昨年のシンセフェスタの記事でも少し紹介したTAHORNGの電子リコーダー、Elefue(エレフエ)。実売14,000円前後と、とっても手頃な価格の機材ですが、機能・性能的にはかなり優れた電子楽器です。AKAIのEWIなどはなかなか手が出せない…という人でもこの値段なら即、購入できるし、キーボードは苦手な人も、小学校で習ったリコーダーなら、すぐに演奏できるのではないでしょうか?
Elufeのユニークなポイントは、10音色切り替えの音源を内蔵しているとともに、2W出力のアンプ・スピーカーを内蔵しているから、電源を入れれば難しいことなしに、すぐに演奏できてしまうという点。もちろんヘッドホン端子もあるから夜でも気兼ねなく演奏が楽しめます。そしてBluetooth-MIDI(BLE-MIDI)機能を装備しているから、iPhoneやiPadなどに接続して演奏することもできるし、各種DAWと連携させてMIDIのリアルタイムレコーディングなどに用いることも可能です。発売自体は今年6月に出ていたのですが、入荷数が少なくなかなか購入できない状態が続いていました。が、先日4種類のカラーバリエーションが整うとともに、在庫も豊富になり、すぐに購入できるようになったようなので、実際、どんな機材なのか詳しく紹介してみましょう。
Elefueは、とっても手軽に使えるリコーダー(縦笛)タイプの電子楽器です。サイズ的にもまさに小学校で使ったリコーダーと同じで、内部にリチウムイオン充電池が入っているにも関わらず105gと重さもリコーダーとほぼ同様。電源を入れれば、すぐに演奏できるという、とにかく簡単な楽器です。
以前にもDTMステーションの記事で取材させていただいたBANANAsu(@Kretek877)さんが、Elefueを4重奏する形で演奏するビデオを公開しているので、まずはこちらをご覧ください。
いかがですか? 4種類あるカラバリすべてを使って演奏していますが、それぞれの設定音色は
青 05:ソプラノサックス
黒 01:ソプラノリコーダー
白 08:クラリネット
となっているそうです。とくにエフェクトも設定せずに、Elefueの出力をそのままレコーディングしているようですが、とってもいい感じのサウンドになっていますよね。この4つのカラバリ、写真でみると、こんな感じの色になっています。
また前述のとおり、10種類の音色が搭載されているのですが、具体的には以下のものとなっています。
1 ソプラノリコーダー | 6 バンブーフルート |
2 ひょうたん笛(フルス) | 7 フルート |
3 テナーサックス | 8 クラリネット |
4 アルトサックス | 9 トランペット |
5 ソプラノサックス | 10 スオナ・チャルメラ |
その音色、どうやって切り替えるかというと、本体の裏側を見てみると、7セグLEDのディスプレイとともにボタン類が用意されているので、これを用います。まず、電源を入れた上で、Vボタンを押すと、音色切り替えモードとなるので、左右ボタンを押していくことで、番号が切り替わり、音色が変化していきます。
一方Bボタンはブレス感度ボタンとなっていり、3段階の切り替えが可能。さらにFボタンは運指を切り替えるためのものでジャーマン式かバロック式かを選べるようになっています。マニュアルとして、各方式の運指表も付属していますよ。また、その指の置き方ですが、リコーダーのように穴があいているわけではなく、微妙なくぼみがあり、そこがタッチセンサーの音孔となっているんです。下の2つのキーや裏側の親指の位置は2つずつのタッチセンサーのスイッチが用意されています。
さらにTボタンはトランスポーズ。これを使うことで-12~0~+12の範囲で音程を切り替えていくことが可能となっています。さらにボリューム用の-/+ボタンがあり0~10段階での調整が可能です。この後で紹介する外部MIDI音源を使う場合、ボリュームを0にしておけば本体から音を出さないことが可能になるわけですね。
このElefueの内蔵音色=トランペットに少しエフェクトをかける形で、先ほどのBANANAsuさんが、T-SQUAREのTRUTHを演奏しているので、こちらのビデオもご覧ください。
さすがに、これだけの演奏ですから、誰でも簡単に……というわけにはいかないのでしょうが、練習すればこんなこともできると思うと、結構ワクワクしますよね。
ちなみElefueにはシリコン製ウォッシャブルマウスピースが付属していて、吹く際にはこれをセットします。そのまま水洗いも可能なので、衛生的に使えます。また充電は本体右サイドのmicroUSBで行います。フル充電で3時間ほど使えるようです。
本体右サイドにあるヘッドホン端子と充電用のmicroUSB端子
さて、ここからMIDI関連の機能についてみていきましょう。このmicroUSBをPCに接続すればMIDIの入出力ができるのかな……と思ったら、さにあらず。あくまでも充電用であり、MIDIを使うにはBluetoothが必須のようです。
使い方は簡単。電源下のBluetoothボタンを押すと青く点滅するので、iPhone/iPadであればGarageBandや、KORG GadgetやKORG ModuleなどのKORGシンセアプリ、また以前記事でも紹介しているbs-16iやDX7互換のKQ Dixieなどを起動してBluetooth-MIDI接続をすれば、すぐにElefueから演奏することが可能となります。
試しにMidi Toole Boxというアプリを使って、どんな信号が届いているのかをチェックしてみました。すると、MIDIチャンネルは1に固定で、吹くとまずNote Onで音程情報が送られるとともに、吹く強さにしがたってコントロールチェンジ(#CC)のエクスプレッション情報が流れていくんですね。そして、吹くのを止めるとNote Off信号が送られるという形になっているようです。
Elefueから送られてくるMIDI信号をモニターしてみると…
ちなみに先ほどのVボタンで音色変更をした場合、プログラムチェンジが送られるのかな?と思って確認してみましたが、そうではなく、Vボタンを押すと#CC 113、放すと#CC 112が流れ、左右ボタンもそれぞれ別のCC信号が流れるという構成のようでした。
Macでの使い方も簡単で、まずAudio MIDI設定のアプリケーションを起動してMIDIスタジオの画面を開きます。ここの右上にあるBluetoothのアイコンをクリックするとBluetoothのペアリングの画面が現れ、ここにElefueが表示されるので、これを選べば接続完了です。
あとはDAW側でElefueがMIDIの入出力として見えるので、これを使えばいいわけです。なお、MIDIの入出力として見えても、実際にはElefueからの出力のみ有効で、ElefueへのMIDI信号を送ることはできないので、そこは注意してください。
そしてもう一つ、Windowsの場合はどうなのか?以前「WinRT MIDI/UWP MIDIって何だ? WindowsにおけるBluetooth MIDIの活用法」という記事で紹介した通り、Cubase 12やCakewalkなどはBluetooth MIDIを使うことができるし、その他のDAWでもMIDIBerryとLoopMIDIを組み合わせることで利用可能になるのですが……。残念ながらElefueはWindowsのBluetoothとの相性が悪いらしく、うまく接続することができませんでした。もしかして、自分の環境だけがダメなのかな…と思い調べてみたところ、MIDIBerryの開発者であるlinclip(@linclip)さんもブログで動作しないということを確認されていたので、動かないようですね。もしかしたら、今後Windowsのアップデートで動作するようになるのかもしれませんが、最新版のWindows 11 22H2でダメだったので、すぐの改善は期待できなそうです。
だとしたら、Windowsでは使えないのかというと、そうではありません。以前「現時点、最強のBluetooth MIDIかも!? 各種BLE-MIDI機器と自動でペアリングしてくれるWIDI Masterがスゴイ!」という記事で紹介したCMEのWIDI Masterを使えば、何のセッティングも不要で、ElefueのBluetoothの電源をオンにしただけで即接続でき、使うことができました。
私は今持ってないので、試してはいませんが、同じCMEのUSBドングルタイプのWIDI Bud Proを使っても接続できると思います。もちろん、WIDI MasterやWIDI Bud ProをMacで使うこともでき、これらを使えば、AUDIO MIDI設定でのペアリングなども不要なので、より簡単に使えますよ。
※2023.1.3追記
記事掲載後、やはり気になってCME ProのWIDI Bud Proを購入し、試してみました。結論からいうと、バッチリ動作というか、これ以上最高な組み合わせはないのでは…と思うほどの相性だと感じました。WindowsでもMacでも、このWIDI Bud ProをUSB端子にUSBメモリのような感じで挿すだけでOK。あとは何の設定もしなくても、ElefueのBluetoothボタンをオンにすれば自動的にBluetooth-MIDI接続され、DAWなどで使うことができます。ぜひ、改めてWIDI Bud Proについても取り上げてみようと思いますが、とにかく便利に使えますね。
以上、Tahorngの電子リコーダー、Elefueについて紹介してみましたが、いかがだったでしょうか?この機能、性能、手軽さで、この価格ですから、よっぽど笛が苦手か嫌いな人以外は、持っておかない手はないですよね。
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