本日11月2日、Cubaseの新バージョン、Cubase 13が発表されると同時にその発売が開始され、Cubase Pro 13、Cubase Artist 13、Cubase Elements 13がSteinbergオンラインショップでダウンロード購入が可能となりました。Steinbergオンラインストアでの税込価格は、Cubase Pro 13が69,300円、Cubase Artist 13が39,600円、Cubase Elements 13が13,200円のそれぞれとなっています。
今回のCubase 13の目玉はなんといってもMIDI2.0がサポートされた、という点でしょう。詳細はこの後細かくチェックしていこうと思っていますが、かなりいろいろな仕様がサポートされているようです。もちろん、これまで通りMIDI 1.0もサポートされているので、従来通り使うことも可能なので、その点は安心してよさそうです。一方でMixConsoleの刷新、チャンネルタブの新設、コードパッドやサンプラートラックの進化、vocal chainの追加、新プラグインの登場、新音源Iconica Sketchの搭載、キーエディタの進化、ショートカットウィンドウの刷新……など従来のCubaseユーザーにとって嬉しい機能強化が図られていますし、新規の初心者ユーザーにとってもより使いやすいDAWへと進化しているようです。そんなCubase 13について注目すべきポイントがいくつもあるので、ピックアップしつつ簡単に紹介していきましょう。
- Cubase 13がMIDI2.0をサポート
- エディットとミックスをシームレスに行えるチャンネルタブの新設
- 柔軟なカスタマイズが可能になったMixConsole
- 初心者でも扱いやすいコードパッドに進化
- 豊富なエンベロープとスペクトラルワープモードが搭載されたサンプラートラック
- ボーカルを総合的にコントロールできるプラグインvocal chain
- Black Valve、VoxComp、EQ-P1A & M5が新搭載。そして以前一度廃盤になったVocoderが復活
- Steinbergのオーケストラ音源Iconica Sketchが新搭載
- 操作性が向上したキーエディター
- ショートカットウィンドウの刷新
- そのほか多数の便利機能が搭載されている
- AI、LEもバージョン13がリリース。またElements 13のみ価格は据え置き
Cubase 13がMIDI2.0をサポート
MIDI 2.0に対応した音源Ivory 3 German Dが発売されたり、つい先日もNative InstrumentsからMIDI 2.0対応を打ち出したKontrol S-Series MK3が発表されたりと、どんどん対応するメーカーが増えてきている中、Cubase 13もMIDI2.0サポートするという内容を確認できました。MIDI 2.0については、DTMステーションでも「日米合意でMIDI 2.0が正式規格としてリリース。MIDI 2.0で変わる新たな電子楽器の世界」、「MIDIが38年ぶりのバージョンアップでMIDI 2.0に。従来のMIDI 1.0との互換性を保ちつつ機能強化」、「MIDI 2.0の詳細が発表!MIDI 1.0との互換性を保ちつつベロシティーは128段階から65,536段階に、ピッチベンドも32bit化など、より高解像度に」といった記事で取り上げてきましたが、発表から4年近くたって、急に動きが加速してきているようです。
LogicがMIDI2.0に対応を表明してはいましたが、MIDI 2.0対応スイッチがあるだけで、具体的な中身があまり見えていませんでした。そういう意味では本格的なMIDI 2.0サポートDAWとしてはCubaseが大きく進んだようです。ただし、現時点においてMIDI 2.0サポートされているのはmacOS版のみで、Windows版は今後のアップデートで、とのことです。もっとも、私もまだCubase 13のMIDI 2.0対応についてあまりチェックしきれていないので、これについては、改めて詳しく記事で紹介したいと思っています。
Windows版はMIDI 2.0対応は今後とのことですが、環境設定を見ると「MIDI-CIサポート」というチェックボックスは用意されている
エディットとミックスをシームレスに行えるチャンネルタブの新設
プロジェクトウィンドウ、インスペクターの左側にチャンネルタブが新しく搭載されました。トラックのインサートやセンド、フェーダーなど、チャンネルタブからアクセスできるようになりました。またグラフィックも刷新され、チャンネルタブ、左ゾーンのセクションの順番や表示切り替えが変更できるようになり、カスタマイズ性が向上しています。チャンネルタブを表示していれば、たとえばボーカルのピッチやMIDIイベントのエディットを行っているときでも、トラックのインサートやフェーダーを操作できるので、いちいち画面を切り替える必要がなくなりました。またこれらのチャンネルタブ、左ゾーンの表示幅の変更も可能になっています。
柔軟なカスタマイズが可能になったMixConsole
MixConsoleもグラフィックが新しくなっています。プロジェクトウィンドウとデザインが統一され、視認性が増し、柔軟なカスタマイズにも対応しています。チャンネル下部にチャンネルタイプが表示されるようになり、プリセクションに位相スイッチなども表示可能となっています。チャンネルストリップの内容がポップアップ表示されるようになったので、より調整しやすくなったり、MIDIプラグインのグラフィックも統一感のあるものに変更され、今っぽいデザインとなっています。コンソール上部にもトラック名が表示されるようになりました。
MixConsoleでもセクションを設定ウィンドウから、セクションの順番や表示切り替えが変更可能になりました。
初心者でも扱いやすいコードパッドに進化
コードパッドも刷新され、より使いやすいツールへと進化しています。コードパッドタブ右側にアシスタントゾーンが追加され、コードエディタ、リスト、5度圏などの表示が可能。簡単にコードパッドにコードをアサインできるようになりました。
タブの上部に新しくツールバーが追加されました。ここではコードパッド全体を操作するための機能、割り当てられたコードシンボルに関連する機能が追加されています。ツールバーのルートキーウィンドウで、すべてのパッドを移調したり、5度圏の表示を変えることも可能です。
ルートキーを設定することで、ローマ数字やNashville Number System(ナッシュビルナンバーシステム)でコードを表示することもでき、2種類の表示タイプを同時に表示することも可能。
キーボード表示だけでなく、自由な行と列数のグリット表示もできます。
また1つのパッドを選ぶと、コードの音楽的な関係性によって、ほかのパッドが緑や赤に色分けされるようになりました。これにより音楽初心者でも、より感覚的にコード進行を作成することができます。緑であるほど、音楽的に自然で、赤いほど奇抜な進行になるので、初めて音楽を作る方でも、楽しく作曲できそうですね。またコードトラックにコードイベントを作成する際にステップ入力を使うことで、素早くコードイベントを入力できるようにもなっています。
豊富なエンベロープとスペクトラルワープモードが搭載されたサンプラートラック
サンプラートラックでは、再生セクションに新しくスペクトラルワープモードが搭載されました。これにより、極端なタイムストレッチにも対応可能になりました。ここには、Spectral、Spectral HD、Spectral Vocalというモードが用意されています。
また豊富に用意されたエンベロープを用いて、よりユニークな表現ができるようになっています。
ボーカルを総合的にコントロールできるプラグインvocal chain
続いて、新しいプラグインvocal chainについて。これは、1つのプラグインの中に多彩なモジュールを装備しており、ボーカルを総合的にコントロールできるプラグインとなっています。ボーカルパートのミックスを総合的なアプローチで、より簡単に処理することが可能になりました。
左側のモジュールの上から下へと信号は処理されていき、各モジュールは、CLEANとCHARACTERのセクション内で自由に位置を変更可能。CLEANとCHARACTERと種類が分かれているので初心者でも扱いやすく、またプリセットも多数搭載されているので、ボーカル処理はまずここから初めてみるといいと思います。
Black Valve、VoxComp、EQ-P1A & M5が新搭載。そして以前一度廃盤になったVocoderが復活
ほかにも、Black Valve、VoxComp、EQ-P1A & M5、そして以前一度廃盤になったVocoderが復活しました。新しく追加されたVocoder、2つのコンプ、1つのEQは、vocal chainにもモジュールとして搭載されています。
Steinbergのオーケストラ音源Iconica Sketchが新搭載
Steinbergのオーケストラ音源、Iconicaの一部が標準音源として搭載されました。5GBというライブラリですが、豊富な楽器とアーティキュレーションで、高品質なオーケストラサウンドを作成可能。34の楽器、140のアーティキュレーションが搭載されているので、フルオーケストラスコアだって作成できてしまいます。DAW標準搭載の音源で、ここまでできるものも少ないので、はじめてのDAWとしても最適です。
操作性が向上したキーエディター
キーエディターも進化しており、範囲ツールの利用も可能になりました。範囲ツールは、選択モードで選択に従うにしているときは、画面に表示されている範囲を選択し、縦方向全体にしているときは、隠れたコントローラレーンも含む、すべての編集エリアの情報も選択されます。これにより、たとえばキースイッチなど、離れた音階にあるデータも漏れなく選択可能になりました。コピー、ペースト、複製が圧倒的に楽になっています。
複数パートのMIDIイベントを表示切り替えできるようになりました。これまではプロジェクトウィンドウの選択と連動して、マルチMIDI編集を行っていましたが、新しいVisibilityタブにより、分かりやすくMIDIイベントの表示、非表示、アクティブ、非アクティブを切り替えられるようになりました。Visibilityタブでは、プロジェクトウィンドウ上の選択に関わらず、左のチェックボックスで、各MIDIトラックの表示を切り替え可能。またShift+クリックで、ソロ表示もできます。
アクティブなトラックは、トラック名にアンダーラインが引かれるようになりました。またトラック表示/非表示エリアに四角マークが現れるようになり、そのトラックの一部のMIDIパートが表示されていることを示すようにもなっています。また左上のピンボタンで表示状態を固定することも可能。さらにキーエディターでは、表示したトラックのパートが上部のトラックディスプレイに表示され、プロジェクトウィンドウが隠れていても、全体の把握ができるようになっています。
ショートカットウィンドウの刷新
さらにショートカットウィンドウも刷新され、検索機能の向上、ウィンドウを閉じなくてもショートカットが適応されるようになりました。これにより、複数のコマンドを設定する際により少ない工数で理想のショートカットを作成できるようになっています。地味ながらもヘビーユーザーにとっては、これを待っていたという方も多いかもしれませんね。
また、すでに割り当てられているキーを検索したり、すべて・割り当て済み・カスタマイズ済み・未割り当てというフィルターも搭載されています。
そのほか多数の便利機能が搭載されている
別プロジェクトから指定したタイムレンジをインポートすることができるようになったり、トランスポートメニューに4種類のスタートモードが追加されたり、マウスホイールで縦方向にズームが可能になったり、タップテンポのボタンがプロジェクトテンポの横に表示されるようになるなど、細やかだけど、確かに便利なアップデートが行われています。もっとも、このボタンを「タッ」とカタカナにするのはいかがなものか…という気もしますが…。
さらに、トラックコントロールやMixConsoleから、モノ/ステレオ構成を1クリックで切り替えられるようにもなっています。
オーディオトラックの入力にインストゥルメントトラックやサンプラートラック、FX、グループトラック出力をアサインできるようになりました。オーディオトラックへの柔軟なルーティングが可能になったので、たとえばVSTインストゥルメントの演奏をリアルタイムにオーディオトラックに録音したり、FXトラックでエフェクト処理された信号をオーディオトラックに録音することが可能になりました。
AI、LEもバージョン13がリリース。またElements 13のみ価格は据え置き
なおCubase Pro 13、Cubase Artist 13、Cubase Elements 13に加え、Cubase AIおよびCubase LEもこのタイミングでバージョン13がリリースされています。従来のCubase AIおよびCubase LEユーザーは自動的にCubase 13へとバージョンアップ可能になっているので、Steinberg Dowonlaod Assistantを用いてインストールしなおしてみるとよさそうです。
ところで、Cubaseのパッケージ製品に関しては、いずれもオープン価格となっていますが、情報筋からの話では今回Cubaseの卸価格に改定があった模様です。具体的には従来と比較して10%ほど値上がっているようで、たとえばこれまでCubase Proの通常版が63,000円前後だったものが、69,300円前後となっています。ただしCubase Elements 13のみ価格は据え置き。またパッケージ版に関しては、まだ値上げされる前の価格で販売している店舗もありそうです。パッケージ自体はバージョン名の記載がないので、Cubase 12もCubase 13も同じ。仮にCubase 12として販売されていた製品でも、いまアクティベートすればCubase 13になるので問題はありません。安い価格で見つけたら、早めに買っちゃうのが吉のようです。
ちなみに最近Cubase 12を買ったという人であれば、グレースピリオドと呼ばれる救済法により、無償でCubase 13へバージョンアップできる仕組みも用意されています。具体的には8月23日以降に購入または製品登録した人が対象です。
以上、Cubase 13の新機能をざっと紹介してきましたが、はいかがだったでしょうか?作曲の初期段階から威力を発揮するコードパッドの進化や既存ユーザーに嬉しい細やかなアップデートが行われていましたね。またMIDI2.0サポートとなったので、前述の通りこれについては後日、より詳しい内容を紹介していきたいと思います。
【関連情報】
Cubase 13製品情報