すでにニュース記事などでご存じの方も多いと思いますが、3月25日にRolandからFANTOM-0(ファントム・ゼロ)シリーズがリリースされました。新たに登場したのはFANTOM-06(162,800円)、FANTOM-07(196,900円)、FANTOM-08(市場想定税込価格218,900円)、の3モデル。もともとRolandには、プロから評価の高いフラグシップモデルFANTOMシリーズが存在していますが、FANTOM-0はFANTOMのサウンドやさまざまな機能を搭載しつつ、より手の届きやすい価格帯で製品化したもの。これまで、FANTOMシリーズがほしかったけど高くて購入を悩んでいた方、ライブパフォーマンスも自宅での音楽制作も1台で行いたい方……など、多くの方が必見のシンセサイザとなっています。
FANTOM-0を外部音源のように使って楽曲を制作し、そのサウンドのままライブパフォーマンスを行ったり、搭載されているタッチパネルを使ってDAWをコントロールしたり、MIDIキーボードを繋いでFANTOM-0の音源を鳴らし実質2段重ねのように使ったり……、多彩な使い方が可能。61鍵のFANTOM 6が368,500円(税込)なのに対し、ほぼ半値になっているのにも関わらず、主要な機能はほぼすべて搭載。高品質なサウンドと軽量設計で世界的に大ヒットしたFAシリーズに代わるRolandのミドルクラスのシンセのシリーズとなるため、持ち運びにも優れています。実際にFANTOMシリーズやFAシリーズとの違い、どんな機能や音源が乗っているのかなど紹介していきましょう。
RolandのフラグシップシンセFANTOMシリーズとFANTOM-0シリーズとの主な違いは以下の表のとおりです。
Function | FANTOM 6 7 8 | FANTOM-06 07 08 | |
ウェーブ・ジェネレーター | サウンドエンジン | ZEN-Core SN-A VTW Model V-Piano Technology N/zyme |
ZEN-Core SN-A VTW Model |
リメイン | 16 Zone | 8 Zone | |
機能 | シーケンサー | パターンシーケンサー | |
PAD サンプラー | オプティマイズ | ||
KBD サンプラー |
○ |
||
EXP | |||
DAW コントロール | |||
EXT コントロール | |||
10bit コントロール | |||
USB-AUDIO | |||
USB-EXT デバイス |
FANTOMに収録されていた主要な音源は、FANTOM-0シリーズにも搭載されており、鍵盤の演奏のニュアンスでナチュラルな表現ができる「SuperNATURAL Piano」、壮大なオーケストレーションができる「SuperNATURAL Acoustic」、ロックやジャズに最適なビンテージ・コンボ・オルガンをモデリングした「Virtual ToneWheel Organ」、ZEN-Coreが搭載されています。V-Pianoは搭載されていませんが、十分な音源を搭載していますよね。
これらの音源は、FANTOMシリーズと同様に最大で16パートまでレイヤーすることが可能。ただ音色を切り替えたときに音切れの無い音色変化を行える「トーンリメイン」機能は、FANTOMの半分の8ゾーンになっています。
またCV/Gate、アナログフィルターなど非搭載ですが、なんといっても60%の軽量化されているのはかなりの魅力。FANTOMシリーズはアルミニウムの筐体だったのに対し、樹脂製筐体を採用したことによりFANTOM-06、FANTOM-07は半分以上軽くなっています。ピアノタッチ88鍵モデルのFANTOM-08でもほぼ半分の重さになっているので、ライブなどで持ち運びするユーザーは嬉しいところ。今回FANTOM-0シリーズと置き換えとなった、FAシリーズは高品質なサウンドと軽量設計で世界的に大ヒットしたわけですが、これとFANTOM-06は同等、FANTOM-07/FANTOM-08はむしろ軽量になっています。
さて、FANTOM-0シリーズのラインナップを表にまとめましたので、ご覧ください。
FANTOM-06 | FANTOM-07 | FANTOM-08 | |
実売価格(税込) | 162,800円 | 196,900円 | 218,900円 |
鍵盤数 | 61鍵 | 76鍵 | 88鍵 |
鍵盤タイプ | 新設計ベロシティ対応シンセ鍵盤 | PHA-4 | |
質量 | 6kg | 7kg | 14.8kg |
幅 | 1006mm | 1218mm | 1393mm |
奥行き | 323mm | 323mm | 354mm |
高さ | 95mm | 95mm | 138mm |
基本的な違いは鍵盤数で、61鍵のFANTOM-06、76鍵のFANTOM-07、88鍵のFANTOM-08というようなラインナップ。前述したように88鍵モデルはピアノタッチで、それ以外はシンセ鍵盤となっています。質量は表の通り、鍵盤数が多くなるほど重くなり、価格も高くなります。機能的な部分はまったく一緒なので、必要な鍵盤数で、どれにするか選択していくのがいいと思いますよ。FANTOM-06は6kgしかないですから、普段シンセを持ち運びする方にとってポイントになってきますよね。
FANTOM-0シリーズには、さまざまな機能が搭載されていますが、ここでは紹介しきれないので、特に面白いと思った機能を見ていきましょう。まずは、オーディオインターフェイス的に利用できるという点から。PCとUSBケーブルを繋げば、USB-MIDIキーボードとして認識されて利用できるのはもちろんですが、96kHzでオーディオの入出力を行うことができます。
FANTOM-0シリーズに搭載されているMIC入力、ステレオのLINE入力、ステレオのMAIN OUT、SUB OUTにL/Rとステレオの3.5mmOUT、ヘッドホンアウトを入出力端子として、普通のオーディオインターフェイスのように使えるのと同時に、FANTOM-0シリーズの音源をデジタルのままPCに取り込むことができるのです。
FANTOM-0をオーディオインターフェイスとして認識させることができ、FANTOM-0からの音をDAWに劣化なしに録音できる
つまりDAWで打ち込みをして、それをMIDIでFANTOM-0シリーズに送り、音源を鳴らして、DAWにオーディオ録音していくことができ、ここで音質劣化が起きないのがポイント。まさにソフトシンセ感覚で利用できるのです。MIDIもオーディオもUSBケーブル1本で接続可能なので、セッティングもシンプルだし、制作で使った音色をライブに持っていくこともできます。作編曲もするけど、ライブパフォーマンスを行うミュージシャンにとって便利な機材だと思います。
また、視認性の高い5.5インチディスプレイが装備されているのですが、これを使ってAbleton LiveやLogic、MainStageを操作することができます。実際Ableton Liveを起動して、FANTOM-06から操作してみましたが、セッションビューがディスプレイに表示されるので、これをタッチすることで、次々にクリップを選択してパフォーマンスを行ったり、楽曲制作を快適に行えそうでした。
Ableton LiveをFANTOM-0と接続すると連動する
各種トランスポートボタンも選択できるので、音楽制作時には、キーボードを使わずに操作したり、スマートなライブパフォーマンスが可能ですよ。ちなみにこういった機能は、FANTOMシリーズやFANTOM-0シリーズ特有の機能なので、ほかのシンセに搭載していませんよ。
そして、FANTOM-0シリーズは、MIDIキーボードを直接接続することが可能で、EXT DEVICEに鍵盤を繋げると、まるで2台のシンセを用意したようになります。
というのも、FANTOM-0シリーズに搭載されている音源を接続したMIDIキーボードで演奏可能なるからです。リード用とバッキング用など、ライブで2台のシンセを用意したりすることがあると思いますが、これが1台のシンセと1台のMIDIキーボードで行うことが可能。2台のシンセを運ぶのは大変ですが、軽量なFANTOM-0シリーズとMIDIキーボードを運べばいいとなると、かなり運搬が快適になりますよね。MIDIキーボードへは電力供給ができるので、どの機種でも基本的に使えます。頻繁に2台のシンセを運んでる方は必見の内容ですよ。またSUB OUTを使えば、それぞれの鍵盤で弾いた音を別々で出力したりDAWのオケとシンセの音を分けて出力したりすることも可能です。
以上、FANTOM-0シリーズを紹介しました。多くのFANTOM要素が盛り込まれたFANTOM-0シリーズなので、コストパフォーマンス的には最強レベル。持ち運びに関しては、圧倒的にFANTOM-0シリーズに軍配が上がります。CV/Gate出力といったものは搭載されていませんが、マニアックな使い方をしないのであれば、最善な選択肢といえますね。FANTOM-06/07は新設計のシンセ鍵盤となっており、価格帯以上のタッチを実現しています。ぜひ1度試してみてはいかがでしょうか?
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FANTOM-0シリーズ製品情報
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