みなさんは、自宅で音楽制作をする際にどんなデスクやチェアを使用していますか?IKEAやニトリといったところで購入したものを使っている方も多いと思います。もちろんオフィス用家具をDTM用に使うのも問題ないですが、DTM向けに作られた家具は、MIDIキーボードを置くスペースが確保されていたり、ギターを弾く際に邪魔になりがちなアームレストを倒すことができたりと、なにかと便利。中でも、台湾のWaveboneというメーカーは、もともとオフィス家具などを作っていたため、品質も高く、コスパにも優れたDTM家具を製造しています。アメリカやヨーロッパのメーカーの家具ではないというのは意外と大事で、体格や骨格が違うので、フィットしないこともしばしば。一方Waveboneは、同じアジア圏内のメーカーであるため、日本人の体格にもピッタリ。しかもデスクに関しては、日本の間取りに合わせて、コンパクトサイズも発売されています。
そんなWaveboneのDTM家具の中で、最近人気を博しているのが、Viking(バイキング)とVoyager II(ボイジャー2)という2つのチェア。DTM用の家具の特徴として、アームレストを倒せると書きましたが、もちろんこの機能は両機種とも搭載しています。このアームレストを倒せる機能は、ギタリストやベーシストのためのものなので、意外と見かけないですよね。一方DTM用のチェアとして、ゲーミングチェアを検討する方もいますが、レーシングカーから着想を得たゲーミングチェアは、長時間座るのに不向きだったりします。よくよく考えてみると早く走ることに特化したレーシングカーは長時間乗らないですよね。見た目が好きなのであればOKですが、長時間快適に作業するとなると、それに適したチェアを選ぶのがいいと思います。さてDTMに最適なチェアを作っているWaveboneから、先日インターナショナルセールス担当KevinさんとLeoさんが来日していて、直接お話を聞くことができました。Waveboneの特徴やどういった点がDTMユーザーに適しているのか聞いてみたので、紹介してみましょう。
30年近くにわたるヨーロッパとアメリカのOEM経験を持つ家具メーカーBackbone
--まずはWaveboneの歴史について教えてください。
Kevin:Waveboneは、Backboneという家具メーカーがミュージシャンからの要望のもと発足した、音楽制作に適した家具を作るメーカーです。私たちは、30年近くにわたるヨーロッパとアメリカのOEM経験があります。その経験を活かし、品質とテクノロジーを斬新なデザインと組み合わせて、新しい人間工学に基づいたデザインのブランドを生み出すのが、台湾に本社を構えるWaveboneという会社です。OEM/ODM における長い経験により、有名ブランドと協力して、スターウォーズ 、台湾ディズニー、eスポーツデスク向けのオリジナルデザインテーブルやレプリカオフィスチェアなどの独占的な製品を開発を行っていたりもします。アジアにおける人間工学に基づいたファッションの新しい標準となるよう全力を尽くしているのです。
--もともとBackboneという会社からスタートしていたんですね。
Leo:はい、その後Waveboneがスタートしたのが、2019年です。Backboneのお客さんの中にミュージシャンであり、プロデューサーのユーザーがいて、もともとBackboneのオフィスチェアを愛用してもらっていました。ただ、その方はギタリストでもあるので、アームレストがどうしても邪魔だったんです。そして、彼と意見を交換する中で、ホームスタジオ向けの家具にはチャンスがあるのではないかと思い、マーケティングをスタートしました。
ミュージシャンの要望で作られた、アームレストを動かせるようにしたチェアVoyager
--ということは最初に登場したのは、アームレストを倒せる椅子だったのですか?
Kevin:その通りで、アームレストを動かせるようにしたチェアVoyagerからスタートしました。実際にその方に試してもらい、どうせならデスクもあった方がいいというディスカッションの中で、Headquarterというデスクを開発しました。その後、ミュージシャンやプロデューサーといったホームスタジオで座って作業する人のためのラインナップを充実させていきました。
--そんなに数は多くないと思いますが、音楽制作用の家具を作っているメーカーが存在していますが、それらとの違いはなんなのでしょうか?
Kevin:Waveboneは、比較的早い段階からホームスタジオ向け家具の開発をスタートしています。他社メーカーは、もともとがソフトウェアを開発している会社だったり、もう少しプロフェッショナル向けの家具だったりします。一方Waveboneのはじまりは家具メーカーで、なおかつホームスタジオ向けなので、価格もプロが導入する家具よりも安価で提供しています。
--より個人のクリエイターにフォーカスしているのが、Waveboneというわけですね。
Kevin:2019年に設立後、2020年NAMM ShowでWaveboneを発表しました。そしてそのころ、コロナが流行し、家で作業する人が増えたタイミングでもありました。これまで、スタジオに出向いて音楽制作していたユーザーも、自宅で作業するようになり、そして初めて自宅で音楽を作り始める人が増えたので、Waveboneが必要とされたのです。
--Waveboneが登場するまでは、なかなか個人クリエイターが導入できるDTM向けの家具はなかったように感じますが、一方でレコーディングスタジオの家具はどういったところが作っていたのでしょうか?
Leo:レコーディングスタジオは、大きなコンソールがあったりするので、カスタムのものを注文するしかないですよね。個人クリエイターもIKEAの組み立て家具やパソコンデスクぐらいしか選択肢がなかったので、自作しているユーザーも多くいました。MIDIキーボードを置く場所は、そういった家具にはついていませんよね。ラックケースを別途用意したり、結果的に値段が高くなっていたところに登場した、リーズナブルでよりプロフェッショナルな気分で作業できるWaveboneの意義は大きいと思います。ものによっては、音楽機材は重量があり、安っぽい家具では耐えきれなかったりするので、そういった意味でもWaveboneは安心してお使いいただけます。
上位モデルのVikingとアジア人の標準体型にフィットするVoyager II
--さて、VikingとVoyager IIについて伺っていきたいのですが、これらの特徴について教えてください。
Kevin:まず価格ですが、Vikingは63,800円税込。Voyager IIは、49,500円税込で展開しています。Voyager IIには、座面がフォームクッション素材のモデルVoyager Ⅱ(Foam) とメッシュ素材のVoyager Ⅱ(Mesh) があり、Vikingのヘッドレストは5,500円税込で別売りしています。共通する特徴としては、アームレストが倒せるのが大きいですね。左右倒すことができるので、レフティーのギタリストもOKです。また背中のカーブも人間工学に基づいたデザインをしているので、特に長時間座る場合でも疲れにくくする工夫がしてあります。また、シート高さの変更といったところが共通の特徴です。アームレストを倒せるという点以外にも、キャスターはゼロノイズ設計となっているので、録音のときなどにノイズを気にすることなく、ご使用いただけます。
--価格を見るとVikingが上位モデルだと思いますが、選ぶ基準などはあるのでしょうか?
Kevin:Vikingはよりプレミアムなモデルなので、背の高い人、大柄な人など、どんな体型の人にも合わせることのできる、いろいろな調整機能を搭載しています。ランバーサポート、背面シート、座面の位置など、自由自在に動かすことができるので、どんな方でもフィットします。また、Vikingの脚は、アルミニウム製なので、体重の重い方でも使用可能です。
Leo:ヘッドレストについているハンガーも意外と便利で、ここに上着をかけることが可能ですよ。
Kevin:Voyager IIも、100kg越えの人でも大丈夫な設計をしており、特にアジア人の標準的な体型であれば、Voyager IIはピッタリです。たとえば、アメリカやヨーロッパなど、大きい人であればよりカスタマイズできるVikingがおすすめですね。選ぶ基準としては、標準の体格であればVoyager II、そうでなければVikingですかね。もちろん予算が許せば、標準体型の方でもVikingの方が、細かく合わせることができるので、プレミアムモデルがおすすめです。ちなみに台湾のユーザーは半々ぐらい、アメリカやヨーロッパはVikingが多いですね。
品質の高いオフィスチェアにアームレストを倒せる機構が搭載
--やはりアームレストを倒せるというのは大きいので、ギタリストやベーシストは、VikingやVoyager IIを選ぶと思いますが、そうでないユーザーがあえてこれを選ぶ理由というのはあるのでしょうか?
Kevin:そもそもが家具メーカーなので、品質の高いオフィスチェアにアームレストが倒せる機構がついたと考えていただければと思います。アームレスト関係なしに、長時間座ることに特化しているので、ストレスなく作業を行うことができます。なので、ギターやベースを演奏しない、キーボーディスト、ミキシングエンジニアの方でも快適にお使いいただけます。長時間快適に作業できるので、音楽関係以外の映像クリエイター、ゲームユーザー、ITエンジニア…など、椅子に座って作業をする全員におすすめしたいですね。
一般的なゲーミングチェアは、長時間座ることに適していない
--それこそ作業用の椅子として、ゲーミングチェアを選ぶ人も多いと思いますが、これについてはどう思いますか?
Kevin:一般的なゲーミングチェアは、レーシングカーのコックピットをイメージして作られています。見た目がカッコよくできていますが、実際に長時間座っていると、疲れてきたり、腰が痛くなってきたりするんですよね。また革張りになっており熱も溜まるので、長時間座るのであれば、メッシュ素材が有利です。そもそも、レーシングカーは長時間乗らないですしね。F1で約2時間30分の乗車時間で、トレーニングした人がこれに乗っています。実際に台湾でも日本でも、ゲーミングチェアを使っていて疲れるから、VikingやVoyager IIを選ぶ方は多いです。音楽クリエイター以外のコンテンツクリエイター、PCで長時間作業する方に選ばれています。
--最後、今後について教えてください。
Kevin:いろいろなプランがあります。チェア、デスクを含め、ラック、スピーカースタンドといった音楽クリエイターのためのワークステーションを考えています。また1人用だけでなく、セットアップが簡単で複数人が同時に作業できる家具の提供、サウンドパネルの開発を検討しています。サウンドパネルは、どうしても値段の高いものが多いので、十分な機能があって、価格を抑えた製品を開発したいですね。また、音楽クリエイターだけでなく、配信者・YouTuberといった方も含め、すべてのコンテンツクリエイターにマッチするような製品開発も進めていきます。
Leo:開発のポリシーとして、柔軟性を重んじているので、フィードバックを積極的に取り入れたいと考えています。ラックが3列並んで、88鍵盤のキーボードが置けるHeadquarterというデスクも、日本だと大きいという意見があり、Star Roverというラックが2列のもっとコンパクトな製品を開発しました。ぜひ、Waveboneの家具を使っていただき、意見を送っていただけると、また新しい製品に活かせるので、フィードバックをお待ちしています。
--ありがとうございました。
Outputブランド製品はDi-Fiブランドに
以前「DTM環境を快適にするデスクとチェア。OutputとWaveboneの製品をチェックしてみた」という記事の中でも取り上げたプラグインメーカーOutput社のDTMデスク関連製品。一時出荷などが止まっていたようですが、Output社からDTMデスク事業を行っていたメンバーが分離独立する形でDe-Fi社としてスタート。すべての製品がDe-Fi製品として復活しています。国内では引き続きbeatcloud.jpで販売されています。
【関連情報】
Viking製品情報
Voyager II (Foam)製品情報
Voyager II (Mesh)
Wavebone製品情報
【価格チェック&購入】
◎beatcloud ⇒ Viking
◎beatcloud ⇒ Voyager II (Foam)
◎beatcloud ⇒ Voyager II (Mesh)