でスルーさせるのです。

WIDI Thru6 BTのシステム構成図

これを図に表してみたものが上記のものです。これを見ると、どのように使うかが見えてくると思います。

コンピュータ、iPhone/iPad、MIDIキーボードからの信号もMIDI音源へ

では、このWIDI Thru6 BTはどんなときに、どのように使うものなのでしょうか?これはユーザーの使い方次第ではありますが、昔のDTM用の音源モジュール、つまりGS音源やXG音源などを持っている方、ハードウェア音源を利用している方がWindowsやMacなどのコンピュータ、もしくはiPhoneやiPadからコントロールしたいといったときに便利に利用できそうです。

単にコンピュータと音源を1:1で接続するだけなら、MIDIケーブル1本あればいいのですが、コンピュータからも鳴らしたいし、MIDIキーボードからも鳴らしたいというときに便利に使えるし、複数のMIDI音源モジュールを持っていて、それぞれを同時に鳴らしたいというときにこれがあると、スマートに接続できます。もちろん、複数の音源モジュールをユニゾンで鳴らすこともできるし、1つ目の音源モジュールはMIDI Ch.1、2つめはMIDI Ch.2……というように割り振って別々に使う場合もこれ1つで行けるので便利です。

有線/無線のMIDIで入ってきた信号を各種MIDI音源モジュールへ送ることができる

また有線のMIDIとBluetooth MIDIをミックスできるので、コンピュータのシーケンスでバックトラックを再生しながら、MIDIキーボードでリードを演奏するという使い方もできますから、応用はいくらでも効くと思います。

もちろんMIDIパッチャーのほうが、より多くの機器を組み合わせて使うには便利ではありますが、そこまで多くのMIDI機器を同時に使うケースは少なくなっていると思うので、これが1つあれば十分というケースが多いのではないでしょうか?

Bluetooth MIDIと有線MIDIの両方で演奏したものをミックスしてMIDI音源に送ることができる

有線MIDIとBluetooth MIDIの両方がある環境で柔軟な接続を行いたいというときは、このWIDI Thru6 BTがかなり便利に利用できると思います。

WIDIアプリを使って各種セッティングやグルーピングもできる

ところで、このWIDI Thru6 BTのBluetooth MIDIの接続先はiPhoneやiPad、またMacそしてWindows(※Windowsとの接続の場合はこちらの記事「WinRT MIDI/UWP MIDIって何だ? WindowsにおけるBluetooth MIDIの活用法」を参照ください)でもいいですし、KORGのmicroKEY AirをはじめとするMIDIキーボード、さらにはYAMAHAのMD-BT01、RolandのWM-1、そしてもちろんWIDI Masterなど何でもOK。

ただし、WIDIシリーズ製品がちょっと困るのは、電源を入れるとそばにあるBluetooth MIDIデバイスに勝手に接続してしまう、という点。ペアリングなどの必要なく、つなぐことができるのはいいけれど、「これとこれを接続したい」というときにデフォルトの状態では自由が利かないのです。

WIDIシリーズの役割を親にするか子にするかを設定可能

そんなときはCMEが出しているiOS用のアプリ、その名もWIDIアプリを使えば、解決です。Bluetoothには親(Central)と子(Peripheral)があり、親と子が接続できる形になっています。そしてWIDIシリーズは親にでも子にでもなるので、何とでも勝手に接続してしまうわけですが、このアプリを使うことで、強制的に子にすることが可能です。

WIDIアプリのグループ機能で、WIDIシリーズの接続を固定化することも可能

さらに、WIDIシリーズ同士であればグループを組むことができ、そのグループとしての接続を固定化することも可能です。つまりWIDI Thru6 BTを親、WIDI MASTERを子としてお互いを接続する設定をしておけば、ほかと勝手につながなくなるので、必要に応じてこのアプリを使って設定してみてください。

【関連情報】
WIDI Thur6 BT製品情報
WIDIシリーズ情報

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