12月23日、米Nektar Technology社(以下Nektar)から主要DAWを効率よくコントロールできるコンパクトなUSB-MIDIキーボードコーントローラーImpact GX Mini(税込メーカー希望小売価格 10,450円)とImpact LX Mini(同17,600円)の2機種が発売されました。いずれもバックパックにも収まる小さな25鍵キーボードでジョイスティックやトランスポートボタンなどを備え、各種DAWと有機的に連携します。
従来のNektar製品と同様、Nekatr DAWインテグレーションというツールをダウンロードしてインストールすればAbleton Live、Bitwig、Cakewalk、Cubase、Digital Performer、FL Studio、GarageBand、Logic Pro X、Nuendo、Reason、Reaper、Studio Oneのそれぞれに一発で対応してくれるというのが重要なポイント。「コントローラーを買ったけど、うまく連携できない……」という心配がないのがうれしいところ。上位版のImpact LX Miniには8つのノブや8つのパッドも備えているので、ドラム入力でもシンセエディットでも気持ちよく、効率よくできるのも嬉しいところ。実際にどんな機材なのか試してみたので、紹介してみましょう。
「各種DAWに完全対応。コントローラ機能が秀逸のNektar Impact LX+」や「プロの作曲家が選んだMIDIキーボード、Nektar Panorama Tの実用性」といった記事など、これまでDTMステーションでも何度も取り上げてきたNektarのUSB-MIDIキーボード。高機能、高性能なのに手頃価格であることが日本国内でもここ数年、着実にユーザーが増えてきていますが、今回発売されたのはNektarとしてはやや珍しいミニ鍵盤のキーボードです。
これまでもSE25という、極めてシンプルなミニ鍵盤のUSB-MIDIキーボードはあったのですが、コントローラー機能を持つ人気キーボード、Impactシリーズとしては、今回のImpact GX MiniとImpact LX Miniが初。2つを見比べてみるとわかる通り、
という関係で、LX MiniはGX Miniのすべての機能を包含しつつ、ノブやパッドなどを数多く搭載したモデルとなっています。
では実際、どんな機能があるのか、どんなことができるのか、チェックしていきたいと思います。
まずGXもLXもmicro USB接続となっており、USBからの電源で動作する仕様になっているので、ACアダプタなど不要です。またとりあえずDAWでキーボードを弾くだけであれば、ドライバなども不要で、WindowsでもMacでも、USB接続さえすれば、即使うことができるようになっています。
そのmicro USB端子の隣には3.5mmのミニジャックがありますが、これは何なのか?Foot Switchと表記があるので想像できる通りですが、GXにもLXにも、3.5mmー標準ジャックの変換ケーブルが付属しており、これを使うことで、一般的なフットスイッチ/サステインべダルに接続可能なんですね。コンパクトなミニ鍵盤のキーボードは各社から色々出ていますが、ペダル接続できるものは少ないので、それだけでも貴重な存在といえそうです。
接続しただけで、すぐに使うことはできますが、この機能を存分に使っていくためには、ツールのインストールが必要。あらかじめ、Nektarサイトでユーザー登録すると、Cubase用、Sutido One用、FL Studio用、Ableton Live用……などのツールをダウンロードできるようになっており、それらをインストールすれば基本的なセッティング完了。PDFファイルも一緒にダウンロードできるようになっており、そこに追加で設定すべき事柄が記載されているケースもあるので、確認してみてください。ちなみにFL StudioやPro Tools、Bitwig Studioは特にツールは用意されておらず、PDFファイルがあるのみ。ここに記載されている通りに設定すれば準備完了です。
たとえばCubaseの場合はツールをインストールすると、スタジオ設定のリモートデバイスに、Nektar Impact LX Miniといった表示が現れます。ここでスマートスイッチディレイという項目をオフにするとともに、各コントロールボタンやノブを動かした際に誤動作をしないように、MIDIポートの設定でMIDI IN2のほうのALL MIDI INのチェックを外せばすべてセッティング完了です。
またStudio Oneの場合も同様にツールをダウンロードしてインストールすればセッティング完了。試しにオプションの外部デバイスを見てみると、コントローラとキーボードの2つのデバイスがくみこまれており、即使うことができるんですね。この辺の設定がわからなくて挫折してしまう人も少なくないようですが、これならとっても安心です。
セッティングが終わったらDAWを起動。この状態でインストゥルメントを立ち上げて鍵盤を弾けば演奏できるのは当然ですが、プレイボタンを押せば再生がスタートし、RECボタンを押せば録音状態になり、サイクルボタンを押せば繰り返しモードになるなど、すぐにトランスポート操作ができるのはうれしいですね。ClickボタンでクリックのON/OFFができるのも便利です。
またSHIFTボタンを押して青く点灯させるとトランスポートボタンの役割が変わります。詳細は各ドキュメントを参照いただきたいのですが、CubaseやStudio Oneの場合S1でミキサーウィンドウのオープン/クローズ、S2でインストゥルメントウィンドウのオープン/クローズ、◀TrackとTrack▶でトラックを選択するなど、慣れるとかなり重宝しそうです。
またジョイスティックが搭載されていますが、これでピッチベンドやモジュレーションのコントロールが可能。またOct▼、Oct▲でオクターブ切り替えができるところまではすぐにわかるのですが、何これ?と思うのが「Part2」と書かれた▼、▲のボタン。実は、これがImpact GX Mini、LX Miniの非常に大きな特徴ともいえる機能なんです。
演奏中にこのPart 2ボタンを押すと数オクターブ分を一気に上下させることができ、ボタンから手を放すとすぐに元に戻すことができるんです。デフォルトでは1オクターブ上下ですが、設定によって2オクターブとか3オクターブ上下させることが可能。さらにトランスポーズにすることができたり、別のMIDIチャンネルを変えることができたり、レイヤーを変えることができるなど、設定によってさまざまな用途に使うことができるのです。
ここまではGXとLX共通の機能ですが、LXになると、さらにいろいろなことができます。見るとわかる通り、大きな8つのパッドがあるので、これを使ってコード入力したり、ドラムの入力などが可能なります。AKAIのMPCをはじめとする4×4のパッドの下半分がある形。予め4つのマップの割り当てが用意されており、クロマティックに設定したり、メジャースケールに設定できるほか、GM Drum Kitというマップもあるので、このドラムマップにすれば、一般的なドラム音源の入力を効率よく行うことができます。
そして本体一番左上にはInstrumentというボタンがありますが、これを押してInstrumentモードにした上で、8つあるノブを回すとソフトシンセなどのパラメータを動かすことが可能となっています。Pageボタンでページを切り替えると8つのノブの割り当てが別のものに変わるようにもなっているんですね。
もうひとつ、Impact LX Miniにあって、Impact GX Miniにない大きな機能が、アルペジエイターです。Arp/Repeatというところに2つのボタンがありますが、Functionを押してアルペジエイターモードにした上で、On/Offを押してアルペジオをオンに、そして右上にあるKeys Onをオンにすると、鍵盤でアルペジエイターが効く形となり、Pads Onをオンにするとパッドでアルペジエイターが効く形となります。
この際、どのようにアルペジオを鳴らすかはノブを使っていろいろと調整することが可能です。Arp Modeを動かすとさまざまなパターンに変更できるし、Arp Octaveを動かせばどのくらいのオクターブ範囲でアルペジオを鳴らすかを決められます。またTempoでテンポ設定できたり、Rateで音符を設定したりSwingでスウィングの設定ができるなど、かなりのバリエーションがあります。タップテンポでテンポ設定することもできるし、もちろんDAWからのテンポ情報に合わせることも可能です(この場合はMIDI Clockを利用する)。
そのほかにもMIDIコントロールチェンジやMIDIプログラムNo、MIDIチャンネルなどのアサインができたり、パッドのベロシティーカーブを設定する機能……などなど、この値段で、ここまでできるのか、と驚くほど多彩な機能を持ったキーボードなのです。
またImpact GX Mini、Impact LX MiniのどちらにもDAWであるBitwig 8-Trackが付属しているのも大きなメリット。Bitwig 8 TrackはBitwig Studioのエントリー版という位置づけですが、これ一つで十分楽曲制作が可能な強力なDAWなので、DAWは初めてというユーザーはもちろん、ほかのDAWを使いながら、Bitwigを活用していくのと手だと思います。
さらに国内正規輸入品限定として、UVI Digital Synsations フルバージョンが付属するという、大きなオマケもついてくるのです。UVI Digital SynsationsはフランスUVIのソフト音源で、80年代後半の著名シンセ4機種を再現するもの。具体的にはYAMAHA SY77、Roland D50、KORG M1、ENSONIQ VFXをサンプリングしたサウンドが数多く搭載されています。そのサンプリングデータで9GBもあるので、いかにすごいかが想像できるのではないでしょうか?このDigital Synsationsを単体で購入すると税込み実売価格が16,500円。つまり、Impact GX Miniをはるかに超える値段だし、Impact LX Miniと比較しても1,000円程度の差ですから、Digital Synsationを買うつもりがあるなら、このNektarのキーボードを購入するのが圧倒的に得ですよね。
以上、NektarのImpact GX Mini、Impact LX Miniを見てきましたが、これらは初めてのUSB-MIDIキーボードとしてもいいですし、すでに持っている人にとってもセカンドキーボードとして持っておいて損はない機材だと思います。どちらを買うかはユーザーのみなさんの目的次第。個人的には機能満載なImpact LX Miniがお勧めですが、とにかく小さいのがいい、という方ならImpact GX Miniも非常にいいキーボードだと思います。
【関連情報】
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