X(旧Twitter)減速の中、DTM関連情報交換はどこで行うべきか。音楽系SNS『おとすきー』の可能性

普段、情報収集、情報交換の場としてX(旧Twitter)、Facebook、Instagram、LINE……とさまざまなSNSを活用している人は多いと思います。目的によっていろいろ使い分けているという人もいると思いますが、最近気がかりなのがXの動向です。イーロン・マスク氏がTwitterを買収して以降、Xと名称を変えるとともに、タイムライン表示の仕様を変更したり、月額定格制度プラン・Twitter Blueの本格導入をしたり、全ユーザー有料化を匂わすなど、激変続きで、今後Xから多くの人がいなくなったらどうしよう……と心配している人も少なくないでしょう。

そうした中、Xのゴタゴタを横目に見ながら、新SNSも台頭してきています。大手ではMetaがThreadsをスタートさせたり、元Twitterの経営陣がBluskyを立ち上げたりもしていますが、草の根でもさまざまな動きが出てきています。中でも注目したいのが、日本初のSNSで、次世代Twitterなどとも言われているMisskeyです。Misskeyは分散型SNSと呼ばれるタイプのもので、ジャンルやテーマごとに数多くのサーバーが出てきているのです。その中でDTMに関連するサーバーとして成長していてきるのが「おとすきー」。まだ今年の4月にスタートしたばかりのSNSですが、11月末現在で約1,600人ほどが登録しており、音楽制作に携わっている人が多く集まっているようです。その「おとすきー」を覗いてみるとともに、管理人である、たーびんさんに少しお話を伺ったので、紹介してみましょう。

音楽系のSNSとして今年4月にスタートした「おとすきー」

分散型SNS、Misskeyの音楽系サーバー(インスタンス)として誕生した「おとすきー」

Xがこれまで通り、安定して使えるのならいいのですが、なかなかそうもいかなそうな情勢です。BOTや迷惑アカウントなど、Xのサーバーに負荷がかかるアカウントを減らすために、ごくわずかな課金をする手段は、Xの経営を考えると確かに必要なのだとは思います。けれど、本当に実行したらユーザーは激変し、これまでのインフラ的存在だったTwitterが崩壊してしまう可能性もありそうで、とても心配です。

おとすきーのローカルタイムライン

そんな可能性も考えながら、新しいSNSを探している人も少なくないと思いますが、今回紹介するのはMisskeyのサーバーの一つ、「おとすきー」です。まさにタイトル通り、音好きな人が集うSNSで、DTM系の話題がいろいろ展開されています。

「Misskeyって何だ!?」という方も多いと思うので、簡単に説明すると、これは次世代Twitter、ポストXなどとも言われている分散型プラットフォーム。XやFacebookなど一つの企業がサーバーを立ち上げて運営する中央集権型SNSに対し、Misskeyはジャンルやテーマ、話題によってさまざまなサーバー(インスタンス)が存在するSNSです。

Misskeyにはカテゴリーごとにさまざまなインスタンスが存在している

アニメ・マンガ、ゲーム、小説、犬、3DCG……さまざまなネタのMisskeyのサーバーがある中、音楽系に特化しているのが「おとすきー」というわけです。Misskey自体はsyuiloさんという人が開発したオープンソースのソフトウェア。数多くあるインスタンスの中から、参加したいところを決めてユーザーIDを登録して利用する形になっています。

たとえば「おとすきー」に登録した場合、「おとすきー」の中のさまざまなチャンネルを見ることができます。具体的には

楽曲紹介ch
雑談
作品宣伝ch
お知らせch
おとすきーイラスト投稿部
作業用 器楽曲 インストゥルメンタル AMSR
物欲のシェア
MNG…
作曲・DTM ch
楽器プレイヤーとシンガーなどの集会所

という10のチャンネルがあります。

DTM情報交換の場として、自分の作品発表の場としても利用できる

これを見ても分かる通り、さまざまな情報交換ができるのはもちろん、ここで自分の作品をみんなに紹介していく…といった使い方も可能です。そして「おとすきー」自体にの中にもドライブがあるので(容量制限あり)、ここにデータをアップする…といった使い方も可能になっています。

作品宣伝chでは、ユーザーが作った作品がYouTubeやニコニコ動画、また「おとすきー」のサーバーを介して公開されている

ではこの「おとすきー」に入ると完全に「おとすきー」だけの閉じられた世界かというと、そうではないのがMisskeyの面白いところ。ほかのインスタンスのMisskeyユーザーとやりとりができ、フォローしてその人のタイムラインを見る…といったこともできるようになっています。

またMisskeyは基本的にブラウザでアクセスできる一方、Windows用、Mac用、iOS用、Android用…などさまざまなMisskeyアプリもあるので、これらを使うことが可能です。たとえばiPhone用で検索してみると、複数ありましたが、Miriaというフリーアプリが使いやすそうだったので、試してみたところ、とっても使い勝手もよさそうです。


iPhoneアプリ、Miriaで開いた「おとすきー」

そんな「おとすきー」を運営しているおとすきー管理人のたーびんさんにオンラインでインタビューすることができたので、そのときの内容を紹介してみましょう。

 

おとすきー管理人、たーびんさんインタビュー

--「おとすきー」を立ち上げた経緯を教えてもらえますか?
たーびん:Twitterがごたごたしていることもあり、分散型SNS、とくにオープンソースで日本人が開発したMisskeyに興味を持ちました。最初は準公式であるmisskey.ioにアカウントを作りましたが、ある意味何でもありのインスタンスなので、もう少し濃い話をしたい人が分派していく中、音楽に特化したインスタンスがなかったので、今年4月に立ち上げました。実は私自身、小説も好きなので小説のインスタンスである「ノベルスキー」というものも運営しているんです。

--「おとすきー」のユーザー層としては、どんな方が多いのですか?現在1,600人強が集まっているとのことですが、どうやってそれだけの人が集まったのでしょうか?
たーびん:音楽系サーバーとしてスタートしたこともあり、やはり作曲している人の比率は高いですね。DTMで曲を作っている人が多く、ボカロ系、ユーロビート系などジャンルはさまざまです。ぜひ、そうした人たちにもって来てもらいたいと思っています。一人で運営していることもあり、立ち上げ時にはTwitterで宣伝してみたり、Misskeyの広告機能を利用して告知したりもしてきました。でも、Twitterが有料化される…といったニュースが流れると、みなさん新たなSNSを探されるようで、そのタイミングでドッと人が増えるのも面白いところです。

2023年12月3日現在、ユーザー数は1,610、スタート時からの累計ノート数(投稿数)は58,536

--タイムラインを見てみると、いろんな話がされている中、結構自作曲がUPされているのも楽しいですね。普段どんな書き込みが多いですか?
たーびん:やはり「曲作ったよ~!」とYouTubeなどのURLが投稿されているケースも多いし、「おとすきー」のドライブにMP3などのファイルを直接アップされている方もいますね。自分の曲の宣伝だけではなく「この曲よかったよ」といった話も多いし、11月はブラックフライデーのセールの話なんかももりあがっていました。DTM機材に関する話も多いし、DAWの使い方に関するやりとりなどもよく見かけますし、楽器演奏に関する話題も多いですね。「おとすきー」は音楽系のインスタンスとして立ち上げたものなので、必ずしも音楽を作っている人だけが扱っているわけではないのですが、やはりここに投稿している方は曲を作っている方が多いですね。

--「おとすきー」Twitterと同様の短文投稿型のSNSですが、Twitterとの違いはどんなところですか?
たーびん:Misskey全体に言えることかもしれませんが、必ずしも第二のTwitterというわけでもないと思います。Discordなんかとも近い面もあるし、Discordなら音楽系コミュニティもありますが、ちょっと閉鎖的な面があると思います。その点、Misskeyは完全オープンではないにせよ、ほぼオープンなSNSでありつつ、Twitterより規模が小さい分、アットホームな雰囲気もあります。クローズなコミュニティではないけれど、完全パブリックでもない、中間な感じです。昔の掲示板/BBSの進化系というとニュアンスが伝わるかもしれmせん。

--リアルなオフ会もやってるんですよね?
たーびん::そうですね。これまで何度かオフ会を行ったり、リアルのDJイベントなども行いました。もっとも居住地は北海道から関西、沖縄までいろいろです。オフ会だとどうしても関東が多くなってしまいますから、誰もが参加できるというわけではないのですが、別の地域でのオフ会なんかもできたらいいですね。一方で、ライブをする人も多く、ユーザーさん同士が仲良くなってお互いのライブに行ったり、という交流も増えてきています。

--「おとすきー」は、たーびんさんがお一人で運営しているとのことですが、サーバー費用などもかなりかかるのではないですか?
たーびん:はい、サーバーにAWSを使って運用しているので、どうしても費用がかかってしまうため、ユーザーのみなさんに支援をいただいています。クリエイター支援サイトであるCi-enを使っていて、無料プランから、月額300円のプラン、月額500円のプラン、月額800円のプラン、月額1,000円のプランを用意して、プラン内容に応じて、ドライブ容量の追加や広告の非表示化、絵文字申請可などの特典を用意しています。また月額課金は避けたい、単発/追加で支援したいという方も、Ci-enのチップ機能を使って投げ銭もできるようになっており、こうした支援を元に運営費に充てています。

Ci-enを通じて、おとすきーの支援を募集している

--今後「おとすきー」でどんなことをしていきたいですか?
たーびん:まずは、DTMをやっている方など、多くの方に集まっていただきたいですね。その上で、リアルイベントなども開催していきたいし、作曲している方同士のコラボ企画なんかもできればと思っています。すでにDJイベントなどは行っていますが、まだまだ小さい会場しか使えないので、今後もう少し規模を大きくできたら楽しいなと考えています。

ーーありがとうございました。

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おとすきーサイト

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