プロミュージシャン、エンジニア、ハイエンドユーザー御用達のオーディオメーカーApogeeは、プロの現場で日常的に使用されるSymphony I/O MKIIシリーズをはじめ、ホームスタジオのフラグシップとも呼べるSymphony Desktop。これらに引けを取らないクオリティを持つ、ワンランク上のオーディオインターフェイスDuet 3など、音質を求める音楽家に向けた機器をリリースしています。
以前、Apogeeの機材は、一般DTMユーザーには高嶺の花……という印象でしたが、Duetシリーズが登場してきたことにより、ホームユースでもレコーディングスタジオと同等のクオリティで録音が可能になり、一般にもApogee製品は普及していきました。またUSBマイクのMiC+やHypeMiC、ギター用オーディオインターフェイスJam+の登場により自宅で簡単にDTMや歌配信を楽しめるようにもなりました。そこで今回は、あらためてApogeeのラインナップを確認しつつ、どんなユーザーにApogee製品はおすすめなのか、また利用用途ごとに最適なシリーズを紹介していこうと思います。
Apogeeは、アメリカ・カリフォルニア州のサンタモニカに本社を構える1985年創業の老舗メーカー。以前「音楽業界と切っても切れない関係のApogeeの歴史を紐解く。プロ御用達のメーカーが誕生した背景」という記事で紹介したこともありますが、歴史は「944 Filter」というかなり特殊なローパスフィルターからスタートし、A/DコンバータやD/Aコンバータで世界のトップに躍り出た会社。ソフトウェアではUV22/UV22HRというディザリングツールも出しており、CubaseやLogicには長年標準で実装されているので、これを使った人も多いと思います。
デジタルオーディオの基礎、プロのデジタル音楽制作の礎を築き上げた会社であり、DTMの技術の多くもApogeeの技術をもとに発展してきたともいえます。Apogeeは現在もプロからアマチュアまで幅広い音楽制作ユーザーに、「とにかく高品質な音を届ける」ことをモットーに製品を提供し続けており、実際Apogee製品を使っている方であれば、その音質の高さは実感していると思います。
さて、そんなApogeeが現在展開しているハードウェアのライナップは、以下の通り。
製品名 | 価格(税込) | |
エントリー、配信向け | MiC+ | 37,400円 |
Hype MiC | 46,200円 | |
Jam+ | 24,200円 | |
ClipMic Digital 2 | 26,400円 | |
中級者向け | Duet 3 | 85,800円 |
中上級者向け | Symphony Desktop | 198,000円 |
プロ向け | Symphony I/O MKII シリーズ | 330,000円~ |
リスナー向け | GROOVE USB DAC and headphone Amp | 33,000円 |
DTMエントリー、配信向け
これからDTMをはじめようと思っている方や配信をしたいと思っている方向けの製品としては、MiC+、Hype MiC、Jam+があります。MiC+とHype MiCは、オーディオインターフェイスとマイクが一体になった製品であり、これ一台で歌やアコギのレコーディング、配信を行うことが可能。
価格は、MiC Plusが37,400円(税込)、Hype MiCが46,200円(税込)。歌のレコーディングをする場合、オーディオインターフェイスやコンデンサーマイク、マイクスタンド、マイクケーブル、ポップガード……などを揃えるのがオーソドックスな考え方。ただこの場合だと、それぞれの機材の良し悪しを判断しなければいけないし、いざ買ってもそのセッティングに戸惑うことがあります。その点、オーディオインターフェイスとコンデンサーマイクが一体になっているMiC+やHype MiCといったUSBマイクは、これ1台でことは済むし、セッティングが圧倒的に楽。もちろん選び方にもよりますが、それぞれ機材をそろえる場合でも同じぐらいの金額は掛かったりするので、費用的にも高すぎるということはありません。
ただ、こういったUSBマイクは、ヘッドホンを繋いで利用することがメインとなってくるので、スピーカーにも音を出力するといったことはできない点については注意が必要。がっつり自宅で使いたいのか、外でも家でもサッと準備を済ましてレコーディングを始めたいのか、などのニーズによって最適な機材は変わってきます。たとえば、もし歌のレコーディングも配信も行いたいと思っているのであれば、MiC+やHype MiCは間違いないでしょう。なお、この2機種の違いは以下の通りになっています。
MiC+ | HypeMiC | |
発売 | 2017年11月 | 2019年1月 |
音質 | 優れたサウンド・クオリティとダイナミックレンジを改善した新しいマイクカプセル | 優れたサウンド・クオリティとダイナミックレンジを改善した新しいマイクカプセル |
解像度 & サンプルレート | 24 bit 最大96kHz |
24 bit 最大96kHz |
ヘッドフォン出力 | Blend機能によりマイク入力・ソフトウェア再生バランスを調整可能 | Blend機能によりマイク入力・ソフトウェア再生バランスを調整可能 |
入力ゲイン調整 | 高精度デジタル・エンコーダーノブ | 高精度デジタル・エンコーダーノブ |
アナログ・コンプレッション | なし | あり 3つのコンプレッション設定から選択 |
同梱品 | MiC+ Lightning iOS ケーブル USBケーブル (Type C) USBケーブル (Type A) テーブルトップ三脚スタンド マイクスタンド・アダプター クイックスタート・ガイド |
Hype MiC Lightning iOS ケーブル USBケーブル (Type C) USBケーブル (Type A) 専用ケース テーブルトップ三脚スタンド ポップ・フィルター マイクスタンド・アダプター クイックスタート・ガイド |
WINDOWS 10 対応 | あり | あり |
iOSデバイス対応 | iPhone, iPad, iPod touch対応 Apogee iOS Lightningケーブル同梱 | iPhone, iPad, iPod touch対応 Apogee iOS Lightningケーブル同梱 |
価格 | 税別 34,000円 | 税別 42,000 円 |
大きな違いは、アナログ・コンプレッション機能の有無です。Hype MiCには、フロントパネルのノブからコントロールできるコンプが付いているので、手軽に聴きやすい音を作りたいのであれば、こちらを選択するといいと思います。両機種とも24bit/96kHzのレコーディングが可能で、Blend機能というものにより、遅れのないモニタリングができるので、性能としては申し分なしですね。
ちなみにJam+は、ギター用オーディオインターフェイスとなっているので、ギターやベース、モノラル入力ではありますがシンセのレコーディングを行いたいのであれば、選択の候補にあがります。それこそ、弾いてみたをアップしてみたいと思っているのであれば、ApogeeウェブサイトにJAM +を登録することで、ギターアンプシュミレーターのBIAS FX Jamソフトウェアも無料で入手できるので、検討する価値がありますね。
またClipMic Digital2は、iPhone、Mac、Windowsに接続して使うピンマイクで、Apogeeのアナログ/デジタル変換と低ノイズのマイクプリアンプ技術の組み合わせにより、高音質に音声を収録することが可能。Lightning、USB-C、USB-Aケーブルが付属しており、デバイスに直接接続することで、配信なども簡単に行うことができます。さらに付属しているApogee MetaRecorderというアプリを使えば、ビデオカメラを並べた収録現場での音声録音機器としても使用可能。最大4台のiOSデバイスで音声のリンク録音、タグ付け、整理が可能で、24bit/96kHzの高音質録音に加え、マイク入力レベルやDSP処理をソフトウェアでコントロールできます。つまり単なるマイクではなく動画制作の効率化、声の収録が圧倒的に改善するツールとなっています。
iPhone、Mac、Windowsに接続して使うピンマイクClipMic Digital2
中級者向け
中級者向けとしては、Duet 3があります。Duet 3は、以前「手軽に持ち歩ける小型で高品位・高機能なオーディオインターフェイス、Apogee Duet 3を試してみた」という記事でも紹介したことのある、大人気のオーディオインターフェイス。価格は約8万円となっており、エントリー機材からはじめて、次のステップとしてより音質を求めたい方向けの製品となっています。USB Type-C接続で、Mac、Windowsそれぞれに対応、24bit/192kHz、2IN/4OUTのスペック。内部にDSPを搭載しており、PCのCPUパワーを使わず、Duet 3の本体内でエフェクト処理できてしまうのも大きなポイント。Apogeeの数十年にわたる技術革新と専門知識に基づき、AD/DAコンバーター、デジタルクロッキング、アナログ回路、パワーマネジメントなどを巧みに調和させた回路デザインにより、原音に忠実な音質を実現しています。さらにゼロオームヘッドホンアウト出力も搭載しており、これによりヘッドフォンのインピーダンスに関わらず、安定したサウンドを聴くことも可能です。内蔵DSPを使ったエフェクトでは、世界のトップミキシングエンジニアであるボブ・クリアマウンテン氏がチューニングを行っているECS Channel Stripも利用可能と、音質のクオリティ、デザイン性、モバイル性の優れた機種となっています。
Duet 3ユーザーにAbleton Live Liteライセンス提供開始
Duet 3の製品登録をすることでAbleton Live Liteのライセンスが手に入るプロモーションが6月20日より開始されています。これは新規購入者はもちろん、既存のDuet 3を含め、Apogeeの正規取り扱いディーラーでDuetを購入したユーザーを対象に期間限定で実施されているとのこと。詳細は以下のサイトをご覧ください。
https://www.minet.jp/contents/info/apogee-duet-3-live-lite-202206/
中上級者、プロ向け
続いて紹介するのは、Duet 3よりもさらに上のランクの機材を求めるユーザー向けの製品Symphony Desktop。これは、後述するSymphony I/O MKIIシリーズのデスクトップ版となっており、音質は最高クラス。タッチパネルでの操作が可能で、DSP内蔵なので、PCに負荷を掛けることなくエフェクトを使用することもできます。操作性は抜群、音質は約30万円するSymphony I/O MKIIシリーズに匹敵する、コストパフォーマンスの高い製品となっています。また、オリジナルのマイクプリに加え、NEVE 1066、AMPEX 601のマイクプリをアナログ回路とDSP処理により再現。David Bowie、Bruce Sringsteen、TOTO、Bryana Adams、The Rolling stones、Bon Jovi、INXS……とさまざまなヒット作を手掛けてきたエンジニアBob ClearmoutainがチューニングしたSymphony ECS Channel Strip、Clearmountain’s Spaces(native動作のみ)も収録されています。
プロ向け
そして最後に紹介するのは、ApogeeのフラグシップモデルSymphony I/O MKIIシリーズ。これは完全プロ向けの製品であり、レコーディングスタジオを作る際に検討するレベルの機材となっています。さまざまなカスタマイズを行うことができ、それによって価格が変わるのですが、一番安いモデルで約30万円。Apogeeのが誇る最高のAD/DAを装備。過去30年にわたり引き上げられたハードルを乗り越えてきたApogee製品群の頂点、音楽クリエイター憧れ機材ですね。また最近行われたApogee Symphony I/O Mk II Thunderboltソフトウェアアップデートで最大32のスピーカー出力をコントロール可能になりました。イマーシブ・オーディオ対応、ワークフローの最適化、容易な接続設定 & 16種のモニター・ワークフローを保存、呼び出し可能になるなど、日々進化を続けています。
番外編:リスナー向け
なお、番外編として、GROOVE USB DAC and headphone AmpというMacとWindows対応のヘッドホンアンプについても触れておきます。これは、入力を一切持たないUSB DACで、自宅のヘッドホンの再生環境だけでも最高峰にしたい、出先でミキシングをする、音源だけで音楽制作をしているといった方向けの製品。どのオーディオインターフェイスを使っているかにもよりますが、コスト面的にヘッドホンアウトはそこまで性能の高いものが搭載されていない場合もあります。そんなときに使用したいのが、このGROOVEであり、ヘッドホン中心の音楽制作であれば、ぜひとも導入したい機材。スピーカーを鳴らせない環境に住んでいて、ヘッドホンだけでミックスからマスタリングまで行っている方も少なくないと思うので、低価格で本格的なスタジオ音質を求めるのであれば、持っていて損はないと思いますよ。
【関連情報】
Mic+製品情報
Hype MiC製品情報
Jam+製品情報
ClipMic Digital2製品情報
Duet 3製品情報
Symphony Desktop製品情報
Symphony I/O MKII シリーズ製品情報
GROOVE USB DAC and headphone Amp製品情報
【価格チェック&購入】
◎Media Integration ⇒ Mic+ , Hype MiC , Jam+
◎Media Integration ⇒ ClipMic Digital 2 , Duet 3 , Symphony Desktop
◎Media Integration ⇒ GROOVE USB DAC and headphone Amp