12月24日のクリスマスイブに、株式会社エーアイからA.I.VOICEの新製品、紲星あかり(きずなあかり)が発売されます。ご存じのとおり、紲星あかりは、2017年にVOICEROID2で誕生し、2018年にはVOCALOID 4の音声ライブラリとしても登場した、VOCALOMAKETSプロデュースによるキャラクタ。DTMステーションでも、これまで何度も記事にしてきた紲星あかりは、「けいおん!」の平沢憂役だった声優の米澤円さんがCVを務めており、今回その新製品が久しぶりに登場することになったのです。
その発売より一足早く、完成したばかりのA.I.VOICE版の紲星あかりをちょっと試してみました。基本的な使い方はA.I.VOICEなので結月ゆかりや、琴葉 茜・葵、伊織 弓鶴などと同様。が、今回のA.I.VOICE版ではVOICEROID2にはなかった、スタイル=感情表現にも対応し、より幅広い表現力を備えたのです。また、「音声合成メーカー自らが個人向けに発売したPCソフト、A.I.VOICEを試してみた」という記事でも紹介したボイスフュージョンという機能によって、紲星あかりの声を、結月ゆかりや、琴葉 茜・葵などの声と掛け合わせた新たな声を作り出せるのも大きな特徴です。実際どんなことができるのか、どんな声なのかを試してみたので紹介してみましょう。
12月24日の発売が決まったA.I.VOICE紲星あかり
A.I.VOICEを使ったことがない方、また最近の音声合成がどうなっているかをあまりご存じない方も少なくないと思います。そこで、ちょっと試したところを動画キャプチャしてみたので、ぜひ、どんなものなのかをご覧になってみてください。
どうですか? VOICEROID2の紲星あかりをご存じの方であれば、この表現力が大きく広がったことに驚くと思うし、最近の音声合成事情をあまりご存じなかったからにとっては、こんなに簡単に、そしてここまでキレイな声で喋らせることができるのか、と驚かれるのではないでしょうか?
日本語を普通に入力すれば、すぐに喋ってくれる
改めて、この動画について簡単に解説すると、まず行ったのはA.I.VOICE 紲星あかりを起動させた上で、ブラウザからテキストを選択して、コピー、それをA.I.VOICEのエディタ上にペーストして再生ボタンを押しただけ。
たったこれだけで、貼り付けた言葉をA.I.VOICEが日本語として認識した上で、紲星あかりの声でしゃべってくれるんですよね。VOCALOIDなどとは異なり、漢字があっても、まったく問題なくしゃべってくれるのは重要なポイント。また漢字だけでなく、ちゃんと「DTM」とか「MIDI」とかの言葉もA.I.VOICEが知っているからこそ、その通りにしっかり読んでくれるんですよね。
AITalk5の日本語解析機能により、漢字の読み方はもちろんMIDIやDTMといった言葉も正しく発音してくれる
VOICEROID2でも、それなりに読んでくれていましたが、たとえば「MIDI」は「エム・アイ・ディー・アイ」と呼んでいたのが「ミディ」と読んでくれるようになった点では、賢くなったんだな…と思いました。もちろん、そこだけでなく、間のとりかたも上手になったし、イントネーションもより自然になった印象があります。この辺が以前の「A.I.VOICE 結月ゆかりは、VOICEROIDと何が同じで、何が違うのか?VOCALOMAKETSに聞いてみた」の記事でのインタビューでも明らかになった、AITalk4とAITalk5のエンジンの違い、ということなんだと思います。
スタイルとして用意された喜び、怒り、悲しみパラメーターで感情表現ができるようになっている
また先ほどのビデオでは、その後、「スタイル」として用意されている「喜び」、「怒り」、「悲しみ」というパラメーターを動かしては、再生して、その声の変化をチェックするという操作も繰り返しています。実際、聴き比べてみると、紲星あかりの可愛い感じの雰囲気はキープしつつも、それぞれの感情が入った声に変わるのは、これまでの紲星あかりをご存じの方であれば、感激するのではないでしょうか?
こうした感情表現ができるようになったのは、今回改めて、米澤円さんによる紲星あかりの通常の声を収録しなおすとともに、喜んだ声、怒った声、悲しそうな声も収録したからこそできているのですが、パラメータを調整することで、喜びながら怒ってる声とか、悲しそうに怒っている声、喜んでるのに悲しそうな声……なんかも合成できるところは不思議ですよね。
5歳年下の紲星あかり(蕾)も同梱されている
そして、ビデオ最後に収録していたのは、ちょっと幼い紲星あかり(蕾)による声です。10月に発売された結月ゆかりでも18歳を想定した通常の声のほかに5歳年下の中学生をイメージした結月ゆかり(雫)が収録されていましたが、この紲星あかりも同じく5歳年下の声が収録されているというわけなのです。もともと紲星あかりは15歳のイメージなので、10歳。これも米澤円さんによる声で収録しているのです。改めて声優さんは、スゴイな、と。
紲星あかりのCVを務めた声優の米澤円さん
さて、ここでもう一つ試してみたのが、A.I.VOICEの機能であるボイスフュージョンです。ボイスフュージョンとは2つの異なる声を掛け合わせるものであり、VOCALOID 4に搭載されていたクロスシンセシスみたいな機能です。
もう少し具体的にいうと、紲星あかりの声ではあるけれど、イントネーションや喋り方は琴葉茜の関西弁であり、茜の怒った雰囲気とか、悲しんだ雰囲気を掛け合わせて喋らせることができるのです。声そのものは、あくまでも紲星あかりであり、喋り方が琴葉茜になるので、いわば「紲星あかりが、琴葉茜の真似をしてる」といった感じになるんですね。
2つのキャラクタの声を掛け合わせるボイスフュージョン機能
実際に、紲星あかりx琴葉茜で試してみたのが以下のビデオです。
同様に、紲星あかりx伊織弓鶴で試してみたのが以下のビデオ。
そう、男の子の声を掛け合わせることもできるし、さらには、紲星あかり(蕾)の声をベースに結月ゆかりを掛け合わせる……なんて使い方も可能なのです。これを実現するには、それぞれのライブラリを購入して持っておく必要はありますが、音声合成で表現できる声の幅が大きく広がり、面白くなりそうですよね。
さて、その紲星あかりの開発について、VOCALOMAKETSのBumpyうるしさん、そして株式会社エーアイの栗田圭奈さんに少しお話を伺ったのでミニインタビューとして以下に紹介いたします。
紲星あかり・開発者ミニインタビュー
紲星あかりの開発者である株式会社エーアイの栗田圭奈さん(左)、VOCALOMAKETSのBumpyうるしさん(右)
--結月ゆかりのCeVIO AIソングが出て、A.I.VOICEが出たので、紲星あかりはどうなるのかな…と思ってましたが、A.I.VOICEから来たんですね。
うるし:ゆかりの次に、あかりのCeVIO AIのソングを作ろうか……とも考えてはいたのですが、VOCALOMAKETSの中でも、既存の製品の更新が途絶えてしまうのはマズイ、という話になり、こちらを取り組む形で進めてきました。これまでのVOICEROID2はスタイルがなかったので、ユーザーのみなさんからも、感情パラメーターが使えるスタイルが欲しい、という要望も多数いただいていたのも、A.I.VOICEをまず進めた大きな要因です。ようやくモノも完成し、あとは12月24日の発売を待つ……というところまでたどり着けてホッとしているところです。
--今回の声は、完全に新たに収録しなおしたわけですか?
うるし:ゆかりのほうもそうでしたが、あかりも米澤さんにお願いし、VOICEROIDの紲星あかりの声と同じ感じになるよう新たに収録しなおしました。今回は通常の声に加え、スタイルとして喜び、怒り、悲しみの声でも収録したわけですが、それらは通常の声からブレないようにしてもらいました。
栗田:私たちが積み上げてきたノウハウを生かしながら、収録する声を決めていきました。米澤さんからも「え、こんなんでいいんですか?」というほど、実は微妙な違いなんです。声優さんが感情を込めて感情表現すると、ある意味違うキャラクタになってしまうんです。そのため、キャラブレしないよう、抑えつつ収録していった感じですね。
--蕾の声も、米澤さんの声なんですよね?
うるし:そうです。ゆかりと同じく5歳下という想定だったので、10歳の声。米澤さんに表現してもらいましたが、すごくいい感じにできたのではないかと思います。
--結月ゆかりが10月22日のリリースで、紲星あかりが12月24日ですから、ずいぶん短期間でできたということですね?
栗田:結月ゆかりが先行していたのは確かですが、実際には、同時並行でプロジェクトを進めていたので、石黒千尋さんが収録している日に、別のスタジオで別のスタッフが米澤さんの収録をしていた……なんてこともあったんですよ。もっとも、その後の編集作業とかは同じメンバーで行うため、先に結月ゆかりを作り上げ、そこから紲星あかりへ……と進んでったので、結構あわただしい毎日でした。
うるし:実作業はエーアイさんにすべてお任せであり、イラストのほうも文倉十先生にお願いし、ゆかりのほうと時期も近かったことから、かなり無理を言ってしまいました。が、それぞれうまく進めていただいたおかげで、年内のリリースに間に合た形です。
12月24日発売予定のA.I.VOICE紲星あかりのパッケージ。12月10日より予約受付開始
--今回、紲星あかりを少し試してみて、ボイスフュージョンがすごく面白いと感じましたが、これを使うコツって何かありますか?
栗田:ボイスフュージョンは、ベースとなる声と、そこに挿す声があるわけですが、より自然にするためには声の高さをある程度揃えるといい感じになります。とくに女性x男性の組み合わせの場合はそうですね。紲星あかりをベースに、伊織弓鶴を掛け合わせるなら、あかりの高さを少し下げるといい感じになりますよ。
--ぜひ、その点も留意しながらいろいろ試してみます。ありがとうございました。
【関連情報】
A.I.VOICE紲星あかり公式サイト
「A.I.VOICE 紲星あかり」製品情報まとめ(VOCALOMAKETS
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