先日10月10日、東京・下北沢の駅すぐ近くに音楽クリエイター、DTMユーザーにとって気になるスペース、Base Shimokitaなるところがオープンしました。ここはレコーディングスタジオであり、YouTube配信スタジオでもあり、イベントスペースでもある、というユニークな空間。実業家、音楽プロデューサーでもある6Studio(@6studio_dtm 以下6スタ)さんがプロデュースする場所。
インディーズの音楽クリエイターたちが「出会い」「学び」「発信」ができる”基地=Base”としてオープンした場所とのことで、定期的に「オープンスペース」として開放して誰でも予約なしに立ち寄って、Base Shimokitaに設置されている機材に触れたり、集まった人たちと交流できる時間があったり、不定期に勉強会を行うなど、東京近郊の人にとっては魅力的な場所となりそうです。さらにDTM、レコーディング関連機材にまつわるイベントなども行っていくとのことですが、そのこけら落としとして10月25日~11月5日までに開催されるのが、Dolby Atmos空間を体験できるイベントです。どんなイベントなのかを紹介するとともに、Base Shimokitaとはどんなものなのか紹介していきましょう。
下北沢に誕生した音楽クリエイターのための秘密基地、Base Shimokita
ライブハウスも数多くあり、リハスタも多く、街中でもギターを背負って歩いている人も多く見かける東京・下北沢。下北沢に行ったことない方でも昨年大ヒットしたアニメ、「ぼっち・ざ・ろっく!」でその雰囲気を知ったという人もいるかもしれません。個人的にはその昔、大学浪人時代を過ごしていた街で、当時とは大きく変わっているので、いくたびに変化する下北沢にいつも驚いていますが、中古の楽器店やリペアショップなども多く、まさにミュージシャンの街といっても過言ではないと思います。
一方で、音楽クリエイターやDTMer向けのイベントというと、渋谷、新宿、お茶の水、秋葉原といったあたりが多く、そういえば東京の西側ってほとんどなかった印象です。そう考えてみると、なぜ下北沢にそうした場所がなあったのか、ちょっと不思議にも思うところですが、この度そんな場所が誕生したのです。
Base Shimokitaをプロデュースする6スタさんに、どうしてBase Shimokitaをスタートさせることになったのか、お話しを伺ってみたところ、
「私自身、ずっと音楽をやってきたのですが、自分の実力も足りなくて、一度は音楽で食っていくということを諦めたんです。広告代理店で働きつつ、でも、音楽に携わっていきたいという思いがくすぶっていて、4年ほど前に6Studioという名前で、改めて片端を踏み入れたんです。YouTubeチャンネルを立ち上げて、音楽機材のレビューをしたり、昨年にはオンラインサロンを立ち上げるなど、多角的に動いていたのですが、以前からみんなが集えるリアルな場所、まさに基地を作りたいという思いを持っていたのです。それが今回、いろいろな縁もあって、ついに実現できた、という感じなんです」
とBase Shimokita立ち上げの経緯を語ってくれました。
6スタさんPROFILE
実業家、音楽プロデューサー
・2019年:人生で初めてTwitterを開始し、音楽制作界隈に参入
・2020年:コロナを機に、音楽機材のレビューを中心としたYouTubeチャンネルを立ち上げ
・2021年:自身のYouTubeチャンネルにて「突撃!あの人の音楽スタジオ」を開始
・2022年:「突撃!あの人の音楽スタジオ」に出演された方々を中心としたクラウドファンディングを行い、約470万円の資金調達に成功。そこで制作したStella/エンドロールを配信開始。その後「6スタ音楽制作オンラインサロン」を立ち上げ
・2023年:新ブランド「6Studio Base」を立ち上げ
また同時に6スタ音楽制作オンラインサロンを「6Studio Salon」へ変更
さらに初のリアル拠点として、下北沢に「Base Shimokita by 6Studio」を立ち上げ
大きく3つの機能を持ったBase Shimokita
実際に入ってみると、かなり広いスペースなのですが、これがちょっと不思議な空間であることに驚かされます。
そう、ある方向から見ると、Pro Toolsが動くMacを中心にアウトボードがズラリと並んでおり、まさにプロ用のレコーディングスタジオ。
その横にはレコーディングのブースが設置されているのですが、これは以前「憧れの防音室を自宅の中に!スタイリッシュで組み合わせ自在で、低価格なVicBoothとは!?」という記事でも紹介したVicoustic社の防音ブース。約2m×2mというサイズなので、ドラムを録るとかではなく、基本はボーカル録音用という感じではありますが、かなり本格的なレコーディングはできそうです。
また別の角度から見ると、レコーディングスタジオの雰囲気からはガラリと変わって、ここはまさにYouTubeの配信スタジオ。配信用の設備も備わっているので、ここで収録することもできれば、生配信を行うことも可能となっています。
さらに奥を見てみると、黒板やデスクなどがあって、なんとなく学校のような雰囲気も醸し出していますが、イベントスペースとしてセミナーや勉強会などが開催できるようになっているのです。
「Base Shimokitaはレコーディングもイベントも配信もできる場所なんですが、あえて『スタジオ』とは言っていないんです。スタジオはあくまでもBase Shimokitaのひとつの機能に過ぎないからなんです。とはいえ、業務用のレコスタに負けない機材、音質を実現していて、そこには妥協をしていない、というのがここのウリでもあるんです」
と6スタさん。こうしたアウトボードを使える機会って、なかなかないものですが、アウトボードも含めレコーディング用途でこのスタジオ部分を借りることも可能。金額的には、通常価格6,000円/時間+税(ただし4時間~)で、一日ロックアウトする場合は50,000円+税とのことでした。
6スタさんによると、今後楽器メーカーや、楽器輸入代理店などと組んで、下北沢での製品紹介イベントや、セミナーなどを積極的に展開していきたい、とのこと。そのこけら落としとして10月25日からスタートしたのがDolby Atmosの体験イベントです。
iLoud MTMを使ったDolby Atmos体験イベント実施中
最近、いろいろなところで話題になる空間オーディオ、Dolby Atmos。とくにApple Musicでの空間オーディオの配信がスタートしたことから、多くの人がヘッドホン、イヤホンで聴くことができるようになりました。その一方で、DTMステーションでもDolby Atmos、空間オーディオをテーマにした記事が増えていることからも分かるとおり、各DAWメーカーもDolby Atmos、空間オーディオに積極的に取り組むようになり、一般DTMerでも比較的手軽にDolby Atmos作品が作れるようになってきました。
制作環境もヘッドホン、イヤホンのバイノーラルで作れるようになってきているとはいえ、やはり作品として仕上げる上ではスピーカーの音でもチェックしたいところ。しかしサラウンドで7ch、天井に4chさらにサブウーファーで1chといったスピーカー再生環境を構築するというのは個人ユーザーにはかなりハードルが高いのも事実。
そうした中、10月25日~11月5日の2週間、このBase Shimokitaにおいて、Dolby Atmosによるモニター環境を体験できるイベントが実施されているのです。
このDolby Atmos環境を実現しているのはIK Multimediaのモニタースピーカー、iLoud MTMが11台とGenelecのサブウーファー、7050B。それにオーディオインターフェイスとしてUniversal AudioのApollo x16が利用されています。ここでは、できる限り自宅のDTM環境に近い感じを目指したとのことで、横幅120cm×奥行60cmのデスクにMacBookを設置し、中心から半径1.2mの位置にiLoud MTMを配置したものとなっています。
そんなイマーシブ空間において、Base ShimokitaにあるDolby Atmosのプロジェクトファイルを再生して空間オーディオの世界を存分に味わえるほか、もし自分で聴いてみたいものがあれば、持ち込んで再生することもできる、とのこと。
この2週間のうち、一般の人にも開放されるのは、毎週金曜日の夜に行われているオープンスペースの時間帯(※具体的には10月27日と11月3日の20:00~)と、11月5日(11:00~20:00)のDolby Atoms特別体験Dayの3日間。誰でも無料で参加することが可能で、予約などもいらず空いている時間にフラっと立ち寄ることもできるのだとか。ただし、混雑時には一人当たりの体験時間を制限することもあるとのことなので、その点はご了承ください。
東京近郊の方はもちろんですが、11月3~5日の3連休もあるので、地方にお住まいの方も、東京に遊びにくるついでに、下北沢のBase Shimokitaにちょっと寄ってみてはいかがでしょうか?