日本の音をキャプチャーしたストリングス音源『東京スコアリング・ストリングス』

12月8日、日本が誇る室屋光一郎ストリングスの演奏をキャプチャーしたIMPACT SOUNDWORKSによる音源東京スコアリング・ストリングスSONICWIREから発売されました。澤野弘之さんをはじめとした多数のアーティストのスタジオレコーディングおよびライブサポートなどを手がける室屋光一郎さんが率いるストリングスグループの演奏を、相澤光紀さんがサウンドシティ・スタジオのAstでレコーディング。1stヴァイオリン8名、2ndヴァイオリン6名、ヴィオラ4名、チェロ4名、コントラバス3名と、一般的な8型にコントラバスを1名プラスしたセクションを収録しているようです。

『東京スコアリング・ストリングス』のプロジェクトは、DTMステーションでも何度か登場いただいている作曲家の横山克さんが、日本チームのリーダーを務めており、レコーディングを含め、日本におけるプロジェクト全体の進行、IMPACT SOUNDWORKSとのサウンド面でのやり取りなど幅広く対応をされたということです。Native InstrumentsのKONTAKT用の音源として完成した『東京スコアリング・ストリングス』は、ポップスはもちろんのこと、ゲーム作品、これまでChamber系の音源を用いてきた全ての場面に最適とのこと。この日本のスタジオで、日本人により演奏、録音された音源が、どんなものなのか紹介していきましょう。

日本で生まれたストリングス音源『東京スコアリング・ストリングス』


『東京スコアリング・ストリングス』は、Native InstrumentsのKONTAKTおよび無料のKONTAKT Player上で動くライブラリとして制作されており、96kHzからのダウンミックスの24bit/48kHzのサンプルとなっています。容量は90GBと膨大なサンプル数が収録されていて、音がいいのはもちろんのこと、1画面でダイナミクス、ダイナミックレンジ、ビブラート、レガートスピードなどを簡単にコントロール可能。使い勝手にも優れていて、Close、Room、Decca、Surroundの4つのマイクポジションを選択できたり、アーティキュレーションごとに最大5つのダイナミックレイヤーを装備していたりしています。

MIDIの演奏内容を理解して、レガートのスピードやアーティキュレーションの選択までを行ってくれる、インテリジェントな“LOOKAHEAD MODE”も搭載し、後発のストリングス音源ならではの進化を遂げているよう。

さて、そんな『東京スコアリング・ストリングス』のストーリー動画があるので、ぜひご覧ください。

動画では、室屋光一郎さん、横山克さん、相澤光紀さんがコメントをしています。

この『東京スコアリング・ストリングス』を制作するきっかけは、実は2020年1月のNAMMでクリプトン・フューチャー・メディア(SONICWIRE)がIMPACT SOUNDWORKSから「室屋光一郎ストリングスのサウンドをライブラリー化したい」と要望されて、そこから横山克さんに繋がり、連携することで実現したとのこと。その後すぐに話が進んだわけではなく、2020年は色々な下地の調整であったり、室屋光一郎さんとの調整が続いたそうです。その後、IMPACT SOUNDWORKSや横山さんの情熱などに応える形で室屋さんがプロジェクトへの参加を承諾されプロジェクトが正式にスタート。いわゆる事業計画のようなものを立てながら、2021年4月、サウンドシティでレコーディングが行われたというわけです。

そこから約8か月でリリースにこぎつけているというのもポイントで、普段KONTAKTライブラリの開発情報を目にする機会がないので、新鮮な情報ですね。動画でも横山さんが言っていた通り、最終的には「東京のストリングスのライブラリがなかったから今回これを制作するにいたった」わけですが、もともとIMPACT SOUNDWORKSのCo-FounderであるAndrewが、日本のアニメイベントに自ら参加しにくるほどの親日家で、今回のプロジェクトはそこにバックボーンがあるとのこと。

最初米国企業が日本の音源を作ったって聞いて少し違和感があったんですが、Andrewさんは元から日本のサウンドトラックが大好きで毎日聴きこんでいたみたいで、横山さんがAndrewさんにサウンドの傾向を確認したところ、次から次へと具体的なサウンドトラックの名称や楽曲名などが送られてきたこともあったそう。「どうしても日本のサウンドや生演奏を自分の制作でも使いたい」という純粋な思いが実って、ライブラリーになったんですね。

すでに異例の販売数を記録している『東京スコアリング・ストリングス』、実はリリース前からベータテスターやコンポーザーさんとのコミュニケーションもかなり密にやっていたみたいで、普段室屋さんと一緒に仕事をしている著名作家さんにも使ってみてもらっていて、すでに絶賛の声を集めているそう。


作曲家の横山克さん

横山さん曰く「このライブラリーによってレコーディングの機会が減るとは思っていません。このライブラリーを室屋さんのサウンドの入り口とし、室屋光一郎ストリングスや日本のミュージシャンの演奏が一層注目され、海外のコンポーザーからのリモート・レコーディングなどの機会にもつながれば良いと思っています」とのこと。

さすがにライブラリーだけで生の演奏を完全に再現することはできないと思いますが、それでも今回の『東京スコアリング・ストリングス』はいいところまで攻めているのかもしれませんね。

実際にどんな音がするのか、サウンドクラウドから聴くことができるので、ぜひ再生してみてください。

Impact Soundworks · 『東京スコアリング・ストリングス』Demos

いかがでしょうか?音については、サウンドクラウドで聴けるわけですが、KONTAKT上で動かした様子は以下の動画から試聴可能です。

音がいいのはもちろん大切ですが、操作性も重要ですよね。動画を見て頂ければ分かるように、1画面でダイナミクス、ダイナミックレンジ、ビブラート、レガートスピードなどをコントロール可能となっていて、TACT(Total Articulation Control Technology)バージョン3を搭載し、キースイッチ、ベロシティ、MIDI CC、ペダルを使って自らのワークフローに沿ったマッピングも簡単に作成可能。コンソールFXラック&ミキサーも装備しており、NKSにも対応。非常に簡単に操作できる仕様にもなっています。

収録の様子

2021年12月15日(水)20時から、横山さん、そしてレコーディング・エンジニアの相澤さんを呼んで開発秘話に触れる、クリプトン・フューチャー・メディア/SONICWIREの生配信もあるそう。事前質問や当日の質問も募集しているみたいなので、是非チェックしてみてくださいね!

以上、日本人が日本のスタジオで演奏、録音した音源『東京スコアリング・ストリングス』でした。実際音を聴いたり、UIを見てみると『東京スコアリング・ストリングス』の制作は、かなり力が入っていることが分かりますね。J-POPに最適な日本製のストリングス音源をぜひ試してみてはいかかがでしょうか?

なお、12月22日までは限定価格(イントロプライス)の50ドルオフ(12月9日時点の日本円価格は45,430円)となっています。

【関連情報】
『東京スコアリング・ストリングス』製品情報

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