KORGデジタル3兄弟に仲間が誕生!?手軽に音作りができるバーチャルアナログシンセ、KingKORG NEO

先月アメリカで開催された世界最大の楽器の展示会、NAMM Show 2024ではKORGが数多くの新製品を発表し、NAMMの話題を独り占めというような形でした。ただ、すべての製品が即発売というわけではなく、microKORGGranstage XNTS-3 kaoss pad kitなど、まずは発表で、発売はもう少し先…という製品も多かったようです。そうした中、1月27日から発売になったのがバーチャルアナログシンセサイザのKingKORG NEOです(税込実売価格110,000円前後)。ホワイトボディーでフルサイズ37鍵盤のコンパクトな機材ながら、感覚的にすぐに音作りができて、演奏性にも優れ、専用グースマイクもついてボコーダーとしても使える、とっても楽しいシンセです。

KingKORG NEOというネーミングからも分かる通り、以前大ヒットしたバーチャルアナログシンセサイザのKingKORGの後継という位置づけではありますが、まったく新しい新世代のシンセであると捉えたほうがよさそうです。もちろんUSB端子も備え、DAWと連携させてMIDIの相互やり取りも可能となっています。株式会社コルグ マーケティング担当の木下勝次さんにお話しを伺ったので、これがどんなシンセサイザなのか紹介していきましょう。

37鍵盤のバーチャルアナログシンセ、KingKORG NEOが誕生

アナログシンセ的に音作りができるKingKORG NEO

KingKORG NEO、まだご存じない方もいらっしゃると思うので、まずは以下の製品紹介ビデオをご覧になっていただくと、雰囲気はすぐに掴めると思います。

アナログシンセを知っている人なら、何の違和感もなく各ノブを触れば、すぐに音作りが可能。音を出し始めたら楽しくて時が経つのを忘れてしまう感じの困った機材ではありましたが、KingKORG NEOの開発背景やそのポテンシャルなど、いろいろとお話を伺ってみました。

株式会社コルグのマーケティング担当、木下勝次さん

2013年発売のKingKORGの後継というよりデジタル3兄弟の仲間

--今回、NAMMでKingKORG NEOの発表を見て懐かしい機材が復活したのか、と感じましたが、これは以前のKingKORGの後継機である、と考えていいのですか?
木下:以前のKingKORGは11年前の2013年の発売で、すでに製造中止している機材です。また従来機は61鍵盤でライブパフォーマンスなどでの利用をメインターゲットにしたキーボードプレイヤー機材でしたが、今回のKingKORG NEOは37鍵盤であり、フルキーサイズなのでもちろんプレイしやすい機材ではありますが、もっとシンセサイザとしての音作りなどが楽しめる機材となっています。音色など従来機を踏襲している部分もありますが、どちらかというとサイズ的にもコンセプト的にも、opsix、wavestate、modwaveのデジタル3兄弟の新たな仲間という風に見ていただいたほうが分かりやすいと思います。実際、従来のKingKORGにあったライブパフォーマンス用途のPCMのアコースティックピアノ音色やストリングスアンサンブルの音色などは無くして、よりアナログシンセ的な機材に仕上がっています。

アナログシンセ的な操作ができるKingKORG NEO

--なるほどデジタル4兄弟になった、ということですね。でも従来のデジタル3兄弟とKingKORG NEOの違いというと、どうでしょうか?
木下:そこはズバリ、アナログ感覚で簡単に音作りができる、という点にあります。opsixはFM音源、modwaveはいわゆるウェーブテーブル音源なので、音作りには少々の勉強も必要になってきます。また、wavestateはウェブシーケンスがメインなので音作りというよりはパフォーマンスが中心になります。それに対し、KingKORG NEOはパネルを見ていただくとすぐに分かる通り、オシレータがあって、フィルターがあってアンプ、EG、LFOがあって、エフェクトがあるという、とってもシンプルな構造であり、直感的に音作りができるシンセサイザとなっています。一方で、以前のKingKORGもマイク入力ジャックはあったのですが、リアにあり、使いたい人はご自身でマイクを用意してください、という位置づけでしたが、今回は前面に端子を設けるとともに、グースマイクを標準で用意し、すぐにボコーダーとしても使えるようにしています。

グースネックマイクも標準装備で、ボコーダーとしてもすぐに使うことができる

--このマイクのついた雰囲気からすると、ちょっとmicroKORGっぽい面もありますよね。バーチャルアナログで37鍵盤というと、そのmicroKORG以来になるのでしょうか?
木下:そのとおりです。ただmicroKORGはミニキーの37鍵だったので、フルキーの37鍵としては、2007年に出したKORG R3以来になります。

37鍵のフルキーボード搭載のバーチャルアナログシンセとしてはKORG R3以来17年ぶり

往年の名機のフィルターをふんだんに搭載

--今回のKingKORG NEOの最大の特徴というとどこにありますか?
木下:オリジナルのKingKORGを開発していく過程で、バーチャルアナログとしての面白みを出すにはどうするといいのだろう、というやり取りをしている際、やはりフィルターセクションを強化していこう、と。この部分はNEOにも継承され、ビンテージシンセの名機と呼ばれていた機材のフィルターを指名した上で、それぞれ搭載したというのがすごく大きな特徴となっております。さらに127タイプの個性的なオシレーターを搭載し、音作りをいろいろ楽しめるようにしています。

とくに力を入れて開発されたのが、数々の往年の名機を再現させるフィルター部分

--フィルター、オシレーターの自由度が非常に高いわけですね。
木下:普通、デチューンをさせようと思ったらオシレーター2個使ってチューニングを微妙にズラして使うわけですが、このNEOの場合、1つのオシレーターでデチューンさせることができる仕掛けにしてあるんです。デチューンもユニゾンもできてしまうオシレーターがあるので、それを選んでフィルターをかけてアンプやEG、フィルターでいじっていくと、すぐに強力なアナログサウンドが出せるのが特徴となっています。

デジタルだからこそ可能な工夫をふんだんに凝らしたオシレーターを搭載

--そいういう意味ではアナログシンセよりも、強力なアナログサウンドを作りやすい、と。
木下:そうですね、アナログシンセの基本さえ押さえていれば簡単につかえますし、もっとマニアックに中に入り込んでバーチャルパッチをアサインする…なんて使い方も可能になっているのですが、まずは手軽にこのパネル上だけで音作りを楽しめるのが醍醐味だと考えています。

3系統のエフェクト+EQを搭載。ジョイスティック操作で自由度高い操作を実現

--エフェクトについてはどのようになっているのですか?
木下:このパネルを見ていただければすぐに分かるとおり、PRE FX、MOD FX、REV/DELAYという3系統の独立したエフェクトを搭載しています。PRE FXはアンプシミュレータやディストーション、リングモジュレーターといった最初にかけるエフェクトがあり、MOD FXはコーラス、フランジャー、フェイザーなどのモジュレーション系、そしてREV/DELAYがリバーブやディレイなどとなっています。またこの3系統のエフェクトとは独立した形でEQも搭載しているので、これらを使うだけでも、かなり違った音に仕立てていくことが可能です。

PRE FX、MOD FX、REV/DELAYとEQを装備

--音作りが簡単とはいえ、プリセットも用意されているいるわけですよね。そこは従来のKingKORGと共通な音色もあったりするのでしょうか?
木下:はい、プリセットは200用意されており、そのうち143が新しいプリセットですが、逆にいうと57個はオリジナルのKingKORGの音色を踏襲しています。また従来のKingKORGでは、当時のヒット曲などをイメージしてつくったプリセットが多くあったのですが、今回は、「こんな音を作ってみたので、どうぞ使ってみてください」という感じでユーザーのみなさまに提案するようなプリセットを用意しており、より新しい新鮮な音を提供する形になりました。

「シンセ本来の音作りを存分に楽しんでください」と話す木下さん

--ところでパッと見でデジタル3兄弟を含め、ほかのシンセとちょっと違うなと思うのは、ピッチベンドやモジュレーションホイールがない点です。
木下:オリジナルのKingKORGもそうでしたが、今回のNEOでも使いやすい大きさのノブなどを採用しています。その流れで、だったらジョイスティックもと、引き継ぐ形で搭載しました。KORG製品においてジョイスティックはかなり伝統的に使ってきたデバイスでもあり、違和感なくジョイスティックを採用しています。このジョイスティックの動きはユーザーが自由にアサインできるようになっているし、プリセットによっても使い方が変わってくるのですが、よくあるパターンとしては上に上げるとLFO、下にするとフィルター、左右に動かすことでピッチベンドといった使い方になります。

ピッチベンドやモジュレーションホイールではなくジョイスティックを搭載

USB経由のMIDI入出力でDTMとの相性も抜群

--一方、DTMステーション的には、このUSB端子の使い方が気になるところですが、これはMIDIをやりとりするものですよね。
木下:その通りです。DAWからUSBを介してKingKORG NEOを鳴らして演奏させることもできるし、KingKORG NEOを弾いた信号をDAWへ記録させることも可能です。もちろん鍵盤だけでなく、各ノブの情報もすべてやり取り可能ですし、そうしたコントロールチェンジ情報もすべて公開しています。ただし、ここでの入出力はMIDI信号であってオーディオ信号のやりとりはできません。

リアにはUSB TypeB端子やMIDIの入出力を装備

--このようにお話を伺うと、やはり昔のKingKORGの復活というより、まさに今の時代にマッチしたバーチャルアナログシンセの誕生という形ですね。
木下:最近は37鍵だからビギナーといった分類ではなくなってきたこともありますが、フルキーの37鍵なので、本気でプレイする人にも十分使えるし、ちょっと音作りができる手軽なシンセが欲しいという層をターゲットに製品開発しました。ぜひDTMでの音楽制作にも活用いただければと思っております。

--ありがとうございました。

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KingKORG NEO製品情報

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