2台のコンピュータに同時に接続でき、32in/28outを自由自在にルーティング可能な最強性能のオーディオIF、Zen Quadro Synergy Coreリリース

Antelope Audio(アンテロープ・オーディオ)が非常にユニークで超高機能、超高性能なオーディオインターフェイス、Zen Quadro Synergy Coreなる製品をリリースし、6月1日より国内でも発売を開始しました(税込実売価格:98,800円)。これまでもさまざまなAntelopeの各種オーディオインターフェイスを取り上げてきましたが、同社製品は他のメーカーとは一線を画す非常に多彩な機能・性能を持つオーディオインターフェイスとなっています。なかでもZenシリーズは小さな機材ながら、この中に業務用のレコーディングスタジオが丸ごと詰まっているようなシステムになっていて、その価格からは信じられないほどの機能、性能になっているのです。

今回登場したZen Quadro Synergy Coreも同様ですが、この製品が非常にユニークなのはここにUSB Type-C端子が2つ搭載されており、ここにWindowsやMacなどのコンピュータやiPhone/iPad、Androidなどのスマートフォン、タブレットを同時に2台接続することで、2つを完全に統合したスタジオ環境が構築できるのです。つまり、2つのDAWを連携させることもできれば、WindowsやMacのDAWから出す音に、マイクやギターなどZen Quadroに入力された音をミックスしつつ、iPhoneやAndroidにデジタル信号のままレコーディングすることもできるし、それをそのまま配信するといったことも可能になっているのです。あまりにも機能が多彩すぎて、初心者ユーザーだとかなり混乱してしまうかもしれませんが、トンでもない性能を持つ機材であることは間違いありません。実際少し試してみたので、どんな機材なのか紹介してみましょう。

2台のコンピュータやスマホ、タブレットに同時接続できるインターフェイス、Antelope AudioのZen Quadro Synergy Core

トータル14in/10outで、2つのUSB端子を搭載

まずは外見から見ていきましょう。これはデスクトップに置くお弁当箱サイズの機材。iPhone 15 Pro、それにヘッドホンと一緒に並べてみると、そのサイズ感がなんとなくわかるでしょうか?

お弁当箱サイズのコンパクトな機材だが、中にはトンでもないほどの機能が詰まっている

フロントの左側にはA1、A2と2つのコンボジャックの入力があり、それぞれマイク、ライン、ギター(Hi-Z)を入力できるようになっています。また、右側にはそれぞれ独立したヘッドホン出力が用意されています。

フロントパネルの左側にはコンボジャックの入力x2、右側にはヘッドホン出力x2がある

一方、リアを見ると左側にA3、A4と2つのコンボジャック入力がありますが、これはマイクとラインの切り替えです。つまりトータル4つのマイクプリを搭載した機材でもあるのです。

その右にあるのがMONITOR出力。ここにはモニタースピーカーを接続します。さらにその右はLINE OUTとある通りライン出力で、ほかのオーディオ機器への出力が可能。

Zen Quadroのリアパネル。アナログ、デジタルの入出力が装備されている

その右には金メッキされたピンジャックが2つありますが、これはS/PDIFの入力と出力(それぞれ2ch分)。そして一番右にある1、2と並んでいるのがUSB Type-C端子で、このZen Quadro Synergy Coreの最大のトピックスともいえる部分です。

このリアパネルに収まり切れなかったということなのでしょうか?左サイドにもう一つ端子があります。これはADATのオプティカル入力。ここにADAT機器を接続すると最大で8chの入力が可能になっているのです。

左サイドにはオプティカルのADAT入力を装備

これらをトータルすると14in/10outとなるわけですが、これに加えてUSB 1、USB 2があり、USB 1は16in/16out、USB 2は2in/2outとなっているため、トータルでは32in/28outというかなり大規模なオーディオインターフェイスなんです。そこに自在にルーティングできるのもこのZen Quadroの特徴ですが、この辺についてはこの後、詳細に見ていきます。

USB 1は16in/16outなので、トータルでは32in/28outという仕様になっている

トップパネルからほとんどの機能がコントロール可能

続いてトップパネルを見ていきましょう。左側にディスプレイがあり、右側に大きなノブ、中央にGAIN、HP/MON、Antelopeという3つのボタンがある構成はほかのZenシリーズなどとほぼ同様です。

トップパネル。大きなディスプレイとノブ、それに3つのボタンでほとんど操作が可能

これらを使ってZen Quadroのほとんどの機能をコントロールできるようになっています。デフォルトの状態でディスプレイには 6つのレベルメーターが表示される状態になっているほか、USB 1、USB 2がアクティブになっているのか、サンプリングレートがいくつなのか…といった表示がされています。

GAINボタン長押しで表示されるコントロールメニュー

GAINボタンを押してノブを回すことで、各入力のゲイン調整ができたり、HP/MONボタンを押すとヘッドホン1、ヘッドホン2、モニター出力のレベル調整が可能。

ヘッドホン/モニターへの出力バランスをここで調整することが可能

またGAINボタンを長押しすると、コントロールメニューが表示され、ここでさらに細かな設定ができるようになっています。たとえばMON/HP1を選ぶと、モニター出力はヘッドホン1へ出力する信号をどのようにルーティングし、そのバランス調整をどうするか…といった設定ができるようになっています。

USB 1がメインの端子、USB 2はドライバ不要で利用可能

さて、ここからが本題。冒頭でも紹介した通り、Zen QuadroにはUSB 1とUSB 2という2つの端子が用意されており、ここにコンピュータやスマホ、タブレットをそれぞれに接続して使うことができるようになっています。

Zen Quadroの最大のポイントはUSB Type-C端子が2つあり、ここに2台のマシンを同時に接続できること

たとえばUSB 1にWindowsをUSB 2にiPadを接続すると、iPadの出力をWindowsのDAWで劣化なくレコーディングできるのはもちろんのこと、Windowsからの出力のほかZen Quadroの各種入力に入ってきた信号をミックスして、iPadへ劣化なくレコーディングする…といったことが可能になるのです。

まさに1台で2台分のオーディオインターフェイスの機能として使えると同時に、そこが統合されているからノイズを購入させることなく、コンピュータやスマホ、タブレット間をデジタル的にデータのやりとりができるのです。

ではUSB 1とUSB 2は同等のものなのか、というと、そうではないようです。メインとして使うのはUSB 1。ここはWindowsやMacを接続するとともに、Antelope Launcherというソフトをインストールして、Zen Quadroのフル機能をコントロールする形となります。そして14in/10putのオーディオインターフェイスとして機能するようになっているのです。

Antelope Launcher。ここから内部ミキサーなどを起動でき、ファームウェアのアップデートなども可能

一方、USB 2にはWindows、Mac、iPhone/iPad、Androidなどさまざまな機器が接続可能であり、基本的にはドライバ不要で使えるクラスコンプライアントなオーディオインターフェイスとなっています。

USB 1、USB 2に自在にルーティング可能

では、そのUSB 1、USB 2をどのように使うのか。これをUSB 1に接続したコンピュータのAntelope Launcherから起動させたミキサーで見てみましょう。

起動させたミキサー画面。実は24ch入力の超強力なミキサーコンソールとなっている

Antelopeのオーディオインターフェイスを使ったことのある方ならお馴染みのものですが、初めて使う方は、いきなりスゴイ画面が出てきて面食らうかもしれません。ここがAntelope製品が普通のオーディオインターフェイスと大きく異なる部分であり、最大の特徴といってもいいかもしれません。まさにレコーディングスタジオのコンソールのようになっているのです。

これはUSB 1に接続したマシンから見たミキサーだが、USB 2 PLAY 1/2にUSB 2に接続したiPadの音が立ち上がってくる

デフォルトの画面ではヘッドホンやモニター出力のミックスをするためのミキサーとなっていて、フロントやリアに接続したマイクやギター、ラインなどのバランス調整ができるのですが、その一つとして、USB 2 PLAY 1(Lチャンネル)、USB 2 PLAY 2(Rチャンネル)というのがあるんです。そう、さっきの例の接続でいうと、iPadからの出力がここに立ち上がってくるのです。そしてヘッドホン1/モニター出力、ヘッドホン2、ライン出力とそれぞれ別々にミックスさせることが可能になっています。

ヘッドホン1とはまったく独立した形でヘッドホン2用のミックスの設定が可能

一方で、コンピュータ側のDAWでこのUSB 2からの音をレコーディングしたいという場合はもちろんチャンネル指定することで可能になっています。

それに対して、USB 2に接続したデバイス側も音を出すだけでなく、レコーディングも可能です。この場合は前述の通り2in/2outとなっているのですが、入力の2チャンネルを何にするのかは自由に選択することが可能です。つまり、A1、A2に接続したマイクをレコーディングするということもできるし、USB 1の3/4chの出力の音をレコーディングするといったことも可能。

USB 2側にレコーディングするソースを決めることができる

さらにはLOOOPBACK HP1、LOOPBACK HP2というものも選べるようになっています。これはヘッドホン1用にミックスしたものをUSB 2へ送ったり、ヘッドホン2用にミックスしたものをUSB 2に送るというものなので、Zen Quadroに接続したさまざまな入力をミックスしたものをまとめてレコーディングする…といったことが可能になります。

LOOPBACK HP1/HP2を選ぶことで、ヘッドホン用にミックスした音をUSB 2へ録音したり配信できる

またレコーディングだけでなく、このUSB 2にWindowsやMacを接続してOBSを起動すれば、配信することができるし、iPhoneを接続してYouTube Liveを起動させたそのまま配信する…といったこともできるわけです。

ビンテージエフェクトもCPU負荷なく利用できる

そして、もう一つ大きいのはZen Quadro内でさまざまなエフェクトを利用できるという点です。Synergy Coreというのがそれを意味しているのですが、その詳細については、以前「FPGAx2とDSPx4で構成されるスーパーデスクトップインターフェイス、AntelopeのZen Tour Synergy Coreの実力」や「Antelope Audioが超高性能なオーディオインターフェイス、Discrete 4 Pro Synergy Core、Discrete 8 Pro Synergy Coreを発表」といった記事でも紹介しているので、少し参照してみてください。

各チャンネルにビンテージ機材を再現するエフェクトを組み込むことが可能

が簡単にいうと、このZen Quadroの中にDSPとFPGAがそれぞれ入っており、これらを使ってさまざまなエフェクトをCPUを使うことなく、そもそもDAWに依存することなく、利用できるようになっているのです。

たとえば1176とかLA-2A、Pultech EQ、Neve 1073……といったビンテージエフェクトを再現したものがズラリ。ギターアンプシミュレータやキャビネットシミュレータも入れてトータル37種類が標準で入っているのです。かなりリアルにシミュレーションしているので、このエフェクトだけでも十分金額的な元が取れてしまうほど。以前「Antelopeのビンテージエフェクトの元ネタを特定!? FPGA FX搭載のDiscrete 8と高性能コンデンサマイクのEdgeを試してみた」という記事でFPGAのエフェクトについては元ネタを特定しているので、こちらも参考にしてみてください。

標準で37種類のエフェクトが装備されており、各チャンネルにセットし、最大48個まで同時に利用可能

ちなみに、最大48個のモノラル・エフェクト・インスタンス(6ch x 8個)を同時にロードできるので、これ一台があれば、まさにレコーディングスタジオを遥かに超えるシステムが入手できたのと同様ですね。これらはDAWのプラグインではなく、あくまでもZen Quadroのコンソールミキサー内で立ち上げるものとなっています。

もちろん、USB 1、USB 2からの音にこれらのエフェクトを掛けることも可能で、その掛けた音をほかの音とミックスさせてレコーディングしたり、生配信するといったことも可能になります。

マイクやギター、ラインなどの入力にエフェクトがかけられるだけでなく、USBからの入力に対しても利用可能

以上、Zen Quadroについて見てきましたが、その概要をつかむことはできたでしょうか?あまりにも機能がいろいろあるので、その一部しか触れられていませんが、要は2つのUSB端子にコンピュータやスマホ、タブレットを同時に接続し、自由にルーティングさせるとともに、内蔵のエフェクトで音を自在に加工できるというモンスター機材なのです。

最高で192kHzまでのサンプリングレートに対応し、64-bit AFCで高品位なサウンドを実現している

Antelopeはプロのマスタリング現場に入っている最高のクロックを供給する会社でもあり、それを実現する64-bit Acoustically Focused Clockingという技術が、このZen Quadroにも搭載されているから、音質の面でも間違いありません。これまでのオーディオインターフェイスとは次元の異なる世界を取り入れてみてはいかがでしょうか?

【関連情報】
Zen Quadro Synergy Core製品情報

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