みなさんは、アコースティックギターの録音をどうやって行っていますか?オーディオインターフェイスにマイクを繋いで録音したり、ピックアップを装着して、そこからラインで録音するのが一般的だと思います。ただマイクでの録音は、自由度が高い反面、周りのノイズに気を遣わなけれがいけなかったり、オーディオインターフェイスやマイクが必要なので、ゼロから始めるには少し費用が掛かってしまいます。また、ピックアップを装着するのもアコースティックギターに加工が必要だったり、手間が掛かります。
そんな中、便利なのがIK MultimediaのiRig Acoustic Stageを使う方法。これは簡単にアコースティックギターに取り付けることが可能で、アコギに穴を開けたりする必要もなく、ライブでもレコーディングでも利用できるというものです。ライブで利用する場合は、プリアンプ・ユニットからラインアウトし、レコーディングの場合はUSBをPCに繋ぐことで録音が可能。このプリアンプ・ユニットには、フィードバック防止機能やDSPで処理されるNATURAL、WARM、BRIGHTのプリセットが用意されているのも便利なところ。実売価格は14,850円程度(税込)と比較的手ごろな価格なのも魅力的です。そんなiRig Acoustic Stageを使って、ギタリストの村山 遼(@RyoMurayama)さんに協力いただきつつ、録音を試してみたので、紹介していきましょう。
iRigシリーズを開発するIK Multimediaは、イタリアに拠点を置くメーカー。DTMステーションでもこれまでさまざまなIK Multimediaの製品を取り上げてきましたが、ハードウェアもソフトウェアとも、ユニークで便利な機材を数多く開発しているDTMの世界においてなくてはならない重要なメーカーになっています。
そのIK Multimediaが手掛ける数多くの製品の中で、今回紹介するiRig Acoustic Stageは、アコギに簡単に取り付けるだけで、ライブでもレコーディングでも利用できるという、ほかにはないとっても便利なギター用のピックアップです。見ても分かる通り、アコギのサウンドホール部分に引っ掛けて挟むように取り付けるだけなので、ギターに傷つけることなく、またそれなりにしっかりと固定されるので、扱いも簡単。
この黒いピックのような形の中にMEMSと呼ばれるちょっと特殊で高感度なマイクが入っているのがポイント。コンデンサマイクやダイナミックマイクなどとは異なり、機械的構造と半導体を1つ小さな電子部品にまとめたMEMSマイクを採用しているからこそ、非常に高品位な音でレコーディングができるのです。
このピックアップをプリアンプ・ユニットに接続して使う形となっており、このプリアンプ・ユニットを介してレコーディングしたり、PA機器に接続するようになっているのです。
実際どんなことができるのか、プリアンプ・ユニットの入出力を見ていくと、まずアナログの出力端子が搭載されています。これは1/4インチTSモノジャックでラインレベルのローインピーダンス出力。要するに普通のライン出力として利用できオーディオインターフェイスやミキサー、PAなどに接続することができます。
そのアナログ出力とは別にUSBオーディオ出力も搭載しているため、直接PCに接続してDAWで録音することが可能です。そう、iRig Acoustic StageがUSBオーディオインターフェイスとして機能する、というわけです。
また、AUXという入力が搭載されているので、たとえばピエゾピックアップを搭載しているアコギを使用している場合、その出力をプリアンプ・ユニットに入力することで、iRig Acoustic Stageのピックアップの音とピエゾの音をミックスして出力することもできるのです能。このミックス具合は、MIXというノブを使って調節することができます。もしピックアップとピエゾの位相が不揃いな場合は、サイドに搭載されている、PHASEスイッチを切り替えることで、位相を合わせることもできます。
全体の出力レベルは、VOLで調整し、ON/OFFの切り替えはサイドのスイッチで行います。そして、天面に搭載されているCANCEL FEEDBACKボタンは、iRig Acoustic Stageの最大の特徴でもあり、このボタンをオンにすることで、ライブステージでのフィードバックを防ぐことができます。このボタン1つでフィードバックが生じ得る複数の周波数帯域を自動でカットしていくれます。また、この機能はAUX入力にも作用します。難しいセッティングなしにライブでのフィードバックを防げるのは嬉しいところですよね。
また、TONEというボタンを押すことで、スティール弦とナイロン弦のそれぞれに対応した、NATURAL、WARM、BRIGHTの3種類、計6種類のプリセットを切り替えることができます。ちなみにRig Acoustic Stageのプリアンプ・ユニットは、32-bit A/DおよびD/Aコンバータとなっています。搭載されているプリセットは、最適なサウンドが得られるように最初からキャリブレーションが行われていますが、キャリブレーション・プロファイルをカスタマイズすることも可能。TONEボタンを長押しするとキャリブレーション・モードに入り、自分の楽器や奏法に最適化することができます。
これのキャリブレーション機能がついているので、アコギ以外にもウクレレなどに取り付けて、最良のサウンドを出力することだって可能となっています。
また、ギターストラップに装着できるクリップも付属しているので、ライブ時はこれを使ってプリアンプ・ユニットを装着します。
では、実際にレコーディングした音を聴いていきましょう。今回レコーディングを行った場所は、いつもDTMステーションPlus!の放送でお世話になっているBIGBOSS お茶の水駅前店 3階のESPミュージックスクールEMS 東京校のイベントスペース。アコギの演奏には、MI JAPAN卒業後、アイドルや声優、ポップス、ジャズ、ビッグバンドなど幅広くアーティストのライブに参加し、スタジオワークにも定評があり、さまざまなアーティストからオファーを受けて制作に携わっている村山 遼さんに協力していただきました。
セッティングは、アコギにピックアップを取り付けて、そのピックアップ部分をプリアンプ・ユニットに接続。その後、USB出力を使って、PCに接続。DAWはStudio Oneを使ってレコーディングしています。また、iPhoneへLightning – USBカメラアダプタを介して接続し、映像とともに録音した、2パターンを用意しました。
まずは、以下の動画をご覧ください。iPhoneのデフォルトで入っているカメラアプリを起動して、録画してみました。
続いて、DAWで録音したデータもSoundcloudにアップしました。カメラで録音したときと同様に録りの段階やミックスの段階で、EQやコンプ、リバーブなどのエフェクトは一切掛けていません。ちなみにSoundcloudへは、24bit/48kHzでレコーディングしたWAVをそのままアップしています。
実際にサウンドを聴いてみていかがでしょうか?かなりナチュラルなサウンドで、音が録音できているのが分かると思います。サウンドプリセットはNATURALに設定し、キャリブレーションを行わずレコーディングしています。iPhoneに接続して録音できるので、弾いてみた動画などを作る際にも簡単に高音質な作品を制作することができますね。ただ、プリアンプ・ユニットにはヘッドホンアウトが付いていないので、直接モニターすることはできませんが、ライン出力もできるので、そこからオーディオインターフェイスに入力するといった使い方でモニターしながらの録音が可能です。
また、今回はStudio Oneを使って収録したのですが、このDAWでは入力と出力の機材を選択できるので、入力をiRig Acoustic Stageに設定し、出力をSteinberg UR22に設定した上でヘッドホンでモニターしました。なお、USB Type-A – micro USB Type-Bは付属していないので、USB接続する場合は別途用意する必要があります。
ちなみにStudio OneのオーディオI/O設定を見たところiRig Acoustic Stageの入力はステレオという扱いになるようです。ただし、左右チャンネルとも同じ信号が行っている形ですね。
以上、iRig Acoustic Stageを紹介しました。ライブで利用できるのはもちろんのこと、レコーディングでも耐えれる音質を兼ね備えているため、自身でアコギをレコーディングする方であればかなり重宝する機材だと思います。マイクを立ててレコーディングするのは、多少の知識や経験が必要なので、簡易的なのに失敗せずいい音質で録音できるのは嬉しいところですね。
【関連情報】
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