beyerdynamicのブランド創立100周年を記念した限定モデルDT 770 PRO X Limited Edition(市場想定価格税込39,000円前後)の先行発売がスタートしました。日本ではSONYのMDR-CD900STがスタジオの定番として広く使われていますが、海外ではこの限定モデルのベースとなっているヘッドホンDT 770 PROが定番。1980年中旬にリリースされたDT 770を原型とするDT 770 PROは、プロ仕様のスタジオヘッドホンとしてのファーストチョイスであり続けた、世界中のアーティストや音楽プロデューサーが愛用する機材。
そんなDT 770 PROをベースに、同社のDT 700 PRO XとDT 900 PRO Xに搭載している5〜40,000Hzの幅広い周波数特性を備えた、48ΩのSTELLAR.45ドライバーを搭載。これにより、スマホ、タブレットでも十分な音量で鳴らせるようになったのに加え、ヘッドホンケーブルは着脱式を採用。高い信頼を寄せられ、定番となっていたヘッドホンが、現代の音楽スタイルに合わせ、よりモダンな仕様で使えるようになったのです。ユーザーからの声を取り入れ、今必要とされる機能を詰め込んだ、ただの記念モデルに留まらないDT 770 PRO X Limited Editionについて、beyerdynamicの歴史とともに紹介していきましょう。
100年間オーディオと向き合い続けたbeyerdynamicの歴史
beyerdynamicというブランド名は多くの方がご存じだと思いますが、その歴史まで知っている人は少ないのではないでしょうか?せっかく100周年ということなので、beyerdynamicがどんなあゆみだったのか、少し紹介してみましょう。この流れが分かると、今回発売されたDT 770 PRO X Limited Editionがどういった位置付けで登場したのか、より理解できると思います。
beyerdynamicが設立されたのは1924年。オイゲン・バイヤー(Eugen Beyer)氏が、ドイツ ベルリンでオーディオの会社としての業務をスタートしました。その後、1948年には本社をベルリンからハイルブロンに移し営業を再開。今もなお、このハイルブロンという土地で、ハンドメイドインジャーマニーつまりドイツでのハンドメイドにこだわって製品を作り続けています。
そんなbeyerdynamicが1937年に開発した同社初のヘッドホンはDT 48というモデルであり、これは世界初のダイナミック型ヘッドホンでもあります。現在ヘッドホンの一般的な駆動方式がこのダイナミック型なので、その最初を作り上げたということになりますね。ちなみに現在も使われているDTという型番は、Dynamic Telephone(ダイナミックテレホン)の頭文字。音楽を聴くためのヘッドホンよりも歴史が古い通信機器としてのヘッドホンからの流れがあり、きっと型番にテレホンという名前が入っているのだと思います。またbeyerdynamicは、M 19というスタジオレベルの業務用マイクを1939年に開発しています。
その後、1939年9月に第2次世界大戦が始まり、1945年の終戦後、前述の通り1948年に拠点をハイルブロンに移動。1958年に創始者のオイゲン・バイヤー氏は、56歳にして急逝してしまいましたが、当時26歳だった息子のフレッド・R・バイエル氏が後を受け継ぎ、1965年にはヘッドホンの名機と呼ばれているDT 100を開発しています。このDT 100は世界中の有名スタジオで採用されているヘッドホンでもあります。
そして、1985年にDT 770が発売され、ここから本格的に現代のモニターヘッドホンとしての歴史が始まりました。このヘッドホンは莫大な人気を誇り、どこのレコーディングスタジオにも置かれ、定番モデルとしてその地位を確立していきました。DT 770は、1980年代前半に発売された半開放型ヘッドフォンDT 880の密閉型版として登場したヘッドホン。またDT 770が発売された1985年には開放型ヘッドフォンDT 990も開発されています。
約40年前の1985年に、今のラインナップの基礎となる密閉型のDT 770、半開放型DT 880、開放型のDT 990が揃い、その後数々のアップデートが行われながら、現在発売されているDT 770 PRO、DT 880 PRO、DT 990 PROへ進化していくこととなります。
さらに2015年にフラグシップモデルとして密閉型のDT 1770 PRO、開放型のDT 1990 PROが発売。さらに2021年には、コロナの影響で自宅での需要が増えたこともあり、よりモバイル環境でも使えるものとして、インピーダンス48Ωと自宅スタジオでのライブ配信からレコーディングまで使いやすい密閉型のDT 700 PRO X、開放型のDT 900 PRO Xが発売されています。
そんなbeyerdynamicの100周年の歴史を1分の動画にまとめたのが以下のビデオです。
定番モデルDT 770 PROをモダン仕様にしたDT 770 PRO X Limited Edition
そして今回、ブランド創立100周年を記念したモデルDT 770 PRO X Limited Editionが登場しました。価格は、市場想定価格税込39,000円前後。DT 770 PRO X Limited Editionは、DT 700 PRO XとDT 900 PRO Xに搭載しているサウンドトランスデューサーSTELLAR.45を採用し、DT 770 PROの音の特性にチューニング。これにより、定番モデルのDT 770 PROの音の特徴を引き継ぎつつ、48Ωと低いインピーダンスを実現しているので、PCやスマホのイヤホンジャックに直接接続しても十分な音量を稼げるようになっています。
ユーザーから求められていた仕様が多数詰め込まれており、DT 770 PROでは着脱式でなかった仕様を変更し、着脱式3ピンミニXLRケーブル(3m)が同梱されリケーブルできるようになるなど、定番のモデルがモダンな仕様で使えるようになっています。
また3.5mm–ステレオ標準ジャック変換アダプタも同梱されているので、あらゆるデバイスで使用することができます。
デザインは、DT 700 PRO XよりもDT 770 PROに近く、頑丈なスプリングスチールのヘッドバンドの構造に加え、
長時間のセッションでも疲れづらい耳をすっぽり覆うタイプのDTシリーズの象徴的なベロアのイヤーパットを搭載。ちなみにヘッドバンドは、頭部に優しくフィットして、より快適な装着感を生む新たなヘッドバンドが採用され、さらなる装着時の快適性を追求しているとのこと。
また、イヤーカップにDT 770 PRO Xという刻印や両サイドにLIMITED EDITIONという文字が描かれています。
イヤーパッドは交換可能で、切り込みによりパッドを回していくだけで簡単に装着できるようになっています。
そしてヘッドバンドも取り外して交換することができます。
解像度が高いと同時に低音にも厚みがあるサウンド
音的には、高域までしっかりと伸びた解像度の高いサウンドである一方で、低音にも厚みがあるのが特徴。ボーカルの歯擦音が強調され、中音域は控えめで、レコーディングの時に、自分の声や楽器はもちろん、ほかの楽器をモニタリングしやすい音になっています。
前述の通り、インピーダンスが48Ωと低いことも大きなポイントです。特に業務用のヘッドホンというとインピーダンスが高いものが多く、かなりパワーのあるヘッドホンアンプを使わないと十分鳴らせないケースが多い中、48Ωであればスマホやタブレット、そしてPCのヘッドホン端子の出力でも十分な音量で鳴らすことが可能です。もちろんオーディオインターフェイス経由であれば、かなりパワフルな音量で鳴らすことができるので、そうした点でも大きなメリットがありそうです。
実際、いろいろ試してみたところ、見た目は大きいのに、とても軽く、また圧迫感もほとんどないため、装着していることを忘れてしまうくらいでした。長時間、このモニターで作業していても疲れがこないのはうれしいところです。
もし今持っているモニターヘッドホンで低音に不満があるならDT 770 PRO X Limited Editionと使い分けるのもよさそうですし、さらにパワフルなヘッドホンが欲しいという場合にはこれを使ってみる価値は大きくありそうです。
beyerdynamic DTシリーズのラインナップ
以上、DT 770 PRO X Limited Editionを紹介しました。先ほどのbeyerdynamicの歴史の話でも触れましたが、これまで数多くのDTシリーズが登場してきた中で、今回の製品が誕生した形です。改めて現行のDTシリーズの機種ラインナップをまとめておくと、以下の通りになっています。
モデル名 | 市場予想価格(税込み) |
DT 770 PRO | ¥25,420 |
DT 880 PRO | ¥44,970 |
DT 990 PRO | ¥25,420 |
DT 700 PRO X | ¥44,970 |
DT 900 PRO X | ¥44,970 |
DT 1770 PRO | ¥106,080 |
DT 1990 PRO | ¥106,080 |
世界の定番スタジオヘッドホンDT 770 PROなどをこのタイミングで入手するのもありだと思いますが、そのDT 770 PROをモダン仕様にしたのがDT 770 PRO X Limited Edition。名前の通り数量限定の製品なので、早い者勝ち。ぜひ早めに入手してみてはいかがでしょうか?
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