先日「Universal Audioがアナログ回路のコンプ、マイクプリ搭載のオーディオインターフェイス、VOLTシリーズを発表。価格は17,050円~」という記事で紹介して大きな話題になったUniversal AudioのVOLTシリーズ。その第1弾としてVOLT 2およびVOLT 276の2機種がほかの機器に先駆けて、11月29日に発売になりました。国内代理店のフックアップによるとかなりの数を仕入れた、とのことですが、やはり初回入荷分は各ショップとも完売。
年内にはさらに入荷があるようなので、ぜひ多くの人に行き渡るように期待したいところですが、そのVOLT 2およびVOLT 276を一足早く借りて試してみました。実物を見てみると、やはりグッとくるデザインで、そのサウンドや使い勝手も期待していた以上の機材に仕上がっていました。実際、どんなオーディオインターフェイスなのか、レポートしてみましょう。
このVOLT 2およびVOLT 276は、先日YouTube Liveおよびニコニコ生放送の番組、DTMステーションPlus!で取り上げているので、「見たよ!」という方も少なくないと思います。
私もそのタイミングで、初めて実物を目にしたのですが、改めてVOLTシリーズについて簡単に紹介すると、VOLTシリーズはUniversal Audioが開発したUSB Type-C接続のUSBオーディオインターフェイスで以下の5機種が存在します。
入力ch | 出力ch | VINTAGE | 76 COMP | 税込実売価格 | |
VOLT 1 | 1 | 2 | 1 | - | 17,050円 |
VOLT 2 | 2 | 2 | 2 | - | 23,100円 |
VLOT 176 | 1 | 2 | 1 | 1 | 30,800円 |
VOLT 276 | 2 | 2 | 2 | 2 | 36,850円 |
VOLT 476 | 4 | 4 | 2 | 2 | 45,100円 |
またシリーズとしては、これら5機種に加え、VOLT 2とヘッドホン、コンデンサマイクをセットにしたVOLT 2 Studio Pack、そしてVOLT 276のセットのVOLT 276 Studio Packの2製品があり、現状トータル7つのラインナップとなっています。
今回先行発売されたのがVOLT 2とVOLT 276で、いずれも2in/2outの入出力となっています。しかし、単なるオーディオインターフェイスではなく、上記の表のとおり、双方にVINTAGEというマイクプリのスイッチ、そしてVOLT 276には76 COMPRESSORというコンプレッサが搭載されているのが大きなポイントとなっています。
これまでUniversal Audioというと、UAD-2というDSPを使ったエフェクト処理が自慢のメーカーであり、とくにApolloシリーズはプロの間でも絶大な支持を得ている機材。でも、このVOLTはDSPを搭載せずにすべてアナログ回路で処理しているわけなのです。まさに真逆な戦略ともいえるわけですが、Universal Audio自身がアナログ時代からあるプロオーディオの老舗メーカーであり、今もアナログコンプやマイクプリを発売しているのですから、当然のあってしかるべき戦略でもあったわけです。
先ほどのDTMステーションPlus!の番組内でゲスト出演してくれたナガイ’Ichi’ユウイチロウさんによると、VINTAGEというのは、UA 610プリアンプを再現した回路でできており、76 COMPRESSORはUA 1176コンプを再現した回路である、とのこと。どちらもUniversal Audioがオリジナルを作っているものですから、まさにホンモノが載っているというわけです。
使い方はいたって簡単。INPUT 1、INPUT 2それぞれにVINTAGEボタンがあるので、それをオンにすればUA 610マイクプリを通した音になるんです。パラメーターなどは一切なしなので、どちらが好きかで判断すればいいわけですね。
一方、VOLT 276に搭載されている76 COMPRESSORボタンはオフの状態から1回押すとボタンが点灯するとともに、VOCのところのLEDが光ってボーカル用モードに、もう1回押すとGTRのところが点灯してギターモード、さらにもう1回押すと、FASTという立ち上がりの速いコンプモードになり、再度押すとボタン自体が消灯し、コンプレッサが切れる形です。
つまりVOC、GTR、FASTの3種類のモードはあるけれど、それ以外はスレッショルドもレシオも何もなく、とっても簡単。この中の気に入ったコンプのモードを使えばいいというわけなのです。ちなみに、各モードともに、コンプレッションのレシオは6:1。それぞれのアタックとリリースは以下のような時間設定になっています。
アタック時間 | リリース時間 | |
VOCモード | 2msec | 300msec |
GTRモード | 1.5msec | 700msec |
FASTモード | 0.03msec | 35msec |
番組の中で、このモードを切り替えながらICHIさんによるボーカルを録っているので、ぜひ聴き比べてみてください。
さらにギターを接続し、演奏している状態でのコンプのモード切替もしているので、こちらもご覧ください。
結構ダイナミックスの雰囲気が変わるのが面白いですよね。また、ボタンとしてはこのVINTAGEボタン、76 COMPRESSORボタンのほかに、ギター入力などができるHi-ZモードにするためのINSTボタンがあり、これをオンにすると緑に点灯します。これによってギターを直接接続してレコーディングできる形になります。また48Vを押すと、ファンタム電源がオンになり、コンデンサマイクが使える形となります。
そしてもう一つ用意されているボタンがDIRECTボタンです。これはダイレクトモニタリングをするためのボタンであり、オフの場合はPCからの出力のみがメイン出力およびヘッドホン出力へと流れます。しかし1回押してオレンジに点灯させると、ステレオモニターモードとなり、INPUT 1に入ってきた音が左から、INPUT 2に入ってきた音が右からモニターできる形となります。
さらにもう1回押すと青く点灯し、今度はモノラルモニターモードとなり、INPUT 1からの音もINPUT 2からの音もセンター定位でモニターできる形です。ギターなどをモニターする場合は、青にすればいいわけです。ちなみに、このステレオモニターモードでも、モノラルモニターモードでも、ダイレクトモニタリングにすると、PCからの出力音量が少し小さくなり、入力信号を確認しやすくなっているのも一つのポイントです。
リアを見ると、VOLT 2、VOLT 276ともにMIDI入出力もあり、機能面での違いは76 COMPRESSORのあるなしのみのようです。とはいえ、やはり見た目、デザインにおいては、VOLT 276のほうがグッとくるな…というのが正直なところ。サイドが木枠となっているのが、アナログシンセのようでカッコイイんですよね。ちなみに、この木枠、片側4本のビスでねじ止めされていますが、普通の+や-のドライバで回するネジではなく、六角形のタイプ。特殊なドライバが必要ではありますが、DIY好きな人であれば、自分の好きな木枠をここにはめてみる、というのも楽しそうです。
一方、VOLT 276のトップパネル右上に、入力、出力それぞれのレベルメーターがあるのも大きな違い。
VOLT 2のほうにも出力専用で2段階の簡易的レベルメーターはあるのですが、操作する上ではL/R独立し5段階あるレベルメーターがあるのは分かりやすいところです。
実際触ってみて感じるのは、各ノブのトルクが少し重めであること。完全にアナログのボリュームで回すのが気持ちいいですね。メイン出力用のMONITORというノブとヘッドホン出力用のVOLUMEは独立して用意されており、必要に応じて調整可能です。
このVOLTシリーズは、WindowsでもMacでも使えるわけですが、USBクラスコンプライアントなデバイスとなっているので、Lightning-USBアダプタなどを使えば、iPhoneやiPadに接続して使うこともできます。ただ、WindowsやMacの場合は、基本的にUSBからのバス電源供給で動作させることができますが、iPhoneやiPadの場合は電力的に足りません。そこで、これらでも使えるように、VOLTにはACアダプタからの電源供給を可能にするケーブルが付属してお
り、これを使うことで、iPhone/iPadでも問題なく使うことができるのです。
もっとも、このケーブルの反対側はUSB Type A端子となっているため、手持ちのiPhone/iPad充電器などを使うことでOKとなっています。
さて、ここでちょっと試してみたのは、このACアダプタからの電源供給をしつつ、USB TypeーC端子でのiPhone/iPadやWindows/Macとの接続を切断したらどうなるか、ということ。何のことはない、電源は入ったままの状態で、動作しているんですね。そしてダイレクトモニタリング状態にすればマイク入力やギター入力が、そのままヘッドホンでモニターすることができるし、メイン出力からもMONITORレベルを調整に応じて出すことが可能になっているのです。
つまり、スタンドアロンのマイクプリアンプとして使えているというわけなのです。もちろん、VINTAGEボタンも76 COMRESSORボタンも有効なので、簡単に持ち運びができる高性能なマイクプリとして使うことも可能なのです。これって、便利だと思いませんか?
さらに、INPUT 1とINPUT 2にラインでオーディオからの信号を入れると……そう、ヘッドホンアンプとしても使うことができます。この際、76 COMPRESSORなどをオンにするのが正しい使い方なのかどうかは分かりませんが、いいサウンドで聴くことができるんですよね。ちょっと贅沢な感じで使える卓上ヘッドホンアンプ。そんな使い方もできるのがVOLTのいいところなのです。
ところで、VOLT 2もVOLT 276も数多くのソフトがバンドルされているというのも見逃せないポイントです。購入してパッケージを開くとWelcom to Voltという表示とともに「www.uaudio.com/volt2/start」というURLが表示されているので、ここにアクセスすると、UA Connectというソフトがダウロードできるようになっているので、これをダウンロードの上、インストールします。
あとは指示にしたがって、USBケーブルでWindows/Macと接続すると、ドライバがインストールされ、すぐに使えるようになるとともに、ユーザー登録もされる形となっています。
さらに数多くのチュートリアルビデオが見れるようになっているのですが、左側のSoftwareタブをクリックすると、バンドルされているソフトの一覧が表示されます。具体的にいうと以下の通り。
Live 11 Lite | Ableton |
Marshall Plexi Classic + Time & Tone Bundle | Softube |
Melodyne Essential | Celemony |
LX480 Essentials | Relab Development |
Ampeg SVT-VR Classic Bass Bundle | Plugin Alliance |
Virtual Drummer DEEP | UJAM |
Virtual Bassist DANDY | UJAM |
LABS | Spitfire Audio |
のそれぞれ。これらを個別に購入したら、余裕でVOLTの価格を上回ってしまいますからね。これを目当てに購入しても損はないほどです。
すでにオーディオインターフェイスを持っている人でも、VOLTは1つ持っていて絶対に損のないオーディオインターフェイスだと思います。個人的には、やはり76 COMPRESSOR搭載のVOLT 276もしくは、今後発売になるVOLT 476がお勧めではありますが、みなさんはどれを選びますか?
【関連情報】
VOLTシリーズ製品情報(フックアップ)
VOLTシリーズ製品情報(Universal Audio )
【価格チェック&購入】
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