インド・ムンバイにあるプラグインメーカー、Pitch Innovationsから、これまでにない非常にユニークなソフト、Fluid Chordsがリリースされました。同社は「究極のコード・ベンディング・システム」と呼んでいるのですが、たとえばCからD7、D7からAmへ……といったようにコード間をモーフィングするかのようにピッチベンドすることを実現するプラグインなんです。
コード間のベンディングって、普通にできそうでいて、簡単には実現できません。なぜなら普通にピッチベンドするとコードを構成するすべての音が同じように上がったり下がったりするから、CからDへは移行できてもD7やAmには移行できないからです。それを実現するのが、このFluid Chordsであり、MIDIキーボードで指1本とピッチベンドを操作すれば誰でも簡単に弾けてしまうのも面白いところ。さらに単音からコード全体へのベンディングも実現するなど、未だかつてないハーモニーを演出することが可能で、作曲・アレンジにおいて新しい可能性を提供するユニークなプラグインなのです。価格は為替レートによって日々変化していますが10,500円前後。ただ5月15日までは発売記念イントロプライスとして35%オフとなっているので、6,800円前後で購入できるようになっています。実際どんなソフトなのか紹介してみましょう。
今回紹介するFluid Chordsは、以前「インドメーカーが開発。手持ちのMIDIキーボードをMPE対応にする画期的プラグイン、Fluid Pitchが国内発売開始」という記事でも紹介したことのあるPitch Innovationsが開発したプラグインで、コード・ベンディングを実現するもの。
ただコード・ベンディングといっても、いったいどんなものなのかピンと来ない…という方も多いと思うので、まずは以下のビデオをちょっとご覧になってみてください。
どうですか?最初のピアノロールの動画を見れば、雰囲気が理解できたのではなないでしょうか? まさに見てのとおりでコードからコードへモーフィングというかベンディングしているだけであり、何か特別スゴイことをしているわけではないようにも思います。でもMIDIで打ち込みをしたことがある方なら分かるとおり、従来のMIDIシーケンサ、DAWでこれを実現しようとすると、かなり難しいですよね。
DAWのMIDI機能で実現するとしたら、和音で弾くのではなく、単音で鳴らしてピッチベンドでつないでいき、複数トラックを使って和音を構成するしかありません。そうすることで実現は可能ですが、とても複雑で分かりにくい作業になるし、ベンディングする際、各トラック間でもうまくタイミングを合わせる必要があるから、結構難しい作業になってしまいます。
それに対し、Fluid Chordsは1つのトラック上で実現し、しかもピッチベンドを使うことで簡単に操作できるようになっているのです。以下のビデオを見ると、よりその操作体系が分かると思います。
ここではC M12とG#maj、Cmin7#5/A#という複雑なコード間をピッチベンドを動かすだけでベンディングしているんです。とっても不思議だと思いませんか?
さらにFluid Chordsではこうしたコード間ベンディングに留まらず、以下のようにピッチが大きく異なるピッチFXともいうべきベンディングも可能です。
さらに以下のように単音から和音に、和音から単音にといったベンディングも可能になっています。
どんなコード(単音でもOK)からどんなコードにするかはLEARNボタンを使ってMIDIキーボードを弾けば覚えてくれるので、自由自在に設定することが可能ですし、プリセットでも数多くのものが用意されているので、これを使うのもOKです。
ところで、これをDAW上でどう使うのでしょうか?そもそも、このFluid Chordsはインストゥルメントなのか、エフェクトなのか、それともMIDIプラグインなのか……。性格上はMIDIプラグインといってもいいのでしょうが、DAWから見ると、実はインストゥルメントとなっています。そのため、まずはFluid Chordsをインストゥルメントとして組み込む形でトラックを作るわけです。
実際、Fluid Chords内にはInternal Synthという音源が入っており、これで鳴らすことが可能。といってもこのInternal Synthはただのサイン波音源なので、大した演奏はできません。やはりよりしっかりしたシンセを鳴らしたいところですが、どうやって連携させればいいのでしょうか?
先ほどのトラックを単音ごとに分けてピッチベンドさせる……という話で、すでにお気づきの方もいらっしゃると思いますが、MPE=MIDI POLYPHONIC EXPRESSIONを利用することで、これが実現できるわけで、MPE対応の音源に接続する必要があります。ただ、そうした機能をDAWに求めてもDAW側が対応していないためFluid Chordsから直接MPE対応音源を指定して接続することが可能になっているのです。主なMPE対応音源としては、以下のものがあります。
Roli Equator
Surge XT
Arturia Pigments
SQ80V
UVI Falcon
Cherry Audio (Dreamsynth, DCO – 106 etc)
Spectrasonics Omnisphere (手動での設定が必要)
Matt Tytel Vital
Fxpansion Strobe2
Cypher2
Madrona Aalto
Audio Damage Quanta
Fluid Chords内でPlugin Scanerという機能があり、これを使うと、インストールされているMPE対応音源を見つけ出してリスト化してくれます。もし、何も持っていない場合、自動で、Surge XTというソフトのインストールを誘導してくれるようにもなっています。そのSurge XTというソフトシンセ、私も今回初めて存在を知ったのですが、オープンソースのソフトシンセ、WindowsでもMacでも使え、MPEに対応しているんですね。とりあえず、持っておいて損のないソフトなので、この機会にインストールしておいてはいかがですか?
一度スキャンすれば、あとは簡単にMPE音源を指定でき、プリセット音色もここから直接選ぶことも可能になっているので、各音源と一体化して使うことができそうです。
以上簡単ではありますが、これまでになかった非常にユニークなコード・ベンディングを実現するプラグイン、Fluid Chordsについて紹介してみました。ぜひ、存分に活用して新たなアイディアを見つけ出してみてはいかがでしょうか?
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Fluid Chords製品情報
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