「業界標準、完全プロ仕様」をテーマに、著名な作曲家、アレンジャー、エンジニアなどを講師に招いて実践的で少数精鋭のセミナーを実施している山口ゼミ。以前「最速で成長できる、プロになるための近道。コーライティングを推奨する山口ゼミが実績を上げている理由」という記事で、山口ゼミがどういったところなのか紹介した際に、海外クリエイターとのコーライティングについて少し触れましたが、今回2月13日から2月17日で台湾コーライティングキャンプが実施されるというのです。
そこで、オーガナイザーでもある山口哲一(@yamabug やまぐちのりかず)さん、プロデューサーであり副塾長である伊藤涼(@ito_ryo)さん、2021年レコード大賞 Da-iCE『CITRUS』の作曲をしたKaz Kuwamura(@KazKuwamura)さんに、台湾コーライティングキャンプでは何が行われるのか、なぜ海外クリエイターと一緒に作曲・編曲・作詞を行うのか、世界に進出するためにはどうしたらいいのかなど、お話を伺ってきました。また2月18日には、台湾コーライティングキャンプ報告会と題した無料のオンラインイベントも行われるそう。では、コーライティングの最前線について紹介していきましょう。
台湾コーライティングキャンプとは?
ーーまずは、台湾コーライティングキャンプとはなんなのか教えてください。
山口:山口ゼミの卒業生によるCo-Writing Farmの活動の一つに、「外国人作曲家とのコーライティング」があります。今回の台湾コーライティングキャンプは、その活動となります。これは、経済産業省「コンテンツ海外展開促進事業」の助成を得て行われるものでもあり、台湾の音楽出版社One Asia Musicとも連携しています。日本人と台湾人のトップクラスの作曲家が参加し、このキャンプで完成した作品は、アジアマーケットに進出する仕組み作りも徹底して行っていきます。
ーー具体的に台湾コーライティングキャンプでは、どういったことが行われるのでしょうか?
山口:日本から10人、台湾から10人が集合します。必ず日台メンバーが混ざる形で3人か4人で1組のチームを作ります。このチームは毎日違うメンバーの組み合わせで作り、それぞれのチームは1日1曲の制作を行っていくというルールです。2月13日の夕方ごろに現地に到着し、まずは顔合わせなどを行い、14日から本格的にコーライティングをスタートしていきます。14日、15日のスケジュールはほぼ同じで、11時にチームが集合し、お昼を食べた後、13時から20時まで、がっつりコーライティングを行います。16日は最終日となるので、最後に試聴会と打ち上げがありますが、トータル3日間のコーライティング時間を設ける形です。そして17日に帰国するという流れですね。
2/13(Mon)
17:00 -18:30: ホテルに集合
17:30〜 : ミーティング
スケジュール確認、チーム分けなどの発表、質問などを受けつつ、あとはWriter同士食事をしつつの交流会の時間にします。
18:30 : Mini Welcome Party 食事(交流)
2/14 (Tue) Day1
10:00 :機材Setting
11:00:team集合
12:00-13:00:Lunch outside or Uber ea
13:00-20:00:Session
2/15(Wed)Day2
11:00:team集合
12:00-13:00:Lunch outside or Uber eat
13:00-20:00:Session
2/16(Thu)Day3
11:00:team集合
12:00-13:00:Lunch outside or Uber eat
13:00-17:30:Session
18:00-19:30::試聴会 @ B1 floor
19:30-21:00:打ち上げ
2/17(Fri)
帰国
ーー20人ほどのメンバーが、3日間コーライティングしていくわけですね。
山口:日本からのメンバーは、半分ぐらいがCo-Writing Farmメンバーで、半分は一般公募の人たち。そのうち2、3人私も初めましての方々です。具体的には、Mikey、サイレンジ!、Ucca-Laugh、永野小織、ながしまみのり、alura、TSINGTAO、Zuma.、小形誠、p.e.t.が日本から参加します。後は、私と伊藤涼、Kaz Kuwamuraがオーガナイザーとして参加します。Kaz Kuwamuraは、作家としても参加するのですが、元々英語ができる上に、自分のキャリアとしても海外コーライティングのオーガナイザーとして活動したいという思いがあるので、今回企画運営を協力してもらっています。Kaz Kuwamuraは、曲を適切にアーティストへプレゼンしていく立場も含めて、新しいタイプのディレクターになるというビジョンを持っている作家ですね。
Kaz Kuwamuraさんが、山口ゼミに入ったきっかけ
ーーKaz Kuwamuraさんは、いつごろから山口ゼミに参加されているのですか?
Kaz:僕自身は、14期生でして、2016年に山口ゼミに参加しました。山口ゼミに入ったきっかけは、山口さんと伊藤さんが書かれた「最先端の作曲法 コーライティングの教科書」という本を読み、コーライティングというライティングスタイルに興味を持ったことですね。そして卒業後に、Co-Writing Farmに入ったという流れです。
ーーさきほど、山口さんから海外コーライティングのオーガナイザーを希望されたとの話がありましたが、これはどういった理由があるのですか?
Kaz:実は私自身、もともと英語の教員をしていまして、海外との交流には興味があったんです。楽曲の採用がないころから、海外作家として活動したいという思いは強くありました。Co-Writing Farmに入ってからは、それがどんどん現実になってきたという感じですね。
今日から海外で活躍するクリエイターになる方法
ーーもともと、グローバルに活躍したいという思いがあったのですね。これから作家になりたいと思っている人に向けて、何かKaz Kuwamuraさんの立場から、アドバイスいただけないでしょうか?
Kaz:ライターとして活躍するには、3つ大切なことがあると考えています。1つ目は、一緒にできる仲間の存在です。1人でできることには限界があるので、依存するのではなく、パートナーとして活動できる人を見つけることは大切です。そう考えると、山口ゼミやCo-Writing Farmは、仲間を見つけるのに最適なところだと思います。2つ目は、インディペンデントであることです。Co-Writing Farmは、インディペンデントであること、つまり独立心、自主性という部分を重要視していまして、付加価値を感じてもらう、自分の武器を見つけることが、長く活動する上で大切です。3つ目は、グローバルに考えることです。すでにSNSで全世界と繋がれる時代ですので、日本に籠っていては機会損失になってしまうと考えています。制限を作らず、グローバルに活動していくことが大切ですね。
ーー3つ目のグローバルにということについてですが、今日からできることは何かありますか?
Kaz:たとえば、フェイスブックやインスタグラムの投稿を基本的にバイリンガルで投稿したり、自分の実績を英語にするとかですね。たとえば、日本のアーティストの楽曲を作ったことがあるのであれば、そのアーティストを英語で紹介するなど、海外からの見え方をブランディングすることで、実際に連絡が来たりしますよ。また僕の場合だと、まだ採用のないときから、Co-Writing Farm経由で、海外のコーライティングキャンプに参加していたのですが、そこにはいろいろなチャンスが眠っていたりしました。
世界からアジア人クリエイターは注目されている
ーー伊藤さんは、今回の台湾コーライティングキャンプについて、どう見ていらっしゃいますか?
伊藤:K-POPが世界中で流行ったということもあり、今、世界中からアジア人のクリエイターが注目されています。実際に活躍している人は多いですからね。台湾コーライティングキャンプを実施するということを、英語で発信すると、オーストラリア人など、海外からいろいろな連絡が来たりするので、かなり大きなスケールになっていくと思っています。台湾コーライティングキャンプに限らず、いろいろな国で行うコーライティングキャンプに参加することで、海外クリエイターと関係を構築できることの意義は大きいと思います。確かに知らない人、しかも海外の人とコーライティングすることは、ハードルが高いですが、一度いっしょの曲を作る経験をすれば、大きな信頼関係ができるあがります。そうした経験、信頼関係が築ければ、その後はオンラインでもコーライティングは十分可能なんですよね。これによって、どんどん前に進めることができるんです。今、世界から見るとアジア人でいることは、イケてるので、このチャンスを活かさない手はないと思いますよ。
ーーところで伊藤さん、今度海外に移住を計画しているという話を聞きましたが、どちらに行って、どんなことをされるのですか?
伊藤:今年の夏にはカナダのトロントに移住する予定です。プライベートな理由が大きいのですが、音楽的にはここ十数年日本の音楽業界を見てきて、そのガラパゴス化が一層進んでいる状況です。これまでいろいろと戦ってきたつもりではあるけれど、内側から変えるにはそろそろ限界か、とも感じています。また日本にいると、日本の業界慣習に慣れてしまうという問題点もあるので、一度外に身を置いて、海外から攻めてみるのもいいのではないか、と思っているのです。どこに住むかは、いくつかの候補を考えたのですが、トロントはコーライティングキャンプもやったことがあって、知り合いもいるし、人付き合いもしやすい。一方で日本人が少ないというのもいいかな、と思っています。すでにインディーズだけど、アーティストのプロデュースもしていて、リリースが決まっているものもあります。行ったら行ったで、日本との懸け橋になれると思うし、粛々とアメリカのマーケットは狙っていきたいですね。
ーーカナダに行ったら、今後、山口ゼミだったり、こうしたコーライティングキャンプはどうされるのですか?
伊藤:何年も前からも長野の山奥に住んでいるので、ほとんどやりとりはオンラインなんですよ。今年初めに、新年会的な集まりには行きましたけど、2~3年やりとりしているのに、初めましてという人たちが結構いましたからね。そう考えると、カナダでも長野でも大きくは変わらないかな、と。確かに時差はありますけどね。海外キャンプであれば、同じように飛行機で行けばいいわけだし、逆にカナダでのキャンプを企画するというのもいいかな、と思ってますよ。
海外でのコーライティングキャンプに参加するためには?
ーー最後に、海外でのコーライティングに興味を持った人はどうすればいいでしょうか?
山口:まずは、2月18日に行うオンラインでの「台湾コーライティングキャンプ報告会」に参加してみてください。申し込んでいただければ誰でも無料で参加可能です。3日間一緒に曲を作っていくと、みんな仲良くなっていくんですよね。そうすると、オンラインでコーライティングできるので、この循環を大きくしていき、Co-Writing Farm中心に世界中の人とコーライティングできる環境はできると思っています。日本人は、海外のことを知らないから客観的に自分のことを見れてないと思うんですね。正確に自己評価できてないのですが、でもニュートラルに見ると、日本人はクリエイティブな優位性があるんです。なので、日本の音楽家がもっとグローバルに活躍できる環境を作っていけたらと考えています。
ーーありがとうございました。
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【2023年2月18日(土)開講!】「山口ゼミ」10周年記念トークイベント「台湾コーライティングキャンプ報告会」
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