iZotope RX 11発表。最先端ニューラルネットワーク導入で、オーディオ修復は次の時代に突入

5月15日、iZotopeからオーディオ修復ソフトであるRXの新バージョン、RX 11が発表されるとともに発売が開始されました。ノイズを消したり、録音時のクリップをなかったことにしてしまうなど、オーディオ修復において絶対的な実力を誇るiZotopeのRXですが、今回は機械学習アルゴリズムを強化するニューラルネットワークが最新のものへと一新されました。これによってRXのさまざまなモジュールが大きく改善され、従来のオーディオ修復の常識が大きく覆される超強力なツールへと生まれ変わっています。グレードは従来のRX 10と同様で、上からRX 11 AdvancedRX 11 StandardRX 11 Elementsの3種類。

中でも注目すべきポイントは喋り声を、ほかのさまざまな音と分離するDialogue Isolateの大幅な性能向上と、これがAdvancedのみならずStandardでも使えるようになった点。しかも、リアルタイムで動作させることが可能となっています。さらにAdvancedには、劣悪な環境で収録された音声やボ-カル素材を復元補正する新たな高音質モードとマルチバンド処理も含まれています。さらに2ミックスされた音源をステム分解するMusic Rebalanceも大幅に性能が向上している点も見逃せないところ。ほかにもDialogue Contour、Loudness Optimize、Mid/Sid ModeやAudio Devices Refreshなど数々の新機能が搭載されたり、各種機能も大きく強化が図られているのです。また5月15日~6月13日の期間、iZotope RX 11イントロセールも展開されており、通常よりかなり安く購入することが可能。そこでRX 11とは実際どんなものなのかチェックしていきましょう。

iZotopeからRXの新バージョン、RX 11が発表された

最新ニューラルネットワークへの一新で性能が全体的に飛躍的向上

ノイズ除去や音声修復の代名詞的な存在にもなっているiZotopeのRX。放送現場、配信現場、スタジオ……など、もはやこれなしでは成り立たないというところが数多く存在するのが実情だと思います。

そのiZotopeのRXがRX 10からRX 11のバージョンアップで大きく進化しています。その背景にはiZotopeがこれまで取り組んできたAIが大きく進化したことがあり、これによってRX全体の性能アップが図られているのです。

iZotope RX 11ではニューラルネットワークが一新された

ご存じのように最新のAIは機械学習という手段でディープラーニング=深層学習を行うことにより、さまざまなことをコンピュータが判断できるようになり、飛躍的に進化してきています。その機械学習を行うためのシステムがニューラルネットワークというもの。これは人間の脳の働きを模した方法でデータを処理するようにコンピュータに教えるAIであり、ここ数年で飛躍的に進化してきています。

今回のRX 11ではそのニューラルネットワークを最新のものへとリプレイスしたことにより、RX全体の機能、性能が向上しているわけなのです。

RX 11のラインナップは従来通りで

RX 11 Elements
RX 11 Standard
RX 11 Advanced

の3種類。製品的には新規購入の通常製品のほかにアップグレード、クロスグレードなどがあります。またRXを含むiZotopeバンドル製品として

Post Production Suite 8(RX 11 Advanced)
Music Production Suite 6.5(RX 11 Standard)
Elements Suite(RX 11 Elements)
iZotope Everything Bundle(RX 11 Advanced)

のそれぞれがあり、それぞれともにRX 10からRX 11へと内容が入れ替わっています(それ以外の内容は変更なし)。

RX 11の目玉はStandardにも搭載されたDialogue Isolate

そのRX 11において、今回の最大の目玉といえるのが話し声を他の音と分離するDialogue Isolateの進化と、それがRX 11 Advancedだけではなく、RX 11 Standardにも搭載されるようになった、ということです。

RX 11 Standardにも実装sれたDialogue Isolate機能

また前述の最新ニューラルネットワークの採用によりDialogue Isolateにおいてもさまざまな機能強化が図られています。新たな機能として追加されたのがダイアログ=話し声から残響音を取り除くデリバーブ機能。しかもダイアログやボーカルのノイズ除去とリバーブのコントロールが1つのモジュールで簡単に行えるようになっています。

さらに、このDialogue Isolateをリアルタイム処理できるというのも重要なポイント。もちろん多少のレイテンシーはあるのですが、WindowsやMacの普通のPCにおいてリアルタイム処理できるというのは画期的。これにより配信現場においても、ノイズを気にすることになくライブ配信が可能になったわけです。

AdvancedではDialogue Isolateにマルチバンド処理機能も統合されている

これまでDialogue Isolateを使うためにAdvancedを購入していた、という人も多いと思いますが、これがより手頃な価格で購入可能なStandardでも使えるようになったという意義は大きいと思います。もっとも、Advancedに入っているDialogue IsolateとStandardに入っているDailogue Isolateでは機能・性能に差も設けられています。通常の使用においてはStandardのもので十分だと思いますが、Advancedにおいては、理想的とは言えない条件下で収録された音声やボーカル素材を復元補正する新しい高音質モードとマルチバンド処理も含まれているのです。

ステム分離のMusic RebalanceはRX史上最高の精度に

RXのStandard以上に搭載されているユニークな機能として幅広く利用されてきたのが、2ミックスされた楽曲をステム分離するMusic Rebalanceです。もともとの目的としては、「ボーカルをもう少し前に出したい」とか「ドラムが大きすぎるので、少し小さくしたい」……など音楽の各サウンドのバランスを再調整することです。そんなことは従来はレコーディング時の各トラックがないと不可能だったわけですが、すでにミックス・マスタリングされて2chのステレオサウンドになった音源をAIが分解することによって、バランスの再調整が可能になったのです。

Music Rebalanceによって2ミックスされた音をステムに分解できる

見た目はまさにミキサーのようになっているので、誰でも簡単に再調整が可能なわけですがM=ミュート、S=ソロのボタンもあるので、ボーカルだけを抽出したいとか、逆にボーカルなしのカラオケデータを作るといったことも簡単にできるようになっています。

RX 11になってより性能向上したMusic Rebalance

そのRXのMusic Rebalanceの精度が今回ニューラルネットワークを一新したことで大きく向上し、よりキレイに分離できるようになっているのです。ただし、分離自体は従来どおりボーカル、ベース、ドラム、その他の4種類で、最近の他社製品が競い合っている5種類、6種類への対応というわけではないようです。

Repair Assistantで誰でも簡単に最高のサウンドに

さて、数多くのオーディオ修復機能を持つRXではありますが、元素材となるものにどんなノイズが含まれているのか、どんな壊れ方をしているかによって、修復に用いるモジュールが異なってくるため、不慣れなユーザーだと、どんなモジュールを用いてどのように処理していけばいいか戸惑ってしまうところです。

Learnボタンを使って、まずは音をRX 11に聴かせる

しかし、不慣れなユーザーでも簡単にRXを利用できるようにするため、Repair Assistantというものが案内してくれ、ほぼ自動でユーザーの求める音にしてくれるというのがRXの3製品、つまりAdvanced、Standard、Elementsに共通する大きなポイントで、今回RX 11になったことで、さらに機能、性能が向上し、より深いコントロールでの仕上げ調整が可能になっているのです。

音楽をReapir Assistantで分析させた結果

対象とする素材が話し声なのか、音楽なのかなどを設定した上で、音を聴かせるLearnを行うだけで、各モジュールのパラメーターを自動的にセッティングしてくれるために、初めてのユーザーでも戸惑うことなくRXの威力を発揮させることが可能です。

喋りをReapir Assistantで分析させた結果

その上でやはり、もうちょっとノイズ除去を強く行いたいとか、ディエッサ処理を弱めにしたい……などユーザーの希望に応じて簡単に調整できるのも嬉しいところ。必要に応じてさらに細かな調整もできるというのが、RXの優れたポイントです。

レイアウト上もノイズや残響をカットする機能は1箇所に集約され、新たにToneという高域と低域における2種類の音質調整機能が追加されています。よりアシスタントの結果が改善されることはもちろん、RX 10よりややパラメーターが増えたのはVEAとの差別化もある印象です。
RX Elementsは10以降スタンドアローンのEditorソフトウェアがなくなったものの、単体プラグインとして個別モジュールがいくつか同梱されており、iZotopeのElements製品の中では最も費用対効果が高い印象ですね。

新モジュール2種”Streaming Preview”と”Loudness Optimize”をStandard以上に搭載

今回RX 11へバージョンアップして、ほかにもさまざまな新機能も追加されているので、簡単にチェックしていきましょう。

まずはStreaming Previewという機能です。ストリーミングサービスで配信リリースした結果、その音源が思った通りのサウンドでなくガッカリしてしまう、というケースやよくある話です。これはストリーミングでオーディオが圧縮されることで、さまざまな音がそぎ落とされるために生じる現象ですが、最終的にどんな音で配信されるのかを事前にチェックできれば、対処も可能になってきます。そのためのチェック機能が、このStreaming Privew。これを使ってリスナーがどんな音で聴くのかをリアルタイムにチェックすることで、問題点を把握するとともに、より理想的な音に近づけられるよう調整してくことが可能になるわけです。

ストリーミング結果の音をチェックすることができるSteaming Preview

Loudness Optimizeも今回のRX 11で搭載された新機能。「ラウドネスを最大にしているのに、トラックが小さく聴こえる」というのは、よくある音のトラブルの一つ。そこで、このRX 11のLearn機能を用いて、トラックを分析させることで、Loudness Optizeが自動調整を施してくれるのです。そのあとにマスターを書き出すだけでリリースの準備は完了です。

ラウドネスを自動調整してくれるLoudness Optize

さらにMid/Side ModeというものがRXのメイン画面に追加されました。これにより、単純にLとRのステレオで音を処理するだけでなく、Mid/Sideという見方でステレオイメージを視覚化しつつ処理することが可能になり、音をより立体的に作りこんでいくことが可能になっています。

そしてもうひとつAudio Devices Refreshという機能も追加されました。これは RXを再起動することなく、環境設定よりオーディオデバイスを変更できるようになるというもの。ここは地味な改善点ではありますがヘビーユーザーほど有難いアップデートと言えますね。この機能もStandard以上が対象となっています。

Advancedグレード限定のDialogue Contourがさらに進化

テイクをつなぎ合わせるため、セリフの語尾上げ下げなどニュアンスを後から変更可能なモジュールDialogue ContourがRX 11ではさらに進化しています。
Dialogue ContourはAdvanced限定で搭載されているもので、従来はピッチ以外はフォルマントのスケールとカーブ調整のみが基本でした。しかし、最新のRX11では声の個性と表現力をさらに細かく調整できるように、さらにフォルマントフェーダーとバリエーションフェーダーが追加となっています。

語尾のイントネーションなどをあとから変更できるDialogue Contour

テイクを繋ぎ合わせないといけない場合でも、完璧に仕上げることができるよう視認性も改善されており、業務用モジュールとしてのアップデートを果たしています。

6月13日までiZotope RX 11イントロセール

そんなさまざまな機能強化が図られたRX 11。「次期バージョンのiZotope RX 11に無償でアップデート可能なRXのセールキャンペーンがスタート!」という記事で紹介したキャンペーンで購入した方であれば、無償で入手できるわけですが、このタイミングでRX 11を買おうという人も、6月13日までの約1か月間はiZotope RX 11イントロセールなるものが展開されているため、手頃な価格で入手することが可能になっています。

新規購入の場合、具体的には以下のとおり。

製品名 税込通常価格 税込セール価格 割引率
RX 11 Elements ¥16,900 ¥8,400 -50%
RX 11 Standard ¥67,800 ¥50,800 -25%
RX 11 Advanced ¥200,600 ¥130,300 -35%
RX Post Production Suite 8 ¥300,900 ¥165,490 -45%

製品によって割引率は異なりますが、RX 11 Elementsなら50%引き、目玉製品でもあるRX 11 Standardでも25%引きとなっています。

一方で、DTMステーションの読者の多くの方にとって、注目すべきはクロスグレードやアップグレード製品です。具体的には

製品名 税込通常価格 税込セール価格 割引率
1 RX 11 Standard: Crossgrade from any paid iZotope product ¥50,800 ¥25,400 -50%
2 RX 11 Standard: Upgrade from any previous version of RX Standard, RX Advanced, or RX Post Production Suite ¥33,900 ¥16,900 -50%
3 Music Production Suite 6.5: Upgrade from Music Production Suite 6 ¥33,900 ¥16,900 -50%
4 RX 11 Advanced: Upgrade from any previous version of RX Advanced or RX Post Production Suite ¥101,800 ¥50,800 -50%

の4製品がとくにチェックしておくべき製品。名前が長くてややわかりづらいですが、1はなんらかのiZotopeの有償製品を持っている人であれば、購入可能なRX 11 Standardです。有償製品といっても必ずしも、直接iZotopeから購入した製品でなくてもOK。RX ElementsやOzone Elementsなど、何らかのソフトウェアを購入したらオマケについてきたものを持っているというDTMユーザーはかなり多いと思うので、これをキッカケにRXを入手するには最適だと思います。

2はすでにStandard以上のRX製品を持っている人が、RX 11 Standardにアップグレードするケースです。持っている製品はRX 10に限らずもっと古いバージョンのStandardでもOKこれが16,900円で入手でいるのですから、絶好のチャンスといえそうです。

そして3はMusic Production Suite 6のユーザーがMusic Production Suite 6.5へアップグレードする場合のもの。最後の4はRX AdvancedもしくはPost Production SuiteのユーザーがRX 11 Advancedにアップグレードする場合のものです。まさに業務でバリバリに使っている人も手頃な価格でアップグレードできる、というわけです。

ぜひ、この機会にRX 11を入手してみてはいかがでしょうか?

【関連情報】

iZotope RX 11製品情報

【価格チェック&購入】
[新規購入]
◎MIオンラインストア ⇒ RX 11 Elements , RX 11 Standard , RX 11 Advanced
◎MIオンラインストア ⇒ RX Post Production Suite 8
[アップグレード版]
◎MIオンラインストア ⇒ RX 11 Standardアップグレード版
◎MIオンラインストア ⇒ RX 11 Advancedアップグレード版(from RX Standard)
◎MIオンラインストア ⇒ RX 11 Advancedアップグレード版(from RX Advanced/RX Postproduction Suite)

◎MIオンラインストア ⇒ Music Production Suite 6.5アップグレード版(from MPS 6)

[クロスグレード版]
◎MIオンラインストア ⇒ RX 11 Standardクロスグレード版
◎MIオンラインストア ⇒ RX 11 Advancedクロスグレード版
◎MIオンラインストア ⇒ iZotope Everything Bundleクロスグレード版

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