DTM用のノートPCはどう選ぶ?AMD Ryzen 7 PRO搭載のThinkPad T14s Gen 4 AMDを試してみた

普段、いろいろな人と話をしていてよく話題になるのが、DTM用のパソコン選びについてです。4~5年前と比較してCPU速度は速くなったし、SSDも大容量のものがかなり安くなったので、たいていのマシンであれば、どれでも快適にDAWを動かし、音楽制作ができるようになっています。もちろん、パソコン選びの大前提として、Windowsを選ぶか、Macを選ぶかというがありますが、そこはみなさんの主義主張があるでしょうから、好きなものを選ぶのがいいと思います。

が、今回ここでテーマとするのは、LenovoのノートPCであるThinkPad。いろいろあるThinkPadシリーズの中でも、AMDのRyzen 7 Proを搭載したA4ノートPCであるThinkPad T14s Gen 4というマシンを使ってみたところ、かなりパワーがありDAWや各種プラグインがサクサク動くし、軽くて持ち歩きにも便利で、しかもスタミナもばっちりでした。そこで、これがどんな機材なのか、DTM的観点からハード面、ソフト面などいろいろチェックしながら紹介してみたいと思います。

AMD Ryzen 7 PRO搭載のThinkPad T14s Gen 4 AMDをDTM用途で試してみた

21万円で買えるRyzen 7 PRO搭載の軽量PC

ThinkPad T14s Gen 4がテーマといいつつ、私の主観として言うと、自宅でのDTM作業用であれば絶対デスクトップPCがいい、と考えています。というのもデスクトップならCPUパワーに余裕があるし、自由に大きなディスプレイを設置することができるし、拡張性は高いし、何より価格的に安いからです。本来でいえば、タワー型PCが一番だとは思いますが、最近は小さなNUCなどもかなりのパワーを持っているので、私自身はここ何年かはNUCを愛用しています。

が、外に持ち運ぶとなると、ノートPCが必要となるのも事実。出先でDTM作業をする、ライブ会場に持ち込む、友達と一緒にコライトする……などなど、さまざまな理由からノートPCが必要になるケースは多くあると思います。

外出先でも使うならノートPCが必須となる

余裕があれば自宅作業はデスクトップPCで、持ち歩き用に別途ノートPCを、というのが望ましいところではありますが、なかなかそうもいかないですよね。そうした中、今ならどんなノートPCがいいだろう……と探していた中、たまたまLenovo製品を試す機会が得られました。「リストに並んだ、さまざまなLenovo製品の中から1つ選んで」と言われてお願いしたのが、ThinkPad T14s Gen 4 AMDというAMDのRyzen 7 PROを搭載したマシン。定価は346,720円となっていましたが、Lenovoサイトをチェックしてみたところ、実際には38%引きとなっていて、214,918円で買えるようなので、価格性能比で見ても悪くなさそうです。一つずつチェックしていきましょう。

伝統のトラックポイントも装備、軽量なA4サイズのノートPC

お願いして届いたのは、想像していたのよりかなり小さい段ボール箱。開けてみると、軽いA4サイズの黒いThinkPadが登場します。

見た目にも高級感があり、薄型で軽量なPCだった

取り出してみると少し落ち着いた黒で、ツルツルではなく少しザラついたような手触りでもあり、高級感を感じます。

サイズ的にはA4の用紙を重ねてみると、A4より縦横ともに5mm程度大きい感じ。重さは1.26kgととっても軽量です。

A4の用紙と重ねてみると一回り大きいサイズである

画面を開いて電源を入れるとLENOVOというロゴが表示された後に、Windows 11 Homeが起動します。

電源を入れるとLenovoのロゴが表示される

個人的には遥か昔、IBM時代のThinkPadはよく使っていましたが、その当時と変わらず、キーボードの真ん中に赤いトラックポイントがあるんですね。トラックポイントは好き嫌いはあると思いますが、慣れるととっても便利なんですよね。

ThinkPadのトレードマークでもあるトラックポイントは健在

ただ私自身もここ20年近くはパッド操作だったので、トラックポイントだけ、と言われてしまうと、ちょっと戸惑うところですが、もちろんタッチパッドもあるので、まったく問題ありません。あえて、トラックポイントだけで操作するという人なら、タッチパッドを無効にすることも可能のようですね。

タッチパッドもあるので、トラックポイントが苦手な人も安心して使える

高速CPUのAMD Ryzen 7 PROを搭載、バッテリーのスタミナは23.1時間!

そのタッチパッドの左横にRYZENのエンブレムシールが貼ってありますが、このエンブレムを見てもわかる通り、このThankPadに搭載されているのはAMD Ryzen 7 PROの7840Uという省電力タイプ。動作周波数は3.30GHzで最大5.10GHzで動くという、かなり高速なCPUなので、DAW用として期待できそうです。

AMDのRyzen 7 PROのエンブレムが貼られている

Webサイトを見てみると、標準では32GBのメモリーを搭載しているとのことですが、ウチに届いたのは16GBのモデル。普段自分で使っているのが32GBのメモリなので、これで大丈夫なのかな…と少し不安にも感じつつ、Cubase 13 Proといくつかのプラグイン、またSynthesizer Vなどをインストールしていきました。

電源接続説に使ってみたが、バッテリーがほとんど減っていかないのには驚いた

もともとフル充電されていたこともあって、ACアダプタに接続せず、バッテリーだけで使っていたのですが、驚くのは1時間程度インストール作業をしていても、ほとんどバッテリー容量が減らないこと。スペックを見たら、なんとバッテリー駆動時間(JEITA2.0に基づく計測)で最大約23.1時間とあるんですよね!

もちろんこの数字は最小限のパワーで動作させているときのものだと思うので、DAWでプラグインをブン回したら、そんなに持つわけはないのですが、それでもかなりな時間使うことができます。実際プラグインをいっぱい立ち上げて、Cubaseで再生を1時間くらい続けていても20%程度しかバッテリー容量が減らなかったので、かなり使えそうですね。

USB端子を4つ装備。USB PD電源供給なので汎用性も抜群

ではこのThinkPadの入出力部分を少しチェックしてみましょう。ここにはUSB端子が4つ搭載されているのですが、そのうち2つがUSB 4 Type-Cで、2つが左右にあるUSB 3.2 Gen 1のType-A端子。

Think Padの左サイド。左からUSB Type-Cが2つ、HDMI、USB Type-A、ヘッドホン出力となっている

これだけあればオーディオインターフェイスを接続して、MIDIキーボードを接続し、さらにはコントロールサーフェイスを接続することもできるので、かなり余裕です。

右サイドにはUSB Type-Aが一つある

ちなみに電源もPDとなっているので、このUSB 4 Type-Cが兼ねています。付属のACアダプタももちろんUSB Type-Cとなっていますが、これに限らず、45W以上に対応したPD電源であればどれでもOKなのもうれしいところ。

USB Type-Cで電源供給するACアダプタが付属している

たとえばANKERのAnker Prime Wall Chargerなんかだと、ThinkPad付属のACアダプタよりも小さいし、コンセントに直接挿せるし、多目的に使えるので、とっても便利です。

付属のACアダプタに限らず、USB PDで45W以上供給可能なものなら利用できる

ためしに、供給電圧、電流、電圧も測定できるUSB電源で試してみたところ20Vで44Wで動作するようでした。

別のメーター付きACアダプタを使ってみたところ20V、44Wとなっていた

また、この届いたThinkPadにはSDカードスロットはありませんでしたが、+2,200円のオプションで本体リアに取り付けることが可能になっているようです。自分で買うならこれは必須かな、と思いました。

キーボードの上部にステレオスピーカーが内蔵されている

一方、本体のキーボードの上あたりにスピーカーが取り付けられており、ここで音が出るとともに、左サイドの3.5mm端子はヘッドホン・マイク接続兼用の4極対応となっています。

左サイドの3.5mm出力にモニターヘッドホンを接続すると、予想外にいい音だった

さすがにこのスピーカーをDTM用としてはお勧めできませんが、試しに3.5mmの端子にモニターヘッドホンを接続して、Cubaseの出力設定をGeneric Low Latency ASIOにするとともに、Realtek HD Audio 2nd outputと設定して鳴らしてみたところ、結構いい音で鳴ってくれます。レイテンシーも20msecで動作するので、再生だけでいえば、これで十分な印象です。

3.5mm出力の場合ASIOドライバは使えないが、レイテンシーは20msecで動作した

CPU負荷も非常に低く、快適に余裕で動作する

とはいえ、ここでは持ち歩きやすい、とにかくコンパクトなオーディオインターフェイスとして以前「超軽量、コンパクト、ハイコストパフォーマンスのオーディオインターフェイス、ZOOM AMSシリーズ」という記事で紹介したZOOMのAMS-22を接続したり、「とっても小さなMiniも誕生。モニター出力機能も備えた多機能キーボード、iRig Keys 2シリーズが超便利」という記事で初回したiRig Key 2 miniを接続して、使ってみました。

小型軽量なAMS-22やiRig Key 2とセットで使うと快適だった

プラグインもいっぱい使ったそれなりに重たいプロジェクトを読み込んで、再生してみましたが、もったく問題なく動きますね。試しに、タスクマネジャーを起動してCPUの使用率を見てみてもたった8%。

Cubaseでプロジェクトを再生してみたところCPU使用率はたったの8%

論理プロセッサ表示あせると、16スレッドありますが、10スレッドしか使ってないですね。16GBしかないので心配していたメモリですが、使用率は58%。もっと大きなプロジェクトになると、ここがきつくなってきそうではあります。

とはいえ、前述のとおり、標準モデルはこの倍の32GB搭載なので、それであれば非常に余裕があるので、どんなプロジェクトでも大丈夫だと思います。

Synthesizer Vを動かしても11~13%程度の負荷ですむ

またSynthesizer Vもスタンドアロンモードで試してみました。こちらはリアルタイムでレンダリングしながら再生するからか、瞬間的には11%程度のCPU使用率まで上がっていましたが、それにしてもこの程度。全然余裕で動作してくれます。

外付けのM.2のSSDを利用するのがお勧め

一方で、少し気になったのが画面サイズでした。このThinkPad、画面サイズは14″ WUXGA液晶 (1920 x 1200)。DAWを開いてみると、さすがにエリアが狭いな…という印象でした。

デフォルトの状態でDAWを起動すると、ちょっと狭い印象だったが…

が、設定を見てみるのと、デフォルトでは150%表示になっていたんですね。

デフォルトでは画面が150%に拡大されていたので100%に変更してみた

これを100%にしてみると、こんな感じで画面サイズ的にもバッチリ。もちろん、HDMI出力も装備しており、ここに外部ディスプレイを接続すれば、4Kディスプレイも含め、より快適な制作環境を構築できると思います。

1920×1200にすると、DAWも全体が見渡せるようになる

もう一つの懸念点がストレージ容量です。このThinkPadの標準モデルだとSSDで512GBとなっています。まあ、DAWを入れて、各種プラグインを入れて……という点で、そう不足するわけではないですが、たとえばNative InstrumentsのKOMPLETEやUVIの音源など、サンプリング音源を入れていくと、さすがに物足りなくなってしまいそうです。

購入時の選択でSSDを1TBや2TBに増設することは可能ですが、1TBにすると+57,200円、2TBだと+167,200円と、かなりコストパフォーマンス的に落ちてしまいそうです。それであれば、別途SSDドライブを外付けして、サンプリング音源はそこに入れてしまう、というのがいいように思いました。

外付けのSSDを接続すると、大容量のサンプリング音源も快適に使える

いまネットで探すとM.2のSSDで2TBが15,000円程度で入手可能です。また、そのM.2のSSDを外付けドライブにするためのケースが2,000円程度で販売されています。実際、これを接続して、20GBのピアノ音源をここに入れて鳴らしてみましたが、超快適。まったく問題なさそうですね。このドライブであれば、重さはたったの70g。持っていることにまったく気が付かないほどのものなので、便利に使えそうです。

DTM用途としてみて、ThinkPad T14s Gen 4はとっても頼もしい存在だった

以上、LenovoのAMD Ryzen 7 PRO搭載のThinkPad、ThinkPad T14s Gen 4について紹介してみましたが、いかがだったでしょうか?Lenovo直販だけで購入できるモデルであり、実売214,918円という機材ですが、DTM用途として、非常に快適に使うことができます。またここまで触れませんでしたが、要らないソフトがいっぱい入っていたりせず、Windows 11 Home本体と、ThinkPadの設定ユーティリティだけのシンプルな構成であることも非常に好印象でした。軽くてパワーがあって、スタミナもあるDTMパソコンを探しているのであれば、とってもお勧めできる機種だと感じました。

【関連情報】

ThinkPad、ThinkPad T14s Gen 4製品情報

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◎Lenovo ⇒ ThinkPad、ThinkPad T14s Gen 4

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