シンセ系ユーザーを増やしつつ、独自進化を続けるDAW、Bitwig Studioが5に。新エディション追加で、より入手しやすく!

各種DAWがある中で、強い独自色を発揮し、異彩を放つDAWとして存在感を強めてきているのがドイツに本社を置くBITWIG社が開発するBitwig Studioです。もともとライブパフォーマンスで使えるということで注目を集めたBitwig Studioですが、レコーディング用、打ち込み用、アレンジ用、ミックス&マスタリングツールなど音楽制作用途全般で広く使えるだけでなく、The Gridというユニークな機能でモジュラーシンセのごとく、さまざまなモジュラーを組み合わせて自由自在に音を作っていく機能を持っているのが大きな特徴となっています。

そのBitwig Studioがさまざまな機能追加してBitwig Studio 5となった一方、最上位のBitwig Studio、中位のBitwig Studio Producer、そしてエントリー版のBitwig Studio Essentialsと3つのグレードに分かれました。中でもエントリー製品であるBitwig Studio Essentialsは、税込みで17,600円と手ごろなのが特徴。このEssentialsでもThe Gridの一部機能は使えるので、こうしたシンセ機能に興味がある人にとってはより手軽に入手できるようになっています。実際どんなDAWになったのか、紹介してみましょう。

Bitwig Studio 5がリリース。異彩を放つDAW、Bitwig Studioは3つのグレードに分かれる形で登場した

エントリー向けのEssentials追加で3つのグレードに分化

「Bitwig Studio、なんとなく興味はあるけど使ったことがなくて……」という方も少なくないと思いますが、先日Bitwig Studio 5とメジャーバージョンアップするとともに、

Bitwig Studio (税込:50,875円)
Bitwig Studio Producer (税込:34,100円)
Bitwig Studio Essentials (税込:17,600円)

という3つのグレードに分かれる形となりました。これまでBitwig Studio 16-Trackというソフトが下位グレード版としてあったものが、大きく機能・性能UPしてBitwig Studio Essentialsになるとともに、間にBitwig Studio Producerが追加された、という形です。

最上位版がBitwig Studiode、真ん中がBitwig Studio Producer、エントリー版がBitwig Studio Essentialsとなっている

とくにトラック数においてBitwig Studio Essentialsでも制限がなくなり、32bit float/192kHz対応で、使えるプラグインの数にも制限がないなど、かなり強力な内容となっています。ほかのDAWの下位版だと、そもそもサードパーティーのプラグインを使うことができなかったり、同時に使えるプラグインの数が限られているケースが多い中、そうした制限がないのです。またサイドチェーンにも対応し、32/64bitブリッジ対応で昔の32bitプラグインも併用できること、ディレイ補正機能があり、クラッシュ保護機能も搭載されるなど、これだけをとっても非常に先進的なDAWであることが分かると思います。

エントリー版のBitwig Studio Essentialsでもかなりの機能を装備している

またWindows、MacだけでなくLinux(Ubuntu)でも動作するのもユニークなところですが、プラグイン規格としてはVSTのほかにCLAPにも対応しています。「CLAPって何?」という人も多いと思いますが、以前「VST、AU、AAXを置き換えるものになるのか? 独BITWIGとu-heが共同で開発した次世代のプラグイン規格、CLAPとは」lという記事を書いているので、こちらも参考にしてみてください。

そのほか、これら3つのグレードの違いについては国内発売元のDirigentのサイトに機能比較表(https://dirigent.jp/blog/three-flavors-of-bitwig-studio)があるので、そちらをご覧になってみてください。

モジュラーシンセ的機能、The Gridを搭載

このBitwig StudioがほかのDAWと大きく異なる点として、注目を集めている理由の一つにBitwig Studio 3で搭載されたThe Gridという機能があります。このThe Gridについては「サブDAWとしても大きな威力を発揮するBitwig Studio。モジュラー機能The Gridを搭載した3.1が登場」という記事でも紹介したことがありましたが、まさにモジュラーシンセのような機能であり、自分で自由にシンセサイザを構築していくことができる、というもの。

ソフトウェアでいえば、Native InstrumentsのReaktorのような機能、といえばいいかもしれません。オシレーター、フィルター、LFO、エンベロープ、ミキサー……といったモジュールが数多く用意されており、それを画面上に配置し、線で結んでいくことで、自分だけの音源を自由に作ることができるのです。

モジュールをつなぎ合わせていくことで自分でシンセサイザやエフェクトを構築していくことができるThe Grid

シンセサイザ用として使えるPoly Grid、それにエフェクト用として使えるFX Girdの2つがありますが、この機能のためにBitwig Studioを使っている、という人も少なくありません。また、このThe Gridが搭載されたBitwig Studio 3から、世界的にBitwig Studioユーザーが増えていったのも事実です。

このThe GridはCV/GATEにも対応しているため、外部のアナログシンセとも接続できてしまうのも大きな魅力。そのCV/GATEを利用するためにはES-8 Bitwig Editionのような機材か、MOTU製品を始めとするDCカップリング機能搭載のオーディオインターフェイスが必要となりますが、この辺もほかのDAWにはないユニークな機能だと思います。

DCカップリング対応のオーディオインターフェイスを使うことで、CV/GATEのやりとりも可能になっている

そんなThe Gridが一番下位グレードのBitwig Studio Essentialsでもとりあえず、使えてしまう、というのも嬉しいところ。フル機能を使うためには最上位版のBitwig Studioが必要となりますが、そのため、まずはEssentialsから入って、その後、物足りなければ上位版へアップグレードする、というのも良さそうです。

最上位版のプロジェクトもEssentialsで開ける!?

この3つのグレードに分かれたBitwig Studioですが、ユニークなのは、プレイモードなるものを搭載している、という点です。

一般的なDAWでは下位グレードだと、上位版の機能が搭載されておらず、上位版で作ったプロジェクトを再生しようとしてもエラーとなったり、正しい音で再生することができません。しかし、Bitwig Studio 5ではプレイモードを搭載しているため、異なるエディションで作成したプロジェクトであっても再生および編集ができてしまうのです。

たとえばインストゥルメントにおいて、3つを比較した表が、こちら。

●がフル機能で動作することを意味しているのに対し、〇はプレイモードでの動作を意味しているのです。つまり、プログラム的には3つのグレードすべて同じものを使っているけれど、ライセンスによって機能制限をかけている、ということのようですね。

FL StudioやAbleton Liveのプロジェクトが開けるのもBitwig Studioの特徴

もうひとつBitwig Studioのユニークな点は、Bitwig Studioのプロジェクトが開けるというだけでなく、FL StudioやAbleton Liveのプロジェクトをそのまま開くことができてしまう、という点です。

プロジェクトとしてAbleton Live SetやFL Studio Projectが読み込めるようになっている

EDM系に強いという意味では、各種あるDAWの中でFL Studio、Ableton Live、Bitwig Studioの3つは近い位置づけにあるわけですが、それらのプロジェクトが開けてしまう、というのは超強力。この際、オーディオやMIDIデータが読み込めるというだけに留まりません。FL StudioやAbleton LiveオリジナルのエフェクトにおいてはBitwig Studioが持つエフェクトに置き換えるとともに、パラメータも近い状態に自動で設定してくれます。またインストゥルメントもBitwig Studioの近いものを設定してくれるのです。詳細については、以下のFAQがあるので、参考してみるといいと思います。

Q:Ableton Liveのプロジェクトは読み込めますか?
https://dirigent.jp/blog/bitwig-studio-importing-ableton-live-sets
Q:FL Studioのプロジェクトは読み込めますか?
https://dirigent.jp/blog/bitwig-studio-importing-fl-studio-projects

ちょっと面白い使い方でいうと、実はFL Studioの試用版は誰でも入手することが可能で、機能制限も期間制限もなく、作ったプロジェクトの保存だってできてしまいます唯一の制限といえるのが保存したプロジェクトを読み込むことができないという点。つまり試用版で作った曲もちゃんと保存できるけど、それを読み込むには製品版が必要となる、という仕様になっているのですが、その保存したプロジェクトをBitwig Studioなら開けてしまう、というわけなのです。この辺もうまく活用すると、いろいろと応用範囲が広がりそうです。

※2023.9.3追記
FL Studio 20の試用版から、保存機能は削除されているとのことです。

Bitwig Studio 5の目玉機能は従来のEGを大きく超越するMSEG

ところで、機能の面においてBitwig Studio 5になって搭載された大きなものがMSEG=マルチセグメント・エンベロープ・ジェネレーターなるもの。簡単にいえばADSRといったシンプルなエンベロープのみならず、自由自在にエンベロープを描くことができる、というものです。

モジュレーターとしてSegmentを使うことが可能

ここにはセグメント(Segment)とカーブ(Curve)という2種類のものがあり、セグメントを使用することで必要な数のポイントを打つことで、独自のエンベロープを描画し、必要に応じてループさせることができるというものです。

Curvesはモジュレーターとしてはもちろん、The GridのLFOとしても使うことが可能

一方、カーブを使用すると、変化するビートグリッドに幾何学的パターンを描画することで、独自のLFOを作成できる、というもので、自由にLFOの波形を描いていくことができます。

いずれもBitwigお得意のモジュレーターとして利用できるほか、前述のThe Gridの中のモジュールの一つとしても利用可能となっています。

9月1日から値上げになるので、買うなら8月中がお勧め!

さて、そのBitwig Studioですが、昨今の円安などにより、9月1日から値上げすることが発表されています。値上げとなるのは、最上位版のBitwig Studioであり、Bitwig Studio ProducerやBitwig Studio Essentialsは対象外のようではありますが、具体的には以下のような変更になるとのこと。

Bitwig Studio(フルバージョン) 旧価格:50,875円(税込) → 新価格:69,300円(税込)
Bitwig Studio エデュケーション版 旧価格:34,100円(税込) → 新価格:47,300円(税込)
Bitwig Studio 12ヶ月アップグレード版 旧価格:20,900円(税込) → 新価格:29,700円(税込)
Bitwig Studio UPG from 8-Track 旧価格:48,400円(税込) → 新価格:62,700円(税込)

モノにもよりますが、30%以上の大幅値上げとなるようなので、買うなら8月中というのが良さそうです。ぜひ、早めにチェックしてみてください。

DTMステーションPlus!
Bitwig Studio 5特集を8月22日配信!
8月22日の第224回目となるDTMステーションPlus!では、今回の記事で取り上げたBitwig Studio 5を特集いたします。実際にどう使うのか、The Gridでどんなことができるのか、ほかのDAWとどう違うのかなど、じっくり紹介していきます。
【配信日時】
2023年8月22日 20:00~22:00
【ニコニコ生放送】
https://live.nicovideo.jp/watch/lv342397689
【YouTube Live】

https://www.youtube.com/live/s3Qj8WfxaE0

【関連情報】
Bitwig Studio製品情報

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