真空管とFET回路を搭載した究極のマイク、LEWITT LCT 1040

LEWITTから非常にユニークで高性能なマイク、LCT 1040が発売されています。これは、4種のキャラクター切り替えが可能な真空管回路とFET回路を搭載した、ほかにない珍しい設計のマイクで、ミック・ジャガーのニューシングル「ストレンジ・ゲーム」でも使用されているとのこと。価格は484,000円(税込)とプロ価格なのにも関わらず、LEWITTでもっとも売れているマイク、LCT 440 PURE(40,150円税込)についで2番目の売れ筋商品なのだとか……。新しいマイクなのに、有名ミュージシャンが使用していたり、数多くの販売台数を誇っているのは、世界で受け入れられている証拠といえそうです。

そんなLCT 1040をはじめ、LEWITTの製品群をキングレコード関口台スタジオで、実際にレコーディングするというイベントが先日開催されたので行ってきました。レコーディングしたのは、シンガーソングライターの磯貝サイモン@simon_isogai)さんによるボーカルとアコースティックギターで、記事の中で聴き比べられるようにしたので、ぜひ一度そのサウンドをチェックしてみてください。今後、レコーディングスタジオのスタンダードマイクになっていく可能性も高いLCT 1040について、その実際に収録された音源とともに、特徴を紹介してこうと思います。

真空管とFET回路を搭載した究極のマイクLEWITT LCT 1040

キングレコード関口台スタジオで行われた、LEWITTのイベントに行ってきた

キングレコード関口台スタジオで行われた、LEWITTのイベントでは、LCT 1040のレコーディングがメインでしたが、それとともに同社が発売しているハンドヘルドマイクのMTP W950のレコーディングも行われました。ほかにも、配信でも宅録でも便利なオーディオインターフェイスCONNECT 6、新製品のPURE TUBEなど、LEWITTの主力製品についての紹介も行われました。

キングレコードの関口台スタジオでLEWITTのイベントが行われた

そのLEWITTのLCT 1040のレコーディングでは、磯貝サイモンさんによるアコースティックギターの演奏、そしてボーカルが順に録られていったのですが、使ったのはあくまでもLCT 1040、1本のみ。でも、さまざまな録り音に後から切り替えることができるのが、LCT 1040の大きな魅力。この点についてはこの後じっくり紹介していきます。

磯貝サイモンさんのアコースティックギター、ボーカルをレコーディングしていった

LEWITTはベストなサウンドを目指すとともに、誰もが買える価格帯に

LEWITTは、もともとAKGで働いていたRoman Perschon(ローマン・パーション)さんが、自分の目指すサウンドやビジョンを追求するために、2009年に設立したオーストリア・ウィーンにあるメーカー。LEWITTの理念は「great sound is for everyone.」としており、すべての方に素晴らしいサウンドを届けるため、ベストな音質を目指すのはもちろんのこと、それをすべての人に届けられる製品の価格帯に設定しているとのこと。

LEWITTの製品は、オーストリア・ウィーンにある会社で、開発、設計、セールスなどが統括されており、社員数は120名以上。現在までに100万本以上のマイクを販売してきた実績も持ち、80カ国以上で取り扱いされています。ちなみに以前DTMステーションでは、LEWITT DGT650がリリースされたタイミングで「オーストリアのベンチャーLEWITTが作る高機能・高性能USBマイクとは」という記事で、Roman Perschonさんにインタビューしているので、LEWITTが設立された背景について、興味のある方はぜひこちらもご覧ください。

LEWITT CEO Roman Perschonさん

最先端の技術を使って、最高のサウンドを目指すLEWITT製品

私がこの業界に入った15年前に主流だったのは、TELEFUNKENやNEUMANNのような形のしたマイクでした。マイク業界全体が、60年代70年代のマイクを元にした製品を開発していた時期がありましたが、LEWITTとしては、この方向性は違うと感じていました。TELEFUNKENやNEUMANNは、当時の最先端の技術を使って、最高のサウンドを目指していたはずです。なので、LEWITTも今現在の最先端の技術を使って、最高のサウンドを作っているのです。白黒テレビや黒電話は、今誰も使っていないですよね。私たちはLEWITTをテクノロジーの会社だと認識しており、最新テクノロジーをいかに音楽やオーディオに活かせるか常に考えています」と話すのは、今回来日したLEWITTのCOO兼プロダクトマネージメントのトップであるMoritz Lochner(モーリッツ・ロックナー)さん。

LEWITTのパトリック・ピーターズさん(左)とモーリッツ・ロックナーさん(右)

LEWITTの製品は、数多くありますが、そのどれもに共通しているのが、非常にローノイズである点。そして、サウンドをそのままレコーディングすることを重視しているとのこと。音楽を始めたばかりの人も、プロフェッショナルな人も等しく、いいサウンドを手にいれることができるというのを大切にしているそうです。

最新テクノロジーを使って開発されるLEWITTの製品

究極のマイクを目指して開発したLCT 1040は1つのマイクであらゆるソースに対応

そんなLEWITTのフラグシップマイクが、LCT 1040。究極のマイクを作る、という開発コンセプトでスタートしたこのマイクは、レコーディングスタジオでのワークフローを念頭に置いて作られています。時間が限られている中で、いろいろなマイクを試して、一番適したサウンドを採用するというのはなかなか難しいのが現実。そこで、1つのマイクであらゆるソースに対応できるのが理想と考え、開発されたのがLCT 1040なのです。そして究極のマイクサウンドを実現する上で真空管が不可欠、という判断から真空管が採用されています。

LCT 1040は、マイク本体のほか、電源ユニット、コントローラで構成されている。画像はコントローラ部分

LCT 1040の真空管サウンドは、以下の4つのキャラクタを使用することができます。

Clear:バランスのよいフラットなサウンド
Warm :スムースで心地よいサウンド
Dark :高域を抑えたマイルドなサウンド
Saturated:豊かなハーモニクスと繊細なコンプレッション

また、真空管サウンドの一方で、完全にクリアなサウンドも必要である、という考えから真空管だけでなくFETを使った回路も搭載されており、真空管サウンドとFETサウンドの両方を同時にキャプチャすることが可能になっている、というのが他にないユニークな点です。真空管とFETを別々にレコーディングして、後からブレンドすることもできるし、その場でブレンドして録音することもできるようになっているのです。

同時に真空管とFETのサウンド録音することができるので、後からブレンドしていくことも可能

さらに指向性を無段階で調整できるようになっているのも大きな特徴。無指向性、Cardioid、Subcardioid、Supercardioid、Hypercardioid、双指向性を段階的にでなく、自由な位置に設定できます。ほかにも、Filter、Attenuationなども搭載されています。

ミキサールームで、マイクのキャラクタ、指向性、Filter、Attenuationなどをコントロール

LCT 1040では、サウンドのキャラクタ、指向性、Filter、Attenuationなどをコントロールできるのですが、これをブースのマイクが置いてある場所でなく、ミキサールームからコントロールできるようになっているのもポイント。コントローラ部分だけを分離して、ミキサールームに持って行くことが可能となっており、エンジニアがリアルタイムにマイクの設定を操作できるようになっています。しかも、このコントローラ部分はマイクを繋ぐ電源ユニットとXLRで繋ぐことができるのも嬉しい点。専用のケーブルではないので、扱いやすい設計になっています。

電源ユニットとコントローラは分離することができる

LCT 1040は、ミックジャガーのニューシングル「ストレンジ・ゲーム」でも使用されている

開発の段階では、さまざまなスタジオ、エンジニアやミュージシャンにプロトタイプを試してもらい、本当に使いやすい機能などをヒアリングして開発していった」とモーリッツ・ロックナーは話していました。冒頭でも書いたように、LCT 1040の価格は484,000円(税込)とプロ価格なのにも関わらず、LEWITTのベストセールスであるLCT 440 PURE(40,150円税込)についで2番目の売れている商品。またミックジャガーのニューシングル「ストレンジ・ゲーム」でも使用されているとのこと。

LCT 1040は、ミックジャガーのニューシングル「ストレンジ・ゲーム」でも使用されている

LCT 1040で、マイク探しの旅は終了

そんなLCT 1040のサウンドを、このLEWITTイベントでは、実際にレコーディングして試聴会が行われました。エンジニアは、キングレコード関口台スタジオのレコーディングエンジニア水野将徳さん。ミュージシャンは、磯貝サイモンさんです、以下は、実際に収録された音源となっています、ぜひお聴きください。

アコギのみ

ボーカルのみ

アコギ+ボーカル+オケ

僕が、LCT 1040のサウンドで一番好きだったのは、Warmでしたね。男性ボーカルだと、Clearにすることで上のほうも抜けてきて、前に来る感じがあります。一方女性ボーカルだと、Warmにすることで、ふくよかな部分が出てくるので、少しキンキンするボーカルはWarmが一番合いますね。Saturatedは、HAで歪んでいるようなコンプ感のあるサウンドを得られるので、バンドものとかにマッチすると思います。ドラムのオーバーヘッドでも試してみたいですね。Darkはアコギでしか、試せなかったのですが、リボンマイクっぽい使い方が適していると思いましたね」と水野将徳さん。

キングレコード関口台スタジオのレコーディングエンジニア水野将徳さん

磯貝サイモンさんは、「4つのキャラクタを選べるチューブとFETのサウンドを組み合わせられるなら、無限大ですよね。これ1本で済むので、マイク探しの旅は終了ですよ。いろいろなキャラクタになるので、最初は選びきれないかもしれないですが、慣れてくれば、あのサウンドにしたければ、このモードで、というようにコントローラ1つで決められら、完結できるのは、いいですね。アウトボードを繋いで…という必要がないので、宅録でも最高だと思います。こんだけ幅が広いと、これだけ持っていればいいんじゃないかな。普通のマイクは、キャラクタは1つなのに対し、LCT 1040はすべてが守備範囲なので、むしろ多くの種類のマイクを集められない人こそ向いてますよね。今小さいボーカルだけ録るようなスタジオや個人スタジオが増えているので、そういった方にとってLCT 1040という選択肢ができたことは、かなり嬉しいですよ」と話します。

ギターをレコーディングした後にポジションを変えてLCT 1040で磯貝サイモンさんのボーカルを録った

音楽を作る人のことを考えて開発されたLCT 1040

またワークフローについて水野さんは、「専用ケーブルでなく、普通のXLRケーブルでコントローラを繋げるのはいいですよね。予算も厳しい中で、いろいろ試せる現場は少なくなっている状況で、ベストを選ぶのにフルコーラス歌っていただく間に、パッと切り替えて、あたりをつけていけるのも気に入ってます。すぐ試せるというのは利点ですね。音楽を作る人のことを考えて開発されたというのが伝わってきます」とのこと。

電源ユニットとコントローラを合体させた状態のリア側。この状態では、この2つを結線する必要はない

以上、LCT 1040について紹介しました。この日、ほかにLEWITT製品が紹介されましたが、その中でもオーディオインターフェイスCONNECT 6は、「2つのUSBポート持つオーディオインターフェイス、LEWITT CONNECT 6。PCで作った音を劣化なくスマホで配信も!」という記事で紹介しているように、2つのUSB端子を持っていて、PCとスマホを同時に接続でき、双方向で音声を送受信できるという機能を持っていて、かなりいい機材なので、あわせてチェックしてみてください。

【関連情報】
LCT 1040製品情報

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